日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

ノルウェーを代表する現代劇作家ヨン・フォッセについて紹介する

ヨン・フォッセ(Jon Fosse)という劇作家を知っているだろうか?

ノルウェーを代表する劇作家で、グローバルに大きな関心を集めている。ヨン・フォッセは、イプセンに続き最も頻繁に上演されるノルウェー人劇作家である。ミニマリズムを特徴とする演劇で国際的に高く評価されている。

イプセンの再来」や「21世紀のベケット」と呼ばれ、2023年のノーベル文学賞を受賞した。

日本では知名度はないと思うが、ヨーロッパ現代演劇を代表するヨン・フォッセを紹介したいと思う。

 

 

 

ヨン・フォッセ (Jon Fosse)ってどんな作家?

ヨン・フォッセ (Jon Fosse)はノルウェーを代表する現代劇作家だ。ヨン・フォッセは小説「赤、黒」で作家デビューし、その後小説だけでなく戯曲も手掛けている。

ヨン・フォッセの戯曲は40以上の言語に翻訳されており、50か国以上の国で上演されている。ヨン・フォッセは、イプセンに続き最も頻繁に上演されるノルウェー人劇作家である。ミニマリズムを特徴とし、「間」をうまく使った戯曲は特徴的で世界中で評価されている。また、場面や台詞を繰り返すなど表現に面白さがある。

また、ヨン・フォッセは「ニーノルシュク」と呼ばれるノルウェー西海岸の書き言葉で作品を書いている。

前衛的な作風が特徴で、「イプセンの再来」や「21世紀のベケット」とも呼ばれる。

戯曲の代表作としては、「だれか、来る」などがある。

日本でもヨンフォッセの作品は上演されており、「だれか、来る」、「死のヴァリエーション」、「スザンナ」といった戯曲が上演されている。

最近だと、2021年には7部構成の小説(セプトロジー)が完結している。この作品は、イギリスの国際ブッカー賞や全米批評家協会賞小説部門で、いずれも最終候補となっている。

 

 

2023年ノーベル文学賞を受賞

Septology

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ヨン・フォッセはその文学性を認められて、2023年のノーベル文学賞を受賞している。ノルウェー人の受賞は久しぶりのことで、1928年の女性作家シグリ・ウンセット以来95年ぶりだ。

ノーベル文学賞の授賞理由としてスウェーデンアカデミーは「言葉に表せないものに声を与える革新的な戯曲と散文」を挙げた。ノーベル文学賞の選考委員会のオルソン委員長は「彼の作品は静けさの中で、不安や孤独など世界中の誰にでも通じる強い感情を喚起させる」と話したようだ。

ヨン・フォッセはノーベル文学賞受賞について、ロイター通信に「圧倒され、びっくりしている。他のことは考慮せず、文学であることを目指した文学に与えられた賞だと思う」と答えている。

恐らく、最近完成した大作『七部作』という小説がノーベル文学賞につながったのではないかと思う。

過去にも、2013年にブックメッカーでオッズが高かったことから、ノーベル文学賞を受賞するのではと騒がれた。

ノーベル文学賞がきっかけとなって、もっと多くのヨン・フォッセ作品が邦訳されて欲しいものだ。白水社さん、よろしくお願いします。

 

 

ヨン・フォッセの作品を紹介する

それでは、ヨン・フォッセの戯曲を紹介しよう。

日本では「だれか、来る」、「名前」、「眠れ、よい子よ」、「ある夏の一日」「死のヴァリエーション」「スザンナ」といった戯曲が上演されている。

日本語版はないのだが、英語であればほとんどの作品を読むことができる。

 

だれか、来る (Someone Is Going to Come)

舞台は、海に面した入り江にたった一軒たたずむ古い屋敷。世間から逃れてきた男女がそこにたどり着く。二人は完全に二人だけの世界を求めてやってきたのだが、常に「だれか、来る」ことの不安に怯えている。そんな二人の元に若い男が登場し、二人の関係性が変化していく。

この戯曲では同じセリフがリフレインされるのだが、場面によって意味が大きく変わっていく。この意味の変貌が面白い点だ。

 

 

ある夏の一日 (A Summer's Day)

 

 

死のヴァリエーション (Death Variations)

死のヴァリエーション」も日本で上演された作品だ。離婚して年月のたったある時、「年をとった男」のところに前妻の「年をとった女」が訪ねてくる。「年をとった女」は、娘の死を知らせに来たのだ。二人の会話から、結婚し娘が生まれた頃から、娘の成長や二人の離婚など、今までの人生が時系列が交錯する形で描かれる。

 

 

スザンナ (Suzannah)

スザンナ」は、イプセンの妻を描いた抽象的な戯曲だ。日本でも戯曲が上演されている。

 

 

日本語訳で読めるヨン・フォッセ作品は?

舞台芸術〈05〉特集 劇場と社会

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ノルウェーを代表する作家のヨン・フォッセだが、残念なことに日本語訳されている作品はほとんど出版されていない。戯曲は、『だれか、来る』『名前』『眠れ、よい子よ』『ある夏の一日』、『死のヴァリエーション』、『スザンナ』といった作品が上演されているのだけれど。

かろうじて日本語に翻訳されているのが、戯曲『だれか、来る』だ。ヨン・フォッセ作品だけで出版されているわけではなく、「舞台芸術〈05〉」という本の中に翻訳が収録されている。この本では、ヨン・フォッセについてのちょっとした特集が組まれている。ヨン・フォッセのエッセイも収録されているので、気になる人は読んでみてほしい。

 

作品ではないが、『北欧の舞台芸術』という本にはヨン・フォッセのインタビューが掲載されている。

残念ながら、日本語でヨン・フォッセ作品を読もうとすれば「舞台芸術」を買うしか無いようだ。しかも残念なことに、この書籍は絶版になっているようで、購入するとすれば古本を探すしか無いのである。

英語版であれば大半の作品は翻訳されているみたいで、電子書籍化もされている。

ヨン・フォッセがノーベル文学賞を受賞したので、これから日本語訳が増えると思うのだけれど、現状では英語で読むしか無いようだ。

 

是非とも白水社さんあたりに翻訳戯曲集をだしてもらいたいものだ(2回目)。