日々の栞

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村上春樹?多和田葉子?ブックメーカーを参考にして2024年ノーベル文学賞を予想してみた

また今年もノーベル賞発表の季節になった。

村上春樹、今年こそノーベル賞受賞なるか?」というニュースを見かけるのは年々減っているのではと感じる。毎年の恒例行事なので、ブックメーカーのオッズ等を参照して今年のノーベル文学賞を予想したいと思う。

 

昨年の村上春樹は、村上春樹が新作長編『街とその不確かな壁』を出版するなど、活動的な一年だった。ヨーロッパで最も権威がある賞の1つと言われている、スペインのアストゥリアス王女賞の文学賞を受賞するという快挙も達成している。

 

今年もブックメーカー(賭け屋)において村上春樹の人気がどうなのか確認してみた。

今年も村上春樹はオッズの人気でベスト10には入っていた。例年に比べれば少し順位を落としており、村上春樹祭りは落ち着いている。なんなら日本人作家で比べてみても多和田葉子の方が人気が高い。

話題になっている各種ブックメーカーのオッズや予想記事を参考にして、2024年ノーベル文学賞を予想してみた。

 

 

 

ノーベル文学賞はどうやって決まる?

まず初めにノーベル文学賞の概要を説明しておこう。

ノーベル文学賞は、ノーベル賞6部門のうちの一つで、文学の分野において傑出した作品を創作した人物に授与される賞である。

芥川賞や直木賞のように授賞対象作品というものはない。(芥川賞とノーベル文学賞を比べるのもおかしな話だが)

受賞においては対象国や対象言語の制限はない。また、勘違いされているかも知れないが、ノーベル文学賞の候補者は発表されない。一般的に最終候補者として5人が選出されると言われているが、この候補が公表されることはない。なので村上春樹がノーベル文学賞候補というのは推測に過ぎない。

ノーベル文学賞の選考は、「スウェーデン・アカデミー」という団体が行っている。

選考では初めに、アカデミーが世界中の文学関係者に対して、受賞者の推薦の声を集める。

推薦リストををもとに、アカデミー内の選考委員が候補者を絞り込んでいくのだ。絞り込みの過程で、選考メンバーは候補の作品を読み込んでいかなければならない。最終的には10月までに1人に絞り込むのだ。

 

 

 

 

Nicer Odds(ナイサーオッズ)のオッズを確認してみる

www.nicerodds.co.uk

今回もNicer Odds(ナイサーオッズ)というサイトを参照してみた。

こちらはどうやらブックメーカーというわけではなくて、各ブックメーカーのオッズを比較するサイトのようである。

上にノーベル文学賞のオッズについてのサイトのリンクを貼っておいたので確認してみて欲しい。

このサイトでは「Betsson」というブックメーカーのオッズを載せているようだ。2024/10/8時点でのオッズを以下に載せてみよう。

f:id:plutocharon:20241008225811j:image

 

途中結果にはなるが、村上春樹(Haruki Murakami)は6番人気といったところか。今年はめちゃくちゃ順位が高いというわけではなさそうだ。日本の作家で比べてみても多和田葉子(Yoko Tawada)の方が順位が高い。

これをみると人気が高いのはオーストリアの作家・Alexis Wright 、中国の作家・残雪(Can Xue)のようだ。残雪は幻想的な作風で知られ、「中国のカフカ」とも称される作家だ。

 

今年はオーストラリアの作家が上位に上がっている印象だ。ジェラルド・マーネイン(Gerald Murnane)という作家もオーストラリアの作家だ。日本語に翻訳されている作品がないのが残念なところ。Alexis Wrightは初めてきいた作家だが、こちらもオーストラリアの作家だ。

 

他にはグギ・ワ・ジオンゴ(Ngũgĩ wa Thiong'o)リュドミラ・ウリツカヤ(Ludmila Ulitskaya)と言った作家が並ぶ。

難解な作風で知られるトマス・ピンチョン(Thomas Pynchon)も上位に食い込んでいる。他の有名どころだと、ミシェル・ウェルベック(Michel Houellebecq)などがいる。

今回のオッズを見ると、村上春樹の順位はそこまで高くないようだ。ブックメーカーによって一番人気は結構変わっているみたいだ。

またブックメーカーの予想を参考にして、受賞しそうな作家リストが英語版Wikipediaに載っているのでぜひ見てみて欲しい。

 

 

ノーベル文学賞に近い作家を紹介

せっかくなので、オッズを参考にしてノーベル文学賞に近い作家を紹介してみる。

本当に候補かどうかは分からないが、ノーベル文学賞オッズのリストは世界文学の入門として最適だと思う。

 

残雪 (Can Xue)

突囲表演 (河出文庫)

突囲表演 (河出文庫)

  • 作者:残雪
  • 河出書房新社
Amazon

今回のオッズで一番人気の残雪は中国を代表する作家だ。シュールで幻想的な作風で知られ、その作風故に「中国のカフカ」とも称される。突拍子もないイメージや予想できない物語展開が魅力だ。

2015年に『最後の恋人』が米国最優秀翻訳図書賞を受賞している。

残雪が今年高く注目されるのは、長編小説「新世紀愛情故事」のスウェーデン語版が出版されたためようだ。

邦訳された作品が多く、日本では『突囲表演』などの作品が日本語で読める。

plutocharon.hatenablog.com

 

 

ヨン・フォッセ (Jon Fosse)

