日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

第171回芥川龍之介賞の候補作を紹介する

第171回芥川賞の候補作が発表された。候補作は下記の五作品だ。

 

朝比奈秋「サンショウウオの四十九日」(新潮5月号)
尾崎世界観「転の声」(文學界6月号 
坂崎かおる「海岸通り」(文學界2月号)
向坂くじら「いなくなくならなくならないで」(文藝夏季号)
松永K三蔵「バリ山行」(群像3月号)

 

ノミネートされた5名のうち、朝比奈秋、坂崎かおる、向坂くじら、松永K三蔵は初めて候補に選ばれ、尾崎世界観は2回目のノミネートとなっている。

 

芥川賞をざっくり簡単に説明すると、新人作家の純文学作品に与えられる文学賞だ。文学賞の中で一番有名な賞だろう。純文学というと定義が難しいのだけれど、芥川賞に限っていえば、「文學界」・「新潮」・「群像」・「すばる」・「文藝」の五大文芸誌に掲載された作品が候補の対象となる。候補の作品となる小説の長さは中編程度が多い。

以下作品の詳細について書いていく。

 

 

 

そもそも芥川賞とは?

まず、芥川賞について簡単に説明しよう。芥川賞とは、新人作家の純文学作品に与えられる文学賞だ。純文学における登竜門的な賞で、文学賞の中で一番知名度がある賞かもしれない。純文学界のM−1グランプリみたいなものだ。純文学というと定義が難しいのだけれど、芥川賞に限っていえば、「文學界」・「新潮」・「群像」・「すばる」・「文藝」の五大文芸誌に掲載された作品が候補の対象となる。他の文芸誌に載った作品も候補になることがあるが非常にまれだ。

 

第169回芥川龍之介賞候補作の紹介

それでは、今回候補になった五作品について紹介したい。

 

朝比奈秋「サンショウウオの四十九日」

朝比奈秋は、野間文芸新人賞を受賞し、『植物少女』で三島由紀夫賞も受賞している期待の若手作家だ。なので、芥川賞を受賞すれば純文学新人賞3冠を達成することになる。凄すぎる…

ちなみに純文学新人賞三冠を達成した男性作家はまだいない。

芥川賞候補となった「サンショウウオの四十九日」は、結合双生児として生まれた20代の姉妹の物語を描いている。小説は、外見上は一人の人間に見えるが、実は二人の姉妹が一つの身体を共有している特殊な設定の作品である。姉妹は自分たちの存在の意味や、隣にいる別の自分とは誰なのかといった哲学的な問いを投げかける。作者の朝比奈秋は医師でもあり、精神と肉体の関係性など、人間の本質的な問題をユニークな視点から描いている。

 

 

尾崎世界観「転の声」(文學界6月号 

クリープハイプのボーカル・ギター尾崎世界観の小説「転の声」も今回芥川賞候補になっている。尾崎世界観は「母影」で初の芥川賞候補となっている。これまでにいくつか作品を発表していて、半自伝的小説『祐介』などがある。

芥川賞候補になった「転の声」は、ライブチケットの転売が一般化した社会を舞台に、喉の不調に悩むミュージシャンの主人公が、カリスマ的な"転売ヤー"に魂を売ることになるという物語だ。なんとも不思議な話である。

 

 

坂崎かおる「海岸通り」(文學界2月号)

海岸通り

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向坂くじら「いなくなくならなくならないで」(文藝夏季号)

文藝 2024年夏季号

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向坂くじらは詩人であり、デビュー作の「いなくなくならなくならないで」が芥川賞にノミネートされている。

 

 

松永K三蔵「バリ山行」(群像3月号)

 

 

 

第171回 芥川賞の受賞作は7月17日に発表

www.bunshun.co.jp

選考会は7月17日に行われる予定だ。選考委員は、小川洋子、奥泉光、川上弘美、島田雅彦、平野啓一郎、堀江敏幸、松浦寿輝、山田詠美、吉田修一という豪華な顔ぶれだ。

毎回思うことだが、芥川賞候補作の発表時間がめちゃくちゃ早朝なのは何故なのか。やれやれ。

 

 

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