日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

朝比奈秋「あなたの燃える左手で」と九段理江「しをかくうま」が第45回野間文芸新人賞を受賞した件について

三大純文学新人賞の一つである第45回野間文芸新人賞の受賞作が発表された。

受賞作は、朝比奈秋「あなたの燃える左手で」と九段理江「しをかくうま」の2作だ。

特に朝比奈秋は今回の受賞で新人賞三冠にリーチとなった。

この記事では第45回野間文芸新人賞の受賞作について」紹介したい。

続きを読む

没入感がすごい!物語世界に浸れるイマーシブな小説8選

最近、イマーシブというキーワードがエンタメを賑わせている。

イマーシブ(immersive)とは、没入感を意味する言葉で日本でも流行りつつある。

現実にいながら物語や芸術の世界に入り込むイマーシブエンタメが大流行中である。

日本だと、印象派やポスト印象派の絵画に入り込む体験ができる「イマーシブミュージアム」やイマーシブシアターなどがある。かわりどころだと、話題になった「友達がやってるカフェ」もある種のイマーシブ体験かもしれない。他にも「Syn : 身体感覚の新たな地平」などがある。また、没入型エンタメ施設として「イマーシブ・フォート東京」がお台場にオープンするという話もある。

エンタメではイマーシブが流行っているが、小説でもイマーシブ体験ができないかと考えてみた。小説の中でも、描写が凄すぎて没入感がすごい小説や異世界に浸れる小説をピックアップしてみたので紹介したい。

 

 

 

砂の女 / 安部 公房

砂穴の底に埋もれていく一軒家に故なく閉じ込められ、あらゆる方法で脱出を試みる男を描き、世界20数カ国語に翻訳紹介された名作。

没入感がすごいイマーシブな小説というと安部公房の『砂の女』が思い浮かぶ。
砂の女』は世界的な作家・安部公房の代表作である。とあるネットの掲示板では、日本文学の最高傑作ではないかと挙げられていた小説だ。その人気は日本に留まらず、20数ヶ国語に翻訳され世界中で読まれている。

ある集落に迷い込んだ男が、砂穴の底にある一軒家に理不尽にも閉じ込められてしまう。その砂の中の家には砂が落ちてきて、毎日毎日砂を書き出さないと砂に埋もれてしまうのだ。あらゆる脱出方法で脱出を試みる男と、男を穴に閉じ込めておこうとする女を描き、極限状況における人間の姿を描いた。

また、安部公房の文章力が素晴らしく、読んでいると自分がまるで砂の中にいるかのように思えてくるのである。安部公房の圧倒的な描写力が相まって、読者自身も砂の中に閉じ込められているかのような没入感が味わえる。砂の描写がうますぎて、体に砂が纏わりつくような感覚に襲われる。私も読んでいる時、体が砂でザラザラしているかのような錯覚に陥ったものだ。 

 

 

小隊 / 砂川 文次

 元自衛官の新鋭作家が、日本人のいまだ知らない「戦場」のリアルを描き切った衝撃作。 北海道にロシア軍が上陸、日本は第二次大戦後初の「地上戦」を経験することになった。自衛隊の3尉・安達は、自らの小隊を率い、静かに忍び寄ってくるロシア軍と対峙する。そして、ついに戦端が開かれた――。

砂川文次の「小隊」は自らも戦場にいるかのような体験ができる戦争小説だ。「小隊」では、北海道にロシア軍が上陸し、日本の自衛隊と衝突するという架空の戦争が描かれている。まるでロシアのウクライナ侵攻を予見していたような小説だ。

まず著者が自衛隊出身ということもあってか、小説のリアリティに圧倒される。専門用語が頻繁し、読んでいる自分も自衛隊として戦場にいるかのような錯覚を抱く。映画で例えたらクリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』のようだ。

軍事的なことは僕自身よく分からないのだけれど、「小隊」で描かれているロシアの攻め方はかなりリアリティがあるらしい。戦争が始まるぞ!みたいな開戦ではなく、静かに開戦していく様は妙にリアルである。ロシアのウクライナ侵攻が起こった今、この小説がものすごく現実味を帯びてくる。実際の戦争もこんな感じで始まるのか。

 

 

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド / 村上 春樹

高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。

村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は、大人向けの上質なファンタジー小説だ。ちょっと長いので全く本を読まない人にはハードルが高いかもしれないけれど、とにかく面白いので読んでみてほしい。

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は村上春樹の代表作の1つとして言われている。『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』というタイトルからしてワクワクしないだろうか?

