日々の栞

本、映画、ファッションについて気ままに書く。理系の元書店員。

ウルトラマンのバンザイ / 「バンザイコーナー」 柳 幸典

この前、直島にアート観光に行ってきた。 草間彌生の水玉かぼちゃや大竹伸朗が制作に関わった銭湯、地中美術館、ANDOミュージアムなど島中にアート作品があふれていて、まさにアートの聖地。 草間彌生や杉本博司といった有名な作家はもちろんのこと、知らな…

恋愛あるあるに関するあれこれ / 『もしもし、運命の人ですか。』 穂村 弘

穂村弘は僕にとって「名前は聞いたことあるけど一冊も読んだことがない」作家だった。なんとなく読んでみたいなというのは前から思っていたので、本屋でたまたま見かけた『もしもし、運命の人ですか。』を読んでみた。結論から言うと、すこぶる面白かった。…

文体がウィットに富んでいて面白い小説家まとめ

どんでん返し系の小説の帯に「2度読みたくなる」と書かれているのをよく見るけれど、結局のところ何回も読みたくなる小説って文体に魅力がある小説じゃないかなと思う。やっぱり、文章自体に魅力がないと何回も読みたいと思うことがない。やっぱり、ユーモア…

ウディ・アレン監督の笑えるユーモア映画まとめ

ユーモアが魅力のウディ・アレン作品 『映画と恋とウディ・アレン』予告編 疲れているから重い映画は見たくないけれど、軽いコメディは見たい。そんなときは間違いなくウディ・アレンの映画をみる。ウディ・アレンの映画はストーリーを楽しむというよりも、…

村上春樹とユニクロがコラボ!村上春樹UTを買ってみたのでレビューする

村上春樹とユニクロがコラボして、村上春樹の小説を題材にしたUTが発売された。これには結構驚いた。まさかユニクロと村上春樹がコラボするなんて。やれやれ。 UTからは『1Q84』や『ダンスダンスダンス』、『ノルウェイの森』、『スプートニクの恋人』、『19…

『花束みたいな恋をした』 麦と絹のお気に入りの作家まとめ

『花束みたいな恋をした』本編映像【2人だけの新生活編】 麦と絹の「花束みたいな恋」の始まりと終わりを描いた『花束みたいな恋をした』。カルチャーをこよなく愛する麦と絹が互いの共通点に惹かれ合い、恋に発展していく様は文化系の人なら一度は憧れたこ…

あひるが死んでも変わりはいるもの / 「あひる」 今村 夏子 

なにげない日常を描いた小説のようだが、作中には不協和音が常に流れている。これは、「あひる」を初めて読んだ時の印象だ。今村夏子の「あひる」という小説は平易な文章で書かれていて、一見すると童話のようだ。だけど作中に不穏な雰囲気が常に漂っている…

愛についてのドタバタ喜劇 / 『湖畔の愛』 町田 康

今日も一面霧が立ちこめて。ときに龍神が天翔るという伝説がある九界湖の畔で、むっさいい感じで営業している九界湖ホテル。支配人新町、フロント美女あっちゃん、怪しい関西弁の雑用係スカ爺が凄絶なゆるさで客を出迎える。真心を込めて。そこへ稀代の雨女…

孤独な少女たちの魂の邂逅 / 『至高聖所』 松村 栄子

新構想大学という無機質な世界で出会った孤独な少女たちの魂の邂逅を描いたのが、松村栄子の『至高聖所』だ。『至高聖所』は、センター国語でも話題になった『僕はかぐや姫』の作者・松村栄子の小説で、第106回芥川賞受賞作である。この小説でも研ぎ澄まされ…

新型感染症と組織の不条理 / 『臆病な都市』 砂川 文次

新型コロナウイルスが流行し、注目された小説がいくつかある。カミュの『ペスト』が代表的な小説だ。しかし、『ペスト』以外にも感染症を題材にして、話題になった小説がある。それが砂川文次の『臆病な都市』だ。端的に言って、この小説は傑作だと思う。『…

