日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

2020-01-01から1年間の記事一覧

2021年に読みたい本・ブログについて

来年に読みたい本 2021年に読みたい本をまとめてみた。 日本文学 吾輩は猫である 夏目漱石 門 夏目漱石 檸檬 梶井基次郎 春は馬車に乗って 横光利一 機械 横光利一 舞姫 川端康成 痴人の愛 谷崎潤一郎 濹東奇譚 永井荷風 堕落論 坂口安吾 不連続殺人事件 坂…

2020年に読んで印象に残った本ベスト10選

いよいよ大晦日だ。一年のグランドフィナーレ。未曾有の災害、新型コロナウイルスに襲われた一年でした。本当なら東京でオリンピックが開催されていたはずだったのかと考えると不思議な気分になる。こんな一年になることを誰が予想できたであろうか。何が起…

謎解き『風の歌を聴け』 / タイトルの『風の歌を聴け』ってどういう意味?

風の歌を聴け (講談社文庫) 作者:村上春樹 講談社 Amazon 村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』。短い小説でありながらも、文体が完成されていて、様々な謎が散りばめられている。単純に読めば、ほろ苦い夏の出来事を描いた小説であるように思えるが、この…

Pretender的な小説を数多く残した夏目漱石

Official髭男dism - Pretender[Official Video] 2019年を彩ったヒット曲といえば『Pretender』だろう。映画主題歌となったこの曲は、ストリーミングサービスなどでブレイクし、広く聞かれる楽曲となった。切ない恋愛を綴る歌詞とボーカル藤原聡の圧倒的な…

世界で愛されるミシマ文学!三島由紀夫の新潮文庫売り上げランキング

www.jiji.com 2020年11月25日で三島由紀夫が陸上自衛隊市ケ谷駐屯地で割腹自殺してから50年が経つ。『金閣寺』や『潮騒』など数々の名作を残し、海外でも高い評価を受けノーベル文学賞も受賞まじかだったと言われている。右翼的な政治的立場も立ち、実際の…

ピタゴラスイッチ的殺人事件 / 『死亡フラグが立ちました!』 七尾 与史

“死神”と呼ばれる暗殺者のターゲットになると、24時間以内に偶然の事故によって殺される――。特ダネを狙うライター・陣内は、ある組長の死が、実は“死神”によるものだと聞く。事故として処理された組長の死を調べるうちに、他殺の可能性に気づく陣内。凶器は…

洋上の激闘!巨大カジキ戦争 / 『老人と海』 ヘミングウェイ

八十四日間の不漁に見舞われた老漁師は、自らを慕う少年に見送られ、ひとり小舟で海へ出た。やがてその釣綱に、大物の手応えが。見たこともない巨大カジキとの死闘を繰り広げた老人に、海はさらなる試練を課すのだが――。自然の脅威と峻厳さに翻弄されながら…

サバの味噌煮というバタフライ・エフェクト

雁 (新潮文庫) 作者:森 鴎外 新潮社 Amazon 「サバの味噌煮」を食べると、人生の頼りなさについて考えてしまう。サバの味噌煮なんてありふれた料理だと思うけど、僕にとっては特別な料理だ。こう思う様になったのは、たぶん、森鴎外の『雁』という小説のせい…

ピアスやタトゥを通じて描かれる、生きることの痛み / 『蛇にピアス』 金原 ひとみ

蛇のように舌を二つに割るスプリットタンに魅せられたルイは舌ピアスを入れ身体改造にのめり込む。恋人アマとサディスティックな刺青師シバさんとの間で揺れる心はやがて…。第27回すばる文学賞、第130回芥川賞W受賞作。 歳をとらないと深く理解できない小説…

現代版マッチ売りの少女 / 『ミステリアスセッティング』 阿部 和重

歌を愛し、吟遊詩人を夢見ながらも、唄う能力を欠いた19歳の少女シオリ。唄うことを禁じられ、心ない者たちにその純粋さを弄ばれても夢を抱き続けるシオリに、運命はさらなる過酷な試練を突き付ける。小型核爆弾だというスーツケースを託され、東京の地下深…

