日々の栞

生活にカルチャーを。本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』のネタバレ解説・考察

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劇場版名探偵コナンの最新作『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』が公開された。

映画が待ちきれなかった私は公開日の次の日の土曜日に劇場に観に行った。レイトショーで見に行ったのだが、夜中でも割と埋まっていて、改めて名探偵コナン人気の凄さを思い知らされた。

興行面では、公開初日だけで動員73.9万人、興収11.3億円という驚異的なロケットスタートを記録し、前作比107%という過去最高記録を更新したみたいだ。恐るべしコナン人気。

二回ほど観て、小ネタや考察が深まったのでネタバレありで『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』の解説・考察を書いていこうと思う。

名探偵コナン 隻眼の残像』の感想については下記の記事で書いているので気になる人はぜひ読んでみてほしい。

 

では、ネタバレありで『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』の解説・考察を書いていこうと思う。『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』の小ネタにも触れようと思う。

 

 

『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』の犯人と動機


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ハイウェイの堕天使』の犯人は「1人」ではなく、黒幕を含めると3人が絡む複層構造になっている。
「ルシファー(黒いバイク)」の実行犯+黒幕+別の黒幕という構成で、脚本の特徴である「犯人→犯人を始末しようとするさらに上の犯人」という二重構造になっている。

ルシファーと一人目の黒幕に関してはすぐに気づく人が多かったのではないかと思う。映画で登場した新規の主要キャラは全て犯人みたいな感じだったからな。

 

実行犯・ルシファーの正体:浅葱一華

まず、黒いスーツに身を包んだルシファーの正体は千速の先輩(元神奈川県警白バイ隊員)である浅葱一華であった。浅葱が運転アシスト機能がついた黒いバイク「ルシファー」に乗って暴走・事故幇助を繰り返していた。

浅葱はかつて追跡中、佐々木直之という被疑者を追ってバイク事故を引き起こし、左足を負傷し、怪我の影響から白バイ隊員から外れていた。

その後、大前に雇われてルシファーを操り、データ収集のための「事故」を意図的に引き起こしていた。クライマックスでは千速と直接対決していた。

ルシファー(堕天使)は元々「正義側」だった存在が闇に落ちる象徴であるので、元々警察だった浅葱が悪に手を染めることのメタファーとなっているんじゃないかなと思う。

 

黒幕:大前一暁

最初の黒幕が新型白バイ「エンジェル」の開発エンジニアである大前だ。ルシファー(=エンジェルの黒バージョン)の設計・製造に関与していた。AIシステムの開発のために「闇レース」でのデータ収集を隠蔽するため、かつての共同開発者である佐々木直之を事故に見せかけて殺害していた。また、警察の白バイ部隊から外れた浅葱を雇ってルシファーを走行させ、走行データを集めていた。序盤から割と怪しいキャラであったがすんなり黒幕だった。

 

もう一人の黒幕:龍里希莉子

もう一人の黒幕がバイクデザイナーの龍里だ。龍里は事故で亡くなった佐々木直之の姉だった。浅葱を大前殺害目的で雇っていた張本人。弟・佐々木直之が大前の違法計画に巻き込まれ死亡した復讐が大前を殺そうとしたというのが動機だ。大前を始末するために浅葱を利用し、計画を裏で操っていた。龍里は浅葱を利用して大前を横浜ベイブリッジの特定地点に誘い出し、ヘリコプターから狙撃手ジョン・ポウダーに狙撃させる準備を整えていたがコナンたちに未然に防がれる。

 

 

荻原研二が言った姉に関する言葉とは?

千速は長年、弟の研二が死の直前に自分に何を伝えようとしていたのかを気にしていた。実は研二は千速本人に直接言ったわけではなく、重悟との電話で「白バイで無茶する千速のことをどう思う?」と聞かれた時の言葉だった。ちなみに研二の言葉はこんな感じである。
 
「姉貴は、美人だが、ズボラで可愛げもなく、足もさほど早くねえし、格闘技も人並みで、射撃に至ってはからっきし、だけど……バイクに跨ったら、俺のドラテクでも追いつけねぇ、日本一速い女だよ。無敵だ」

 

 

『ハイウェイの堕天使』の青山原画シーン


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劇場版『名探偵コナン』には、原作者・青山剛昌先生が自ら原画を担当したシーン、通称「青山原画」が複数含まれている。青山原画シーンは、クライマックスやキャラクターの重要な感情表現など、特に印象的な場面で使用されている。
青山原画がどこに使われていたかについて、自分で観た時の情報とネットの情報をまとめてみた。

 

萩原千速関連

・オープニング前/イントロ前の初登場シーン

・あの時なんて言おうとしてたんだ」と上を向くソファーシーン(1回目の回想後)

・ラスト付近のお姫様抱っこ時の顔アップ(頬に赤み、横溝重悟とのシーンも含む)

 

松田陣平&萩原研二関連

・2人で笑ってる/電話シーン

・回想シーンでの会話カット(複数あり)

その他

・宮本由美&三池苗子(ミニパトで「もちろん!」と答えるシーン)

・江戸川コナン(ラストシーンでヘリコプター内で「江戸川コナン、探偵さ」と言うシーン)

 

 

過去の劇場版シリーズのオマージュ要素


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最近の劇場版シリーズは、過去の劇場版シリーズのオマージュ要素が作品に含まれている。

第25作の『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』から初期の劇場版のオマージュが順番に展開されている。『ハロウィンの花嫁』では爆弾魔や爆弾の赤色と青色の液体が劇場版第1作『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』のオマージュになっている。

 


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第26作の『名探偵コナン 黒鉄の魚影』では第2作の『名探偵コナン 14番目の標的』のオマージュが散りばめられている。海中施設が舞台、人工呼吸シーンなどのオマージュシーンが散りばめられている。また、哀ちゃんとコナン・少年探偵団との関係性を描いているところだと『名探偵コナン 天国へのカウントダウン』を彷彿とさせる。そして第27作『100万ドルの五稜星』は、怪盗キッドと服部平次が初めて映画に登場した第3作『名探偵コナン 世紀末の魔術師』のオマージュだろう。

