日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

待ち人来ず!待っていてもこない不条理小説まとめ

小説の中には、待っているものや人が来ないということを題材とした小説がある。個人的に、これらの小説を待ちぼうけ小説と勝手に読んでいる。

眠れる森の美女は王子様が来るまで眠りながら待ち続けているが、来るかわからないものを待ち続けるというのは不条理なことだ。

気になる女の子をデートに誘ったけど、やってこない時にでも読んでみてほしい(絶対に違う)。冗談はさておいて、待つことの不条理を扱った小説・戯曲を紹介していきたい。

 

 

ゴドーを待ちながら / サミュエル・ベケット

田舎道。一本の木。夕暮れ。エストラゴンとヴラジーミルという二人組のホームレスが、救済者・ゴドーを待ちながら、ひまつぶしに興じている──。

待っている人が来ないというテーマの名作といえば、 ベケットの戯曲『ゴドーを待ちながら』だろう。すべての待ちぼうけ小説はここからうまれたと言っても過言ではない。ひたすらにゴド―を待ち続けるという不条理劇だ。この演劇は不条理劇として有名な作品で、数多くの作家や作品に影響を与えている。

内容を簡単に説明すると、ウラジミールとエストラゴンという2人の浮浪者が、ゴドーという人物を待ち続けているという内容だ。そして、ゴドーは来ないのである。なんとも不条理な演劇である。

 

 

 タタール人の砂漠 / ブッツァーティ

辺境の砦でいつ来襲するともわからない敵を待ちつつ、緊張と不安の中で青春を浪費する将校ジョヴァンニ・ドローゴ―。神秘的、幻想的な作風でカフカの再来と称される、現代イタリア文学の鬼才ブッツァーティ(一九〇六‐七二)の代表作。二十世紀幻想文学の古典。

 ブッツァーティの『タタール人の砂漠』は辺境の砦でいつやってくるか分からない敵を待ち続ける小説だ。 ブッツァーティは、神秘的・幻想的な作風で知られカフカの再来とも称されている。

 

 

シルトの岸辺 / ジュリアン・グラック

著者最大の長篇かつ最も劇的な迫力に富む代表作。1951年度のゴンクール賞に選ばれたが、グラックは受賞を拒否、大きな話題を呼んだ。「この小説は、その最後の章まで、決して火ぶたの切られない一つの海戦に向かってカノンを進行する」――宿命を主題に、言葉の喚起機能を極限まで追求し、予感と期待とを暗示的に表現して見せた。

ジュリアン・グラッグの『シルトの岸辺』は、戦いの膠着状態がひたすらに続く様子を描いた小説だ。

『タタール人の砂漠』と同じように、作中には何かが起きる予感や不穏な空気が漂っている。特徴的な比喩が多い文体なので、人を選ぶ作品かもしれない。

 


夷狄を待ちながら / クッツェー

野蛮人は攻めてくるのか? 静かな辺境の町に首都から治安警察の大佐が来て凄惨な拷問が始まる。けっして来ない夷狄を待ちながら、文明の名の下の蛮行が続く。

クッツェーの『夷狄を待ちながら』は、辺境の街で野蛮人がせめてくるのを待ち続ける小説だ。 タイトルだが、英語でWaiting for the Barbariansとなっており、ゴド―の『ゴドーを待ちながら』をオマージュしたタイトルになっている。『夷狄を待ちながら』がきっかけで、J・M・クッツェーの名前が世界的に知られるようになった。