日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

村上春樹の世界観をオーディブルで味わう!Audibleで聴ける村上春樹作品まとめ

Amazonの「耳で聴く」読書、Audible(オーディブル)が、2022年1月から聴き放題に移行したのに伴い、村上春樹の作品が10作品オーディオブック化されるが決定した。

村上春樹作品は海外ではオーディオブック化されていたが、日本でオーディオブック化されるのはこれが初めてだ。

制作予定の作品は、『1Q84』、『ねじまき鳥クロニクル』、『騎士団長殺し』、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』、『海辺のカフカ』、『螢・納屋を焼く・その他の短編』、『東京奇譚集』、『神の子どもたちはみな踊る』、『職業としての小説家』、『辺境・近境』の10作品だ。

村上春樹作品の世界観をオーディブルに落とし込むにあたり、選ばれたナレーター陣もかなり豪華だ。『ねじまき鳥クロニクル』を藤木直人、『騎士団長殺し』を高橋一生、『海辺のカフカ』を木村佳乃、『職業としての小説家』を小澤征悦、『東京奇譚集』をイッセー尾形のナレーターで配信予定だ。

 

この記事では、Audibleで配信予定の村上春樹のタイトル、ナレーターを紹介する

 

        

 

Audible(オーディブル)って何?

そもそも、Audible (オーディブル)とは何かというところから説明しよう。

Audible (オーディブル)とは、「本を聴く」という新しい読書体験だ。スマホのアプリを使えば、いつでもどこでも耳で読書ができる。移動中や作業中など、いつでもどこでも読書ができ、オフライン再生も可能だ

本は、プロのナレーターや俳優、女優によって読み上げられていて、通勤時間や家事の合間など、日常のあらゆる時間に読書を取り入れることができる。なかなか便利なサービスだ。

Audible (オーディブル)はAmazonから提供されている。Amazonが提供しているサービスとあってか、ラインナップは約40万タイトル程度ある。ジャンルは、小説にビジネス書、自己啓発書、ライトノベル、英会話、洋書と幅広い。やれやれ。

Audibleでは単品購入することもできるが、どちらかというと聴き放題プランの方がおすすめだ。Audibleの聴き放題プランだが、月額1,500円(税込)のサブスクで12万以上の作品が聴き放題になる。

 

村上春樹からのコメント

作品のオーディオブック化について、村上春樹はこうコメントしている。

僕は車を運転しながら、よく小説の朗読を聴いています。僕の場合、どちらかといえば古典作品を「聴く」ことが多いんだけど、自分の小説がほとんど同時代的に「耳で読まれる」というのは、嬉しいようでもあり、また少しばかり気恥ずかしいようでもあります。でもこれからはおそらく、多様な形式をとって小説は読まれていくのだろうし、作家の側も多かれ少なかれ、そういう新しい環境を念頭に置いて作品を書いていくことになるのだろうと思います。これまでになかった新しい可能性が生まれるといいと思う。

引用元:聴く読書「Audible」が聴き放題制へ。村上春樹やDC作品配信 - AV Watch

村上春樹作品の中でも朗読は重要なキーファクターとなることもある。映画化もされた「ドライブ・マイ・カー」では、主人公は『ワーニャ伯父さん』を朗読しており、作品において重要なシーンとなっている。

Audibleでも広がる村上春樹ワールド、ものすごく楽しみだ。村上春樹のオーディオブック化はAudibleが独占しているようだ。村上春樹のオーディオブックが聴きたいなら、AmazonのAudibleに登録するしかない。

 

 

 

オーディオブック化された村上春樹作品まとめ

それでは、今回オーディオブック化された村上春樹作品を紹介する。

今回オーディブルで聴けるようになった村上春樹作品はいずれも新潮社から出版されている作品だ。講談社や文藝春秋から出ている作品もオーディブルで聴けるようになって欲しいものだ。

 