今回の『名探偵コナン 隻眼の残像』のオマージュ要素というと第4作『名探偵コナン 瞳の中の暗殺者』のオマージュがちりばめられている。犯人を目撃しつつも記憶をなくしてしまい、犯人から命を狙われるというプロットはどちらにも共通している。

この順番で行くと、『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』には第5作『名探偵コナン 天国へのカウントダウン』のオマージュ要素が含まれることになる。

ルシファーに乗った千速さんがバイクごとヘリに飛び移るアクションは『天国へのカウントダウン』のビル間ジャンプを彷彿とさせた。
ルシファーのバイク爆弾が速度低下で起爆する仕組み は『時計じかけの摩天楼』の電車が一定速度以下で爆発するシステムを彷彿とさせる。
 

 

『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』に関連する回・劇場版

劇場版『名探偵コナンハイウェイの堕天使』と関連する劇場版やTVシリーズ回も紹介しておく。AmazonPrimeやNetflixで見ることができる。

 

304話『揺れる警視庁 1200万人の人質』


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映画にも登場した警察学校組の萩原研二松田陣平が殉職してしまった原因の爆発事件を描いた304話『揺れる警視庁』は見ておいた方がいいだろう。

揺れる警視庁』は「名探偵コナン」の中でも、非常に人気の高いエピソードだ。爆弾犯によって仕掛けられた爆弾の解体中に爆発に巻き込まれて死亡してしまった親友・萩原研二の仇を討つため、連続爆弾犯を追っていた松田陣平。しかし、そんな松田も同じ連続爆弾犯の仕掛けた爆弾解体中に、人質にされた都民の命と引き換えに殉職してしまう。そんな連続爆弾犯にコナンが挑む。『ハロウィンの花嫁』でもこの連続爆弾犯は登場している。

 

 

名探偵コナン ハロウィンの花嫁

ハロウィンシーズンで賑わう東京渋谷。渋谷ヒカリエでとある結婚式が執り行われていた。そこには、ウェディングドレスに身を包んだ警視庁・佐藤刑事の花嫁姿。コナン達招待客が見守る中、突然乱入してきた暴漢が襲い掛かり、守ろうとした高木刑事の身に危機が―!? 事態は収束し高木は無事だったが、佐藤の瞳には、3年前の連続爆破事件で、想いを寄せていた松田刑事が殉職してしまった際に見えた死神のイメージが、高木に重なって見えていた。時を同じくして、その連続爆破事件の犯人が脱獄。果たしてこれは偶然なのか?

警察学校組が登場する『ハロウィンの花嫁』も外せないだろう。『ハロウィンの花嫁』はハロウィンシーズンの渋谷が舞台。結婚式場で爆破事件の犯人が脱獄し、公安警察の降谷零(安室透)に首輪爆弾が装着される。コナンは、降谷や今は亡き警察学校時代の同期たち(松田陣平ら)が関わった3年前の事件と、現在の連続爆破事件の関連を探る。

 

 

脚本はミステリ作家の大倉崇裕

劇場版名探偵コナンの脚本だが、最近では大倉崇裕櫻井武晴が交代で務めている。

第17作『絶海の探偵』で櫻井武晴が初めて参加し、2017年の第21作『から紅の恋歌』で大倉崇裕が初めて参加して以降 、劇場版コナンは主にこの二人によって脚本が担われる時代へと移行した。第21作の『から紅の恋歌』以降、櫻井氏と大倉氏がほぼ交互に脚本を担当するという明確なパターンが確立されている。

具体的にみてみると、大倉崇裕が脚本を担当したのは、第21作『から紅の恋歌』、 第23作『紺青の拳』、第25作『ハロウィンの花嫁』、第 27作『100万ドルの五稜星』だ。一方で、櫻井武晴が脚本を担当したのは、第17作『絶海の探偵』、 第19作『業火の向日葵』、 第20作『純黒の悪夢』、 第22作『ゼロの執行人』、第24作『緋色の弾丸』、第26作『黒鉄の魚影』、第28作『隻眼の残像』だ。
このパターン通り、『ハイウェイの堕天使』は大倉崇裕脚本作品になっていた。

また、大倉崇裕櫻井武晴で作風の傾向が異なっている。例えば、安室透赤井秀一、黒ずくめの組織といった公安・FBI関連のキャラクターや名探偵コナンの本筋に関連する内容が中心となる場合は櫻井武晴が、服部平次と遠山和葉、あるいは佐藤美和子と高木渉といった恋愛模様が絡むサブキャラクターが中心となる場合は大倉崇裕が起用される傾向が見られる。それぞれの脚本家の得意分野が活かされているのだろう。

特に大倉崇裕の脚本に着目してみると、人物間の関係性に深く焦点を当てることを特徴とする。特に、特定のキャラクターペア(『から紅の恋歌』の服部平次と遠山和葉、『紺青の拳』の怪盗キッドと鈴木園子・京極真、『ハロウィンの花嫁』の佐藤美和子と高木渉および警察学校組、『100万ドルの五稜星』の平次と和葉、キッド)の関係性や恋愛模様を中心に物語を構築することが多い 。大倉崇裕の脚本ではキャラクターの背景や感情の機微を丁寧に描き出し、時には原作で断片的にしか描かれていない部分を補完することもある。

 

 

2027年の次回作も期待大

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ハイウェイの堕天使』の上映後に公開された予告の内容についても紹介したい。

ビッグベンをバックに、鐘の音が響くシーンが始まり、工藤新一と毛利蘭のセリフが聞こえる。

 

蘭:「あんた、探偵でしょ、探偵なら私の心くらい推理しなさいよ!バカー!」

新一:「おい、ちょっと待てよ蘭!蘭!蘭?」

 

このやり取りは、原作71,72巻「ホームズの黙示録」(アニメ第621話など)のロンドン編で、新一が蘭に告白する有名シーンの一部を直接使用したものだ。

予告を見てみると、2027年劇場版名探偵コナンは新一と蘭を主軸にしたロンドン舞台の物語になりそうだ。舞台がロンドンになるというのは『ベイカー街の亡霊』のオマージュとも言えそうだ。
30周年記念作として二人の関係が進展する内容や「ホームズの黙示録」のリメイク・後日談的なオリジナルストーリーになると面白いなと思う。今から公開が待ち遠しい。公開は例年通り、2027年のGW頃になるとのこと。今から公開が楽しみだ。

 

 

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2026年本屋大賞ノミネート作品を紹介する

今年も本屋大賞のノミネート作品が発表された。

本屋大賞は、芥川賞・直木賞と並ぶくらい話題を集める文学賞だ。

 

本屋大賞ノミネート作品が2月6日に発表された。この記事では2026年の本屋大賞にノミネートされた作品を紹介したい。

 

 

本屋大賞とは?

