日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

文学

もはや注釈がメイン!?注釈が多い小説まとめ

小説や評論などで、補足のために注釈が付けられていることはよくあることだ。 しかし、本文よりも注釈がメインになっている小説があるといえば驚くだろうか? ポストモダン*1小説と言われる小説には、既存の発想にとらわれない様な小説が数多くある。 その中…

夏目漱石『こころ』の遺書が長すぎる件について

こころ (ちくま文庫) 作者:夏目 漱石 筑摩書房 Amazon 夏目漱石『こころ』といえば、男女の三角関係を描いた不朽の名作だ。 「友情をとるか、恋愛をとるか」という普遍的なテーマを扱った『こころ』は、同じようなことを経験したことがある人なら深く心に刺…

ホラーすぎる!?人間の怖さを描いた芥川賞受賞作品まとめ

純文学の新人賞として知られている芥川賞。 受賞作品は、恋愛や青春、親子関係など様々なテーマを描いている。 人間の内面を深く描いた作品の中にはホラーにも匹敵するくらい怖いものもある。 芥川賞受賞作品の中から、ホラーすぎる人間の怖さを描いた小説を…

夏目漱石『こころ』を読むならちくま文庫版を推したい件について

こころ 作者:夏目 漱石 Amazon 夏目漱石の『こころ』といえば、男女の三角関係を描いた不朽の名作だろう。 高校の国語で勉強するので、大抵の人は読んだことがあるはずだ。 「友情をとるか、恋愛をとるか」という普遍的なテーマを扱った『こころ』は、同じよ…

かけがえのない他人を求めて / 「N/A」 年森 瑛

年森瑛の「N/A」は、安易なカテゴライズを嫌い、何ものにも該当しない純粋な関係性を希求した小説だ。「彼氏」ではなく「かけがえのない他人」を求めていた。 「N/A」は文學界新人賞を受賞したデビュー作で、選考委員が満場一致で受賞を決定したという話題作…

第167回芥川龍之介賞の受賞作品を予想する!

7/20に選考会が開催され、第167回芥川賞の受賞作が発表される。 それに先立って、どの作品が芥川賞を受賞するのか予想したい! 芥川賞を簡単に説明すると、新人作家の純文学作品に与えられる文学賞だ。文学賞の中で一番知名度がある賞だろう。純文学というと…

語りによるトラウマの克服 / 「土の中の彼女の小さな犬」 村上 春樹

村上春樹の「土の中の彼女の小さな犬」をトラウマからの回復という観点で考察・解説した記事です。

小人の謎を考察する / 「踊る小人」 村上 春樹

この記事では、村上春樹の不可思議な短編「踊る小人」を考察・解説していきたい。 この「踊る小人」はファンタジー色が強く、童話テイストなのだが、どこか不気味な雰囲気が漂う小説だ。踊る小人というと「白雪姫」の7人の小人が思い浮かぶのだが、その小人…

第167回芥川龍之介賞の候補作を紹介する!

第167回芥川賞の候補作が発表された。有力視されていた作品が候補になったり、意外な作品が候補になっていた。芥川賞の候補予想は難しい。 候補作は、小砂川チト「家庭用安心坑夫」(群像 6月号)、鈴木涼美「ギフテッド」(文學界 6月号)、高瀬隼子「おい…

春樹のススメ!初心者におすすめしたい村上春樹の短編小説集5選

今や日本を代表する作家・村上春樹。その人気は日本にとどまらず、世界中で読まれている。洒脱な表現や比喩と、巧みなストーリーテリング、魅力的な謎解き要素などの魅力が詰まった村上春樹作品。これから村上春樹を読むという人のために、初心者におススメ…

第167回芥川龍之介賞の候補作を予想する

plutocharon.hatenablog.com もうすぐ芥川賞の候補作が発表されると言うことで、芥川賞の候補作を予想してみた。上半期で印象に残った小説や推したい小説を中心に予想した。 芥川賞を簡単に説明すると、新人作家の純文学作品に与えられる文学賞だ。文学賞の…

傷つくことができなかった男 / 「木野」 村上 春樹

村上春樹の短編集『女のいない男たち』に収録されている小説の中で、僕が一番好きなのが「木野」だ。『女のいない男たち』の中でだけでなく、村上春樹の短編作品の中でもベスト10に入るくらい傑作だと思う。「木野」ってなかなか変わったタイトルだが。 「木…

第35回三島由紀夫賞候補作品の紹介と受賞作予想

今年も三大純文学新人賞の1つ、三島由紀夫賞の季節がやってきました。 芥川龍之介賞に比べると知名度が大きく下がる三島由紀夫賞だけれども、受賞作の尖りっぷりは芥川賞を凌ぐと思っている。舞城王太郎や佐藤友哉、中原昌也など芥川賞では評価されにくい尖…

独断と偏見しかない!村上春樹のおすすめ長編小説ランキング

皆さん、村上春樹を読んだことがあるだろうか? 僕は高校生ぐらいから村上春樹にハマって、村上春樹の長編小説は全部読んだ。 一通り全部読んだので村上春樹のおすすめ長編ランキングを独断と偏見で作ってみようと思う。 村上春樹の長編小説をどれから読むか…

安部公房が好きな人におすすめの作家

砂の女 (新潮文庫) 作者:公房, 安部 新潮社 Amazon 日本を代表する作家の一人、安部公房。前衛的・実験的すぎる作風で知られ、未来の残酷さを見抜いたSFなど数多くの作品を残した。極限状況における人間を描き、日本文学最高傑作とも称される『砂の女』、未…

小説の読解の参考に!文学の読み方が分かる文学読解本まとめ

川端康成や大江健三郎のような文学作品だと読解が難しく内容がよく分からないという人は多いのではないだろうか。また、文学作品を色んな視点から読み解きたい、もっと深く読み解きたいという人も多いのだろうではないか。または、受験のために小説が読み解…