この本を一言で表現すると、大人のための静謐なファンタジーだ。内容としては、「世界の終り」と「ハードボイルドワンダーランド」の二つの世界が交互に展開していき、最後には二つの世界がつながっていくという風になっている。「計算士」や「組織(システム)」、「記号士」、「工場(ファクトリー)」など謎めいた組織が暗躍していて、謎めいた組織は何なのが気になってページをめくる手が止まらなくなる。この作品は、読者を日常から離れた不可思議な世界に連れていってくれる。

 

 

旅のラゴス / 筒井 康隆

北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か? 異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。

筒井康隆の『旅のラゴス』は、高度な文明が失われ人々が超能力を得た世界で旅を続ける男の話だ。主人公のラゴスは不思議な体験を繰り返し、旅を続ける。文明が滅んだらこんな感じになるのかなという想像が膨らむ。また、読んでいると、人生は旅そのものなのかもしれないという気分になってくる。

この本を読んでいると、自分も異世界を旅しているような気分になれる。

 

 

 ブランケット・ブルームの星型乗車券 / 吉田 篤弘

ようこそ、毛布をかぶった寒がりの街「ブランケット・シティ」へ。待ち合わせは、ロビーしかない老舗ホテル「バビロン」で。日中は、「閑をもてあました消防隊」によるコンサートや影の絵画を展示する「冬の美術館」にお出掛け。夜は、本好きのための酒屋「グラスと本」で読書をしながらちょっと一杯。読むだけで旅した気分になる、架空の街の物語。

読むだけで架空の街を旅した気分になれるのが、吉田篤弘の『ブランケット・ブルームの星型乗車券』だ。

影を展示する冬の美術館など、ロマンチックなモチーフが登場する。挿絵もおしゃれで可愛い。この本こそが、不思議な世界への乗車券だ。異世界に浸る読書体験をぜひ。

 

 

ダブ(エ)ストン街道 / 浅暮 三文

あの、すみません。道をお尋ねしたいんですがダブ(エ)ストンって、どっちですか?実は恋人が迷い込んじゃって……。世界中の図書館で調べても、よく分からないんです。どうも謎の土地らしくて。彼女、ひどい夢遊病だから、早くなんとかしないと。え?この本に書いてある?!あ、申し遅れました、私、ケンといいます。後の詳しい事情は本を読んどいてください。それじゃ、サンキュ、グラッチェ、謝々。「今、行くよ、タニヤ!」

浅暮三文の『ダブ(エ)ストン街道』は、この記事で紹介した本の中で一番不可思議な小説かもしれない。

あらすじとしては、主人公がダブ(エ)ストンという奇妙な場所にたどり着いて、行方不明の彼女を探すという話だ。このダブ(エ)ストンが摩訶不思議なのだ。

この本の不可思議さを説明するのは難しい。ぜひ、この本を読んで、ダブ(エ)ストンに迷い込んでほしい。

 

 

大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇 / 前田 司郎

長い同棲を経て結婚した大木信義と咲は、占い師にのせられ久しぶりの旅に出る。小さな池を抜け、向かった先は一泊二日の地獄旅行。猫畑、巨大旅館、ビーフシチュー温泉、そして赤と青の地獄人。不思議な出来事ばかりの奇妙な旅路は、馴れ合いになった二人の意識を少しずつ変える―。異世界だから気づく大切なこと。笑えてなぜかせつない物語。

前田司郎の『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』は文字通り、新婚旅行で地獄に行くという話だ。

新婚旅行で地獄には行かないだろうという真っ当な疑問はさておいて、地獄に旅行する小説ってなかなかないんじゃないかなと思う。果たして地獄に行くのは楽しいのだろうか?

しかも地獄への出発地点は、五反田のビルの屋上。なかなかシュールだ。地獄に行ってみたい人は是非読んでほしい。

 

 

30センチの冒険 / 三崎 亜記

突然、男は「大地の秩序」が狂った世界に迷い込み……。奇妙な現象に苦しむ人々を救うため、30センチのものさしを手に立ち上がる!

