日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

ノーベル文学賞を受賞した韓国のハン・ガンってどんな作家?

2024年のノーベル文学賞の発表があり、受賞者は韓国の作家ハン・ガン(Han Kang)だと発表された。韓国として初のノーベル文学賞受賞であり、アジア人女性として初のノーベル文学賞受賞でもある。

 

「歴史的トラウマに立ち向かい、人間の命の脆さを露呈させる強烈な詩的散文」が評価されての受賞とのことだ。

 

ノーベル文学賞を受賞したハン・ガンのことを知らない人が大半だと思うので、簡単に紹介したいと思う。

 

 

韓国の作家 ハン・ガンってどんな作家?

韓国の作家ハン・ガンは1970年光州(クァンジュ)に生まれた。幼少期から文学に親しみ、大学では韓国文学を専攻しました。デビュー作「赤い木檀」で注目を集め、韓国文学の重要な存在として活躍してきた。

ハン・ガンの作品の特徴は、繊細かつ大胆な表現にある。ハン・ガンは人間の内面や社会の闇を鋭く描き出し、読者の心に深く刻み込まれる物語を紡ぎ出してきた。代表作としては、『菜食主義者』などがある。ハン・ガンは『菜食主義者』でブッカー国際賞を受賞している。

代表作「채식주의자(チェシクチュウィジャ/菜食主義者)」

その他の注目作品
- 「少年が来る」:1980年の光州事件を題材にした衝撃作
- 「白の書」:生と死、そして愛を詩的に描いた作品

ハン・ガンの作品は、読者を不安にさせると同時に、深い共感を呼び起こします。彼女の筆は、私たちが普段目を背けがちな現実を直視させ、人間の本質について考えさせてくれるのです。

韓国文学の新しい風として、これからも世界中の読者を魅了し続けるハン・ガン。皆さんも、彼女の作品を手に取ってみてはいかがでしょうか?

 

ハン・ガンの作品は日本語に翻訳されているのか?

ノーベル文学賞を受賞した作家はマイナーであることも多く、邦訳された作品がないこともある。ハン・ガンの場合は邦訳されている作品が多く、8作品ほどが日本語に翻訳されている。それぞれの作品について紹介したいと思う。

 

菜食主義者

菜食主義者』は、国際的な評価を得たハン・ガンの代表作だ。『菜食主義者』は、一人の女性が菜食主義者になることで引き起こされる家族や社会との軋轢を描いた作品である。この小説でハン・ガンは、人間の欲望や社会規範、そして自由への渇望を鮮烈に描き出した。

 

 

すべての、白いものたちの

すべての、白いものたちの』は、ハン・ガンの代表作で、国際ブッカー賞にノミネートされた作品だ。この小説は、白い色を通じて、人間の記憶、喪失、そして存在を描きだす。物語は、白い色にまつわる複数のエピソードで構成され、各エピソードが独立しながらも、全体として一つの大きな物語を形成している。ハン・ガンの文体は、詩的な美しさを持ちながらも、読者に深い感情を呼び起こす。白い色は、純粋さ、清潔さ、そして死を象徴する色として、各エピソードで異なる意味を持つ。

 

 

別れを告げない

この作品は、1948年に発生した「済州島四・三事件」を題材としている。この事件では、韓国軍と警察が済州島の村民を大量に殺害したとされる「焦土化作戦」が行われ、約3万人の民間人が犠牲となった。物語は、主人公キョンハと彼女の友人インソンを中心に展開される。キョンハは、光州民主化抗争を題材とした作品を書いた後、悪夢のようなヴィジョンに悩まされるようになる。インソンは、母親が済州島四・三事件の際に体験した記憶を追う過程で、深い歴史的痛みと対面する。

 

 

そっと静かに

「そっと静かに」は、ハン・ガン(韓江)によって書かれたエッセイ集である。

 

 

少年が来る

光州事件を題材とした『少年が来る』は、ハン・ガンの社会的な視点を反映した作品である。事件の背景とその影響を通じて、個人と社会の関係を探究する。ハン・ガンの社会批判と人間の内面を描く手腕が光る作品だ。

 

 

ギリシャ語の時間

「ギリシャ語の時間」は、突然言葉を失った女性と、少しずつ視力を失いつつあるギリシャ語の男性講師を描いた作品だ。女性は失われた言葉を取り戻すために古典ギリシャ語を習い始め、男性は彼女の沈黙に興味を持つ。二人の出会いと対話を通じて、作品は人間が失った本質について問いかける。

 

 

京都、ファサード

この短編小説は、季刊文芸誌「文藝」のために書き下ろされた作品で、京都が舞台の作品だ。ハン・ガンの細やかな観察眼と詩的な文体が特徴で、韓国・フェミニズム・日本をテーマとしたアンソロジー『あなたのことが知りたくて――小説集 韓国・フェミニズム・日本』に収録されている。

 

 

 

ノーベル文学賞は世界の素晴らしい作家を知るきっかけになる。ぜひこれを機にハン・ガンの作品を読んでみては。

 

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