「国境のトンネル」でお馴染みの作家といえば川端康成だ。
日本で初めてノーベル文学賞を受賞した作家であり、代表作の『雪国』や『伊豆の踊り子』は非常に有名だ。
川端康成だが、今中国でブームになっているらしい。数多くの川端康成の作品が中国語に翻訳されている。特に『雪国』は、20以上の中国語訳バージョンがあるようだ。最近ニュースでも、中国で川端康成の作品が流行しているというのを見かけるようになった。
この記事では、中国で川端康成が流行っている理由について書こうと思う。
中国で広がる「川端康成ブーム」
中国では川端康成の出版ラッシュが続いている。川端康成の人気ぶりは社会現象にもなっているようだ。『雪国』の中国語訳は20以上のバリエーションがあり、各出版社が競い合っているようだ。
なぜ川端康成がブームになっているのか?
では、なぜ川端康成は中国でブームになっているのだろうか?調べてみたところ理由は二つあるようだ。その理由は、①中国で川端康成の著作権が切れたため ②中国国内の社会情勢 の二つが挙げられる。それぞれについて見てみよう。
理由①中国で川端康成の著作権が切れたため
川端康成が中国でブームとなった理由の一つが、川端康成作品の著作権保護期間が切れたためだ。今年、川端康成の死から50年を迎えたということで、中国国内での川端康成の著作権保護期間が切れている。
日本や中国などの世界の国々が加盟する「ベルヌ条約」では、著作権の保護期間を作者の死後50年としている。しかし、著作物の保護期間は各国によって違う。
ヨーロッパやアメリカでは、著作権保護期間は作者の死後70年が主流になっている。日本は昔は50年としてきたが、TPPによって著作権保護期間が70年に延長されている。
ということで、一足先に著作権保護期間が終了した中国では、川端康成の作品が使用料を払わなくても使用できる「パブリック・ドメイン」となったのだ。
そのため「パブリック・ドメイン」となった川端作品を中国の出版社が競い合って翻訳出版することになった。
理由②中国国内の社会情勢
中国国内の社会情勢がどう川端康成に関係しているのと思っている人は多いに違いない。
皆さんご存知の通り、中国は国内での言論統制が非常に厳しい。出版物に対する管理も厳しく、海外からの書籍は今まで以上に細かく検閲されている。
このように規制が厳しい不自由な社会で、川端文学の詩的な世界観に癒しを求めている人が多くなっていると言われている。これも理由の一つだと言われている。
まさか、川端康成がこんなに脚光を浴びるとは思っていなかったが、日本文学を知ってもらえる良い機会になるのではないかと思う。ぜひ日本の方にもこれまで以上に川端康成作品を読んでほしいなと思う。個人的におすすめの川端康成作品は『眠れる美女』と『雪国』だ。
是非とも読んでほしい。
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