日々の栞

生活にカルチャーを。本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

文学

アントン・チェーホフの四大戯曲とは?

ロシアの文豪、チェーホフの代表作として知られているのがいわゆる「四大戯曲」だ。 チェーホフの四大戯曲とは、『かもめ』、『ワーニャ伯父さん』、『三人姉妹』、『桜の園』のことを指す。チェーホフの晩年に書かれた四大戯曲は、従来の演劇が依拠してきた…

破天荒すぎる!?日本文学における三大クズ文豪

日本文学史に燦然と輝く文豪たち。彼らは、後世に語り継がれる名作を数多く生み出し、我々を魅了してやまない。しかし、その華々しい功績の影で、私生活では「クズ」と呼ぶにふさわしい行動をとった文豪もいる… 才能や名声に恵まれながらも、私生活では破綻…

斬新さが魅力⁈川端康成らの新感覚派を解説する

新感覚派は、大正末期から昭和初期にかけて日本文学に登場した文学流派である。 1924年に創刊された同人誌『文藝時代』を母体として、横光利一や川端康成などの新進作家が集まり、自然主義的リアリズムに反発し、感覚的表現を重視した。 新感覚派は、主観的…

ビートジェネレーションって知ってる?

1950年代のアメリカ。第二次世界大戦後の好景気に沸き、物質的な豊かさを享受する一方で、精神的な空虚感に苛まれる若者たちがいた。彼らは、既存の社会や価値観に反発し、自由を求めて彷徨い、新たな表現方法を模索した。彼らを「ビート・ジェネレーション…

第172回芥川龍之介賞の受賞作『DTOPIA』と『ゲーテはすべてを言った』について紹介する

第172回芥川賞の受賞作が発表された。 受賞作は安堂ホセ「DTOPIA」と鈴木結生「ゲーテはすべてを言った」の二作品だ。 ノミネート作品は下記の五作品だった。 安堂ホセ「DTOPIA」(文藝秋季号) 鈴木結生「ゲーテはすべてを言った」(小説トリッパー秋季号)…

第172回芥川龍之介賞の候補作を紹介する

第172回芥川賞の候補作が発表された。候補作は下記の五作品だ。 安堂ホセ「DTOPIA」(文藝秋季号) 鈴木結生「ゲーテはすべてを言った」(小説トリッパー秋季号) 竹中優子「ダンス」(新潮11月号) 永方佑樹「字滑り」(文學界10月号) 乗代雄介「二十四五…

ノーベル文学賞を受賞した韓国のハン・ガンってどんな作家?

2024年のノーベル文学賞の発表があり、受賞者は韓国の作家ハン・ガン(Han Kang)だと発表された。韓国として初のノーベル文学賞受賞であり、アジア人女性として初のノーベル文学賞受賞でもある。

第171回芥川龍之介賞の候補作を紹介する

第171回芥川賞の候補作が発表された。候補作は下記の五作品だ。 朝比奈秋「サンショウウオの四十九日」(新潮5月号)尾崎世界観「転の声」(文學界6月号 )坂崎かおる「海岸通り」(文學界2月号)向坂くじら「いなくなくならなくならないで」(文藝夏季号)…

第37回三島由紀夫賞候補作品の紹介と受賞作予想

今年も三大純文学新人賞の1つ、三島由紀夫賞の季節がやってきた。 芥川龍之介賞に比べると知名度が大きく下がる三島由紀夫賞だけれども、受賞作の前衛性は芥川賞を超えると思っている。これまでに三島由紀夫賞は舞城王太郎や佐藤友哉、中原昌也など芥川賞で…

朝比奈秋「あなたの燃える左手で」と九段理江「しをかくうま」が第45回野間文芸新人賞を受賞した件について

三大純文学新人賞の一つである第45回野間文芸新人賞の受賞作が発表された。 受賞作は、朝比奈秋「あなたの燃える左手で」と九段理江「しをかくうま」の2作だ。 特に朝比奈秋は今回の受賞で新人賞三冠にリーチとなった。 この記事では第45回野間文芸新人賞の…

ノーベル文学賞を受賞したヨン・フォッセの日本語で読める作品は?

