日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

人生の全ての選択肢を選んだら / 『ミスター・ノーバディ』 ジャコ・ヴァン・ドルマル

 人生の全ての選択を選んだら

ミスター・ノーバディ [DVD]

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人生は選択の連続だ。身近な選択であれば、どの道を通るか、昼飯は何を食べるか。人生を左右するものであれば、何を学ぶか、どの就職先にするか、どこに住むか、誰と結婚するか、と選択から逃れることはできない。選択肢は多いけど、人生は一度しかない。だから、必ず何かの選択肢を選ばなければならない。全ての選択肢を選びそれから決めれたら…そんな叶いそうもない願いを実現させたのがこの『ミスター・ノーバディ』だ。『バタフライ・エフェクト』や『スライディング・ドア』、『ダイアナの選択』と同様に人生の選択をテーマにした重厚な映画だ。主人公のニモは様々に分岐した人生を語りだす。母親についていったら、父親についていったら、三人の女性から誰を選ぶか。普通の人には不可能であるすべての選択肢を選んだ複数形の人生が幻想的な美しい描写で描かれる。複数の人生が描かれるため、混乱すると思いきや、主人公の髪型や服装、映像の雰囲気でうまく作り分けられている。一体ニモはどの人生を選んだのか?逆にニモはすべての選択肢を選ばなかったのか?

 

 

映画を観るうちに自分も人生のあらゆる選択肢、可能性に思いをはせていることに気づく。そして、選択を後悔することなんて必要ないことに気付く。どの選択肢にも同等の価値があり、自分は今の選択肢を選び抜いた。選んだ選択には選ばれなかった選択の分の可能性の重さがあるのだ。