謎解き『TENET』/ 2回目を観るときにチェックしたい小ネタまとめ

映画『TENET テネット』の舞台裏!メイキング映像 スパイ映画×時間逆行SFというこれまでに類のない映画『TENET』。現代を代表するクリストファー・ノーラン監督の最新作だ。『インセプション』や『インターステラー』など難解な作品を作り続けてきたクリスト…

東野圭吾の本格ミステリ決別宣言 / 『名探偵の呪縛』 東野 圭吾

東野圭吾の転換点 図書館を訪れた「私」がふとしたことから迷い込んだ街。そこは『本格推理小説』という概念が存在しない場所だった。その街で起こる、密室殺人や人間消失トリック。本格の存在しない街で起こる本格殺人に、探偵天下一となった「私」が挑む。…

謎解き『TENET』/ 逆行弾で負傷したキャットを連れて時間逆行したのはなぜ?

映画『TENET テネット』の舞台裏!メイキング映像 スパイ映画×時間逆行SFというこれまでに類のない映画『TENET』。現代を代表するクリストファー・ノーラン監督の最新作だ。『インセプション』や『インターステラー』など難解な作品を作り続けてきたクリスト…

ヌーヴェルヴァーグの影響を受けている映画まとめ

フランス映画の一大ムーブメント・ヌーヴェルヴァーグ 。今回はヌーヴェルヴァーグ の影響が色濃く反映されている映画を紹介したいと思う。 コーヒーをめぐる冒険 コーヒーをめぐる冒険(字幕版) 発売日: 2016/10/12 メディア: Prime Video 2年前に大学をや…

ノーベル文学賞を受賞したアメリカの詩人 ルイーズ・グリュックって誰なんだ。

待ちに待ったノーベル文学賞の発表。果たして誰が受賞するのか。村上春樹は受賞するのか、はたまた多和田葉子か小川洋子か、日本勢の受賞はあるのか。誰なんだ?マーガレット・アドウッド?果たして結果は... ルイーズ・グリュックが受賞! www3.nhk.or.jp

なぜ村上春樹はノーベル文学賞最有力候補として毎年騒がれるのか?

日も短くなり、Tシャツだけでは肌寒くなる10月になりましたね。10月といえばそう、「村上春樹ノーベル文学賞受賞なるか」が話題になる季節です。ここ数年ぐらい、毎年10月になるとその話題で騒がしくなる。もはや、テレビでハルキストの集まりが中継され、受…

運命の人に出会うことについて / 「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」 村上 春樹

「四月のある晴れた朝、原宿の裏通りで僕は100パーセントの女の子とすれ違う。」こんな印象的な書き出しで始まるのが、「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」 だ。とても印象的なタイトルだ。この小説は、村上春樹の比喩の卓越…

村上春樹初心者でも読みやすい短編集 / 『カンガルー日和』 村上 春樹

『カンガルー日和』は、村上春樹の短編小説の中でもショートショートに近い小説が集められた短編集だ。印象的な短編が多く収録されていて、村上春樹初心者にもオススメの短編集だ。収録作品を一つ一つ見ていこう。 カンガルー日和 タクシーに乗った吸血鬼 あ…

ロマンスがありあまる…文豪たちが書いたドロドロ恋愛小説10選

恋愛小説といえば甘酸っぱい恋愛を描いたものだけではない。不倫や三角関係、略奪婚など恋愛のドロドロした部分を描いた恋愛小説は数多く書かれてきた。 文豪たちもまた然りだ。夏目漱石や三島由紀夫、トルストイ、フローベールなど文豪たちは大人な恋愛小説…

「依頼」と「代行」による「宝探し」の物語〜『羊をめぐる冒険』と『同時代ゲーム』の物語構造〜

物語にはいくつかの基本パターンみたいなものがある。有名なもので言えばオイディプス王に見られる様な「父殺し」の物語骨格がある。「父」というモチーフは色んな文学作品で扱われていて、志賀直哉の『暗夜行路』も「父」が物語の重要な部分を占めている。…