麻耶雄嵩の超問題作 / 『夏と冬の奏鳴曲』 麻耶 雄嵩

麻耶雄嵩の超問題作 首なし死体が発見されたのは、雪が降り積もった夏の朝だった!20年前に死んだはずの美少女、和音の影がすべてを支配する不思議な和音島。なにもかもがミステリアスな孤島で起きた惨劇の真相とは?メルカトル鮎の一言がすべてを解決する。 …

『となり町戦争』 三崎 亜記

隣町と隣町が戦争すると言う見えない戦争を書いた小説。見えないということは、知らないということ。知らないということは、存在しないということ。そうやって現代は戦争を隠してきた。テレビで流れるのは下らないニュースばかり、数字だけを見てもリアリテ…

等身大のアンネ /『乙女の密告』 赤染 晶子

女子大生の日常とアンネの日記がリンクしていく。少女マンガチックでユーモア溢れる文体で綴られている。人は誰でも密告者になりうるということか。乙女の世界は派閥というか、カーストというか女子の怖さがかいまみえた。男子に生まれて良かった。それより…

謎解き『羊をめぐる冒険』 / 「依頼」と「代行」による「宝探し」の物語

羊をめぐる冒険 (講談社文庫) 作者:村上春樹 発売日: 2016/07/01 メディア: Kindle版 物語にはいくつかの基本パターンみたいなものがある。有名なもので言えばオイディプス王に見られる様な「父殺し」の物語骨格がある。「父」というモチーフは色んな文学作…

演劇畑からデビューした現代文学作家のまとめ

戯曲と小説には綿密な関係がある。三島由紀夫や安部公房など優れた小説家は、素晴らしい戯曲も書き残してきた。また、小説家が戯曲を書くだけではなく、劇作家が小説を書き小説家としてデビューした事例も数多くある。演劇畑出身で活躍している小説家を紹介…

ゲシュタルト崩壊は「文字の精霊」の仕業?/ 『文字禍』 中島 敦

小学生の頃、漢字をひたすら書き写すという宿題を経験した人は多いはずだ。宿題をやっている時、こんな経験はなかっただろうか?ずっと同じ感じを描いていると、漢字の線の一つ一つが分解して、意味をなさない図形のように見えてしまう。このような現象には…

概念を奪い取る宇宙人の侵略 / 『散歩する侵略者』 前川 知大

真治と鳴海の夫婦は、ちいさな港町に住んでいる。亭主関白ぶって浮気する真治、気づかないふりで黙っている鳴海。だが真治が、3日間の行方不明ののち、まったく別の人格になって帰ってきた。「真ちゃん」と呼ばせてくれる新しい真治と、鳴海はやりなおそう…

センター試験で話題になったボクっ娘小説 / 『僕はかぐや姫』 松村 栄子

進学校の女子高で、自らを「僕」と称する文芸部員たち。17歳の魂のゆらぎを鮮烈に描き出した著者のデビュー作「僕はかぐや姫」。 センター試験の国語で出題される小説は毎回話題になってきた。スピンスピンスピンというパワーワードが話題を集めたこともあっ…

人が「何らかしら」に変身する変身譚・変身小説まとめ

「変身!」という掛け声といえば仮面ライダーだ。これは皆んなよく知っているだろう。だが、掛け声「変身」の由来は何かと聞かれたら答えに窮するだろう。「変身!」の掛け声の由来は、意外にもフランツ・カフカの『変身』にあった。こんなところに文学の影…

資本主義の勝ち組の憂鬱 / 『キャピタル』 加藤 秀行

『キャピタル』は、タイトルのCapital(資本)が暗示するように、グローバル資本主義の競争原理を色濃く反映した小説だ。この小説が描くのは、グローバル資本主義における勝ち組の憂鬱だ。勝ち組にも憂鬱はあるのだ。文学といえば弱者の視点で描くことが多く、…