三崎亜記は日常から少しずれた非日常を描くのが上手い作家だ。『30センチの冒険』では、主人公が遠近の概念が狂った世界に迷い込む。この世界では、目の前に見えるものが近くにあるとは限らず、屋外に出れば迷子になってしまう。三崎亜記ワールドが全開の一冊だ。

 

 

ノーベル文学賞を受賞したヨン・フォッセの日本語で読める作品は?

ヨン・フォッセ(Jon Fosse)というノルウェーの劇作家が2023年のノーベル文学賞を受賞した。

日本では知名度がないかもしれないが、ヨン・フォッセはノルウェーを代表する劇作家で、グローバルに大きな関心を集めている。ヨン・フォッセは、イプセンに続き最も頻繁に上演されるノルウェー人劇作家である。ミニマリズムを特徴とする演劇で国際的に高く評価されている。

イプセンの再来」や「21世紀のベケット」と呼ばれ、2023年のノーベル文学賞を受賞した。

この記事では、ヨーロッパ現代演劇を代表するヨン・フォッセの日本語で読める小説を紹介したいと思う。

 

 

 

ヨン・フォッセ (Jon Fosse)ってどんな作家?

まず、ヨン・フォッセについて紹介しよう。

ヨン・フォッセ (Jon Fosse)はノルウェーを代表する現代劇作家だ。ヨン・フォッセは小説「赤、黒」で作家デビューし、その後小説だけでなく戯曲も手掛けている。

ヨン・フォッセの戯曲は40以上の言語に翻訳されており、グローバルに大きな関心を集めている。ヨン・フォッセは、イプセンに続き最も頻繁に上演されるノルウェー人劇作家である。ミニマリズムを特徴とし、「間」をうまく使った戯曲は特徴的で世界中で評価されている。

前衛的な作風が特徴で、「イプセンの再来」や「21世紀のベケット」とも呼ばれる。

 

 

日本語訳で読めるヨン・フォッセ作品は何?

舞台芸術〈05〉特集 劇場と社会

舞台芸術〈05〉特集 劇場と社会

Amazon

ノーベル文学賞を受賞したヨン・フォッセだが、残念なことに日本語訳されている作品はほとんど出版されていない。

戯曲だと、『だれか、来る』『名前』『眠れ、よい子よ』『ある夏の一日』、『死のヴァリエーション』、『スザンナ』といった作品が上演されているのだけれど。

かろうじて日本語に翻訳されているのが、戯曲『だれか、来る』だ。世間から逃れてきた男女が海沿いの家に辿りつくのだが、二人の元に若い男がやってくるという話だ。

ヨン・フォッセ作品単体で出版されているわけではなく、「舞台芸術〈05〉」という本の中に翻訳が収録されている。この本では、ヨン・フォッセについてのちょっとした特集が組まれている。ヨン・フォッセのエッセイも収録されているので、気になる人は読んでみてほしい。

 

あと、作品ではないが、『北欧の舞台芸術』という本にはヨン・フォッセのインタビューが掲載されている。

残念ながら、日本語でヨン・フォッセ作品を読もうとすれば「舞台芸術」を買うしか無いようだ。しかも残念なことに、この書籍は絶版になっているようで、購入するとすれば古本を探すしか無いのである。

ヨン・フォッセがノーベル文学賞を受賞したということで、これから日本語訳が増えてほしいところだ。白水社さん、翻訳戯曲集の日本語訳お願いします。

 

 

英語で読めるヨン・フォッセ作品を紹介

日本語では翻訳が出回っていないヨン・フォッセ作品だが、英語訳は多く出回っている。

特に戯曲は、「Plays One」、「 Plays Two」といった形で戯曲集が販売されている。流石にノルウェー語の原著を読むのはしんどいと思うので、一旦は英語で読んでみるのはどうだろうか。

日本で演じられた作品を中心に紹介したい。

 

だれか、来る (Someone Is Going to Come)

舞台は、海に面した入り江にたった一軒たたずむ古い屋敷。世間から逃れてきた男女がそこにたどり着く。二人は完全に二人だけの世界を求めてやってきたのだが、常に「だれか、来る」ことの不安に怯えている。そんな二人の元に若い男が登場するのだが…。

 

 

ある夏の一日 (A Summer's Day)

 

 

死のヴァリエーション (Death Variations)

