日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

圧倒的レンガ!鈍器すぎる分厚い小説15選(文庫編)

鈍器本という言葉をご存知だろうか?凶器として使えそうなぐらい分厚い本は鈍器本と言われている。ハードカバーの本に分厚い本が多いイメージがあるかもしれないが、文庫本にも分厚い本がある。

この記事では、特に文庫本の中で特に分厚い小説を集めてみた。特に、京極夏彦などの小説が多いが、超重量級文庫を紹介する。

 

 

 

魍魎の匣 / 京極 夏彦

箱を祀る奇妙な霊能者。箱詰めにされた少女達の四肢。そして巨大な箱型の建物――箱を巡る虚妄が美少女転落事件とバラバラ殺人を結ぶ。探偵・榎木津、文士・関口、刑事・木場らがみな事件に関わり京極堂の元へ。果たして憑物(つきもの)は落とせるのか!?日本推理作家協会賞に輝いた超絶ミステリ、妖怪シリーズ第2弾。

ページ数:1060

まず紹介したいのは、京極夏彦の『魍魎の匣』だ。分厚すぎる鈍器本といえば京極夏彦を思い浮かべる人が多いだろう。本屋に行って講談社文庫の京極夏彦の棚の見てもらったら一目同然だが、京極夏彦の文庫本はとにかく分厚い。それはまるでレンガのよう。なんとページ数は1060ページ。

『魍魎の匣』は京極夏彦の人気シリーズの妖怪シリーズの第二弾だ。怪奇・幻想的な要素と歴史的な背景を巧みに組み合わせており、京極夏彦の独特な文体が特徴である。

 

 

虚実妖怪百物語 序破急 / 京極 夏彦

京極史上最長!計1900枚の超大作が一冊に。京極版"妖怪大戦争"!日本各地に妖怪が現れ始める。背後には、古今東西の魔術を極めた魔人・加藤保憲の影が……。妖怪撲滅に動き出す政府。“妖怪狩り”を始める民衆。虚構と現実が入り混じり、荒んだ空気が蔓延する中、榎木津平太郎、荒俣宏、京極夏彦らは原因究明に乗り出した。

ページ数:1392

次に紹介するのも京極夏彦の作品だ。『虚実妖怪百物語 序/破/急』はページ数1392ページを超える超鈍器本だ。内容としては、京極版"妖怪大戦争"と言えるような内容で、日本各地に妖怪が現れ始め虚構と現実が入り混じっていくというような内容だ。面白いことに小説本編に作者の京極夏彦が登場する。

 

 

絡新婦の理 / 京極 夏彦

房総の富豪、織作(おりさく)家創設の女学校に拠(よ)る美貌の堕天使と、血塗られた鑿(のみ)をふるう目潰し魔。連続殺人は八方に張り巡らせた蜘蛛の巣となって刑事・木場らを眩惑し、搦め捕る。中心に陣取るのは誰か?シリーズ第5弾。

ページ数:1408

またまた京極夏彦の作品を紹介する。やはり、鈍器本といえば京極夏彦抜きで語ることができない。『絡新婦の理』は、『魍魎の匣』と同じシリーズの第5弾の作品だ。
ページ数は1408ページだ。ここまで来るとページ数が1000超えるのがデフォルトになっている。

 

 

匣の中の失落 / 竹本 健治

推理小説マニアの大学生・曳間が、密室で殺害された。しかも仲間が書いている小説の予言通りに。現実と虚構の狭間に出現する5つの《さかさまの密室》とは? '78年、弱冠22歳の青年によって書かれたこの処女作は「新本格の原点」、「第4の奇書」と呼ばれる伝説の書となった。

ページ数:832

このまま行くと、分厚い小説ではなく、京極夏彦の小説紹介になってしまうので別の作家を紹介する。

匣の中の失楽』は、竹本健治による推理小説で、ミステリ史に残る問題作だ。この小説は竹本のデビュー作である。『匣の中の失落』は、探偵小説でありながら探偵小説を否定する、アンチ・ミステリという体裁をとっている。小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』、夢野久作の『ドグラ・マグラ』、中井英夫の『虚無への供物』といった、いわゆる三大奇書に強い影響を受けており作品となっている。これら三大奇書に『匣の中の失楽』を加えて四大奇書と呼ばれている。