ヨン・フォッセ (Jon Fosse)はノルウェーを代表する現代劇作家だ。

ヨン・フォッセは世界的に有名な劇作家であり、イプセンに続き最も頻繁に上演されるノルウェー人劇作家である。ミニマリズムを特徴とする演劇で国際的に高く評価されている。

前衛的な作風が特徴で、「イプセンの再来」や「二一世紀のベケット」とも呼ばれている。

日本でも作品は上演されており、『だれか、来る』、『死のヴァリエーション』、『スザンナ』といった戯曲が上演されている。

ただ、日本においてヨン・フォッセの戯曲を収録した戯曲集は出版されていない。白水社あたりに戯曲集を出版してもらいたいところだ。

plutocharon.hatenablog.com

 

 

ジェラルド・マーネイン(Gerald Murnane)

ジェラルド・マーネインは知る人ぞ知るオーストラリアの作家だ。世界的にもそこまで知名度は高くないようだ。私自身、この記事を書くために調べて初めて知った作家だ。

作品としては、完成しない映画を撮るために数十年を費やす「The Plains」という小説がある。どうやらメタフィクション的な仕掛けが施された小説のようだ。

残念ながら、日本語に翻訳されたジェラルド・マーネインの作品はない。もし、ノーベル文学賞を受賞すれば日本語に翻訳されるかもしれない。

plutocharon.hatenablog.com

 

 

 

アン・カーソン(Anne Carson)

赤の自伝

赤の自伝

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アン・カーソンはカナダを代表する詩人だ。日本語で読めるアン・カーソン作品としては『赤の自伝』がある。この作品は、古代ギリシアの詩人ステシコロスが描いた怪物ゲリュオンと英雄ヘラクレスの神話を現代に移し替え、怪物とヘラクレスの関係性をロマンスとして描いた作品だ。詩と小説のハイブリッド形式が特徴の作品である。

 

 

リュドミラ・ウリツカヤ(Ludmila Ulitskaya)

リュミドラ・ウリツカヤはロシアの作家だ。

 

 

グギ・ワ・ジオンゴ(Ngũgĩ wa Thiong'o)

泣くな、わが子よ

泣くな、わが子よ

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グギ・ワ・ジオンゴはケニアの作家だ。

 

 

トマス・ピンチョン(Thomas Pynchon)

トマス・ピンチョンはアメリカを代表するポストモダン作家だ。その作品は非常に難解であることが知られている。日本語に翻訳されている作品が非常に多い。代表作には『重力の虹』、『V.』などがある。

 

 

ミシェル・ウェルベック(Michel Houellebecq)

ミシェル・ウェルベックは『服従』や『地図と領土』などの刺激的な作品で有名なフランスの作家だ。

昨年にフランスのアニー・エルノーがノーベル文学賞を受賞しているので、二連続でフランスから受賞が厳しいのではと思う。

 

 

生成AIに2024年ノーベル文学賞の受賞者予想を聞いてみた

せっかくなので、流行りに乗って長文生成に定評のある生成AI「Claude」に2024年のノーベル文学賞予想を聞いてみた。

 

2024年のノーベル文学賞受賞者を予測するのは非常に難しいですが、文学界の動向や過去の傾向を踏まえて、いくつかの可能性について考えてみましょう。

まず、ノーベル文学賞の選考過程は極めて秘密裏に行われ、予測が困難であることをお断りしておく必要があります。また、私の知識は2024年4月までのものであり、それ以降の文学界の動向については把握していないことをご了承ください。

そのうえで、以下のような作家たちが候補として挙げられる可能性があります:

1. ハルキ・ムラカミ(村上春樹):日本の作家で、長年にわたりノーベル文学賞の有力候補と目されてきました。

2. アンネ・カーソン:カナダの詩人、エッセイスト、翻訳家。彼女の革新的な文体と古典文学の現代的解釈が高く評価されています。

3. ンガギ・ワ・ジオンゴ:ケニアの作家で、アフリカ文学の重要な声として知られています。

4. マーガレット・アトウッド:カナダの作家で、フェミニズムと環境問題を扱った作品で知られています。

5. ミラン・クンデラ:チェコ出身のフランスの作家。彼の哲学的な小説は世界中で読まれています。

これらの作家たちは、その文学的貢献や影響力から考えて、ノーベル文学賞の候補となる可能性があります。しかし、ノーベル委員会は時折予想外の選択をすることもあり、完全に予測することは不可能です。

また、ノーベル文学賞は近年、地理的・文化的多様性を重視する傾向にあります。そのため、これまであまり注目されてこなかった地域や言語圏の作家が選ばれる可能性もあります。

結論として、2024年のノーベル文学賞受賞者を正確に予測することは困難ですが、上記の作家たちは有力な候補者として考えられます。最終的な結果は、発表されるまで分からないというのが現実です。

 

生成AI的には村上春樹やアンネカーソンを推しているようだ。

 

 

個人的な2024年ノーベル文学賞の予想

最後に私なおひとのノーベル文学賞予想を書いておこうと思う。

2024年ノーベル文学賞だが、中国の残雪が受賞するかなと予想している。

まず、村上春樹に関してだが、受賞はないかなと思っている。確かに村上春樹は世界中で読まれていて人気ではあるが大衆的すぎるきらいがあると思う。まあ、ノーベル文学賞を取らなくたって村上春樹作品の素晴らしさは変わらないと思っている。

 

2024年のノーベル文学賞の受賞者は日本時間の10月10日の20:00以降に発表される。ノーベル文学賞の栄光は誰の手に?

 

 

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