死のヴァリエーション」も日本で上演された作品だ。離婚して年月のたったある時、「年をとった男」のところに前妻の「年をとった女」が訪ねてくる。「年をとった女」は、娘の死を知らせに来たのだ。二人の会話から、結婚し娘が生まれた頃から、娘の成長や二人の離婚など、今までの人生が時系列が交錯する形で描かれる。

 

スザンナ (Suzannah)

「スザンナ」は、イプセンの妻を描いた抽象的な戯曲だ。日本でも戯曲が上演されている。

 

 

関連記事

plutocharon.hatenablog.com

ヨン・フォッセについてはこちらの記事でより詳細に紹介している。気になる人は是非読んでみてほしい。

圧倒的レンガ!鈍器すぎる分厚い小説15選(文庫編)

鈍器本という言葉をご存知だろうか?凶器として使えそうなぐらい分厚い本は鈍器本と言われている。ハードカバーの本に分厚い本が多いイメージがあるかもしれないが、文庫本にも分厚い本がある。

この記事では、特に文庫本の中で特に分厚い小説を集めてみた。特に、京極夏彦などの小説が多いが、超重量級文庫を紹介する。

 

 

 

魍魎の匣 / 京極 夏彦

箱を祀る奇妙な霊能者。箱詰めにされた少女達の四肢。そして巨大な箱型の建物――箱を巡る虚妄が美少女転落事件とバラバラ殺人を結ぶ。探偵・榎木津、文士・関口、刑事・木場らがみな事件に関わり京極堂の元へ。果たして憑物(つきもの)は落とせるのか!?日本推理作家協会賞に輝いた超絶ミステリ、妖怪シリーズ第2弾。

ページ数:1060

まず紹介したいのは、京極夏彦の『魍魎の匣』だ。分厚すぎる鈍器本といえば京極夏彦を思い浮かべる人が多いだろう。本屋に行って講談社文庫の京極夏彦の棚の見てもらったら一目同然だが、京極夏彦の文庫本はとにかく分厚い。それはまるでレンガのよう。なんとページ数は1060ページ。

『魍魎の匣』は京極夏彦の人気シリーズの妖怪シリーズの第二弾だ。怪奇・幻想的な要素と歴史的な背景を巧みに組み合わせており、京極夏彦の独特な文体が特徴である。

 

 

虚実妖怪百物語 序破急 / 京極 夏彦

京極史上最長!計1900枚の超大作が一冊に。京極版"妖怪大戦争"!日本各地に妖怪が現れ始める。背後には、古今東西の魔術を極めた魔人・加藤保憲の影が……。妖怪撲滅に動き出す政府。“妖怪狩り”を始める民衆。虚構と現実が入り混じり、荒んだ空気が蔓延する中、榎木津平太郎、荒俣宏、京極夏彦らは原因究明に乗り出した。

ページ数:1392

次に紹介するのも京極夏彦の作品だ。『虚実妖怪百物語 序/破/急』はページ数1392ページを超える超鈍器本だ。内容としては、京極版"妖怪大戦争"と言えるような内容で、日本各地に妖怪が現れ始め虚構と現実が入り混じっていくというような内容だ。面白いことに小説本編に作者の京極夏彦が登場する。

 

 

絡新婦の理 / 京極 夏彦

房総の富豪、織作(おりさく)家創設の女学校に拠(よ)る美貌の堕天使と、血塗られた鑿(のみ)をふるう目潰し魔。連続殺人は八方に張り巡らせた蜘蛛の巣となって刑事・木場らを眩惑し、搦め捕る。中心に陣取るのは誰か?シリーズ第5弾。

ページ数:1408

またまた京極夏彦の作品を紹介する。やはり、鈍器本といえば京極夏彦抜きで語ることができない。『絡新婦の理』は、『魍魎の匣』と同じシリーズの第5弾の作品だ。
ページ数は1408ページだ。ここまで来るとページ数が1000超えるのがデフォルトになっている。

 

 

匣の中の失落 / 竹本 健治

推理小説マニアの大学生・曳間が、密室で殺害された。しかも仲間が書いている小説の予言通りに。現実と虚構の狭間に出現する5つの《さかさまの密室》とは? '78年、弱冠22歳の青年によって書かれたこの処女作は「新本格の原点」、「第4の奇書」と呼ばれる伝説の書となった。