物語は、推理小説マニアの大学生・曳間了が密室で殺害されるところから始まる。しかも、仲間が書いている小説の予言通りに。章ごとに虚実が反転するというメタフィクション的な構成になっており、読者は虚構と現実に挟まれる酩酊感を味わうことができる。

 

 

白夜行 / 東野 圭吾

1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々と浮かぶが、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と「容疑者」の娘・西本雪穂――暗い目をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別の道を歩んでいく。二人の周囲に見え隠れする、いくつもの恐るべき犯罪。だが、証拠は何もない。そして19年……。

ページ数:827

白夜行』は、東野圭吾の代表作とも言えるミステリ小説だ。犯罪に関わった少年と少女の人生と犯罪を圧倒的な描写力で描いた名作だ。映画化もされている。

ページ数は827ページだ。鈍器さゆえに、この本自体が殺人事件の凶器になるかもしれない。

 

 

幻夜 / 東野 圭吾

1995年、阪神淡路大震災。その混乱のまっただ中で、衝動的に殺人を犯してしまった男。それを目撃していた女。二人は手を組み、東京に出ていく。女は、野心を実現するためには手段を選ばない。男は、女を深く愛するがゆえに、彼女の指示のまま、悪事に手を染めていく。やがて成功を極めた女の、思いもかけない真の姿が浮かびあがってくる。彼女はいったい何者なのか――謎が謎を呼び、伏線に伏線が絡む。驚愕のラストシーンまで一気呵成の読みごたえ

ページ数:792

『白夜行』と並ぶぐらい分厚い東野圭吾作品が『幻夜』だ。二人の男女が犯罪に手を染めつつも、自らの野心に従って生きていく様を描いたミステリ作品だ。

 

 

5 / 佐藤 正午

本当の愛を探し求める孤独な魂たちへ。新感覚の大人の恋愛小説。結婚8年目の記念にバリ島を訪れた志郎と真智子。旅行中に起こったある出来事がきっかけで、志郎の中に埋もれていたかつての愛の記憶が蘇る。洗練された筆致で交錯した人間模様を描く、会心の恋愛小説。

ページ数:672

日本の小説家の中でトップクラスに小説巧者なのが佐藤正午だ。知名度は低いかもしれないが、小説の面白さは抜群だ。佐藤正午作品の中でも特に分厚いのが『』という恋愛小説だ。

 

 

有限と微小のパン / 森 博嗣

日本最大のソフトメーカが経営するテーマパークを訪れた西之園萌絵と友人・牧野洋子、反町愛。パークでは過去に「シードラゴンの事件」と呼ばれる死体消失事件があったという。萌絵たちを待ち受ける新たな事件、そして謎。核心に存在する、偉大な知性の正体は……。S&Mシリーズの金字塔となる傑作長編。

ページ数:743

『すべてがFになる』で有名な森博嗣も鈍器本を発表している。森博嗣作品の中でずば抜けて分厚いのが『有限と微小のパン』だ。

森博嗣の大人気シリーズS&Mシリーズの作品でもある。テーマパークを舞台に事件が起こっていくというような内容だ。

 

 

細雪 / 谷崎 潤一郎

『細雪』(ささめゆき)は、谷崎潤一郎の長編小説。1936年(昭和11年)秋から1941年(昭和16年)春までの大阪の旧家を舞台に、4姉妹の日常生活の悲喜こもごもを綴った作品。阪神間モダニズム時代の阪神間の生活文化を描いた作品としても知られ、全編の会話が船場言葉で書かれている。

ページ数:936

現代作家だけではなく、昔の文豪も鈍器本を発表している。『細雪』は、文豪・谷崎潤一郎の代表作だ。阪神間モダニズム時代の阪神間の生活文化を描いた作品でもあり、会話文は船場言葉で書かれている。

 

夜光虫 / 馳 星周

プロ野球界のヒーロー加倉昭彦は栄光に彩られた人生を送るはずだった。しかし、肩の故障が彼を襲う。引退、事業の失敗、莫大な借金……諦めきれない加倉は台湾に渡り、八百長野球に手を染めた。

