日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

おしゃれ映画の代名詞!ウディ・アレン監督のおすすめ映画10選

多くの人に愛されているウディ・アレン作品


『映画と恋とウディ・アレン』予告編

ある時は人生の不条理をコミカルに描き、ある時はラブストーリーをロマンチックに演出してきたウディ・アレン監督。アカデミー賞に何度もノミネートされ、今でも精力的に映画を撮り続けている。人生の不条理や人生への皮肉を描いてきたウディ・アレンの映画は多くの人に愛されてきた。

BGMのジャズや、気の利いたジョークや洒脱な会話といい、ウディ・アレンの映画はおしゃれ映画の代名詞だ。最近では、ウディ・アレン監督自身のスキャンダルで逆風が吹いているけれども、ウディ・アレンの映画の面白さは変わらないと思う。個人的におすすめの10作品を紹介したい。

 

 

マンハッタン

マンハッタン

マンハッタン

  • ウディ・アレン
Amazon

まずは、 初期の傑作『マンハッタン』。ウディ・アレンの映画の中でも傑作と名高い作品だ。とにかくモノクロのマンハッタンの町が美しい。マンハッタンで繰り広げられる男女の恋愛模様がウディ・アレンらしいシニカルでユーモアに溢れるタッチで描かれている。

 

 

ギター弾きの恋

ギターは上手いが性格に難があるギタリスト:エメット・レイをドキュメンタリータッチで描いた伝記映画だ。

彼にはジャンゴ・ラインハルトの次にギターが上手いという自負があった。そんなエメットは口がきけないハメットに出会い、一緒に過ごすことになる。惹かれあう二人だったが…この映画のテーマは「大切なものは失ってから気づく」というものだ。エメットが失ったものは何なのか?喪失感に満ちたラストシーンの切なさは胸にしみる。この映画は一見すると伝記映画のように思えるが本当は違う。実は、エメット・レイというギタリストは存在しないのだ。この映画は、架空のギター弾きの伝記映画というメタフィクション的な作りになっている。映画中に観客に話しかけたりと変わった演出をしてきたウディ・アレン監督ならではの構成だ。ジャズ全盛期の時代を描いていることもあり、ジャズ好きの人にもおすすめ。

 

 

ハンナとその姉妹

ハンナとその姉妹 [DVD]

ハンナとその姉妹 [DVD]

  • ミア・ファロー
Amazon

ウディ・アレンは人生の不条理や喜び、幸せを映画の中で描き続けている。『ハンナとその姉妹』はマンハッタンを舞台に、ハンナ三姉妹の人間関係を描く中で、人生とは何かを表現している映画だ。ユーモラスで知的な会話や、シニカルな台詞などウディ・アレン節が随所にみられる。この映画も「人生は無意味だ」という諦念で覆われているけれども、観終わったあとには何故か心が温かくなる。おすすめの映画だ。

 

 

誘惑のアフロディーテ

ウディ・アレンは、人生の不条理や悲劇をコミカルに描いてきた映画監督だ。『誘惑のアフロディーテ』はギリシャ悲劇を下敷きに、ある男の運命の悲劇をコミカルに描いている。

主人公のレニーはマックスという養子をとる。マックスが順調に成長していく中で、レニーは、マックスの母親がどんな人であるか気になり始める。レニーは母親のリンダを探し当てるが、リンダは娼婦でありポルノ女優だったのである。ギリシャ悲劇の『オイディプス王』と同様に、知りたいという好奇心が悲劇を引き起こしていく。