中原昌也のマスターピース / 『パートタイム・デスライフ』 中原 昌也

『マリ&フィフィの虐殺ソングブック』や『あらゆる場所に花束が…』に衝撃を受けてから、中原昌也をよく読むようになった。『マリ&フィフィの虐殺ソングブック』の支離滅裂ながらもイメージを繋いでいく手法はバロウズの『裸のランチ』ようだったし、『あら…

世界で愛されるミシマ文学!三島由紀夫の新潮文庫売り上げランキング

www.jiji.com 2020年11月25日で三島由紀夫が陸上自衛隊市ケ谷駐屯地で割腹自殺してから50年が経つ。『金閣寺』や『潮騒』など数々の名作を残し、海外でも高い評価を受けノーベル文学賞も受賞まじかだったと言われている。右翼的な政治的立場も立ち、実際の…

ピアスやタトゥを通じて描かれる、生きることの痛み / 『蛇にピアス』 金原 ひとみ

蛇のように舌を二つに割るスプリットタンに魅せられたルイは舌ピアスを入れ身体改造にのめり込む。恋人アマとサディスティックな刺青師シバさんとの間で揺れる心はやがて…。第27回すばる文学賞、第130回芥川賞W受賞作。 歳をとらないと深く理解できない小説…

現代版マッチ売りの少女 / 『ミステリアスセッティング』 阿部 和重

歌を愛し、吟遊詩人を夢見ながらも、唄う能力を欠いた19歳の少女シオリ。唄うことを禁じられ、心ない者たちにその純粋さを弄ばれても夢を抱き続けるシオリに、運命はさらなる過酷な試練を突き付ける。小型核爆弾だというスーツケースを託され、東京の地下深…

ノーベル文学賞を受賞したアメリカの詩人 ルイーズ・グリュックって誰なんだ。

待ちに待ったノーベル文学賞の発表。果たして誰が受賞するのか。村上春樹は受賞するのか、はたまた多和田葉子か小川洋子か、日本勢の受賞はあるのか。誰なんだ?マーガレット・アドウッド?果たして結果は... ルイーズ・グリュックが受賞! www3.nhk.or.jp

三四郎から連なる青春文学の系譜〜『三四郎』から『優しいサヨクのための嬉遊曲』まで〜

日本文学には、『三四郎』から続く青春文学の系譜があると思う。当時の時代背景を反映し、「知識人はこの時代をどう生きるべきか」という問いに悩む主人公が描かれた小説だ。それぞれの時代を反映してきた作品は、芥川賞を受賞したり、ベストセラーになった…

たち切るも・たち切られるも・石のまくら / 「石のまくらに」 村上 春樹

村上春樹の小説世界では、すんなりと男女が関係を持つ。それはもう息を吸うように。「石のまくらに」という短編も村上春樹にありがちな男女が流れで関係を持つ系の話だ。この短編は最新刊の短編集『一人称単数』に収録されている。元は文學界に掲載された「…

父と戦争と歴史 / 『猫を棄てる 父親について語るとき』 村上 春樹

村上春樹が父について語ったエッセイ ある夏の日、僕は父親と一緒に猫を海岸に棄てに行った。歴史は過去のものではない。このことはいつか書かなくてはと、長いあいだ思っていた―――村上文学のあるルーツ 『猫を棄てる 父親について語るときに僕の語ること』…

35歳は人生の折り返し地点 / 「プールサイド」 村上 春樹

『回転木馬のデッド・ヒート』の名作短編 小説の中には、若いときに読むべきものと、年を取ってからじゃないと心に響かないものがある。村上春樹の「プールサイド」という短編は後者に属すると思う。大学生の時に読んだときよりも25歳になった今読み返した方…

知性を守るための戦い / 『赤頭巾ちゃん気をつけて』 庄司 薫

優しさ世代のためのバイブル 学生運動の煽りを受け、東大入試が中止になるという災難に見舞われた日比谷高校三年の薫くん。そのうえ愛犬が死に、幼馴染の由美と絶交し、踏んだり蹴ったりの一日がスタートするが―。真の知性とは何か。戦後民主主義はどこまで…

スピンスピンでセンター国語の伝説となった短編 / 『地球儀』牧野 信一 

牧野信一の『地球儀』という小説をご存じだろうか「スピンスピン」というマジックワードで多くの犠牲者を生み出したセンター国語の問題文だ。『地球儀』はセンター試験に出題され、「スピンスピン」という謎の言葉で今もネタにされている、いや愛されている…

村上春樹の『騎士団長殺し』が遂に文庫化!

村上春樹のベストアルバム『騎士団長殺し』が文庫化 騎士団長殺し 第1部: 顕れるイデア編(上) (新潮文庫) 作者: 村上春樹 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/02/28 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 騎士団長殺し 第1部: 顕れるイデア編(…

実はR18指定の恋愛小説 / 『雪国』 川端 康成

「国境の長いトンネル~」の 書き出しで有名な『雪国』はR18指定!? 親譲りの財産で、きままな生活を送る島村は、雪深い温泉町で芸者駒子と出会う。許婚者の療養費を作るため芸者になったという、駒子の一途な生き方に惹かれながらも、島村はゆきずりの愛以…

『こころ』のパロディ / 『彼岸先生』 島田 雅彦

『彼岸先生』は『こころ』のパロディ ポルノなんだか、SFなんだか、政治小説なのか、ミステリーなのかわからない不思議な恋愛小説を書いている小説家の先生は川の向う岸に住んでいる。だから…彼岸先生。東京、ニューヨークで女性遍歴を重ねたドン・ファンで…