カフネ

カフネ

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本屋大賞は、書店員が「いちばん売りたい本」「いちばん読んでほしい本」を投票によって決める文学賞だ。書店員が「面白い!」と心底思った本を広げたいという気持ちから2004年に創設された。対象作品は過去一年間に日本国内で刊行された書籍だ。

毎年多くの書店員が参加し、全国の書店から推薦された作品の中からノミネート作品が選ばれる。2025年で本屋大賞は第22回目を迎えた。

本屋大賞を受賞した作品は映像化されることが多く、芥川賞・直木賞と並んで注目度の高い賞だ。2025年の本屋大賞は阿部暁子の『カフネ』が受賞している。

 

 

2026年本屋大賞の対象作品

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2026年の本屋大賞だが、2024年12月1日〜2025年11月30日の間に刊行された日本の小説が対象である。投票の方法は下記の通りである。

 

(1) 一次投票で一人3作品を選んで投票
(2) 一次投票の集計結果、上位10作品をノミネート本として発表
(3) 二次投票はノミネート作品をすべて読んだ上で、
      全作品に感想コメントを書き、ベスト3に順位をつけて投票。
(4) 二次投票の集計結果により大賞作品を決定
投票の得点換算は、1位=3点、2位=2点、3位=1.5点

 

ノミネート作品は2026年2月6日に発表されたのだが、そこから2次投票があって4月6日に本屋大賞受賞作品が発表される。

 

 

2026年本屋大賞ノミネート作品を紹介

2024年12月1日〜2025年11月30日の間に刊行された小説の中で、本屋大賞にノミネートされそうな作品を選出してみた。どのくらい予想が当たるのだろうか。

 

 

暁星 / 湊 かなえ

暁星

暁星

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現役の文部科学大臣で文壇の大御所作家でもある清水義之が全国高校生総合文化祭の式典の最中、舞台袖から飛び出してきた男に刺されて死亡する事件がおきた。逮捕された男の名前は永瀬暁、37歳。永瀬は逮捕されたのち、週刊誌に手記を発表しはじめる。そこには、清水が深く関わっているとされる新興宗教に対する恨みが綴られていた。また、式典に出席していた作家は、永瀬の事件を小説として描く。ノンフィクションとフィクション、ふたつの物語が合わさったとき見える景色とは!?

湊かなえの『暁星』は、宗教二世の苦悩を描いた深い物語である。物語は、現役の文部科学大臣が刺殺され、その容疑者である永瀬暁の手記から始まる。彼の母親が新興宗教に傾倒し、家庭が崩壊していく様子が描かれ、読者は彼の内面に迫ることになる。手記は怒りに満ち、許しを求める姿勢は見られず、まるでノンフィクションのような生々しさを持つ。

物語は、永瀬の過去と彼を取り巻く人々の視点を交差させながら進行する。特に、文壇の作家である女性が登場し、彼の幼少期を再構築することで、物語はフィクションの装いをまとい、読者に新たな視点を提供する。湊は、実在の事件を背景にしつつ、宗教二世の問題を深く掘り下げ、現実との境界を曖昧にすることで、読者に強いメッセージを伝えている。

『暁星』は、ただのミステリーにとどまらず、愛や赦し、そして人間の複雑な感情を描いた作品であり、読後には一筋の光が差し込むような希望を感じさせる。

 

 

 

ありか / 瀬尾まいこ

ありか

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母親との関係に悩みながらも、一人娘のひかりを慈しみ育てる、シングルマザーの美空。
義弟で同性のことが好きな颯斗は、兄と美空が離婚した後も、何かと二人の世話を焼こうとするがーー。

瀬尾まいこの『ありか』は、シングルマザーの美空とその5歳の娘・ひかりの物語である。美空は、離婚後、工場でパートとして働きながら、娘との日々を懸命に支えている。毎週水曜日には、元夫の弟である颯斗が訪れ、二人の生活を助けてくれる。颯斗は、ひかりを愛し、無償の優しさで美空を支える存在だ。

物語は、美空が母親との複雑な関係を見つめ直しながら、周囲の人々との絆を深めていく様子を描いている。彼女は、日常の中で小さな幸せを見つけ、時には苦悩しながらも成長していく。瀬尾まいこは、家族の形や愛情の本質を優しく掘り下げ、読者に共感を呼び起こす。

本作は、心にじんわりと響くヒューマンドラマであり、忙しい子育て中の方にもぜひ読んでほしい一冊である。美空とひかりの絆を通じて、愛の大切さを再認識させてくれる作品だ。

 

 

イン・ザ・メガチャーチ / 朝井 リョウ

沈みゆく列島で、“界隈”は沸騰する――。あるアイドルグループの運営に参画することになった、家族と離れて暮らす男。内向的で繊細な気質ゆえ積み重なる心労を癒やしたい大学生。仲間と楽しく舞台俳優を応援していたが、とある報道で状況が一変する女。ファンダム経済を仕掛ける側、のめり込む側、かつてのめり込んでいた側――世代も立場も異なる3つの視点から、人の心を動かす“物語”の功罪を炙り出す。

朝井リョウの作家生活15周年記念作品『イン・ザ・メガチャーチ』は、現代日本の「ファンダム経済」と「推し活」文化を題材に、人間の信仰、集団心理、そして「物語」が持つ功罪を鋭く描き出した社会派エンターテイメント小説だ。本作は、週末に2,000人以上が集う大規模なプロテスタント教会を指す「メガチャーチ」をメタファーとして用い、熱狂的なファンコミュニティが形成する巨大な経済圏と、そこに渦巻く人々の依存や熱狂を宗教的な共同体になぞらえて表現する。