劇中にコロス(合唱団)が出てくるように、『誘惑のアフロディーテ』がギリシャ悲劇のパロディになっている。この映画はレニーとリンダの悲劇的で喜劇的な運命を、『オイディプス王』といったギリシャ悲劇になぞらえて描いている。ギリシャ悲劇を知っていると何倍もこの作品が楽しめる。ウディ・アレンはギリシャ悲劇を下敷きにすることで、身近な運命の悲劇とギリシャ悲劇は同じようなものだといっているように思えた。悲劇のように思えても、自分の解釈次第では喜劇にもなりうる。観終わったあとに、少し心が楽になる映画だ。ただ、このあらすじがあらすじなので、ウディ・アレン作品の中でもハイレベルな下ネタが繰り広げられている。下ネタが苦手な人はご注意を。

 

 

マッチポイント

マッチポイント (字幕版)

マッチポイント (字幕版)

  • ジョナサン・リース・マイヤーズ
Amazon

人生は偶然の連続だ。宝くじが当たったり、事故に巻き込まれたり、運命の人に出会ったり、世の中には人が制御できない偶然が多い。「人生は偶然によって大きく左右される」というテーマはウディ・アレンの映画で何度も使われている。『マッチポイント』は偶然や運をテーマにしたウディ・アレン映画の集大成だ。映画のタイトルの『マッチポイント』とはテニスのことだ。マッチポイントを迎えている時に、偶然ボールがネットにひっかかる。相手のコートに落ちたら、勝ち。自分のコートに落ちたら、マッチポイントが消滅し、負けもありうる。ボールがどちらに落ちるかは運だ。

主人公のプロテニス選手のクリスは、テニス選手以外の道を模索していた。指導しているテニスクラブがきっかけで、上流階級のトムとその家族と親しくなる。そのうちクリスはトムの妹クロエと付き合うようになるが、トムのフィアンセのノラにも強く惹かれ関係を持ってしまう。 クリスは結局、クロエと結婚し上流階級への道を選んだ。しかし、ある日偶然ノラと再会し、再び関係を持ち始めてしまう。欲望と野望の狭間で、クリスの想いは激しく揺れ動き、偶然に委ねられた結末へ辿りついてしまう。クリスに幸運の女神は微笑むのか?ウディ・アレン版「罪と罰」とも言える『マッチポイント』。

 

 

タロットカード殺人事件

タロットカード殺人事件(字幕版)

タロットカード殺人事件(字幕版)

  • スカーレット・ヨハンソン
Amazon

寝る前に、肩の力を抜いて笑える映画が観たくなる時がある。そんな映画を観たくなった時は大体ウディ・アレンの映画を観ているような気がする。気軽に観れるコメディとしておすすめなのが『タロットカード殺人事件』だ。

『タロットカード殺人事件』は、『マッチポイント』のようなシリアスなサスペンスではなく、脱力して楽しめるコメディタッチのサスペンスだ。タロットカードが関係する事件の謎解きを楽しむというよりかは、スカーレット・ヨハンソン演じる女子大生とウディ・アレン演じるマジシャンとのコミカルな会話を楽しむ映画だ。『マッチポイント』でも予想を超えるエンディングを持ってきたけど、この『タロットカード殺人事件』でも普通とは違う一ひねり効いたエンディングが待っている。ウディ・アレンらしいブラックユーモアが効いたシニカルなエンディングは予想外すぎて、笑ってしまう。

 

 

カフェ・ソサエティ 

カフェ・ソサエティ(字幕版)

カフェ・ソサエティ(字幕版)

  • ジェシー・アイゼンバーグ
Amazon

忘れられない恋 をしたことはあるだろうか?「あのときこうしてれば、付き合っていたかもしれない...」と人生のタラレバを考えたことがある人もいるだろう。人生のもしかしてを描いているのが『カフェ・ソサエティ』だ。

1930年代ハリウッド黄金時代を舞台に、男女のほろ苦い恋愛模様がロマンチックに描かれている。この映画の魅力的なところは、誰しもが考えたことがあるであろう人生のもしかしてが描かれているところだ。もしもあのときこうしてたら...あり得たかもしれない過去を夢想することは魅力的で、甘美なノスタルジーに満ちている。永遠におこりえない過去だからこそ儚く、そして美しくみえてしまう。ボビーが思い描くヴォニーとの「もうひとつの過去」は魅力的だ。