ページ数:832

このまま行くと、分厚い小説ではなく、京極夏彦の小説紹介になってしまうので別の作家を紹介する。

匣の中の失楽』は、竹本健治による推理小説で、ミステリ史に残る問題作だ。この小説は竹本のデビュー作である。『匣の中の失落』は、探偵小説でありながら探偵小説を否定する、アンチ・ミステリという体裁をとっている。小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』、夢野久作の『ドグラ・マグラ』、中井英夫の『虚無への供物』といった、いわゆる三大奇書に強い影響を受けており作品となっている。これら三大奇書に『匣の中の失楽』を加えて四大奇書と呼ばれている。

物語は、推理小説マニアの大学生・曳間了が密室で殺害されるところから始まる。しかも、仲間が書いている小説の予言通りに。章ごとに虚実が反転するというメタフィクション的な構成になっており、読者は虚構と現実に挟まれる酩酊感を味わうことができる。

 

 

白夜行 / 東野 圭吾

1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々と浮かぶが、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と「容疑者」の娘・西本雪穂――暗い目をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別の道を歩んでいく。二人の周囲に見え隠れする、いくつもの恐るべき犯罪。だが、証拠は何もない。そして19年……。

ページ数:827

白夜行』は、東野圭吾の代表作とも言えるミステリ小説だ。犯罪に関わった少年と少女の人生と犯罪を圧倒的な描写力で描いた名作だ。映画化もされている。

ページ数は827ページだ。鈍器さゆえに、この本自体が殺人事件の凶器になるかもしれない。

 

 

幻夜 / 東野 圭吾

1995年、阪神淡路大震災。その混乱のまっただ中で、衝動的に殺人を犯してしまった男。それを目撃していた女。二人は手を組み、東京に出ていく。女は、野心を実現するためには手段を選ばない。男は、女を深く愛するがゆえに、彼女の指示のまま、悪事に手を染めていく。やがて成功を極めた女の、思いもかけない真の姿が浮かびあがってくる。彼女はいったい何者なのか――謎が謎を呼び、伏線に伏線が絡む。驚愕のラストシーンまで一気呵成の読みごたえ

ページ数:792

『白夜行』と並ぶぐらい分厚い東野圭吾作品が『幻夜』だ。二人の男女が犯罪に手を染めつつも、自らの野心に従って生きていく様を描いたミステリ作品だ。

 

 

5 / 佐藤 正午

本当の愛を探し求める孤独な魂たちへ。新感覚の大人の恋愛小説。結婚8年目の記念にバリ島を訪れた志郎と真智子。旅行中に起こったある出来事がきっかけで、志郎の中に埋もれていたかつての愛の記憶が蘇る。洗練された筆致で交錯した人間模様を描く、会心の恋愛小説。

ページ数:672

日本の小説家の中でトップクラスに小説巧者なのが佐藤正午だ。知名度は低いかもしれないが、小説の面白さは抜群だ。佐藤正午作品の中でも特に分厚いのが『』という恋愛小説だ。

 

 

有限と微小のパン / 森 博嗣

日本最大のソフトメーカが経営するテーマパークを訪れた西之園萌絵と友人・牧野洋子、反町愛。パークでは過去に「シードラゴンの事件」と呼ばれる死体消失事件があったという。萌絵たちを待ち受ける新たな事件、そして謎。核心に存在する、偉大な知性の正体は……。S&Mシリーズの金字塔となる傑作長編。

ページ数:743

『すべてがFになる』で有名な森博嗣も鈍器本を発表している。森博嗣作品の中でずば抜けて分厚いのが『有限と微小のパン』だ。

森博嗣の大人気シリーズS&Mシリーズの作品でもある。テーマパークを舞台に事件が起こっていくというような内容だ。

 

 

細雪 / 谷崎 潤一郎

『細雪』(ささめゆき)は、谷崎潤一郎の長編小説。1936年(昭和11年)秋から1941年(昭和16年)春までの大阪の旧家を舞台に、4姉妹の日常生活の悲喜こもごもを綴った作品。阪神間モダニズム時代の阪神間の生活文化を描いた作品としても知られ、全編の会話が船場言葉で書かれている。

ページ数:936

現代作家だけではなく、昔の文豪も鈍器本を発表している。『細雪』は、文豪・谷崎潤一郎の代表作だ。阪神間モダニズム時代の阪神間の生活文化を描いた作品でもあり、会話文は船場言葉で書かれている。

 