物語は、アイドル運営の「仕掛ける側」、それに心酔していく「のめり込む側」、そしてかつて熱心なファンだった「かつてのめり込んでいた側」という三者の視点から多角的に描かれ、現象を単純に肯定も否定もせず、その構造的な問題を立体的に浮かび上がらせる。『正欲』や『生殖記』で現代社会の価値観を揺さぶってきた朝井リョウが、本作では「神がいないこの国で人を操るには“物語”を使うのが一番いい」というテーマを軸に、事実と解釈、連帯と暴走、幸福と中毒といった二項対立をスリリングに描き、読者に強烈な問いを投げかける。発売直後から各種メディアで絶賛され、第9回未来屋小説大賞を受賞するなど話題を集めている。

 

 

失われた貌 / 櫻田 智也

山奥で、顔を潰され、歯を抜かれ、手首から先を切り落とされた死体が発見された。不審者の目撃情報があるにもかかわらず、警察の対応が不十分だという投書がなされた直後、上層部がピリピリしている最中の出来事だった。事件報道後、生活安全課に一人の小学生男子が訪れ、死体は「自分のお父さんかもしれない」と言う。彼の父親は十年前に失踪し、失踪宣告を受けていた。間を置かず新たな殺人事件の発生が判明し、それを切っ掛けに最初の死体の身元も判明。それは、男の子の父親ではなかった。顔を潰された死体は前科のある探偵で、依頼人の弱みを握っては脅迫を繰り返し、恨みを買っていた男だった。

櫻田智也の『失われた貌』もノミネートされそうじゃないかなと思う。『失われた貌』は年末のミステリランキングで三冠を達成した名作である。櫻田智也は、2025年8月20日に初の長編小説『失われた貌』を発表した作家である。彼は、短編ミステリ『蟬かえる』で日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞を受賞し、注目を集めてきた。『失われた貌』は、彼のキャリアにおける新たな挑戦であり、警察小説という形でハードボイルドな要素を取り入れた作品だ。

物語は、山奥で発見された顔のない死体から始まる。この死体は、十年前に失踪した父親の可能性を持つ小学生が登場し、事件は過去と現在が交錯する複雑な展開を見せる。櫻田は、緻密に張り巡らされた伏線と、意外な真相を用意し、読者を引き込む手法を駆使している。

『失われた貌』は、櫻田の独自の視点とスタイルが光る作品であり、ミステリーファンにとって見逃せない一冊である。

 

 

殺し屋の営業術 / 野宮 有

営業成績第1位、契約成立のためには手段を選ばない、凄腕営業マン・鳥井。アポイント先で刺殺体を発見し、自身も背後から襲われ意識を失ってしまう。鳥井を襲ったのは、「ビジネス」として家主の殺害を請け負っていた「殺し屋」だった。目撃者となってしまった鳥井は、口封じとして消されそうになる。絶体絶命の状況の中で、鳥井は殺し屋相手に「ここで私を殺したら、あなたは必ず後悔します」と語り出す。

野宮有殺し屋の営業術』は、敏腕営業マンが殺し屋の世界で生き残りをかける異色のミステリ作品だ。2025年の江戸川乱歩賞を受賞した作品である。

主人公は、どんな会社でもトップセールスを誇りながら心に空虚さを抱える営業マン、鳥井一樹。ある日、彼はアポイント先で殺し屋の犯行現場に遭遇し、口封じのため命を狙われる。絶体絶命の状況で、鳥井は培った営業スキルを駆使し、「ここで私を殺したら、あなたは必ず後悔する」と殺し屋に商談を持ちかける。

こうして鳥井は、殺人請負会社の“営業マン”として、2週間で2億円という常軌を逸したノルマを課せられることになる。命がけの裏社会で営業手腕を発揮し、水を得た魚のように生き生きと輝く彼の姿は痛快であり、恐ろしくもある。先が読めない展開と独特な設定が選考委員からも高く評価された、まさに「言葉」を武器にした極上のエンターテイメント作品だ。

 

 

さよならジャバウォック / 伊坂 幸太郎

結婚直後の妊娠と夫の転勤。その頃から夫は別人のように冷たくなった。彼からの暴言にも耐え、息子を育ててきたが、ついに暴力をふるわれた。そして今、自宅マンションの浴室で夫が倒れている。夫は死んだ、死んでいる。私が殺したのだ。もうそろそろ息子の翔が幼稚園から帰ってくるというのに…。途方に暮れていたところ、2週間前に近所でばったり会った大学時代のサークルの後輩・桂凍朗が訪ねてきた。「量子さん、問題が起きていますよね? 中に入れてください」と。

伊坂幸太郎の『さよならジャバウォック』は、伊坂幸太郎デビュー25周年を記念して書き下ろされた長編ミステリーである。物語は、結婚直後の量子が夫の暴力に耐えかね、ついに夫を殺してしまうところから始まる。彼女は、大学時代の知人である桂の助けを借りて、夫の死体を隠すことになる。この過程で、量子は日常から逸脱した非日常的な体験をすることになる。

タイトルにある「ジャバウォック」は、ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』に登場する架空の怪物であり、物語の中で象徴的な存在として描かれている。読者は、量子の視点を通じて、彼女の内面的な葛藤や、非現実的な状況に直面する様子を体験することになる。

本屋大賞最多ノミネートの伊坂幸太郎。今回は本屋大賞受賞なるか。

 

 

熟柿 / 佐藤 正午

激しい雨の降る夜、眠る夫を乗せた車で老婆を撥ねたかおりは轢き逃げの罪に問われ、服役中に息子・拓を出産する。出所後息子に会いたいがあまり園児連れ去り事件を起こした彼女は、息子との接見を禁じられ、追われるように西へ西へと各地を流れてゆく。自らの罪を隠して生きる彼女にやがて、過去にまつわるある秘密が明かされる。

佐藤正午の『熟柿』は、雨の夜に起きたひき逃げ事件をきっかけに人生が激変する主人公・かおりの、およそ17年間にわたる流転の半生を描いた作品である。親戚の葬儀からの帰り道、泥酔した夫を乗せた車で老女を撥ねてしまうかおりは、罪を犯しながらも走り去り、後に逮捕され服役中に息子を出産する。その後も、我が子への想いが新たな問題を引き起こすなど、彼女は困難な運命に翻弄され続ける。

