日々の栞

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村上春樹の幻の小説「街と、その不確かな壁」を読む方法

 

その街に行かなくてはならない。なにがあろうと――〈古い夢〉が奥まった書庫でひもとかれ、呼び覚まされるように、封印された“物語”が深く静かに動きだす。魂を揺さぶる純度100パーセントの村上ワールド。

村上春樹の新作長編小説『街とその不確かな壁』が2023年4月13日(木)に刊行される。待ちきれない人も多いのではないだろうか。『一人称単数』といった短編集は出版されてきたが、新作の長編小説は久しぶりだ。長編だと、2017年2月刊行の『騎士団長殺し』以来、6年ぶりとなる。

『街とその不確かな壁』の発売を受けて注目を集めている村上春樹の中編小説がある。それは、「街と、その不確かな壁」だ。タイトルが非常に似ていることから注目を集めているのだ。ただ、この作品は村上春樹自身が失敗作としていることもあり、単行本や文庫、全集にも収録されていない。

この記事では、村上春樹の幻の中編小説「街と、その不確かな壁」を入手して読む方法を説明したい。

 

 

「街と、その不確かな壁」ってどんな作品?

村上春樹「街と、その不確かな壁」は1980年『文學界』9月号に掲載された作品だ。インタビューによると、この作品は『1973年のピンボール』が芥川賞候補となったことにより、その受賞第1作として発表することを意識して書かれたようだ。結局芥川賞は受賞しなかったのだけれど。

街と、その不確かな壁」は、単行本や文庫本、全集にも収録されていない幻の作品だ。化入手して読むのが難しい。物語の結末が村上春樹本人にとって納得のいくものではなかったようで、村上春樹自身「あれは失敗」であり、「書くべきじゃなかった」とも語っている。失敗作ということで収録されていないのだ。

失敗作と言われた「街と、その不確かな壁」だが、その内容は『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の「世界の終り」パートに引き継がれた。

最新作『街とその不確かな壁』は、過去作「街と、その不確かな壁」のセルフリメイクという形になりそうだ。最新作との違いを考察する上でも読んでおきたい作品だ。

 

 

「街と、その不確かな壁」を読む方法

さて、幻の中編と言われる「街と、その不確かな壁」だが、読む方法はあるのだろうか。本屋にはもちろん売っていないので、方法を考えなければならない。現在、「街と、その不確かな壁」を読む方法は大きく二つある。

①古本を入手する

②国立国会図書館の遠隔複写サービスを利用する

値段を考えると、②国立図書館の遠隔複写サービスの方がおすすめだ。それぞれの方法について説明しよう。

 

①古本を入手する

一つ目の方法は、Amazonやメルカリで「街と、その不確かな壁」が収録された文學界(1980年9月号)を購入するというものだ。しかし、「街と、その不確かな壁」が収録された文學界にはプレミアがついており、非常に高値で取引されているのがネックだ。

ちなみに2023年4月時点では、Amazonで80,384円で販売されていた。めちゃくちゃ高い...やれやれ。なので次の方法をお勧めしたい。

 

②国立国会図書館の遠隔複写サービスを利用する

ndlonline.ndl.go.jp

古本を入手するのは非常に難しくお金がかかる。手軽でコストを抑えて「街と、その不確かな壁」を入手する方法がないかというところで、お勧めしたいのが国立国会図書館の複写サービスだ。

国立国会図書館は国会に属する唯一の国立の図書館だ。日本国内で出版されたすべて出版物は国立国会図書館に収集されることになっており、本好きにとっては夢のような場所だろう。単行本や文庫だけでなく、雑誌のアーカイブも全て収録されている。東京と京都の二ヶ所にあるので近い人は行ってみるのがいいかもしれない。

また、現地に行って複写するだけでなく、ネットから依頼できる遠隔複写サービスというものがある。便利な時代になったものだ。遠隔複写サービスは、利用者登録をすれば登録すれば誰でも利用することができる。

「街と、その不確かな壁」を、国立国会図書館の遠隔複写サービスで依頼する方法を詳しく説明しよう。

 

1. 国立国会図書館オンラインの登録

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まずは、国立国会図書館オンライン(国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online)にアクセスし、利用者登録をしよう。ホームページの画面右上に「ログイン」という部分があるので、クリックして左下の「新規利用者登録」から登録を進めよう。

必要情報を入力し、登録が完了すると登録確認のメールが届く。国立国会図書館オンラインのホームページにて、届いた登録利用者IDとパスワードでログインすれば完了だ。

 

2. 複写希望箇所(街と、その不確かな壁)の申請

ログインができれば、遠隔複写サービスの申請に進もう。複写を依頼する箇所だが、「街と、その不確かな壁」だと複写箇所は『文學界』1980年9月号 pp.46~99だ。

また雑誌の表紙と目次も追加でお願いすることができる。

 

3. 複写の到着

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複写を依頼してから大体2週間ぐらいで複写が届く。僕が依頼した時は村上春樹の最新作のタイトルが『街とその不確かな壁』と明かされた直後だったので、依頼が集中して時間がかかったのかもしれない。


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国立国会図書館の遠隔複写サービスで届いた書類がこれだ。

 

4. 複写料金の支払い

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「街と、その不確かな壁」の複写が届いたら依頼料金を支払おう。今回遠隔複写を依頼した際の利用料金は、1,227円だった。プレミアがついている「街と、その不確かな壁」掲載の文學界を手に入れることを考えるとかなりリーズナブルだ。

支払い方法はコンビニや郵便局での支払いや銀行振込も可能である。詳しくは受け取った書類に書かれている。

 

 

まとめ

村上春樹の幻の中編小説「街と、その不確かな壁」を手に入れる方法だが、①古本を入手する②国立国会図書館の遠隔複写サービスを利用するの二つの方法がある。古本の入手にはコストが非常にかかるので、国立図書館の遠隔複写サービスの方がおすすめだ。

 

 

『街とその不確かな壁』の予約受付中

その街に行かなくてはならない。なにがあろうと――〈古い夢〉が奥まった書庫でひもとかれ、呼び覚まされるように、封印された“物語”が深く静かに動きだす。魂を揺さぶる純度100パーセントの村上ワールド。

『街とその不確かな壁』だが、ネット書店では予約が始まっている。Amazonや楽天ブックス、hontoなど主要なネット書店では今から予約することができる。確実に手に入れたい人は予約した方がいいかなと思う。

 

また電子書籍でも発売されるので、Kindleで読むのもいいかもしれない。

『街とその不確かな壁』を単行本で読むか、あるいは電子書籍で読むかはあくまで形而上的な問題であって、それで『街とその不確かな壁』の良さが変わるわけではないのだ。

やれやれ。

 

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