ヨン・フォッセ(Jon Fosse)というノルウェーの劇作家が2023年のノーベル文学賞を受賞した。 日本では知名度がないかもしれないが、ヨン・フォッセはノルウェーを代表する劇作家で、グローバルに大きな関心を集めている。ヨン・フォッセは、イプセンに続き…

川端康成が中国で流行っている件について

雪国(新潮文庫) 作者:川端康成 新潮社 Amazon 「国境のトンネル」でお馴染みの作家といえば川端康成だ。 日本で初めてノーベル文学賞を受賞した作家であり、代表作の『雪国』や『伊豆の踊り子』は非常に有名だ。 川端康成だが、今中国でブームになっている…

知る人ぞ知る?オーストラリアを代表する作家ジェラルド・マーネインを紹介する

ジェラルド・マーネイン(Gerald Murnane)という小説家を知っているだろうか? ジェラルド・マーネインはオーストラリアの小説家で、知る人ぞ知る作家だ。世界的に有名な作家ではないが、一部でカルト的な人気を得ている。 最近では、ノーベル文学賞も受賞す…

中国のカフカ!?現代中国文学を代表する作家・残雪について紹介する

残雪 (Can Xue)という作家を知っているだろうか? 中国を代表する現代作家で、非常に独創的な作風が特徴だ。その独創的な作風から、カフカやピンチョンと並び称される作家である。 日本では知名度は低いかも知れないが、現代中国文学を代表する残雪を紹介し…

ノルウェーを代表する現代劇作家ヨン・フォッセについて紹介する

ヨン・フォッセ(Jon Fosse)という劇作家を知っているだろうか? ノルウェーを代表する劇作家で、グローバルに大きな関心を集めている。ヨン・フォッセは、イプセンに続き最も頻繁に上演されるノルウェー人劇作家である。ミニマリズムを特徴とする演劇で国…

読まないと!村上春樹の隠れた名作8選

村上春樹といえば日本を代表する現代作家だ。村上春樹作品は日本だけでなく世界中で読まれており、多くの人を惹きつけている。 村上春樹の名作といえば『ノルウェイの森』、『ねじまき鳥クロニクル』、『海辺のカフカ』、『1Q84』などがあるだろう。 それ以…

第169回芥川龍之介賞の受賞作を予想する

第169回芥川賞の候補作が発表された。候補作は下記の五作品だ。 石田夏穂「我が手の太陽」(群像5月号)市川沙央「ハンチバック」(文學界5月号)児玉雨子「##NAME##(ネーム)」(文藝夏季号)千葉雅也「エレクトリック」(新潮2月号)乗代雄介「それは誠」…

第169回芥川龍之介賞の候補作を紹介する

第169回芥川賞の候補作が発表された。候補作は下記の五作品だ。 石田夏穂「我が手の太陽」(群像5月号)市川沙央「ハンチバック」(文學界5月号)児玉雨子「##NAME##(ネーム)」(文藝夏季号)千葉雅也「エレクトリック」(新潮2月号)乗代雄介「それは誠」…

第169回芥川龍之介賞の候補作を予想する

六月になったということで、もうすぐ芥川賞の候補作が発表される。恒例行事にはなってきたが、芥川賞の候補作を予想してみた。上半期で印象に残った小説や推したい小説を中心に挙げている。 芥川賞をざっくり簡単に説明すると、新人作家の純文学作品に与えら…

村上春樹『街とその不確かな壁』の感想を徒然なるままに書く

村上春樹の最新作『街とその不確かな壁』を読み終えた。早く読みたい気持ちとじっくりと味わいたい気持ちがせめぎ合う中での読書だった。 村上春樹の最新長編を発売直後にリアルタイムで読むのは、何気に初めてかもしれない。『騎士団長殺し』の時は数週間遅…