夜光虫 / 馳 星周

プロ野球界のヒーロー加倉昭彦は栄光に彩られた人生を送るはずだった。しかし、肩の故障が彼を襲う。引退、事業の失敗、莫大な借金……諦めきれない加倉は台湾に渡り、八百長野球に手を染めた。

ページ数:816

夜光虫』は816ページにわたる鈍器的ハードボイルドだ。

 

 

アポトス / 島田 荘司

虚栄の都・ハリウッドに血でただれた顔の「怪物」が出没する。ホラー作家が首を切断され、嬰児が次々と誘拐される事件の真相は何か。女優・松崎レオナの主演映画『サロメ』の撮影が行われる死海の「塩の宮殿」でも惨劇は繰り返された。甦る吸血鬼の恐怖に御手洗潔が立ち向かう。渾身のミステリー巨編が新たな地平を開く。

ページ数:908

アポトス』は、日本を代表するミステリ作家島田荘司の鈍器的ミステリだ。

 

 

哲学者の密室 / 笠井 潔

開口部を完璧に閉ざされたダッソー家で、厳重に施錠され、監視下にあった部屋で滞在客の死体が発見される。現場に遺されていたナチス親衛隊の短剣と死体の謎を追ううちに30年前の三重密室殺人事件が浮かび上がる。現象学的本質直感によって密室ばかりか、その背後の「死の哲学」の謎をも解き明かしていく矢吹駆。

ページ数:1182

哲学者の密室』は、笠井潔によるミステリ小説だ。1970年代のパリを舞台に、謎の日本人青年矢吹駆と大学生ナディア・モガールの活躍を描いた、連作ミステリーの第4作である。

本作は『週刊文春ミステリーベスト10』第二位(国内部門)に選ばれたことがある。

 

 

鍵の掛かった男 / 有栖川 有栖

中之島のホテルで梨田稔(69)が死んだ。警察は自殺と断定。だが同ホテルが定宿の作家・影浦浪子は疑問を持った。彼はスイートに5年住み周囲に愛され2億円預金があった。影浦は死の謎の解明を推理作家の有栖川有栖と友人の火村英生に依頼。が調査は難航。彼の人生は闇で鍵の掛かった状態だった。梨田とは誰か? 他殺なら犯人は? 驚愕の悲劇的結末!

ページ数:736

有栖川有栖も鈍器本を書いている。『鍵の掛かった男』は、悲劇的結末が特徴のミステリ小説だ。

 

 

大江健三郎自選短編 / 大江 健三郎

「奇妙な仕事」「飼育」「セヴンティーン」「「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち」など、デビュー作から中期の連作を経て後期まで、全二三篇を収録。作家自選のベスト版であると同時に、本書刊行にあたり全収録作品に加筆修訂をほどこした最終定本。性・政治・祈り・赦し・救済など、大江文学の主題が燦めく、ノーベル賞作家大江健三郎のエッセンス。

ページ数:848

大江健三郎自選短編』は、大江健三郎の短編・中編を集めたベストアルバム的な小説だ。

最近は村上春樹がノーベル賞を受賞するかで盛り上がっているが、大江健三郎は日本で2番目にノーベル文学賞を受賞した作家である。大江健三郎の名作が網羅されているのでファン必見の一冊だ。大江健三郎の入門書としても良いかもしれない。

 

 

天帝のはしたなき果実 / 古野 まほろ

勁草館高校の吹奏楽部に所属する古野まほろは、コンテストでの優勝を目指し日夜猛練習に励んでいた。そんな中、学園の謎を追っていた級友が斬首死体となって発見される。犯人は誰か?吹奏楽部のメンバーによる壮絶な推理合戦の幕が上がる!青春×SF×幻想の要素を盛り込んだ、最上かつ型破りな伝説の本格ミステリ小説が完全改稿され文庫化。

ページ数:765

天帝のはしたなき果実』は、古野まほろのデビュー作である。メフィスト賞を受賞した作品だ。新しい日本三大奇書があったら確実に入るのではないかと思う。

 

 

この記事では一冊で分厚い文庫本を紹介した。なので、綾辻行人の『暗黒館の殺人』のように分冊になっているものは省いている。読むのに時間はかかると思うが、ぜひ鈍器本を楽しんでみてほしい。

川端康成が中国で流行っている件について

 

