日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

村上春樹の人気は?ブックメーカーを参考にして2023年ノーベル文学賞を予想してみた

もうそろそろ「村上春樹、今年こそノーベル賞受賞なるか?」というニュースを見かける季節になると思うので、一足先にブックメーカーを参照して今年のノーベル文学賞を予想したいと思う。

「村上春樹、今年こそノーベル賞受賞なるか?」というのはもはや秋の風物詩だ。

特に今年は、村上春樹が新作長編『街とその不確かな壁』を出版するなど、活動的な一年だった(まだ今年は終わっていないが)。また、ヨーロッパで最も権威がある賞の1つと言われている、スペインのアストゥリアス王女賞の文学賞を受賞するという快挙を達成している。

もうこれは、今年もマスメディアで「村上春樹、今年こそノーベル賞受賞なるか?」祭りが盛り上がってしまうのだろう。やれやれ。

少し気は早いかもしれないが、今年もブックメーカー(賭け屋)において村上春樹の人気がどうなのか確認してみた。

今年も村上春樹はオッズの人気でベスト10には入っていた。例年に比べれば少し順位を落としており、村上春樹祭りは落ち着いている。

話題になっている各種ブックメーカーのオッズや予想記事を参考にして、2023年ノーベル文学賞を予想してみた。

 

 

 

ノーベル文学賞はどうやって決まる?

まず初めにノーベル文学賞の概要を説明しておこう。

ノーベル文学賞は、ノーベル賞6部門のうちの一つで、文学の分野において傑出した作品を創作した人物に授与される賞だ。

芥川賞や直木賞のように授賞対象作品というものはない。(芥川賞とノーベル文学賞を比べるのもおかしいかもしれないが)

受賞においては対象国や対象言語の制限はない。また、勘違いされているかも知れないが、ノーベル文学賞の候補者は発表されない。一般的に最終候補者として5人が選出されると言われているが、この候補が公表されることはない。

ノーベル文学賞の選考は、「スウェーデン・アカデミー」という団体が行っている。

選考では初めに、アカデミーが世界中の文学関係者に対して、受賞者の推薦の声を集める。

推薦リストををもとに、アカデミー内の選考委員が候補者を絞り込んでいくのだ。絞り込みの過程で、選考メンバーは候補の作品を読み込んでいかなければならない。最終的には10月までに1人に絞り込むのだ。

 

 

ラドブロークス (Ladbrokes)だと村上春樹は一番人気らしい

www.sankei.com

では、今年のノーベル文学賞はどうなるのだろうか。産経新聞によると村上春樹は1番人気のようだ。

英国のブックメーカー(賭け屋)ラドブロークスの受賞者予想(9月30日現在)で村上さんは1番人気。賭けの人気と実際の受賞者は必ずしも一致しないが、予想にはほかに中国の作家である残雪氏やロシアの作家リュドミラ・ウリツカヤ氏らの名前が挙がっている。

産経新聞はラドブロークス (Ladbrokes)というブックメーカーを参考にしている。

村上春樹がオッズ一位ということだったので、エビデンスを確認するべくラドブロークスを調べてみた。下にリンクを貼ったのがラドブロークス (Ladbrokes)の公式サイトだ。

 

sports.ladbrokes.com

サイト内を探してみたのだけれど、ノーベル文学賞に関しての部分が見当たらなかった。一体どこに書いてあるのだ。サイトを一通り見てみたが、ほとんどがスポーツ関係の賭けの内容だった。一体産経新聞はどの部分を参考にしたのだろう。引用元リンクを貼って欲しいなと思う。このくだりは去年の記事でもした。

見つけた人がいれば、ぜひコメント欄で教えて欲しい。

 

 

Nicer Odds(ナイサーオッズ)のオッズを確認してみる

www.nicerodds.co.uk

ラドブロークスでオッズが見つからなかったので、今回もNicer Odds(ナイサーオッズ)というサイトを参照してみた。

こちらはどうやらブックメーカーというわけではなくて、各ブックメーカーのオッズを比較するサイトのようである。

上にノーベル文学賞のオッズについてのサイトのリンクを貼っておいたので確認してみて欲しい。

このサイトでは「Betsson」というブックメーカーのオッズを載せているようだ。2023/9/20時点でのオッズを以下に載せてみよう。

 

f:id:plutocharon:20230920223252j:image

途中結果にはなるが、村上春樹(Haruki Murakami)は9番人気といったところか。今年はめちゃくちゃ順位が高いというわけではなさそうだ。

これをみると一番人気は中国の作家・残雪(Can Xue)のようだ。幻想的な作風で知られ、「中国のカフカ」とも称される作家だ。

2番人気がノルウェーの劇作家であるヨン・フォッセ(Jon Fosse)だ。2013年のノーベル文学賞予想で発表日が近づくと急にオッズ人気が急上昇したことがあり、受賞するのではと騒がれた。しかし、その時は受賞せず今に至る。前衛的な戯曲で有名で、「21世紀のベケット」とも評されている。

ノルウェーは100年ほどノーベル文学賞が出ていないので可能性があるのかもしれない。

3番人気はジェラルド・マーネイン(Gerald Murnane)という作家なのだが、こちらの作家は初耳だった。

他にはアン・カーソン(Anne Carson)リュドミラ・ウリツカヤ(Ludmila Ulitskaya)と言った作家が並ぶ。アン・カーソンはカナダの作家で、日本語で読める作品は『赤の自伝』などがある。