『ねじまき鳥クロニクル』 (ナレーター:藤木 直人)

ねじまき鳥が世界のねじを巻くことをやめたとき、平和な郊外住宅地は、底知れぬ闇の奥へと静かに傾斜を始める…。駅前のクリーニング店から意識の井戸の底まで、ねじのありかを求めて探索の年代記は開始される。

ねじまき鳥クロニクル』は村上春樹の最高傑作との呼び声が高い作品だ。何が村上春樹の最高傑作かというのは意見の分かれるところだと思うけれど、個人的には『ねじまき鳥クロニクル』は最高傑作だと思っている。日本だけではなく、海外でも広く読まれていて評価が高い。海外に翻訳された村上春樹の作品に書かれている作家紹介にも『ねじまき鳥クロニクル』が代表作と書かれていることが多い。

妻の失踪というスケールの小さい話から、歴史や暴力などの壮大なテーマに繋がっていくのは圧巻。ストーリーテリングもさることながら、文章も素晴らしく、描写に迫力がある。特に皮剥の描写は秀逸すぎて、トラウマもの。話の構成的に『1Q84』と対になるような作品だ。

ナレーターを担当するのは、藤木直人だ。なんか主人公の「僕」の雰囲気にあっているような気がする。こうやって村上春樹の小説を「聴いて」みると、村上春樹の文章ってリズム感がいいよなって改めて思う。

 

 

『海辺のカフカ』 (ナレーター:木村 佳乃)

「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」――15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真……。

海辺のカフカ』は、15歳の『僕』とナカタさんを主人公とする、エディプス王の悲劇を下敷きにした物語だ。『ねじまき鳥クロニクル』に引き続き暴力というテーマが扱われている。2つの話がパラレルに展開していく。クライマックスの場面は、村上春樹でしか味わえないような深い余韻を与えてくれる。

ナレーターを担当するのは、木村佳乃だ。村上春樹の世界観をどう彩るのか。

 

 

『騎士団長殺し』 (ナレーター:高橋 一生)

一枚の絵が、秘密の扉を開ける……妻と別離し、傷心のまま、海を望む小暗い森の山荘に暮らす孤独な36歳の画家。ある日、緑濃い谷の向こうから謎めいた銀髪の隣人が現れ、主人公に奇妙な事が起き始める。雑木林の古い石室、不思議な鈴、屋根裏に棲むみみずく、そして「騎士団長」――ユーモアとメタファーに満ちた最高の長編小説!

騎士団長殺し』は、村上春樹の小説を構成するアイテムたちが数多く登場し、村上春樹のベストアルバムみたいな小説だ。

また、人称が、『海辺のカフカ』・『1Q84』の時の三人称から、初期作品で使われていた一人称(「僕」ではなく「私」だが)になっていて、雰囲気も初期作品に近いものになっている。

特に『ねじまき鳥クロニクル』に雰囲気が近いなと感じた。僕はねじまき鳥クロニクルぐらいまでの初期作品が好きなので、『騎士団長殺し』はかなり好きだなと。

ナレーターを担当するのは、高橋一生だ。村上春樹作品と高橋一生はすごく雰囲気があっていると思うのは僕だけだろうか。

 

 

『螢・納屋を焼く・その他の短編』 (ナレーター:松山 ケンイチ)

もう戻っては来ないあの時の、まなざし、語らい、想い、そして痛み。リリックな七つの短編。

長編小説だけでなく、村上春樹の短編小説もオーディオブック化されている。『螢・納屋を焼く・その他の短編』は、村上春樹を代表する短編がいくつか収録された短編集だ。

」は、『ノルウェイの森』の原形となった作品で、深い喪失感を描いている。「納屋を焼く」は、ホラーテイストの作品で、世にも奇妙な物語のような不気味な世界が広がっている。「納屋を焼く」ということの意味を考えさせられる小説だ。韓国でも映画化もされている。

