これまでに日本からノーベル文学賞は2名受賞している。川端康成と大江健三郎だ。
では、次にノーベル文学賞を受賞する可能性が高い作家は誰だろうか?
世間的には村上春樹が有名だと思うが、それ以外にもノーベル文学賞に近いと言われている日本人作家がいる。
この記事では、ノーベル文学賞を受賞しそうな日本人作家をまとめて紹介したい。
ノーベル文学賞はどうやって決まる?
まず初めにノーベル文学賞の概要を説明しておこう。
ノーベル文学賞は、ノーベル賞6部門のうちの一つで、文学の分野において傑出した作品を創作した人物に授与される賞である。
芥川賞や直木賞のように授賞対象作品というものはない。(芥川賞とノーベル文学賞を比べるのもおかしな話だが)
受賞においては対象国や対象言語の制限はない。また、勘違いされているかも知れないが、ノーベル文学賞の候補者は発表されない。一般的に最終候補者として5人が選出されると言われているが、この候補が公表されることはない。なので村上春樹がノーベル文学賞候補というのは推測に過ぎない。
ノーベル文学賞の選考は、「スウェーデン・アカデミー」という団体が行っている。
選考では初めに、アカデミーが世界中の文学関係者に対して、受賞者の推薦の声を集める。
推薦リストををもとに、アカデミー内の選考委員が候補者を絞り込んでいくのだ。絞り込みの過程で、選考メンバーは候補の作品を読み込んでいかなければならない。最終的には10月までに1人に絞り込むのだ。
ノーベル文学賞に近い作家を紹介
それでは、ノーベル文学賞を受賞しそうな日本人作家を紹介したいと思う。
村上春樹
今日本で一番ノーベル文学賞に近いと世間で騒がれているのは村上春樹だろう。村上春樹は、『羊をめぐる冒険』や『ノルウェイの森』、『ねじまき鳥クロニクル』、『海辺のカフカ』、『1Q84』などの代表作で知られている。特に『1Q84』は社会現象になるほど話題になり、ベストセラーとなった作品だ。
村上春樹は日本の現代作家の中で世界で最も翻訳されている作家でもある。アメリカやロシア、中国、韓国、イスラエル、イギリス、フランス、イタリア、デンマーク、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア、フィンランドなどなど、その数は50以上の言語に及んでいる。村上春樹は日本の作家の中でも飛び抜けて世界中で読まれている。
村上春樹の作品の特徴だが、都市部に住む人間の孤独や喪失感が描かれているが特徴の一つだ。村上春樹作品には現代の人々に通じる普遍性があるために、世界中で広く読まれているのかもしれない。
世界における村上春樹の受容については『世界は村上春樹をどう読むのか』という本に詳しく書かれている。詳しく知りたい方はぜひ読んでみて欲しい。
また、村上春樹は優れた翻訳家に恵まれたというのも理由の1つにあるのかもしれない。翻訳に関しては、デンマーク語の翻訳家メッテホルムに密着した『ドリーミング村上春樹』というドキュメンタリー映画がある。翻訳の現場に迫った名作なので、村上主義者の方は観てみるのはどうだろうか。
村上春樹は世界中に読者がいることもあり、国際的な文学賞を数多く受賞している。国際的な文学賞、特にフランツ・カフカ賞を受賞していることもあって、日本の作家の中でノーベル文学賞候補に見なされるようになったのだ。
村上春樹は、2006年にアイルランドの「フランク・オコナー国際短編賞」とチェコの「フランツ・カフカ賞」を受賞している。特にフランツ・カフカ文学賞を受賞した作家はノーベル文学賞も受賞していることが多い。
村上春樹はその後もイスラエルの「エルサレム賞」やデンマークの「アンデルセン文学賞」、「カタルーニャ国際賞」、イタリアの「ラッテス・グリンツァーネ文学賞」など、海外の賞を複数受賞している。
特に、受賞することに政治的な批判があった「エルサレム賞」での受賞スピーチのエピソードは有名だ。村上春樹は「壁と卵」という素晴らしいスピーチをエルサレム賞受賞式で披露している。このスピーチは『村上春樹 雑文集』に収録されている。
