伊坂幸太郎とタランティーノ
何故か、タランティーノの映画を観た後伊坂幸太郎の小説が読みたくなってしまう。タランティーノの映画で味わえる登場人物たちの饒舌で洒脱な会話に浸りたくなるからだろうか。伊坂幸太郎の小説も登場人物たちの洒脱で冗談に溢れた会話が魅力の一つだ。とあれこれ考えているうちに、他にも共通点があるんじゃないかと思い始めた。登場人物の洒脱な会話以外には、作品間のリンク、ポップカルチャーの引用、時系列を組み替えたり、秀逸な伏線をひいたりと構成が凝っているところなどなど。
作品間のリンク
タランティーノの映画では、レッドアップルというタバコはよく出てくるアイテムだし、別作品の登場人物に隠された関係があるというのはお馴染みである。伊坂作品でも作品間のリンクがよく見られる(ほとんどの作品にある)。有名なのをあげると、『ラッシュライフ』の黒澤は『重力ピエロ』にも出てきている。
時系列シャッフル
タランティーノ作品では、時系列のシャッフルが効果的に使われていて、構成が練られている。例を挙げると群像劇の『パルプ・フィクション』があり、最初と最後のシーンが繋がる構成は思わずはっとした。他にはデビュー作の『レザボア・ドックス』がある。伊坂幸太郎の小説も、ネタバレになるので作品名はあげられないけれど、時系列シャッフルが作品のカギとなっているものが多い。
個人的にタランティーノぽい雰囲気を感じる伊坂幸太郎の小説
『レザボア・ドッグス』と陽気なギャングシリーズは雰囲気が似ている。『レザボア・ドッグス』は、素性の分からない男たちが集まり、強盗をするも失敗していまい、裏切り者を探すというあらすじである。あらすじを見る限り、論理的に犯人を探しだすミステリーと思うのだが、実際は映画の大半が雑談に費やされている。陽気なギャングも、登場人物の饒舌な会話が魅力の小説である。とくに響野という登場人物はずっと喋っている。
あと、陽気なギャングシリーズでは主人公たちが背広で銀行強盗するのだが、これは『レザボア・ドッグス』のオマージュなんじゃないかなと思う。『レザボア・ドックス』でも背広で強盗に挑んでいる。背広姿でさっそうと登場するオープニングシーンが凄くセンスに溢れていてカッコいい。
マリアビートルもレザボアと雰囲気が似ている気がする。『レザボア・ドックス』は密室劇で、『マリアビートル』も新幹線での密室劇だ。あと『マリアビートル』に登場する檸檬と蜜柑というキャラクターがとにかくおしゃべりで、それがタランティーノ映画を彷彿とさせる。
構成的な面では、『ラッシュライフ』は『パルプ・フィクション』と似たものを感じる。両作とも巧みな構成の群像劇である。『ラッシュライフ』の冒頭では、ラッシュの辞書的意味を載せている。そして『パルプ・フィクション』のオープニングでもplupの辞書的意味を載せるシーンがあり、そのシーンがオマージュされているんだろうと思う。