2021-01-01から1年間の記事一覧
皆さん、普通のミステリ小説に満足していますか? 普通に人が死んで探偵が解決するタイプのミステリもいいが、もっとクセが欲しくないだろうか? そんな皆さんに今回ご紹介したいのは、クセがすごいミステリだ。もしかしたら、某千鳥の某ノブさんが読んだら…
村上春樹の小説には、複数の小説に登場するキャラクターがいる。有名なものをあげれば羊男がいるだろう。それ以外にも、名前がよく出てくるキャラクターがいる。 それが渡辺昇(ワタナベ・ノボル)だ。 パン屋再襲撃に収録される短編に登場する「渡辺昇」た…
第165回芥川龍之介賞の候補作が発表された! 7月と言えばそう、芥川賞発表の季節ですね。 今回の候補作品は偶然か必然か東日本大震災をテーマにした作品が多くノミネートされている。様々な視点から震災を振り返った作品だ。 候補者を見てみると、今回初めて…
川端康成や大江健三郎のような文学作品だと読解が難しく内容がよく分からないという人は多いのではないだろうか。また、文学作品を色んな視点から読み解きたい、もっと深く読み解きたいという人も多いのだろうではないか。または、受験のために小説が読み解…
梅雨の季節になった。じめじめするのが嫌な季節だ。だけど、雨というのはなんだか風情がある。 ノルウェイの森 上 (講談社文庫) 作者:村上 春樹 講談社 Amazon 雨が印象的な小説というと、村上春樹『ノルウェイの森』が思い浮かぶ。あの小説には、暗くて重い…
梅雨の時は外に出かけにくく、家の中で過ごすことが多いだろう。そんな時は、雨が降るのを眺めながら読書に耽るのが趣があって素敵だと思う。梅雨時に読みたい、雨が印象的な小説を紹介したい。 ノルウェイの森 / 村上 春樹 傘を探す / 佐藤 正午 驟雨 / 吉…
死神の精度 (文春文庫) 作者:伊坂 幸太郎 文藝春秋 Amazon 伊坂幸太郎の『死神の精度』に出てくる死神は雨男だ。死神だから、雨男と言って良いものなのか。雨神とでも書いた方がいいのだろうか。それは置いといて、『死神の精度』を読んでいると、雨男につい…
森見登美彦と万城目学ってセットにして語られることが多い作家だなと思う。 2人とも京大出身で、京都にゆかりのある作家だ。 森見登美彦が好きな人は万城目学も好きそうな感じがする。けれど、強いていうならどちらかの方が好きみたいな派閥が存在するとも思…
『マリ&フィフィの虐殺ソングブック』や『あらゆる場所に花束が…』に衝撃を受けてから、中原昌也をよく読むようになった。『マリ&フィフィの虐殺ソングブック』の支離滅裂ながらもイメージを繋いでいく手法はバロウズの『裸のランチ』ようだったし、『あら…
乾くるみは、どんでん返しを仕掛けたミステリが魅力的な作家だ。 本格ミステリのギミックを恋愛小説やSF小説に組み合わせた作風はなかなか珍しい。どんでん返しと恋愛小説を組み合わせた『イニシエーション・ラブ』は、芸能人がオススメしたこともありベスト…
ヘミングウェイはエッセイ『移動祝祭日』で、パリで過ごした青春の日々をこう語っている。 もし幸運にも、若者の頃、パリで暮らすことができたなら、その後の人生をどこですごそうとも、パリはついてくる。パリは移動祝祭日だからだ 誰にとっても青春時代は…
ミステリあるいは探偵小説では、謎が提示され探偵がそれを解決するという枠組みを持つ。大体の推理小説はこのような枠組みを持つことは納得してもらえると思う。謎がそのまま放置されたら気持ち悪いだろう。 だが、小説の中にはこの探偵小説の枠組みを崩し、…
地方都市の閉塞感や空気感を描かせたら山内マリコの右に出るものはいないだろう。 昔は尖っていたけど歳を重ねて丸くなったマイルドヤンキーや、画一化された国道沿いの風景など山内マリコが描く地方都市の風景は、地方都市に住んだことがある人なら「分かる…
中原昌也は、日本現代文学の作家の中でも異端の作家だと思っている。 紋切り型の文章・表現の多用、ストーリーではなく規則性に従って小説を進行させる技法など同じような作風を持つ作家は日本にいないのではないかなと思う。近い作風だとヌーヴォー・ロマン…
佐藤正午は現代作家の中でも屈指の小説巧者だ。 文章と構成の両方が素晴らしく、小説巧者としか言いようがない。登場人物たちのウィットに富んだ会話はクセになり、緻密でたくらみに満ちた構成に驚かされる。時系列をシャッフルした構成など、技巧的な構成が…