「国境のトンネル」でお馴染みの作家といえば川端康成だ。

日本で初めてノーベル文学賞を受賞した作家であり、代表作の『雪国』や『伊豆の踊り子』は非常に有名だ。

川端康成だが、今中国でブームになっているらしい。数多くの川端康成の作品が中国語に翻訳されている。特に『雪国』は、20以上の中国語訳バージョンがあるようだ。最近ニュースでも、中国で川端康成の作品が流行しているというのを見かけるようになった。

この記事では、中国で川端康成が流行っている理由について書こうと思う。

 

 

 

中国で広がる「川端康成ブーム」

www.nhk.or.jp

中国では川端康成の出版ラッシュが続いている。川端康成の人気ぶりは社会現象にもなっているようだ。『雪国』の中国語訳は20以上のバリエーションがあり、各出版社が競い合っているようだ。

 

なぜ川端康成がブームになっているのか?

では、なぜ川端康成は中国でブームになっているのだろうか?調べてみたところ理由は二つあるようだ。その理由は、①中国で川端康成の著作権が切れたため ②中国国内の社会情勢 の二つが挙げられる。それぞれについて見てみよう。

 

理由①中国で川端康成の著作権が切れたため

雪国 (Chinese Edition)

雪国 (Chinese Edition)

Amazon

川端康成が中国でブームとなった理由の一つが、川端康成作品の著作権保護期間が切れたためだ。今年、川端康成の死から50年を迎えたということで、中国国内での川端康成の著作権保護期間が切れている。

日本や中国などの世界の国々が加盟する「ベルヌ条約」では、著作権の保護期間を作者の死後50年としている。しかし、著作物の保護期間は各国によって違う。

ヨーロッパやアメリカでは、著作権保護期間は作者の死後70年が主流になっている。日本は昔は50年としてきたが、TPPによって著作権保護期間が70年に延長されている。

ということで、一足先に著作権保護期間が終了した中国では、川端康成の作品が使用料を払わなくても使用できる「パブリック・ドメイン」となったのだ。

そのため「パブリック・ドメイン」となった川端作品を中国の出版社が競い合って翻訳出版することになった。

 

 

理由②中国国内の社会情勢

中国国内の社会情勢がどう川端康成に関係しているのと思っている人は多いに違いない。

皆さんご存知の通り、中国は国内での言論統制が非常に厳しい。出版物に対する管理も厳しく、海外からの書籍は今まで以上に細かく検閲されている。

このように規制が厳しい不自由な社会で、川端文学の詩的な世界観に癒しを求めている人が多くなっていると言われている。これも理由の一つだと言われている。

 

まさか、川端康成がこんなに脚光を浴びるとは思っていなかったが、日本文学を知ってもらえる良い機会になるのではないかと思う。ぜひ日本の方にもこれまで以上に川端康成作品を読んでほしいなと思う。個人的におすすめの川端康成作品は『眠れる美女』と『雪国』だ。

是非とも読んでほしい。

 

 

関連記事

plutocharon.hatenablog.com

『秒速5センチメートル』が好きな人におすすめの恋愛小説


www.youtube.com

新海誠の最高傑作は何かという問いがあったら、僕は間違いなく『秒速5センチメートル』をあげる。

『秒速5センチメートル』は、美しすぎる初恋の呪いに囚われてしまった男性を、圧倒的な映像美で描いた名作アニメーション映画だ。新海誠監督の代表作の一つだ。

過去の感傷に陶酔している姿を、叙情的な映像と内省的なモノローグで極限まで美しく描いた作品であり、エモーショナルな内容は多くの人を惹きつけている。特に、過去の恋愛に名前をつけて保存する系男子が多いと思うが。

この記事では、『秒速5センチメートル』が好きな人におすすめしたい恋愛小説を紹介したい。どの作品も忘れられない恋愛を描いた作品だ。

 

続きを読む

知る人ぞ知る?オーストラリアを代表する作家ジェラルド・マーネインを紹介する

ジェラルド・マーネイン(Gerald Murnane)という小説家を知っているだろうか?

ジェラルド・マーネインはオーストラリアの小説家で、知る人ぞ知る作家だ。世界的に有名な作家ではないが、一部でカルト的な人気を得ている。

最近では、ノーベル文学賞も受賞するのでは言われており、ブックメーカーのノーベル文学賞受賞者の予想として名前が上がることが多い。

日本では知名度はないと思うが、オーストラリアを代表するジェラルド・マーネインを紹介したいと思う。

続きを読む