だが、ウディ・アレン監督は甘美なノスタルジーへの自己陶酔だけでは終わらせない。甘美なあり得た過去への陶酔だけではなく、上手くいくことだけではないビターな現実も突きつけてくる。『カフェ・ソサエティ』は、ビター&スイートな大人のおとぎ話だ。

 

 

ミッドナイト・イン・パリ

ミッドナイト・イン・パリ(字幕版)

ミッドナイト・イン・パリ(字幕版)

  • オーウェン・ウィルソン
Amazon

ミッドナイト・イン・パリ』は、ヘミングウェイのエッセイ『移動祝祭日』で描かれている1920年代のパリを舞台にしたロマンチックファンタジーだ。作家志望の主人公・ギルは1920年代のパリにタイムスリップしてしまい、色んな芸術家と交流するようになる。1920年代のパリにタイムスリップしたギルはそこでアドリアナに恋をするのだが...この映画がテーマにしているのは「過去へのノスタルジー」だ。過去はいつだって美しい。現在から振り返る過去は多かれ少なかれ美化されているもの。いつでも未来は不安なもので、今は苦しく、過去は甘美な郷愁に満ちているものであることを教えてくれる。この映画を観て1920年代のパリにタイムスリップしてみては?

 

 

アニー・ホール 

ウディ・アレン監督作品の中で絶対に外せないのが『アニー・ホール』だ。ちなみに、この『アニー・ホール』は1977年アカデミー賞の主要4部門を受賞している。

数々の恋愛映画の名作を残してきたウディ・アレンだが、その原点は『アニー・ホール』にある。この映画は最初から最後まで実験的だ。観客に突然話しかけてきたりするし、アニメーションが入ったり、時系列シャッフルであったりと、様々な技巧がつかわれている。個性的な演出で描かれているのは男女の出会い、恋愛模様、そして別れだ。この映画は単に甘い恋愛映画ではない。ユーモアでシニカルな会話の中にも、恋愛の本質を突いた台詞が散りばめられている。「恋愛はサメと同じだ。前進し続けないと死んでしまう」『アニー・ホール』はほろ苦い恋愛を描いた大人の恋愛小説だ。

 

 

カイロの紫のバラ 

人はなぜ映画を観るのだろう?人生における映画(フィクション)の役割とは何か?そんな問いに答えるのがウディ・アレンの隠れた名作『カイロの紫のバラ』だ。

映画から登場人物が出てくるというウディ・アレン十八番のメタフィクションになっている。主人公のセシリアは惨めな生活と愛のない夫婦生活から逃れるようにして、映画に夢中になっている。セシリアが夢中になっていたのは「カイロと紫のバラ」という映画だ。

ある時、「カイロと紫のバラ」から主人公・トムが第四の壁を破り、現実世界に出てきてしまう。映画の中も大騒ぎになり、セシリアはトムと逃避行することになるのだが...ウディ・アレンの映画には「人生は不条理にまみれていて辛いものだ」という諦めや諦念が強くにじみ出ている。そんな辛い人生を乗り切るためにはどうすればいいのか?ウディがこの映画で提示する答えは「映画」だ。辛い人生には逃げるための虚構(フィクション)が必要だ。映画はその避難地になってくれる。ラストシーンのセシリアの表情は、人生に映画が不可欠であることを実感させてくれる。この映画にはウディ・アレンの映画愛に満ちている。映画が好きな人ならぜひ見てほしい。個人的にはこの『カイロと紫のバラ』がウディ作品の中で一番傑作だと思っている。

 

 

番外編:映画と恋とウディ・アレン

おまけで、ウディ・アレンの映画作りにフォーカスしたドキュメンタリー作品。ウディ・アレン監督だけではなく、家族や共演者、映画関係者にもインタビューしていて、ウディファンならみて損はない!