本作は、罪を犯した人間の責任と後悔、そして赦しを求める長い旅路を丁寧に追い、読者に深い読後感をもたらす。佐藤正午作品といえば『鳩の撃退法』のような複雑な構成が一つの魅力だが、『熟柿』では一人の女性の人生に寄り添うように時系列順に描かれた作品となっている。また、スルスルと読めてしまう佐藤正午の心地よい文体は健在だ。佐藤正午の代表作の一つと言っても良い作品ではと思う。

そのテーマは「熟した柿の実が自然に落ちるのを待つように、気長に時機が来るのを待つ」という「熟柿」の言葉が象徴している。純文学とエンターテイメントの中間のような作品だ。2016年から8年もの歳月をかけて連載され、第20回中央公論文芸賞を受賞した。

個人的には本屋大賞を受賞するんじゃないかなと思っているし、本屋大賞を受賞して欲しい。

 

 

探偵小石は恋しない / 森 バジル

小石探偵事務所の代表でミステリオタクの小石は、名探偵のように華麗に事件を解決する日を夢見ている。だが実際は9割9分が不倫や浮気の調査依頼で、推理案件の依頼は一向にこない。小石がそれでも調査をこなすのは、実はある理由から色恋調査が「病的に得意」だから。相変わらず色恋案件ばかり、かと思いきや、相談員の蓮杖と小石が意外な真相を目の当たりにする裏で、思いもよらない事件が進行していて──。

探偵小石は恋しない』は、森バジルによる本格ミステリ小説である。主人公の小石は、色恋案件に特化した探偵事務所の代表であり、恋愛に対してはアンチの立場を取る。しかし、彼女は不倫調査のエキスパートであり、色恋に関する調査を病的に得意としている。物語は、彼女が日常的にこなす色恋案件の裏で、思いもよらない重大事件に巻き込まれる様子を描いている。

本作は、松本清張賞を受賞した森バジルの最新作であり、発売直後からSNSでの話題を呼び、全国書店でベストセラーとなった。読者は、巧妙に仕掛けられた伏線や驚愕の展開に引き込まれ、何度も読み返したくなるような魅力を持っている。小石とその助手・蓮杖との掛け合いも楽しみの一つであり、ミステリファンにはたまらない作品となっている。

 

 

PRIZE / 村山 由佳

ライトノベルの新人賞でデビューした天羽カインは、3年後には初の一般小説を上梓、その作品で〈本屋大賞〉を受賞。以来、絶え間なくベストセラーを生み出し続け、ドラマ化・映画化作品も多数。誰もが認める大人気作家である。――しかし彼女には何としてでも手に入れたいものがあった。それは〈直木賞〉という栄誉。過去に数度、候補作入りするものの、選考委員からは辛口の選評が続いた。別居する夫には軽んじられ、まわりの編集者には「愛」が足りない。私の作品はこんなに素晴らしいのに。いったい何が足りないというの?

村山由佳の『PRIZEープライズー』は、直木賞受賞を渇望する人気作家を主人公に、出版業界の光と闇、作家の業、編集者との愛憎を描いた「業界震撼」の問題作である。実際に直木賞作家である村山由佳が描くリアリティは凄まじく、創作の現場にいる人間の心をえぐる。

「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2025」の小説部門1位を受賞している。本好き・書店員が多く購読する雑誌『ダ・ヴィンチ』での1位獲得は、本屋大賞ノミネートにつながってくるのではと思う。

 

 

本屋大賞ノミネート作品の予想結果は?

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別の記事で本屋大賞ノミネート予想をしていたのだが、結果は6/10が当たった結果だった。佐藤正午『熟柿』は確実にノミネートされると思っていたけど、まさか『ブレイクショットの軌跡』が外れるとは。

 

 

個人的な受賞予想

個人的な受賞予想だが、本屋大賞受賞予想だが佐藤正午の『熟柿』と予想。私も読んだのだが、小説の完成度がずば抜けていると思うし、これぞ「小説」といえる作品だ。ぜひ受賞してもっと佐藤正午が全国に知れ渡ってほしい。

 

 

本屋大賞受賞作品は2026年4月6日に発表予定

本屋大賞の受賞作品は2026年4月6日に発表予定だ。どの作品が受賞するのか非常に気になるところだ。

個人的には佐藤正午大先生の『熟柿』に受賞してほしいな。

 

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日本文学の文豪のおすすめ作品を紹介する

「文豪」と聞くと、なんだか難しそうで、古臭いイメージを持ってしまうかもしれない。しかし、その先入観で食わず嫌いをしてしまうのは、あまりにももったいない。

実は、文豪が描いているのは、現代の私たちがSNSで呟くような悩みや、ドラマで見るようなドロドロの人間関係、そして思わず膝を打つような鋭い人間観察そのものなのだ。

100年前も今も、どんだけ科学技術が発達したとしても、人間の本質は驚くほど変わっていない。

 

この記事では日本文学の文豪のおすすめ作品を紹介したい。

 

 

夏目漱石

夏目漱石は明治という激動の時代を生きた文豪である。東京帝国大学で英文学を修め、英国留学も経験した彼は、その知識と教養を背景に数々の傑作を生み出した。初期には痛快なユーモアと皮肉に満ちた『吾輩は猫である』や『坊っちゃん』で人気を博した。その後は、人間の底深いエゴイズムや孤独、心の多面性を深く凝視する作風へと変化し、『こころ』や『それから』といった作品で「個」の自由と責任を追求した。彼の作品は、明治の日本が直面した近代化の中での個人の葛藤を鮮やかに描き出し、現代にも通じる普遍的なテーマを扱っている。

 

こころ

「私」は、ある夏の日、海辺ではじめて「先生」に出合う。足繁く「先生」の家を訪れるようになった「私」には、「先生」の、すべてを諦らめたような生き方を解き明かしたいという気持が次第に強くなる…。友を死に追いやった「罪の意識」によって、ついには人間不信に至る近代知識人の心の暗部を描いた傑作。