難解な作風で知られるトマス・ピンチョン(Thomas Pynchon)が上位に食い込んでいるのが少し意外だ。

村上春樹と同率だとミシェル・ウェルベック(Michel Houellebecq)などがいる。

今回のオッズを見ると、村上春樹の順位はそこまで高くないようだ。ブックメーカーによって一番人気は結構変わっているみたいだ。

またブックメーカーの予想を参考にして、受賞しそうな作家リストが英語版Wikipediaに載っているのでぜひ見てみて欲しい。

en.wikipedia.org

 

 

ノーベル文学賞に近い作家を紹介

せっかくなので、オッズを参考にしてノーベル文学賞に近い作家を紹介してみる。

本当に候補かどうかは分からないが、ノーベル文学賞オッズのリストは世界文学の入門として最適だと思う。

 

残雪 (Can Xue)

突囲表演 (河出文庫)

突囲表演 (河出文庫)

  • 作者:残雪
  • 河出書房新社
Amazon

今回のオッズで一番人気の残雪は中国を代表する作家だ。シュールで幻想的な作風で知られ、その作風故に「中国のカフカ」とも称される。突拍子もないイメージや予想できない物語展開が魅力だ。

2015年に『最後の恋人』が米国最優秀翻訳図書賞を受賞している。

残雪が今年高く注目されるのは、長編小説「新世紀愛情故事」のスウェーデン語版が出版されたためようだ。

邦訳された作品が多く、日本では『突囲表演』などの作品が日本語で読める。

plutocharon.hatenablog.com

 

 

ヨン・フォッセ (Jon Fosse)

ヨン・フォッセ (Jon Fosse)はノルウェーを代表する現代劇作家だ。

ヨン・フォッセは世界的に有名な劇作家であり、イプセンに続き最も頻繁に上演されるノルウェー人劇作家である。ミニマリズムを特徴とする演劇で国際的に高く評価されている。

前衛的な作風が特徴で、「イプセンの再来」や「二一世紀のベケット」とも呼ばれている。

日本でも作品は上演されており、『だれか、来る』、『死のヴァリエーション』、『スザンナ』といった戯曲が上演されている。

ただ、日本においてヨン・フォッセの戯曲を収録した戯曲集は出版されていない。白水社あたりに戯曲集を出版してもらいたいところだ。

plutocharon.hatenablog.com

 

 

ジェラルド・マーネイン(Gerald Murnane)

ジェラルド・マーネインは知る人ぞ知るオーストラリアの作家だ。世界的にもそこまで知名度は高くないようだ。私自身、この記事を書くために調べて初めて知った作家だ。

作品としては、完成しない映画を撮るために数十年を費やす「The Plains」という小説がある。どうやらメタフィクション的な仕掛けが施された小説のようだ。

残念ながら、日本語に翻訳されたジェラルド・マーネインの作品はない。もし、ノーベル文学賞を受賞すれば日本語に翻訳されるかもしれない。

plutocharon.hatenablog.com

 

 

 

アン・カーソン(Anne Carson)

赤の自伝

赤の自伝

Amazon

アン・カーソンはカナダを代表する詩人だ。日本語で読めるアン・カーソン作品としては『赤の自伝』がある。この作品は、古代ギリシアの詩人ステシコロスが描いた怪物ゲリュオンと英雄ヘラクレスの神話を現代に移し替え、怪物とヘラクレスの関係性をロマンスとして描いた作品だ。詩と小説のハイブリッド形式が特徴の作品である。

 

 

リュドミラ・ウリツカヤ(Ludmila Ulitskaya)

リュミドラ・ウリツカヤはロシアの作家だ。

 

 

グギ・ワ・ジオンゴ(Ngũgĩ wa Thiong'o)

泣くな、わが子よ

泣くな、わが子よ

Amazon

グギ・ワ・ジオンゴはケニアの作家だ。

 

 

トマス・ピンチョン(Thomas Pynchon)

トマス・ピンチョンはアメリカを代表するポストモダン作家だ。その作品は非常に難解であることが知られている。日本語に翻訳されている作品が非常に多い。

代表作には『重力の虹』、『V.』などがある。

 

 

ミシェル・ウェルベック(Michel Houellebecq)

ミシェル・ウェルベックは『服従』や『地図と領土』などの刺激的な作品で有名なフランスの作家だ。

昨年にフランスのアニー・エルノーがノーベル文学賞を受賞しているので、二連続でフランスから受賞が厳しいのではと思う。

 

 

個人的な2023年ノーベル文学賞の予想

最後に個人的なノーベル文学賞の予想を書こうと思う。

Septology

Septology

Amazon

個人的な予想としてはヨン・フォッセが受賞するのではないかと思っている。

久しくノルウェーからの受賞者が出ていないこともあり、可能性があるのでは。

 

次点で残雪あたりが受賞するかなと予想している。

まず、村上春樹に関してだが、受賞はないかなと思っている。確かに村上春樹は世界中で読まれていて人気ではあるが大衆的すぎるきらいがあると思う。まあ、ノーベル文学賞を取らなくたって村上春樹作品の素晴らしさは変わらないと思っている。

 

2023年のノーベル文学賞の受賞者は日本時間の10月5日(木)20:00以降に発表される。ノーベル文学賞の栄光は誰の手に?

 

 

関連記事

plutocharon.hatenablog.com

plutocharon.hatenablog.com