日々の栞

本、映画、ファッションについて気ままに書く。理系の元書店員。

村上 春樹

兄妹の関係性の変化 / 「ファミリー・アフェア」 村上 春樹

「ファミリー・アフェア」は村上春樹の短編小説の中でも個人的に大好きな小説だ。僕が「ファミリー・アフェア」が好きな理由は、文章のウィットにある。この小説では、主人公が冗談好きというのもあって、とにかく気の利いた表現が多くて面白いのだ。また主…

村上春樹とユニクロがコラボ!村上春樹UTを買ってみたのでレビューする

村上春樹とユニクロがコラボして、村上春樹の小説を題材にしたUTが発売された。これには結構驚いた。まさかユニクロと村上春樹がコラボするなんて。やれやれ。 UTからは『1Q84』や『ダンスダンスダンス』、『ノルウェイの森』、『スプートニクの恋人』、『19…

謎解き『羊をめぐる冒険』 / 「依頼」と「代行」による「宝探し」の物語

羊をめぐる冒険 (講談社文庫) 作者:村上春樹 発売日: 2016/07/01 メディア: Kindle版 物語にはいくつかの基本パターンみたいなものがある。有名なもので言えばオイディプス王に見られる様な「父殺し」の物語骨格がある。「父」というモチーフは色んな文学作…

新しい定番になるか?教科書に載っている村上春樹作品のまとめ

中高生の国語の授業で扱う小説といえば、中島敦の『山月記』や芥川龍之介の『羅生門』、夏目漱石の『こころ』があるだろう。 国語の教科書に載っている小説って昔の作家が多い印象だが、そうでもない。現代日本を代表する村上春樹の小説も新しい定番として国…

残されたモノが突きつける存在の不在 /「トニー滝谷」 村上 春樹

村上春樹は喪失をテーマに数多くの小説を書いてきた。有名な『ノルウェイの森』もそうだし、『羊をめぐる冒険』や『風の歌を聴け』もそうだ。様々な角度や視点から「喪失」を描いてきた村上春樹だが、「トニー滝谷」という短編は残された「遺品」が存在の不…

とんがり焼は村上春樹の文壇批評? / 『とんがり焼の盛衰』 村上 春樹

「とんがり焼」と聞くと「とんがりコーン」の事を思い浮かべる。名前がほとんど同じだし、「とんがり焼」は「とんがりコーン 」のことを言っているのだろうと思っていた。「とんがり焼き」とは何ぞやと思う人が多いと思うが、知らない人が大半だろう。「とん…

謎解き『風の歌を聴け』 / タイトルの『風の歌を聴け』ってどう言う意味?

風の歌を聴け (講談社文庫) 作者:村上春樹 発売日: 2016/07/01 メディア: Kindle版 村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』。短い小説でありながらも、文体が完成されていて、様々な謎が散りばめられている。単純に読めば、ほろ苦い夏の出来事を描いた小説で…

映画でもムラカミワールドを堪能!村上春樹原作の映画まとめ

日本を代表し、世界中で読まれている村上春樹作品。卓越した比喩と、謎めいたストーリー、ムラカミワールドとしか形容のできない唯一無二の世界観、村上春樹の魅力を語り出すとキリがない。村上春樹作品が持つ雰囲気は映像化するのが難しいと思うのだが、こ…

なぜ村上春樹はノーベル文学賞最有力候補として毎年騒がれるのか?

www.nikkansports.com 日も短くなり、Tシャツだけでは肌寒くなる10月になりましたね。10月といえばそう、「村上春樹ノーベル文学賞受賞なるか」が話題になる季節です。ここ数年ぐらい、毎年10月になるとその話題で騒がしくなる。テレビでハルキストの集まり…

運命の人に出会うことについて / 「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」 村上 春樹

「四月のある晴れた朝、原宿の裏通りで僕は100パーセントの女の子とすれ違う。」こんな印象的な書き出しで始まるのが、「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」 だ。とても印象的なタイトルだ。この小説は、村上春樹の比喩の卓越…

村上春樹初心者でも読みやすい短編集 / 『カンガルー日和』 村上 春樹

『カンガルー日和』は、村上春樹の短編小説の中でもショートショートに近い小説が集められた短編集だ。印象的な短編が多く収録されていて、村上春樹初心者にもオススメの短編集だ。収録作品を一つ一つ見ていこう。 カンガルー日和 タクシーに乗った吸血鬼 あ…

人生に対する違和感 / 「一人称単数」 村上 春樹

「一人称単数」とは世界のひとかけらを切り取る「単眼」のことだ。しかしその切り口が増えていけばいくほど、「単眼」はきりなく絡み合った「複眼」となる。そしてそこでは、私はもう私でなくなり、僕はもう僕でなくなっていく。そして、そう、あなたはもう…

吸血鬼は存在するか? / 「タクシーに乗った吸血鬼」 村上 春樹

皆さんは吸血鬼の存在を信じるだろうか?しかも吸血鬼がタクシーの運転手だったら? 「タクシーに乗った吸血鬼」という『カンガルー日和』の短編小説は、文字通りタクシーの運転手が吸血鬼だったという話だ。いかにも村上春樹らしい言い回しが随所に散りばめ…

謎解き『ノルウェイの森』/ ノルウェイの森(Norwegin Wood)に込められた意味は何か?