夏目漱石は一筋縄ではいかない恋愛小説を数多く残した。『こころ』もそのような恋愛小説の1つだ。

『こころ』は「友情をとるか、恋愛をとるか」という普遍的なテーマを扱った作品だ。高校の国語の教科書に掲載されていたので、読んだことある人は多いはず。

先生と友人のKは一人の女性・静を巡って三角関係になる。「先生」は恋と友情との間で悩むのだが、最終的にはKを出し抜いて静との結婚を決めてしまう。叔父に裏切られた「先生」が、自分も親友の「K」を裏切ってお嬢さんをとってしまったことに苦悩する。

友情と恋愛の狭間で悩む先生の決断とKがとった行動は、自由に恋愛することの代償を突きつけてくる。先生の「しかし、しかし君、恋は罪悪ですよ。 わかっていますか?」という台詞は心に深く突き刺さる。

『こころ』は自分を過信し、他人を疑うことをやめられない知識人の自我のあり方を問うている。また、近代人の我執とそれに気づいた先生の苦悩の話でもある。

 

 

森鴎外

文学界の巨星、森鴎外は、単なる作家に留まらない多才な人物だ。彼は漢学、ドイツ語、医学に精通し、軍医総監や帝室博物館長といった要職も務めた。その深遠な知識と豊富な経験は、彼の文学作品に色濃く反映されている。

鴎外の作風は、史実や伝承を骨子としつつも、そこに独自の解釈や創作を加え、物語性を深める点に特徴がある。例えば『魚玄機』では、史伝を踏まえながらも、一人の才女が情愛に傾き破滅する様を、彼ならではの重厚かつ余韻のある筆致で描いている。時にその物語の展開が唐突だと評されることもあるが、鴎外は緻密な描写と高い知性に基づいた独自の美意識で、日本文学に大きな影響を与え続けているのだ。

 

 

舞姫

森鴎外の『舞姫』といえば、知識人(エリート)の挫折と苦悩を描いた名作だろう。

高校国語で勉強するので、大抵の人は読んだことがあるはずだ。

ドイツでエリスと恋に落ち、エリスに子どもを身篭らせるも、ついにはエリスを捨てて日本に帰国した豊太郎には賛否が分かれるだろう。いや、否定の方が圧倒的に多いか。

文学作品には女性の妊娠が鍵となる小説が数多く描かれている。文芸評論家の斎藤美奈子の言葉を借りれば「妊娠小説」だ。森鴎外の『舞姫』は日本の「妊娠小説」の系譜の祖と言えるような小説だ。

舞姫だが、ちくま文庫版をおすすめしたい。このちくま文庫の現代語訳版『舞姫』だが、現代語訳で書かれているので非常に読みやすい。文語体で書かれているが故に森鴎外「舞姫」に挫折してしまった人にも再入門としておすすめしたい。また、この文庫には森鴎外『舞姫』研究における革新的な論文が収録されている。その論文とは、前田愛の「BERLIN1888」だ。この論文は主人公豊太郎の心情とベルリンの街並みをリンクさせて読むという内容だ。文学作品に都市論の解釈コードを当てはめて読解するやり方だ。これがなかなか斬新なのである。

 

 

母の生き様の呪縛 / 『影に対して』 遠藤 周作

共通テストの問題文に使われて話題になっている小説が遠藤周作の『影に対して』だ。

遠藤周作は、文学史的には第三の新人に分類される作家で、キリスト教や信仰をテーマにした作品を多く発表している作家だ。特に代表作の『沈黙』では、17世紀の日本におけるキリスト教の迫害を描き、神の沈黙や信仰の葛藤をテーマにしている。

遠藤周作といえばキリスト教という印象があるかもしれないが(私がそうだった)、この『影に対して』では、宗教的なテーマは扱われず、「母と息子の関係」や「芸術の追求と現実の生活の両立」について描かれている。遠藤周作の自伝的な要素も含まれているように読める。

タイトルにあるように、(母の)影に対する主人公の葛藤が描かれた作品である。この記事では遠藤周作の『影に対して』の考察を書きたい。

 

 

2020年に発見された未発表小説

『影に対して』は、2020年に発見された遠藤周作の未発表小説である。が発見されたという事実は、まさにそのような文学的事件であった 。通常、未発表原稿は未完の断片や習作であるケースが多いと思うが、この「影に対して」は完成された作品である。本作の執筆時期は1963年(昭和38年)3月以降とされている。ちょうど、遠藤周作の代表作『沈黙』(1966年刊)の執筆前あたりの時期だ。

 

 

「父」と「母」、「生活」と「芸術」の対立

『影に対して』のテーマの一つが、「父」と「母」の対立である。これは単なる性格の不一致というレベルを超えて、人生に対するスタンスの二項対立として描かれている。何も起こらない平凡な生活を求める父と、平凡な生活よりも芸術を追求する母の生き方の違いと対立が印象的に描かれている。父は「生活」を、母は「芸術」を象徴するものとして描かれていると言っても良いだろう。
主人公は勝呂だ。勝呂の母はヴァイオリンを弾く人であった。芸術に対して厳しく、自分にも他人にも妥協を許さない。その潔癖さは家族との軋轢を生み出し、夫との溝を深めていく。
一方、父が象徴する「生活」とは、日々の糧を得て、社会の中で無難に立ち回る能力である。それは凡庸かもしれないが、強固な現実である。
物語の核心にあるのは、両親の離婚に際して、少年・勝呂が「父」を選んだという事実である。「なぜ母についていかなかったのか。」この後悔が勝呂の人生にくらい影となってついてまわる。
この選択こそが、勝呂にとっての原罪となる。この「裏切り」の記憶が、生涯消えることのない「影」となって彼を追尾する。彼は作家として成功はしないものの、小説の翻訳で生活を成り立たせている。不本意ながらも生活費を稼ぐ仕事で「生活」を確立すればするほど、勝呂は母が目指した「芸術」の高みから遠ざかっていくような感覚に苛まれるのである。

 

 

2026年の共通テストで出題

自分がこの作品を読むきっかけにもなったのだが、遠藤周作の『影に対して』は2026年の共通テストの国語の小説の問題文に使われた。自分も新聞に載った問題を解いたのだが、問題文の小説が良すぎて文庫本を買って読んだ次第だ。

遠藤周作は2026年で没後30周年だ。ちょうど2026年が遠藤周作没後30年にあたるので問題文に選ばれたのだろうか?問題作成者の粋な計らいなのではと思っている。過去にはセンター試験で小林秀雄没後30周年に当たる年に、評論分のところで小林秀雄が問題文で使われたこともあったしな。ちなみに小林秀雄が出題された時のセンター国語の平均点は絶望的に低かった。

