日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

2017-01-01から1年間の記事一覧

ウディ・アレン監督『Wonder Wheel』の公開が待ち遠しい

ウディ・アレン監督の新作『Wonder Wheel』 natalie.mu 『カフェ・ソサエティ』に続くウディ・アレン監督の『Wonder Wheel』が楽しみだ。ストーリーは1950年代のコニーアイランドを舞台に繰り広げられる人間ドラマであるらしい。一年に一回のペースでウディ…

ゲスの極み男のモラトリアム / 『個人教授』 佐藤 正午

佐藤正午作品の中でNo1のダメ男 桜の花が咲くころ、新聞記者を休職中のぼくは一つ年上の女とある酒場で再会し、一夜をともにする。そして、数ヵ月後、酒場に再びぼくが訪れた時に聞いた噂は、二十八歳の彼女は妊娠しているというものだった。しかも彼女は行…

最近、佐藤正午が気になる

最近、直木賞を取った佐藤正午 月の満ち欠け 第157回直木賞受賞 作者: 佐藤正午 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2017/04/06 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (23件) を見る 最近、『月の満ち欠け』で直木賞を受賞して、注目を集めている佐藤正午…

恋する男子はみんな阿呆 /『恋文の技術』 森見 登美彦

拝啓 未だ見ぬあなたへ 恋文の技術 (ポプラ文庫) 作者: 森見登美彦 出版社/メーカー: ポプラ社 発売日: 2011/04/06 メディア: 文庫 購入: 25人 クリック: 474回 この商品を含むブログ (84件) を見る 四畳半に燻り、単位を湯水のように落とす腐れ大学生にとっ…

小説とは何か?/ 『1000の小説とバックベアード』 佐藤 友哉

佐藤友哉なりの小説賛歌 佐藤友哉の三島由紀夫賞受賞作。ラノベと純文学のハイブリッドみたいな作品。小説とは何か、何のために小説を書くのかということテーマにしたファンタジー。随所に佐藤友哉らしい言い回しがあり、はまる人にははまる。1000の小説や、…

ゴドーにタタールにシルト/世界の待ちぼうけ小説

待ちぼうけ小説とは 待ちぼうけ小説とは、僕が勝手に呼んでいる名前だけど、待っている人やものがやってこないことを主題にした小説のことだ。待っているのに来ない、いつ来るか分からない。気になる女の子をデートに誘ったけど、やってこないときに読みたい…

ここではないどこかへ / 『アズミ・ハルコは行方不明』 山内 マリコ

地方都市に住む人々の鬱屈を描き切った傑作 『パリ行ったことないの』が凄く良かったので、同じ著者の山内マリコ作品を読んでみたけど、この『アズミ・ハルコは行方不明』も大当たり。地方都市に住む人々の鬱屈や閉塞感、上辺だけの関係、そして可能性が閉ざ…

日本三大奇書、あるいは第四、第五の奇書

日本三大奇書という言葉は本好きではない人でも聞いたことがあるのではないだろうか。日本三大奇書とは、『ドグラ・マグラ』を筆頭に、日本の推理小説におけるアンチミステリの傑作とされる三つの小説の総称だ。その三つの小説とは『ドグラ・マグラ』、『黒…

「意識高い系」と李徴の共通点 / 『山月記』 中島 敦

世の中の人は『ライ麦畑でつかまえて』、『人間失格』、『山月記』のどれかには深く心を揺さぶられるのではないかと思っている。どれも、いわゆる中二病といわれそうな内容だ。 でも、人って中二病的なものを心にいくらか抱えて生きていくんじゃないかなって…

人生の全ての選択肢を選んだら / 『ミスター・ノーバディ』 ジャコ・ヴァン・ドルマル

人生の全ての選択を選んだら ミスター・ノーバディ [DVD] 出版社/メーカー: 角川書店 発売日: 2012/10/26 メディア: DVD 購入: 2人 クリック: 2回 この商品を含むブログ (6件) を見る 人生は選択の連続だ。身近な選択であれば、どの道を通るか、昼飯は何を食…