ナレーターを担当するのは松山ケンイチだ。松山ケンイチは、『ノルウェイの森』を映画化した際に主人公のワタナベを演じていた。『ノルウェイの森』の主人公を演じていた松山ケンイチが『ノルウェイの森』の原形である「螢」を朗読するのは熱い展開だなと思う。

 

 

『神の子どもたちはみな踊る』 (ナレーター:仲野 太賀)

1995年1月、地震はすべてを一瞬のうちに壊滅させた。そして2月、流木が燃える冬の海岸で、あるいは、小箱を携えた男が向かった釧路で、かえるくんが地底でみみずくんと闘う東京で、世界はしずかに共振をはじめる……。大地は裂けた。神は、いないのかもしれない。でも、おそらく、あの震災のずっと前から、ぼくたちは内なる廃墟を抱えていた――。深い闇の中に光を放つ6つの黙示録。

神の子どもたちはみな踊る』は、阪神淡路大震災を題材にした短編集だ。

『神の子どもたちはみな踊る』という連作短編集は元々「連作『地震のあとで』」という通しタイトルで発表されている。「地震のあとで (After the quake)」とあるように、『神の子どもたちはみな踊る』は1995年1月17日の阪神淡路大震災に影響を受けて書かれた作品をまとめた短編集だ。しかし舞台は神戸ではなく、被災地から遠く離れた場所(釧路、茨城、千葉、タイ、東京)が舞台になっており、作品中の設定は1995年2月だ。これは阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件という2つのカタストロフィに挟まれた時期だ。

「神の子どもたちはみな踊る」や「タイランド」、「かえるくん、東京を救う」、「蜂蜜パイ」などが収録されている。中でも「蜂蜜パイ」は、村上春樹の短編の中でも名作と言われている。

ナレーターを担当するのは、仲野太賀だ。

 

 

『東京奇譚集』 (ナレーター:イッセー尾形)

肉親の失踪、理不尽な死別、名前の忘却……。大切なものを突然に奪われた人々が、都会の片隅で迷い込んだのは、偶然と驚きにみちた世界だった。孤独なピアノ調律師の心に兆した微かな光の行方を追う「偶然の旅人」。サーファーの息子を喪くした母の人生を描く「ハナレイ・ベイ」など、見慣れた世界の一瞬の盲点にかき消えたものたちの不可思議な運命を辿る5つの物語。

東京を舞台にした不可思議な話をまとめたのが『東京奇譚集』という短編集だ。人から名前を奪い取る「品川猿」など、不可思議な短編小説が多く収録されている。

ナレーターを担当するのは、イッセー尾形だ。

 

 

『職業としての小説家』 (ナレーター:小澤 征悦)

いま、村上春樹が語り始める――小説家は寛容な人種なのか……。村上さんは小説家になった頃を振り返り、文学賞について、オリジナリティーについて深く考えます。さて、何を書けばいいのか? どんな人物を登場させようか? 誰のために書くのか? と問いかけ、時間を味方につけて長編小説を書くこと、小説とはどこまでも個人的でフィジカルな営みなのだと具体的に語ります。小説が翻訳され、海外へ出て行って新しいフロンティアを切り拓いた体験、学校について思うこと、故・河合隼雄先生との出会いや物語論など、この本には小説家村上春樹の生きる姿勢、アイデンティティーの在り処がすべて刻印されています。生き生きと、真摯に誠実に――。

職業としての小説家』は、村上春樹が小説や文学賞などについて語ったエッセイだ。村上春樹といえばノーベル文学賞候補として騒がれているが、文学賞のことを村上春樹はどう思っているのかなど書いてある。なかなか面白いので、ぜひ聞いてみてほしい。

 

 

『1Q84』 (ナレーター:杏、柄本 時生)