村上春樹の作品にはビートルズの楽曲のタイトルが使われているのが多い。ビートルズの楽曲をタイトルに有する村上春樹の作品の中でも最も有名なのが『ノルウェイの森』だろう。作中でも「ノルウェイの森」は重要なモチーフだ。主人公ワタナベを過去の世界に…

新海誠に見る村上春樹の影響と共通点

秒速5センチメートル 発売日: 2014/12/19 メディア: Prime Video 美しい情景描写、感傷的なモノローグ、センチメンタルな男女の物語、そしてセカイ系...など、新海誠のアニメ作品は作家性がかなり強い。という独自の路線でアニメを作り続けてい『秒速5センチ…

翻訳家としての村上春樹!ハルキが翻訳した海外小説まとめ

村上春樹といえば『ノルウェイの森』や『ねじまき鳥クロニクル』、『1Q84』などの小説で知られている日本を代表する小説家だ。しかし、それだけでなく海外小説の翻訳も手掛けており、海外文学の紹介や翻訳を手がけるといった一面も持っている。村上春樹が手…

謎解き『1Q84 』 / 『1Q84』というタイトルと小説の構成について

1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫) 作者:春樹, 村上 発売日: 2012/03/28 メディア: ペーパーバック 社会現象を引き起こした村上春樹の『1Q84』。謎めいたストーリーが話題を呼び、ベストセラーとなった。『1Q84』には回収されなかった謎が数多く残され、…

たち切るも・たち切られるも・石のまくら / 「石のまくらに」 村上 春樹

村上春樹の小説世界では、すんなりと男女が関係を持つ。それはもう息を吸うように。「石のまくらに」という短編も村上春樹にありがちな男女が流れで関係を持つ系の話だ。この短編は最新刊の短編集『一人称単数』に収録されている。元は文學界に掲載された「…

システムと魂 / 「壁と卵」-エルサレム賞・受賞のあいさつ- 村上 春樹

もしここに硬い大きな壁があり、そこにぶつかって割れる卵があったとしたら、私は常に卵の側に立ちます。 この文章は、村上春樹がエルサレム賞の受賞スピーチの中の一文だ。村上春樹のスピーチの中でも一番有名なものかもしれない。村上春樹の小説そのものも…

完璧な「翻訳」をめぐる冒険 / 『ドリーミング村上春樹』

10/19公開『ドリーミング村上春樹』公式予告編 完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。 村上春樹読者なら大体が知っている有名な文章だろう。『風の歌を聞け』の冒頭の文章だ。文字通り、村上春樹はここから始まり、今で…

村上春樹の新作短編小説集「一人称単数」が7月に発売!

一人称単数 (文春e-book) 作者:村上 春樹 発売日: 2020/07/18 メディア: Kindle版 村上春樹の短編集が6年ぶりに発売されることになった。タイトルは「一人称単数」。『風の歌を聞け』でデビューしてから、「僕」という一人称の可能性を追求してきた村上春樹…

父と戦争と歴史 / 『猫を棄てる 父親について語るとき』 村上 春樹

村上春樹が父について語ったエッセイ ある夏の日、僕は父親と一緒に猫を海岸に棄てに行った。歴史は過去のものではない。このことはいつか書かなくてはと、長いあいだ思っていた―――村上文学のあるルーツ 『猫を棄てる 父親について語るときに僕の語ること』…

「春樹チルドレン」だと思う作家を列挙してみる

「春樹チルドレン」とは 職業としての小説家 (新潮文庫) 作者: 村上春樹 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/09/28 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (17件) を見る 昔、小泉チルドレンという言葉が流行った。ちょうど僕が小学生の頃だろうか。かつて…

35歳は人生の折り返し地点 / 「プールサイド」 村上 春樹

『回転木馬のデッド・ヒート』の名作短編 小説の中には、若いときに読むべきものと、年を取ってからじゃないと心に響かないものがある。村上春樹の「プールサイド」という短編は後者に属すると思う。大学生の時に読んだときよりも25歳になった今読み返した方…

村上春樹の『騎士団長殺し』が遂に文庫化!

村上春樹のベストアルバム『騎士団長殺し』が文庫化 騎士団長殺し 第1部: 顕れるイデア編(上) (新潮文庫) 作者: 村上春樹 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/02/28 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 騎士団長殺し 第1部: 顕れるイデア編(…

村上春樹版「不思議の国のアリス」 / 『羊男のクリスマス』 村上 春樹

羊男とクリスマス 穴に落ちて不思議な世界に迷いこむ村上春樹版不思議の国のアリス。羊男、双子など村上春樹の小説のモチーフが随所に散りばめられていた。佐々木マキさんの絵が、村上春樹の奇妙な世界観に合っていて、大人のための絵本になっていた。シュー…

そうだ、村上春樹を読もう!初心者におススメの村上春樹作品

今や日本を代表する作家・村上春樹。その人気は日本にとどまらず、世界中で読まれている。洒脱な表現や比喩と、巧みなストーリーテリング、魅力的な謎解き要素などの魅力が詰まった村上春樹作品。これから村上春樹を読むという人のために、初心者におススメ…

「村上春樹が新ノーベル文学賞最終候補」について思うこと

村上春樹が正式に候補に!? www.jiji.com もはや秋の風物詩ともいえる「村上春樹はノーベル文学賞を受賞するのか」祭り。ハルキストたちがカフェに集まって、今年こそは受賞するとインタビューに答えている風景は見慣れた景色だ。そして、村上春樹が受賞を逃…

トラウマに向き合うということ / 「七番目の男」 村上 春樹

「七番目の男」は村上春樹の短編の中でも最高傑作の一つだと思う 「七番目の男」は『レキシントンの幽霊』に収録された村上春樹の短編だ。「七番目の男」は、別の「鏡」という短編と同じスタイルを踏襲している。そのスタイルというのは、来客たちが自分の体…

【やれやれ】村上春樹の小説にありがちなこと

村上春樹の小説にありがちなこと 職業としての小説家 (新潮文庫) 作者: 村上春樹 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/09/28 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (17件) を見る 現代日本文学シーンを牽引する村上春樹。その村上春樹の小説にありがちなこ…