「ファミリー・アフェア」は村上春樹の短編小説の中でも個人的に大好きな小説だ。僕が「ファミリー・アフェア」が好きな理由は、文章のウィットにある。この小説では、主人公が冗談好きというのもあって、とにかく気の利いた表現が多くて面白い。また主人公…
中原昌也は、現代文学の奇才と言ってもいいくらい、尖った小説を書いている小説家だ。 アンチ・クライマックス、無意味な暴力、規則的な反復、紋切り型の表現と普通の小説とは一味違った現代文学を書いていている。今までに、三島由紀夫賞や野間新人文学賞な…
鮮やかな伏線回収、魅力的なキャラクター、ウィットに富んだ文章で人気を集めている伊坂幸太郎。 巧みすぎる伏線回収には毎回驚かせられる。時系列がバラバラであったりと小説の構成が凝っていて、どんでん返しなどが仕掛けられた小説が多い。 伊坂幸太郎の…
メフィスト賞からデビューし、ミステリ・純文学の枠に収まらない小説を執筆してきた佐藤友哉。 サブカルチャーを小説内に取り込み、様々な意匠をパロディ的に用いるのが作風だ。先行作品を下敷きにし、オマージュ的な作品を多く執筆している。 代表例を挙げ…
三崎亜記は非現実的な小説世界に読者を誘う小説家だ。 見えない戦争を描いた『となり町戦争』や 、台風の代わりに鼓笛隊が日本に上陸する『鼓笛隊の襲来』など、日常から少しズレたような「少し、不思議(SF)」な小説を書き続けている。シュールレアリスムな…
大崎善生は、叙情的で透明感のある文体が魅力の小説家だ。 代表作『パイロットフィッシュ』のように瑞々しい恋愛小説を数多く書いている。大崎善生と言えば『聖の青春』や『将棋の子』のような将棋に関するノンフィクションを思い浮かべる人が多いかも知れな…
この前、直島にアート観光に行ってきた。 草間彌生の水玉かぼちゃや大竹伸朗が制作に関わった銭湯、地中美術館、ANDOミュージアムなど島中にアート作品があふれていて、まさにアートの聖地。 草間彌生や杉本博司といった有名な作家はもちろんのこと、知らな…
穂村弘は僕にとって「名前は聞いたことあるけど一冊も読んだことがない」作家だった。なんとなく読んでみたいなというのは前から思っていたので、本屋でたまたま見かけた『もしもし、運命の人ですか。』を読んでみた。結論から言うと、すこぶる面白かった。…
どんでん返し系の小説の帯に「2度読みたくなる」と書かれているのをよく見るけれど、結局のところ何回も読みたくなる小説って文体に魅力がある小説じゃないかなと思う。やっぱり、文章自体に魅力がないと何回も読みたいと思うことがない。やっぱり、ユーモア…
ユーモアが魅力のウディ・アレン作品 『映画と恋とウディ・アレン』予告編 疲れているから重い映画は見たくないけれど、軽いコメディは見たい。そんなときは間違いなくウディ・アレンの映画をみる。ウディ・アレンの映画はストーリーを楽しむというよりも、…
村上春樹とユニクロがコラボして、村上春樹の小説を題材にしたUTが発売された。これには結構驚いた。まさかユニクロと村上春樹がコラボするなんて。やれやれ。 UTからは『1Q84』や『ダンスダンスダンス』、『ノルウェイの森』、『スプートニクの恋人』、『19…
『花束みたいな恋をした』本編映像【2人だけの新生活編】 麦と絹の「花束みたいな恋」の始まりと終わりを描いた『花束みたいな恋をした』。 脚本は坂本裕二さんだ。カルチャーをこよなく愛する麦と絹が互いの共通点に惹かれ合い、恋に発展していく様は文化系…
なにげない日常を描いた小説のようだが、作中には常に不協和音が流れている。これは、「あひる」を初めて読んだ時の印象だ。 今村夏子の「あひる」という小説は平易な文章で書かれていて、一見すると童話のようだ。だけど作中に不穏な雰囲気が常に漂っている…
今日も一面霧が立ちこめて。ときに龍神が天翔るという伝説がある九界湖の畔で、むっさいい感じで営業している九界湖ホテル。支配人新町、フロント美女あっちゃん、怪しい関西弁の雑用係スカ爺が凄絶なゆるさで客を出迎える。真心を込めて。そこへ稀代の雨女…
新構想大学という無機質な世界で出会った孤独な少女たちの魂の邂逅を描いたのが、松村栄子の『至高聖所』だ。『至高聖所』は、センター国語でも話題になった『僕はかぐや姫』の作者・松村栄子の小説で、第106回芥川賞受賞作である。この小説でも研ぎ澄まされ…