伊坂幸太郎とタランティーノ

伊坂幸太郎とタランティーノ パルプ・フィクション(吹替版) メディア: Amazonビデオ この商品を含むブログを見る 何故か、タランティーノの映画を観た後伊坂幸太郎の小説が読みたくなってしまう。タランティーノの映画で味わえる登場人物たちの饒舌で洒脱な…

『メイド・イン・USA』だけどフランス映画 / 『メイド・イン・USA』 ジャン=リュック・ゴダール

『メイド・イン・USA』だけどフランス映画 メイド・イン・USA Blu-ray 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店 発売日: 2013/11/23 メディア: Blu-ray この商品を含むブログ (1件) を見る ヌーヴェルヴァーグを代表するジャン=リュック・ゴダール監督の作品。初期の…

少女にしか分からない倦怠感と儚さ / 『ヴァージン・スーサイズ』 ソフィア・コッポラ

思春期特有の儚さと危うさを描いたガーリーな映画 ヴァージン・スーサイズ [DVD] 出版社/メーカー: 東北新社 発売日: 2001/02/02 メディア: DVD クリック: 337回 この商品を含むブログ (279件) を見る これが女子高の雰囲気なのかなと観たあとに思った映画『…

小松菜奈がひたすらに可愛い映画 / 『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』

小松菜奈は正義 www.youtube.com 小松菜奈は可愛い。地球は太陽の周りを回っているというのが真理であるように、小松菜奈が可愛いというのはもはや真理だ。アンニュイさ、ミステリアスさ、儚さといい小松菜奈の魅力は色々ある。そんな小松菜奈の魅力が溢れた…

失われた恋の残響 / 『九月の四分の一』 大崎 善生

心の感傷的な部分に響く短編集 何故だかわからないけど、感傷的な気分に浸りたくなる夜がある。失われた恋愛や青春の終焉に対する悲しみや、上手くいかないことや潰えた夢へのやるせなさ、それらが一気に噴き出してくるときがある。そんな感傷的な気分の時に…

新しい一歩を踏み出したいあなたに / 『パリ行ったことないの』 山内 マリコ

パリが後押ししてくれる新しい一歩 パリは魅力的だ。パリコレファッションに、エッフェル塔、凱旋門、ルーヴル美術館、フォンダシオン・ルイ・ヴィトンなどファッションや芸術の中心地であるパリ。それだけでなく、『ミッドナイトインパリ』や『アメリ』、『…

誰もが虹を待っている / 「虹を待つ人」 BUMP OF CHICKEN

虹を待つということ www.youtube.com すっかりライブの定番曲として定着した「虹を待つ人」。「虹を待つ人」はアルバム『RAY』に収録されている楽曲で、バンドサウンドにシンセサイザーを合わせた今のBUMPを象徴する楽曲だ。そんな「虹を待つ人」の歌詞を文…

おしゃれは突き詰めると人の内面に帰結する説

お洒落は内面から? 「無理して服を買わなくていい。それよりも勉強して内面を磨いた方がいい」これはある服屋の店員に僕が実際言われた言葉だ。まさか、服屋の店員に服を買わなくていいと言われる日が来るとは思わなかったけど、その店員の話は凄く印象に残…

新しい戦争体験映画の誕生 / 『ダンケルク』 クリストファー・ノーラン

クリストファー・ノーラン監督が描くダンケルクの戦い 【映画パンフレット】ダンケルク DUNKIRK 出版社/メーカー: ワーナー メディア: この商品を含むブログを見る 『メメント』、『ダークナイト』、『インセプション』、『インターステラー』と次々に話題作…

村上春樹が好きな人におすすめの作家

職業としての小説家 (新潮文庫) 作者:春樹, 村上 新潮社 Amazon 日本の現代文学を代表する作家・村上春樹。巧みな比喩を多用した文体で孤独や喪失感を描き、『1Q84』や『ノルウェイの森』、『騎士団長殺し』など次々とベストセラーを生み出している。今の日…

