日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

2022-01-01から1年間の記事一覧

2022年のブログを振り返る

特別お題「わたしの2022年・2023年にやりたいこと」ということで、この記事では2022年の当ブログについて振り返っていこうと思う。今年は昨年に比べてブログに力を入れてきたのでその結果について紹介したい。 あとは2023年の抱負やブログの目標、やりたいこ…

小説で今年を振り返る!2022年話題になった小説まとめ

2022年もあと少しで終わる。 年初には新型コロナの流行が収まって回復の年になるかと思っていたが、蓋を開けてみればロシアのウクライナ侵攻や安倍元首相の殺害事件と混迷の一年となった。また、各国でインフレが止まらず、日本においては円安が止まらなくな…

Audible(オーディブル)で聴ける伊坂幸太郎作品を紹介!

鮮やかな伏線回収、魅力的なキャラクター、ウィットに富んだ文章で人気を集めている伊坂幸太郎。 巧みすぎる伏線回収には毎回驚かせられる。時系列がバラバラであったりと小説の構成が凝っていて、どんでん返しなどが仕掛けられた小説が多い。 伊坂幸太郎の…

映画でムラカミワールドを堪能!村上春樹原作の映画まとめ

日本を代表し、世界中で読まれている村上春樹作品。卓越した比喩と、謎めいたストーリー、ムラカミワールドとしか形容のできない唯一無二の世界観、村上春樹の魅力を語り出すとキリがない。 村上春樹作品が持つ雰囲気は映像化するのが難しいと思うのだが、こ…

意外と三角関係が多い?夏目漱石のおすすめ小説5選!

夏目漱石の前期三部作・後期三部作について解説した記事です。前期三部作の三四郎・それから・門、後期三部作の彼岸過迄・行人・こころの内容についても解説してます。

第168回芥川龍之介賞の候補作を紹介する!

本日早朝(朝五時)に、第168回芥川賞の候補作が発表された。 なぜこの時間帯なのかと毎回思う。話を戻そう。 第168回芥川賞候補作は、安堂ホセ『ジャクソンひとり』、井戸川射子『この世の喜びよ』、グレゴリー・ケズナジャット『開墾地』、佐藤厚志『荒地…

子どもたちから公園を奪ったのは誰か? / 「公園」 三崎 亜記

「子どもがうるさい」との住民の苦情により、子どもたちが利用する公園が廃止されることになったというニュースが話題を集めている。 廃止となったのは長野市にある青木島遊園地。市側は改善を続けたが、住民から騒音の訴えは変わらず、公園を利用する子ども…

白色って200色あるねん!表紙が白い本をまとめてみた

皆さんご存知だろうか、白には200色あるということを。 某アンミカさんによると白色には200色の違いがあるようだ。(出典:2021年8月20日『人志松本の酒のツマミになる話』) この名言は、テレビ番組でアンミカさんの「小っちゃい物の良い所をコップ一個でも…

友情と恋愛、どちらを取る?/ 『友情』 武者小路実篤

『友情』というタイトルから、友情の素晴らしさを描いた小説だと思った人は多いだろう。僕もそうだった。しかし、武者小路実篤の『友情』という小説は、爽やかな青春小説の対極にあるような、友情と恋愛の間での葛藤を描いた恋愛小説だ。夏目漱石の『こころ…

奇々怪々!世にも奇妙な物語みたいな短編小説10選

「世にも奇妙な物語」をご存知だろうか? 「恐怖系」、「コメディ系」、「感動系」 、「意味不明系」といった奇妙なテイストのオムニバスドラマだ。ストーリーテラーのタモリが印象的なフジテレビのご長寿シリーズである。 この記事では、「世にも奇妙な物語…

ビター&スイートな大人のおとぎ話 / 『カフェ・ソサエティ』 ウディ・アレン

ウディ・アレン監督の新たな21世紀ベスト作品! お洒落なBGMが流れ、真っ暗なスクリーンにタイトルが浮かび上がるオープニング。このウディ・アレン印のオープニングを観ると、今年もウディ・アレンの映画を観れると顔がにやついてくる。前作の『教授のおか…

まさに変化球!一風変わったポストモダン野球小説まとめ

野球をモチーフにした小説と言えば何を思い浮かべるだろうか? 大抵の方は、『バッテリー』といった王道の野球青春小説を思い浮かべるかもしれない。だが、個人的に野球小説といえば一癖も二癖もあるポストモダン的な野球小説が思い浮かぶ。『バッテリー』が…

現実離れしたトリックが魅力!おすすめのバカミス12選

バカミスというミステリのカテゴライズをご存知だろうか? この「バカ」だが、決して小説をバカにした意味合いではなく、「そんなバカな!」という驚きの意味を込めたものだ。思わず「そんなバカな!」と驚いてしまうほどの意外性のあるトリックや、現実性を…

文学界を揺るがした「こころ論争」とは?