三四郎から連なる青春文学の系譜〜『三四郎』から『優しいサヨクのための嬉遊曲』まで〜

日本文学には、『三四郎』から続く青春文学の系譜があると思う。当時の時代背景を反映し、「知識人はこの時代をどう生きるべきか」という問いに悩む主人公が描かれた小説だ。それぞれの時代を反映してきた作品は、芥川賞を受賞したり、ベストセラーになった…

吸血鬼は存在するか? / 「タクシーに乗った吸血鬼」 村上 春樹

皆さんは吸血鬼の存在を信じるだろうか?しかも吸血鬼がタクシーの運転手だったら? 「タクシーに乗った吸血鬼」という『カンガルー日和』の短編小説は、文字通りタクシーの運転手が吸血鬼だったという話だ。いかにも村上春樹らしい言い回しが随所に散りばめ…

謎解き『ノルウェイの森』/ ノルウェイの森(Norwegin Wood)に込められた意味は何か?

村上春樹の作品にはビートルズの楽曲のタイトルが使われているのが多い。ビートルズの楽曲をタイトルに有する村上春樹の作品の中でも最も有名なのが『ノルウェイの森』だろう。作中でも「ノルウェイの森」は重要なモチーフだ。主人公ワタナベを過去の世界に…

新海誠に見る村上春樹の影響と共通点

秒速5センチメートル 水橋研二 Amazon 美しい情景描写、感傷的なモノローグ、センチメンタルな男女の物語、そしてセカイ系...など、新海誠のアニメ作品は作家性がかなり強い。 独自の路線でアニメを作り続けていていて、『秒速5センチメートル』、『言の葉の…

小松菜奈とアンナカリーナって似ている気がする説

アンニュイな雰囲気が魅力の小松菜奈様 小松菜奈の「90秒チャレンジ」| VOGUE GIRL 一番好きな女優は小松菜奈だ。そのアンニュイな感じに魅力を感じてやまない。『ぼくは明日昨日の君とデートする』での小松菜奈様が可愛すぎて尊すぎたし、それでか映画の内…

謎解き『1Q84 』 / 『1Q84』というタイトルと小説の構成について

1Q84―BOOK1〈4月-6月〉前編―(新潮文庫) 作者:村上春樹 新潮社 Amazon 社会現象を引き起こした村上春樹の『1Q84』。謎めいたストーリーが話題を呼び、ベストセラーとなった。 『1Q84』には回収されなかった謎が数多く残され、謎解き要素が強い…

雨のニューヨークには魔法がかかる / 『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』 ウディ・アレン

ウディ・アレン最新作「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」日本版予告解禁 大学生のカップル、ギャツビーとアシュレーは、ニューヨークでロマンチックな週末を過ごそうとしていた。きっかけは、アシュレーが学校の課題で有名な映画監督ポラードにマンハッタ…

この世界は本当の現実なのか!?仮想現実をテーマにした映画5選

この世界は現実?それとも幻想? gigazine.net 一時期話題になったこのニュースのように、「この世界は現実か?」と問いかける思考実験が多い。例を挙げれば、「胡蝶の夢」や「水槽の中の脳」などがある。この手のテーマは昔から議論されてきてきた。「今生…

システムと魂 / 「壁と卵」-エルサレム賞・受賞のあいさつ- 村上 春樹

もしここに硬い大きな壁があり、そこにぶつかって割れる卵があったとしたら、私は常に卵の側に立ちます。 この文章は、村上春樹がエルサレム賞の受賞スピーチの中の一文だ。村上春樹のスピーチの中でも一番有名なものかもしれない。村上春樹の小説そのものも…

完璧な「翻訳」をめぐる冒険 / 『ドリーミング村上春樹』

10/19公開『ドリーミング村上春樹』公式予告編 完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。 村上春樹読者なら大体が知っている有名な文章だろう。これは『風の歌を聞け』の冒頭の文章だ。文字通り、村上春樹はここから始まり…