BUMP OF CHICKENのグッズがヴェトモン・バレンシアガっぽい件について

PATHFINDERがスタート! www.excite.co.jp ついにBUMP OF CHICKEN TOUR PATHFINDERがスタート!一年ぶりのBUMPのライブと合ってかなり楽しみ。アンサーやリボンを生で聞いてみたい!BUMPのライブのことを考えるとワクワクが止まらないのですが、ライブ以外に…

死に憑りつかれた者たち / 『MISSING』 本多 孝好

死の香りが漂う短編集 この『MISSING』を読んでいると、真夜中の学校のプールが思い浮かぶ。どこか寂しげな透明感があり、死の香りが漂っている雰囲気。 収録されている5編全部が死と関係している。死に憑りつかれたもの、死に向き合い自分が生きた証を残そ…

人はみな孤独な旅人 / 『スプートニクの恋人』 村上 春樹

恋愛の痛みと不条理さを描いた『スプートニクの恋人』 22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。それは行く手のかたちあるものを残らずなぎ倒 し、片端から空に巻き上げ、理不尽に引きちぎ…

村上春樹のベストアルバム / 『騎士団長殺し』 村上 春樹

村上春樹の総集編とも言える『騎士団長殺し』 謎めいたタイトルと内容が明かされないことで同発売前から大きな注目を集め、発売当日には長蛇の列ができるなど、注目を集めている村上春樹の最新長編小説 『騎士団長殺し』。どこの書店に行っても『騎士団長殺…

『ノルウェイの森』が好きな人におすすめの小説

『ノルウェイの森』みたいな小説が読みたい! ノルウェイの森 上 (講談社文庫) 作者:村上 春樹 講談社 Amazon 『ノルウェイの森』は村上春樹の代表作として有名な小説だ。タイトルはビートルズの名曲「ノルウェイの森」に由来していて、主人公ワタナベと直子…

イメージが織りなす迷宮 / 『快楽の館』 アラン・ロブ=グリエ

イメージの反復 女の肉体に眺め入る。麻薬や人身売買が横行し、スパイが暗躍する英領香港の一郭、青い館が催す夜会。そこで出会った娼婦を手に入れるため金策に走り出す。一方では老人の不可解な死…あざやかな幻覚が紡ぎ出すエロティシズムの体験。小説の枠…

官能的な変身譚 / 『フラミンゴの村』 澤西祐典

ある日村の女たちがフラミンゴに 男が眠りから覚めると虫になってしまったのはカフカの変身、男が自尊心と羞恥心を拗らせて虎になってしまったのは中島敦の山月記。そしてこのフラミンゴの村では、女たちがフラミンゴになってしまう。有名な変身譚と比較して…

2017年はウディ・アレン監督の映画が2回も映画館で観れる

ついつい観たくなってしまうのがウディ・アレン監督の映画だ。シニカルだけどユーモアに溢れているおしゃれな映画。脱力してゆったりと観れる映画の一つだ。タイトルの通り今年はウディ・アレン監督の映画が2回も映画館で観れる!『カフェ・ソサエティ』と『…

過ぎ去ってゆく青春 / 『風の歌を聴け』 村上春樹

村上春樹の原点 「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」 この印象的な書き出しで始まるのが『風の歌を聴け』。群像新人文学賞を受賞した村上春樹のデビュー作だ。この小説は日本文学にとってエポックメイキングとな…

過ぎ去った時間の痕跡 / 『知らない町』 大内伸悟

かつて誰かがいた場所に、私は存在している youtu.be 三月の終わりごろになると、ばたばたと引っ越しシーズンになる。僕の住んでるアパートでも知り合いが新天地に引っ越したり、見知らぬ隣人が気が付くと引っ越していて、しばらくすると新しい住人がやって…