 

第174回芥川龍之介賞の受賞作鳥山まこと『時の家』と畠山丑雄 『叫び』について紹介する

第174回芥川賞の受賞作が鳥山まこと『時の家』と畠山丑雄 『叫び』に決まった。

第174回芥川賞の候補作は下記の五作品だ。

 

久栖博季 「貝殻航路」(文學界12月号)
坂崎かおる「へび」(文學界10月号)
坂本湾「BOXBOXBOXBOX」(文藝冬季号)
鳥山まこと「時の家」(群像8月号)
畠山丑雄「叫び」(新潮12月号)

 

第174回芥川龍之介賞の候補作だが、5人中4人が初ノミネートだった。

芥川賞をざっくり簡単に説明すると、新人作家の純文学作品に与えられる文学賞だ。文学賞の中で一番有名な賞だろう。純文学というと定義が難しいのだけれど、芥川賞に限っていえば、「文學界」・「新潮」・「群像」・「すばる」・「文藝」の五大文芸誌に掲載された作品が候補の対象となる。候補の作品となる小説の長さは中編程度が多い。

この記事では芥川賞を受賞した作品、鳥山まこと『時の家』と畠山丑雄 『叫び』を紹介したい。

 

 

芥川賞とは?

まず、芥川賞について簡単に説明しよう。芥川賞とは、新人作家の純文学作品に与えられる文学賞だ。純文学における登竜門的な賞で、文学賞の中で一番知名度がある賞かもしれない。純文学界のM−1グランプリみたいなものだ。

純文学というと定義が難しいのだけれど、芥川賞に限っていえば、「文學界」・「新潮」・「群像」・「すばる」・「文藝」の五大文芸誌に掲載された作品が候補の対象となる。他の文芸誌に載った作品も候補になることがあるが非常にまれだ。

 


第174回芥川龍之介賞受賞作

それでは第174回芥川龍之介賞受賞作を紹介したい。

 


鳥山まこと「時の家」(群像 8月号)

時の家

時の家

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鳥山まことの『時の家』は、第47回野間文芸新人賞を受賞した作品である。芥川賞初候補作『時の家』は、そのタイトルの通り、「家」と「時間」を主人公に据えた異色の建築文学だ。
物語の焦点は、ある一軒の平屋そのものに当てられている。人間はその家の住人や設計者として登場するが、あくまで家を構成する要素の一部として扱われる。柱の籐巻、屋根の勾配、壁の石膏ボードといった建築的なディテールが、そこに刻まれた生活の痕跡や記憶とともに、緻密かつ静謐な筆致で記述される。過去の震災の記憶や、世代を超えて受け継がれる家の変遷を、人間中心主義を排した視点から描くことで、物質と記憶の深遠な関係性を浮かび上がらせた傑作である。

 


畠山丑雄「叫び」(新潮 12月号)

叫び

叫び

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畠山丑雄は、2015年に『地の底の記憶』で文藝賞を受賞してデビューした。約10年のキャリアを経て満を持しての芥川賞初候補となった『叫び』は、大阪・茨木市を舞台に、土地の記憶と個人の再生を描いた骨太な作品である。2025年に話題になった大阪万博がモチーフの作品である。
自暴自棄な生活を送る主人公・早野ひかるは、ある夜、鐘の音に導かれて生活保護受給者の男と出会う。早野はこの男を「先生」と呼び、彼から弥生時代の祭器である「銅鐸」作りや、茨木の歴史について学ぶことになる。1970年の大阪万博、そして来るべき2025年の大阪・関西万博。二つの万博と古代の銅鐸が、時空を超えて共鳴し合う中で、早野は自らの「叫び」を取り戻していく。戦後日本が抱える空虚さと、それに対する個人の祈りを、圧倒的な熱量で問う小説だ。

 

 

 

 

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東野圭吾の新刊・新作情報【2026年2月発売予定】

東野圭吾は、ガリレオシリーズ加賀恭一郎シリーズでお馴染みの大人気ミステリー作家だ。

東野圭吾は、ガリレオシリーズの『容疑者Xの献身』で直木賞を受賞している。『探偵ガリレオ』などガリレオシリーズは福山雅治主演でドラマ化され、かなり話題になった。他に有名な作品を列挙してみると『白夜行』とか『秘密』がある。映画化もよくされていて、『真夏の方程式』や『ラプラスの魔女』が公開されている。

そんな大人気作家・東野圭吾だが、著作の国内累計発行部数が1億部を突破した。国内累計発行部数は2023年時点で1億77,380部である。

また、東野圭吾作品の人気は国内にとどまらず、海外でも幅広く翻訳されている。現在は37の国と地域で出版中のようだ。その推定累計発行部数は約6800万部で、全世界の推定累計発行部数は1億6,800万部を超える。

 

この記事では東野圭吾の新作・新刊・文庫化情報を随時まとめていきたい。

 

 

【2026年2月】『殺人の門』新装版

 

『殺人の門』は、2003年に単行本が刊行され、2006年に文庫化された作品である。それから20年の時を経て、「新装版」としてリニューアルされる予定だ。上下巻としてリニューアルする。

本作のあらすじを簡単に振り返ろう。主人公・田島和幸は、歯科医の息子として裕福な家庭に育つが、幼馴染である倉持修という男の存在によって、人生の歯車をことごとく狂わされていく。家庭崩壊、いじめ、詐欺被害、結婚詐欺……和幸の不幸の背後には常に倉持の影がある。「いつかあいつを殺してやる」と殺意(殺人の門)を抱きながらも、倉持の巧みな話術と心理操作によって、和幸は彼への依存を深め、搾取され続ける。

 

まとめ

東野圭吾の新刊情報は随時更新予定だ。

 

 

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意外な作品もランクイン?2025年公開映画興行収入ランキング!