1Q84年──私はこの新しい世界をそのように呼ぶことにしよう、青豆はそう決めた。Qはquestion markのQだ。疑問を背負ったもの。彼女は歩きながら一人で肯いた。好もうが好むまいが、私は今この「1Q84年」に身を置いている。私の知っていた1984年はもうどこにも存在しない。……ヤナーチェックの『シンフォニエッタ』に導かれて、主人公・青豆と天吾の不思議な物語がはじまる。

1Q84』は社会現象にもなった村上春樹のベストセラーだ。単行本・文庫の累計部数はなんと約860万部という驚異的な数字である。ミステリアスな登場人物とストーリーが話題になり、多数の人が買い求めるなど社会現象にもなった。

謎の宗教団体、「空気さなぎ」という不思議な小説、リトルピープル、ミステリアスな少女ふかえり、と謎めいた要素がてんこ盛りで、ページをめくる手が止まらなくなる。

ヤナーチェクのシンフォニエッタが壮大な物語の始まりを告げ、心踊る展開。面白くない訳がない!壮大な物語がどのように収束するのか気になってページをめくる手が止まらない。しかし、宗教団体などの社会的な問題(大きな物語)が個人の恋愛(小さな物語)に収束していくのは個人的に評価の分かれるところ。

ナレーターを担当するのは、杏と柄本時生だ。

 

 

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』 (ナレーター:大森 南朋)

高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は、静謐な世界を舞台にした大人向けのファンタジー小説だ。村上春樹独特のクセが少なく、初めて村上春樹を読む人にも薦めたい。この作品で村上春樹は第21回谷崎潤一郎賞を受賞している。

不思議な異世界を描いた「世界の終り」とスリリングな展開が繰り広げられる「ハードボイルド・ワンダーランド」が並行(パラレル)に進行していく構成になっている。進むにつれて、2つの世界が徐々に繋がっていくのだ。「計算士」や「組織(システム)」、「記号士」、「工場(ファクトリー)」など謎めいた組織が暗躍していて、謎めいた組織は何なのが気になってページをめくる手が止まらなくなる。この作品は、読者を日常から離れた不可思議な世界に読者を連れていってくれる。

ナレーターを担当するのは、大森 南朋だ。

 

 

『辺境・近境』 (ナレーター:永山 瑛太)

久しぶりにリュックを肩にかけた。「うん、これだよ、この感じなんだ」めざすはモンゴル草原、北米横断、砂埃舞うメキシコの町……。NY郊外の超豪華コッテージに圧倒され、無人の島・からす島では虫の大群の大襲撃! 旅の最後は震災に見舞われた故郷・神戸。ご存じ、写真のエイゾー君と、讃岐のディープなうどん紀行には、安西水丸画伯も飛び入り、ムラカミの旅は続きます。

村上春樹のエッセイ『辺境・近境』もオーディブルで聴けるようになる。モンゴル草原などの「辺境」と、神戸といった「近境」について書かれた旅行記だ。

ナレーターは、永山瑛太だ。

 

 

Audibleの利用開始方法

Audibleで村上春樹を聴きたくなっただろうか。今すぐ聴きたいという人のために、Audibleの登録について簡単に説明する。

 

Audibleの利用開始は簡単で、最低限次のことをすれば大丈夫だ。

 

①AmazonのIDを用意する

②WebブラウザでAudible会員に登録

③専用のアプリをダウンロード

 

Amazonのアカウントを持っていない人は、まずはAmazonアカウントから作ろう

また、スマホのAmazonのアプリからは登録できないので、手続きはブラウザから始めよう。

料金プランだが、Audibleで色んな作品を聞こうと思うのなら、「有料会員」になった方がお得だ。Audibleの聴き放題に制限はないので、一月に何冊でも聞くことができる。まあこれはお財布に相談案件である。

「会員登録」してから、30日間は無料体験プランの期間なので、とりあえず登録してAudibleを試してみるのもいいかもしれない。退会の手続きも簡単にできる。

無料体験期間が1ヶ月ではなく30日間であるところは要注意だ。

 

 

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