『こころ』論争とは、小森陽一や石原千秋らのテクスト論派と、三好行雄といった作品論派の間に起きた夏目漱石『こころ』の解釈をめぐる論争である。

デタッチメントという観点からの考察 / 「TVピープル」 村上 春樹

「TVピープル」は、タイトル通りTVピープルという不思議な小人が登場する村上春樹の短編小説だ。世にも奇妙な物語にありそうなストーリーだなと思う。短編集『TVピープル』の表題作でもあるので、村上春樹の短編の中でも有名ではなかろうか。 『ノルウェイの…

伊坂幸太郎の最高傑作を独断で選出する

伊坂幸太郎は日本で大人気の作家の一人だと思う。 緻密に張り巡らされた伏線、個性的なキャラクターと軽妙な語り口、ウィットに富んだ文章が魅力だ。 特に巧みすぎる伏線回収には毎回驚かせられる。作中に張り巡らされた伏線が、後半にかけて回収されていく…

森鴎外『舞姫』を読むならちくま文庫版を推したい件について

森鴎外の『舞姫』といえば、知識人(エリート)の挫折と苦悩を描いた名作だろう。 高校国語で勉強するので、大抵の人は読んだことがあるはずだ。 ドイツでエリスと恋に落ち、エリスに子どもを身篭らせるも、ついにはエリスを捨てて日本に帰国した豊太郎には…

フィクションは人生に必要か? / 『カイロと紫のバラ』 ウディ・アレン

人はなぜ映画を観るのだろう? 人生における映画(フィクション)の役割とは何か? そんな問いに答えるのがウディ・アレンの隠れた名作『カイロの紫のバラ』だ。この映画では、映画そのものが題材になった作品だ。劇中では、映画の画面から登場人物が出てく…

村上春樹とゴダール

村上春樹作品にはよく映画が登場する。映画そのものが登場するときもあれば、比喩表現として登場するときもある。村上春樹作品は映画から多大なる影響を受けていると言われることも多い。最近では村上春樹と映画の関係について考察した「村上春樹 映画の旅」…

謎解き『すずめの戸締まり』 / 村上春樹「かえるくん、東京を救う」から考察する

www.youtube.com 今年の11月11日に新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』が公開された。 水溜りの上にある扉の印象的なビジュアル、観るものを圧倒する華麗な情景描写。予告を観ただけでも期待が高まる。 音楽は、『君の名は。』と『天気の子』に引き続きR…

「みみずくん」との戦い / 「かえるくん、東京を救う」 村上 春樹

村上春樹の小説には動物をモチーフとした個性的なキャラクターが登場する。『羊をめぐる冒険』の羊男が有名だろう。あるいは、「かえるくん、東京を救う」に登場する「かえるくん」も印象に残るキャラクターだろう。 村上春樹の「かえるくん、東京を救う」は…

父親と戦争 / 『猫を棄てる 父親について語るとき』 村上 春樹

ある夏の日、僕は父親と一緒に猫を海岸に棄てに行った。歴史は過去のものではない。このことはいつか書かなくてはと、長いあいだ思っていた―――村上文学のあるルーツ 『猫を棄てる 父親について語るときに僕の語ること』は、村上春樹が自らの父について語った…

謎解き『すずめの戸締まり』 / 日本神話・天岩戸隠れから考察する

www.youtube.com 今年の11月11日に新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』が公開された。 水溜りの上にある扉の印象的なビジュアル、観るものを圧倒する華麗な情景描写。予告を観ただけでも期待が高まる。 11月の公開まで待ちきれなかったので、8月に発売さ…

中島敦『山月記』を読むならちくま文庫版を推したい件について

中島敦の『山月記』といえば、自意識にとらわれた男の苦悩を描いた名作だ。 高校の国語で勉強するので、大抵の人は読んだことがあるはずだ。 「臆病な自尊心」や「尊大な羞恥心」とキラーワードは、何者かになろうとしてなれなかった人には突き刺さるフレー…

驚きが止まらない!伊坂幸太郎のどんでん返しおすすめ小説5選

鮮やかな伏線回収、魅力的なキャラクター、ウィットに富んだ文章で人気を集めている伊坂幸太郎。伊坂幸太郎は人気ミステリ作家の代表格だろう。 巧みな伏線が仕掛けられた伊坂幸太郎のミステリには毎回驚かせられる。特にあっと驚くようなどんでん返しが仕掛…

最近読んで面白かった本をざっくり紹介する

今週のお題「最近おもしろかった本」 今週のお題が「最近おもしろかった本」ということで、ここ数ヶ月読んだ中で面白かった本を紹介したい。小説・新書とジャンルは様々だ。 『すずめの戸締まり』 / 新海 誠 『ユーチューバーが消滅する未来 2028年の世界を…

あなたも騙される!東野圭吾のどんでん返しミステリ6選!

東野圭吾は、大人気のミステリ作家だ。 ガリレオシリーズの『容疑者Xの献身』で直木賞を受賞し、『白夜行』など有名作品を次々に送り出してきた東野圭吾。ガリレオシリーズや加賀シリーズなど人気が高いシリーズも多い。これまでに数多く作品を執筆しており…

夏目漱石の最後の作品『明暗』について紹介

日本の国民的作家といえば夏目漱石だろう。 『吾輩は猫である』や『坊っちゃん』、『三四郎』、『こころ』などの多くの名作を夏目漱石は生み出した。『こころ』や『夢十夜』は高校の国語で扱われることが多いので、読んだことがある人は多いはずだ。 夏目漱…

ノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノーってどんな作家?

2022年のノーベル文学賞の発表があり、受賞者はフランスの作家アニー・エルノー(Annie Ernaux)だと発表された。 ブックメーカーのノーベル文学賞予想のオッズではかなり上位にいた作家だ。 案外、ブックメーカーは当たるのかもしれない。 最近、アニーエルノ…

なぜ村上春樹はノーベル賞受賞に近い作家と言われるようになったのか?

10月になってノーベル賞が発表される季節になった。 こうなると話題になるのが、「村上春樹ノーベル文学賞受賞なるか」だ。テレビでハルキストの集まりが中継され、受賞者発表後に落胆するという光景が秋の風物詩となっている。 毎年ブックメーカー(賭け屋…