日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

新しい戦争体験映画の誕生 / 『ダンケルク』 クリストファー・ノーラン

クリストファー・ノーラン監督が描くダンケルクの戦い

 

メメント』、『ダークナイト』、『インセプション』、『インターステラー』と次々に話題作を撮り続け、高い称賛を浴びている天才映画監督クリストファー・ノーラン。毎回話題になるノーラン監督の最新作は「ダンケルクの戦い」という実話を基にした、戦争映画、いや、戦争体験映画だ。どこまでも実写にこだわった圧倒的な映像は、観るものすべてを戦争の舞台に引きずり込む。この映画は絶対映画館で観るべき!そしてIMAXで観るべき!

 

ダンケルクの戦いとは

ダンケルクの戦いは、第二次世界大戦西部戦線における戦闘の一つで、ドイツ軍のフランス侵攻の1940年5月24日から6月4日の間に起こった戦闘である。追い詰められた英仏軍は、この戦闘でドイツ軍の攻勢を防ぎながら、輸送船の他に小型艇、駆逐艦、民間船などすべてを動員して、イギリス本国に向けて40万人の将兵を脱出させる作戦(ダイナモ作戦)を実行した。

ダンケルクの戦い - Wikipedia

日本人にはなじみの薄いダンケルクの戦いだが、イギリスでは有名な話で不屈の精神のことをダンケルク・スピリットというらしい。この『ダンケルク』で描かれるのは、ダンケルクに追い詰められた40万人がいかにして逃げて生き残るかである。戦争映画に見えるが、敵に立ち向かい戦うというのは空の空軍パートでしか描かれない。陸や海のパートでは、ひたすらに兵士たちが逃げる様子が描かれている。

 

 

ノーラン監督らしさ溢れる映画

ここらへんから内容に深く触れていくので注意!最初にダンケルクの戦いという実話を基に映画を作ると知った時は、ノーラン監督作品ではよく使われる時系列シャッフル(フォロウィングメメントプレステージ)やクロスカッティング(インセプションバットマンビギンズ)が使われたりすることはないのかなと思っていた。しかしこの『ダンケルク』では陸・海・空の出来事がそれぞれ一週間・一日・一時間のそれぞれ異なる時間軸で語られていく。三つの視点、三つの時間軸が上手くクロスカッティングされ、息をつく暇もなく、実際に戦場にいるかのような緊張感を味わうことになる。時計の針の音のBGMが効果的に使われていて、時間が限られているという切迫感が増してくる。この『ダンケルク』もこれまでのノーラン作品と同様に実写に拘って取られている。だから、映像のリアリティーというか迫力が段違いだ。戦争そのもの、つまり戦場にいるということはどういうことなのかを体験できる映画だ。まさに、ゴーグルなしのヴァーチャルリアリティ!