ページ数:816

夜光虫』は816ページにわたる鈍器的ハードボイルドだ。

 

 

アポトス / 島田 荘司

虚栄の都・ハリウッドに血でただれた顔の「怪物」が出没する。ホラー作家が首を切断され、嬰児が次々と誘拐される事件の真相は何か。女優・松崎レオナの主演映画『サロメ』の撮影が行われる死海の「塩の宮殿」でも惨劇は繰り返された。甦る吸血鬼の恐怖に御手洗潔が立ち向かう。渾身のミステリー巨編が新たな地平を開く。

ページ数:908

アポトス』は、日本を代表するミステリ作家島田荘司の鈍器的ミステリだ。

 

 

哲学者の密室 / 笠井 潔

開口部を完璧に閉ざされたダッソー家で、厳重に施錠され、監視下にあった部屋で滞在客の死体が発見される。現場に遺されていたナチス親衛隊の短剣と死体の謎を追ううちに30年前の三重密室殺人事件が浮かび上がる。現象学的本質直感によって密室ばかりか、その背後の「死の哲学」の謎をも解き明かしていく矢吹駆。

ページ数:1182

哲学者の密室』は、笠井潔によるミステリ小説だ。1970年代のパリを舞台に、謎の日本人青年矢吹駆と大学生ナディア・モガールの活躍を描いた、連作ミステリーの第4作である。

本作は『週刊文春ミステリーベスト10』第二位(国内部門)に選ばれたことがある。

 

 

鍵の掛かった男 / 有栖川 有栖

中之島のホテルで梨田稔(69)が死んだ。警察は自殺と断定。だが同ホテルが定宿の作家・影浦浪子は疑問を持った。彼はスイートに5年住み周囲に愛され2億円預金があった。影浦は死の謎の解明を推理作家の有栖川有栖と友人の火村英生に依頼。が調査は難航。彼の人生は闇で鍵の掛かった状態だった。梨田とは誰か? 他殺なら犯人は? 驚愕の悲劇的結末!

ページ数:736

有栖川有栖も鈍器本を書いている。『鍵の掛かった男』は、悲劇的結末が特徴のミステリ小説だ。

 

 

大江健三郎自選短編 / 大江 健三郎

「奇妙な仕事」「飼育」「セヴンティーン」「「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち」など、デビュー作から中期の連作を経て後期まで、全二三篇を収録。作家自選のベスト版であると同時に、本書刊行にあたり全収録作品に加筆修訂をほどこした最終定本。性・政治・祈り・赦し・救済など、大江文学の主題が燦めく、ノーベル賞作家大江健三郎のエッセンス。

ページ数:848

大江健三郎自選短編』は、大江健三郎の短編・中編を集めたベストアルバム的な小説だ。

最近は村上春樹がノーベル賞を受賞するかで盛り上がっているが、大江健三郎は日本で2番目にノーベル文学賞を受賞した作家である。大江健三郎の名作が網羅されているのでファン必見の一冊だ。大江健三郎の入門書としても良いかもしれない。

 

 

天帝のはしたなき果実 / 古野 まほろ

勁草館高校の吹奏楽部に所属する古野まほろは、コンテストでの優勝を目指し日夜猛練習に励んでいた。そんな中、学園の謎を追っていた級友が斬首死体となって発見される。犯人は誰か?吹奏楽部のメンバーによる壮絶な推理合戦の幕が上がる!青春×SF×幻想の要素を盛り込んだ、最上かつ型破りな伝説の本格ミステリ小説が完全改稿され文庫化。

ページ数:765

天帝のはしたなき果実』は、古野まほろのデビュー作である。メフィスト賞を受賞した作品だ。新しい日本三大奇書があったら確実に入るのではないかと思う。

 

 

この記事では一冊で分厚い文庫本を紹介した。なので、綾辻行人の『暗黒館の殺人』のように分冊になっているものは省いている。読むのに時間はかかると思うが、ぜひ鈍器本を楽しんでみてほしい。