意外すぎる!?芥川賞を受賞していない有名作家まとめ

芥川賞といえば純文学の登竜門的な賞だ。 純文学で優れた新人に与えられる賞で、安部公房や大江健三郎、中村文則、平野啓一郎、川上未映子、綿矢りさ、阿部和重など数多くの有名作家が受賞してきた。 実力のある作家に賞を与えて世に送り出してきた芥川賞だ…

社会現象にも!話題になった芥川賞受賞作品まとめ

芥川賞といえば純文学の登竜門的な賞だ。 芥川賞は純文学で優れた新人に与えられる賞で、安部公房や大江健三郎、中村文則、平野啓一郎、川上未映子、綿矢りさ、阿部和重など数多くの有名作家が受賞してきた。 芥川賞は文学賞の中でも特に有名な賞である。そ…

二本の直線のように交わる人生 / 「石のまくらに」 村上 春樹

村上春樹の小説世界では、すんなりと男女が関係を持つ。それはもう息を吸うように。「石のまくらに」という短編も村上春樹にありがちな男女が流れで関係を持つ系の話だ。この短編は最新刊の短編集『一人称単数』に収録されている。元は文學界に掲載された「…

待ち人来ず!待っていてもこない不条理小説まとめ

小説の中には、待っているものや人が来ないということを題材とした小説がある。個人的に、これらの小説を待ちぼうけ小説と勝手に読んでいる。 眠れる森の美女は王子様が来るまで眠りながら待ち続けているが、来るかわからないものを待ち続けるというのは不条…

考察のお供に!夏目漱石『こころ』の解説本・評論を紹介する!

夏目漱石の『こころ』といえば、男女の三角関係を描いた名作小説だ。 高校の国語で扱うことが多いと思うが、『こころ』の解釈は想像以上に多数ある。 そんな時に役に立つのが、研究者や文芸評論家が書いた研究本や解説本だ。数多くある夏目漱石『こころ』の…

徹底考察「羅生門」 / 作中の季節・時代は何か?

芥川龍之介の名作短編小説として有名なのが「羅生門」だ。 高校の授業で扱うこともあり、読んだことがある人は多いだろう。 役人が門の上で死人の髪を盗んでいる老婆を見つけ、老婆の衣を奪って去るという衝撃的な内容だ。 この記事では、「羅生門」の時代設…

第168回芥川龍之介賞の受賞作を予想する!

2023年が始まって数日が経ったが、そろそろ気になってくるのが芥川賞の受賞予想だろう。 大半の人は気になっていないかもしれないが、芥川賞受賞作を予想していこうと思う。年末年始に候補作を読んだので感想も合わせて書きたい。 皆さんご存知かもしれない…

読書好き必見!文豪が愛した温泉旅館を紹介!

文豪と温泉には深い関係がある。川端康成などの文豪は旅館に泊まりながら執筆することが多かった。今も読まれ続ける名作の誕生の裏には、日本の温泉地があったのだ。 僕も温泉に浸かり旅館で優雅に在宅勤務をしたい…そんな僕のささやかな夢は叶いそうにない…

第168回芥川龍之介賞の候補作を紹介する!

本日早朝(朝五時)に、第168回芥川賞の候補作が発表された。 なぜこの時間帯なのかと毎回思う。話を戻そう。 第168回芥川賞候補作は、安堂ホセ『ジャクソンひとり』、井戸川射子『この世の喜びよ』、グレゴリー・ケズナジャット『開墾地』、佐藤厚志『荒地…

友情と恋愛、どちらを取る?/ 『友情』 武者小路実篤

『友情』というタイトルから、友情の素晴らしさを描いた小説だと思った人は多いだろう。僕もそうだった。しかし、武者小路実篤の『友情』という小説は、爽やかな青春小説の対極にあるような、友情と恋愛の間での葛藤を描いた恋愛小説だ。夏目漱石の『こころ…