人生は偶然に左右されるもの / 『マッチポイント』 ウディ・アレン

人生は偶然の連続だ。宝くじが当たったり、事故に巻き込まれたり、運命の人に出会ったり、世の中には人が制御できない偶然が多い。「人生は偶然によって大きく左右される」というテーマはウディ・アレンの映画で何度も使われている。 『マッチポイント』は偶…

フィクションは人生に必要か? / 『カイロと紫のバラ』 ウディ・アレン

人はなぜ映画を観るのだろう?人生における映画(フィクション)の役割とは何か?そんな問いに答えるのがウディ・アレンの隠れた名作『カイロの紫のバラ』だ。映画から登場人物が出てくるというウディ・アレン十八番のメタフィクションになっている。主人公…

阿部和重と伊坂幸太郎の夢の共作! / 『キャプテンサンダーボルト』阿部和重 伊坂幸太郎

伊坂幸太郎と阿部和重の共作小説。エンタメと純文学を代表する作家のコラボということもあって、期待に胸を膨らませて読んだ。単行本が発売された当初から話題になっていて読みたかったが、結局文春文庫になっても読まずに新潮文庫の新装版になってから読む…

フランツ・カフカが好きな人にオススメのカフカっぽい作家

変身 (新潮文庫) 作者:フランツ・カフカ 発売日: 1952/07/28 メディア: 文庫 気がかりな夢から目をさましたら虫になっていたでおなじみのフランツ・カフカ。代表作の不条理文学『変身』を筆頭に、官僚機構のナンセンスさを描いた『城』や訳の分からない裁判…

新しい定番になるか?教科書に載っている村上春樹作品のまとめ

中高生の国語の授業で扱う小説といえば、中島敦の『山月記』や芥川龍之介の『羅生門』、夏目漱石の『こころ』があるだろう。 国語の教科書に載っている小説って昔の作家が多い印象だが、そうでもない。現代日本を代表する村上春樹の小説も新しい定番として国…

組織の不条理と戦争 /『小隊』 砂川 文次

芥川賞候補作の砂川文次「小隊」は組織の不条理を描いた戦争小説だ。「小隊」は、北海道にロシア軍が上陸し、日本の自衛隊と衝突するという架空の戦争を描いている。 まず著者が自衛隊出身ということもあってか、小説のリアリティに圧倒された。専門用語が頻…

第164回芥川賞受賞作を全力で予想してみた!

第164回芥川龍之介賞受賞作を予想してみた! 1月といえば芥川賞受賞作発表の月だ。今回の候補作品を全部読んでみて芥川賞受賞作を予想してみた。今回の候補作はどれもレベルが高く甲乙付け難かった。今回の候補作は、クリープハイプの尾崎世界観の『母影』や…

「歩く、書く、蹴る」の練習の旅 /『旅する練習』 乗代 雄介

中学入学を前にしたサッカー少女と小説家の叔父。 2020年、コロナ禍で予定がなくなった春休み、 ふたりは利根川沿いに、徒歩で 鹿島アントラーズの本拠地を目指す旅に出る。 新型コロナウイルスが流行してから、日常の景色が一変した。マスクは必需品になっ…

推しに愛される妄想が現実を変える / 『コンジュジ』 木崎 みつ子

芥川賞候補にもあがっていた木崎みつ子の『コンジュジ』を読んだ。木崎みつ子はこの『コンジュジ』ですばる文学賞を受賞しデビューしている。『コンジュジ』で芥川賞を受賞すれば、すばる文学賞受賞作で芥川賞受賞という金原ひとみ以来の快挙となる。『コン…

奇妙な図書館からの脱出 / 『図書館奇譚』 村上 春樹

図書館の地下のその奥深く、羊男と恐怖と美少女のはざまで、ぼくは新月の闇を待っていた。 『図書館奇譚』は一般的にはメジャーな作品じゃないと思うけれど、村上作品ではお馴染みの「羊男」というキャラクターが出てきたり、超現実的な展開であったり、異世…