2025年の映画を振り返ると本当に話題作が多かった。『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』、『国宝』、『名探偵コナン 隻眼の残像』、『ズートピア2』など名作が多く公開された。2025年は豊作と言ってもいいんじゃないかな。

この記事では2025年に公開された映画を振り返り、興行収入ランキングを紹介したい。

 

 

2025年公開映画の興行収入ランキング

それでは興行収入ランキングを紹介したい。

 

1位:『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第1章』(387億円)


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映画が豊作だった2025年の中でも圧倒的な興行収入を稼ぎ出したのが、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第1章』だ。

2020年の『無限列車編』が打ち立てた404億円という不滅の金字塔に対し、本作は389億円という驚異的な数字で肉薄した。鬼滅凄すぎる…今のところ、歴代ランキングにおいて不動の1位・2位を鬼滅の刃が独占している。テレビシリーズ「柱稽古編」の終了から間髪入れずに公開された本作は、原作ファンの間で最も人気が高いエピソードの一つである「無限城編」の開幕を描いている。特にサブタイトルにある上弦の参・猗窩座(あかざ)との因縁の対決が見所の作品である。

 

 

2位:『国宝』(183億円)

2025年予想以上に大ヒットしたのが『国宝』だ。大ヒットしたものの、鬼滅が凄すぎて2位である。『国宝』の興行収入188.6億円という興行収入は、実写邦画としては『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』以来、実に22年ぶりに歴代記録を更新する快挙である。

吉田修一の小説を原作とする『国宝』は、歌舞伎界の御曹司と、極道の家に生まれながら歌舞伎の道に入った親友との、半世紀にわたる愛憎と芸への執念を描いた大河ドラマだ。主演に吉沢亮、共演に横浜流星という、現代の日本映画界を背負う俳優をキャスティングし、さらに渡辺謙ら重鎮が脇を固める布陣は、企画段階から高い注目を集めていたが、ここまで大ヒットするとは。 口コミでどんどん人気が広がっていった映画だなと思う。

 


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3位:『名探偵コナン 隻眼の残像』(146.6億円)

2025年の興行収入第3位は『名探偵コナン 隻眼の残像』だ。最近のコナン映画は毎年興行収入を更新してきている。もはや国民的定番シリーズとなっている。146.7億円という成績は、前作『100万ドルの五稜星』に次ぐシリーズ歴代2位の記録だ。最近では、もはや「コナン映画は100億円を超えて当たり前」という領域まで来ている。  

第28作目となる『隻眼の残像』では、長野県警の諸伏高明や大和敢助といった、原作でもコアな人気を誇る「長野県警組」にスポットが当たっている。雪山を舞台にしたド派手な爆発とアクション、過去と現在が交錯する重厚なストーリーが魅力的だった。スポットが当てられたキャラがマイナーなキャラということもあって、昨年よりは興行収入は落ちたかな。それでも100億越えはすごいのだけれど。『鬼滅の刃』と『国宝』がなければ1位だったな。

2026年公開予定の『ハイウェイの堕天使』にも期待大である。

 

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4位:『劇場版 チェンソーマン レゼ篇』(100億円)

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これが結構意外だったのだが、4位は『劇場版チェンソーマン レゼ編』である。テレビアニメシリーズの続編として制作された本作は、原作ファンの間でも屈指の人気エピソード「レゼ篇」を映像化した 。  

近い過激なバイオレンス描写や、退廃的でダークな世界観を持つ作品が、興収100億円というマスヒットを達成したのが意外だったなと。

 


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5位:『ズートピア2』(81.2億円)


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興行収入第5位はディズニー作品として久々の大ヒットを記録した『ズートピア2』だ。12月5日に公開されたばかりだが、またたく間に動員を伸ばし、公開からわずか数週間で興行収入80億越えを達成している。

前作の『ズートピア』から約10年ぶりの続編となる『ズートピア2』は、ウサギの警官ジュディとキツネのニックという名コンビの新たな冒険を描く。本作でも、先住民の迫害という重いテーマを、ユーモアとサスペンスあふれる極上のエンターテインメントに仕上げた手腕はさすがである。

あとは、ニックのキャラ人気も一役買っているのではと思う。

 

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6位:『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』(53億円)

第6位は人気シリーズの完結編『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』で、興行収入は52.7億円だ。言わずと知れたトム・クルーズ主演の人気スパイアクションシリーズである。長年シリーズを追ってきたファンが多いのかな。洋画実写が最近苦戦しているような印象があったけど、見事に50億円超えしている。さすが、トム・クルーズ。

 


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7位:『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜 南海ミッション』(52億円)

これも意外だったのだが、第7位は『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜南海ミッション』だ。鈴木亮平主演のテレビシリーズが元で、2023年の前作に続く劇場版第2弾である。本映画は私はみていない。テレビドラマからの映画化ってそんなに興行収入が高いイメージが無かったのだが、今作がここまで行くとは…

 


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8位:『8番出口』(51億円)

8番出口

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第8位は人気ゲームの実写化の『8番出口』だ。偶然にも『8番出口』が8位になる結果になった。川村元気が監督を務め、二宮和也が主演を演じた。

『8番出口』は、蛍光灯が灯る無機質な地下通路を舞台に、無限ループに迷い込んだ男が「異変を見逃さないこと」というルールに従い、8番出口からの脱出を目指す映画だ。

原作ゲームはストーリーを持たない「間違い探し」ゲームなのだが、映画版では主人公が抱える個人的な葛藤、特に恋人の妊娠という人生の「異変」と、地下通路で遭遇する数々の奇妙な出来事を巧みに重ね合わせているところが面白かった。公開時にみた時は、「よく『8番出口』で映画作れたな」と素直に感心してたな。

 

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9位:『ジュラシック・ワールド/復活の大地』(81.2億円)

第9位にはジュラシックシリーズの最新作『ジュラシック・ワールド/復活の大地』がランクイン。やっぱりジュラシックシリーズの人気は根強いな。最新作は賛否をよんだ『ジュラシック・ワールド 新なる支配者』の続きだ。今作はしっかりと恐竜にフォーカスしていたので、ちゃんと楽しめた。ラスボスについては意見が分かれそうだが…

 

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10位:映画ドラえもん のび太の絵世界物語(46億円)

興行収入第10位は『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』だ。こちらも人気のシリーズだな。本作はシリーズ45周年記念作品として、アートをテーマにした独創的な世界観となっていた。ドラえもん映画は春休みのファミリー映画としての定番だな。


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