国際的な文学賞を数々受賞していることもあり、村上春樹はブックメーカー(賭け屋)のノーベル文学賞受賞予想の賭けで、上位ランクインの常連となっている。
ブックメーカーでの順位が日本のマスコミによって過熱報道されて、「ノーベル文学賞最有力候補」と呼ばれる様になったのも1つの理由ではないかと思っている。
村上春樹の世界的な知名度や人気度合いを考えるとノーベル文学賞を受賞してもおかしくないと思う。特にカズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞した時の選考委員だったら受賞していた可能性は非常に高いんじゃないかなと思う。今後に期待である。
多和田葉子
最近、村上春樹を凌ぐ勢いで最有力候補として浮上してきたのが、多和田葉子だ。文学好きなら知らない人はいないと思うのだが、一般的な知名度というと村上春樹に劣るかもしれないが。
多和田葉子はドイツ・ベルリンに在住し、日本語とドイツ語という二つの言語で執筆活動を行っている。代表作には、『犬婿入り』、『冬の練習生』
多和田の作風は、言語そのものを素材としたラディカルな実験に満ちている。彼女は、私たちが自明のものとして使っている言葉を、その意味から解き放ち、音や文字の形といった物質的な側面から捉え直す。
一文が10行以上にも及ぶ長大な文章や 、犬に変身する婿(『犬婿入り』)、三代にわたるシロクマの年代記(『雪の練習生』)といった奇妙で幻想的な設定の作品も多い。
その独創性が世界的に評価されるきっかけとなったのが、ディストピア小説『献灯使』である。大災害後に鎖国状態となり、老人は不死化し、子供は極度に虚弱になっていく日本を描いたこの作品は、単なる未来予測ではない。環境汚染や排外主義といった現代社会が抱える問題を映し出す、普遍的な寓話として読み解かれた。英紙ガーディアンが本作を「唯一無二のディストピア小説」と絶賛したように 、世界で評価されるようになった。
多和田葉子はドイツで最も権威ある文学賞の一つであるクライスト賞(2016年) 、そしてアメリカの全米図書賞翻訳文学部門(2018年)を立て続けに受賞した。ブックメーカーのオッズでも村上春樹を上回ることが珍しくなくなり 、今や名実ともにノーベル文学賞の最有力候補の一人とされている。
小川洋子
小川洋子もノーベル文学賞を受賞する可能性がある作家として名前をあげられることが多い。『妊娠カレンダー』で芥川賞を受賞して以来、小川洋子は静謐でありながら読者の心を深く揺さぶる作品を書き続けてきた。2004年に本屋大賞を受賞した『博士の愛した数式』はミリオンセラーとなり、彼女の名を広く知らしめた。フランス芸術文化勲章シュバリエを受章するなど、海外での評価も早くから確立していた作家である。
小川洋子作品には「記憶」や「喪失」をテーマにした作品が多い。記憶が80分しか持続しない数学者を描いた『博士の愛した数式』や、島から次々とモノの記憶が消え去っていく『密やかな結晶』に代表されるように、彼女は人間の存在がいかに記憶という不確かで儚いものの上に成り立っているかを、静かな筆致で描き出す。
彼女をノーベル賞候補として一躍世界に押し上げたのは、1994年に日本で刊行された『密やかな結晶』であった。この作品が2019年に英訳されると、全米図書賞翻訳部門、そして2020年には英国のブッカー国際賞の最終候補となり、世界的な注目を浴びたのである。日系イギリス人作家カズオ・イシグロがブッカー賞受賞後にノーベル賞を受賞した例もあるので 、この受賞がきっかけとなってノーベル文学賞に近い作家と言われるようになった。
金井美恵子
金井美恵子は、「愛の生活」でデビューした作家だ。彼女の作風は、幻想的な要素と辛辣な社会批評を織り交ぜた独特の文体で知られ、文学界において確固たる地位を築いている。代表作には、泉鏡花文学賞を受賞した『プラトン的恋愛』や、女流文学賞を受賞した『タマや』が挙げられる。特に『タマや』は、猫と人間の日常を描きながらも、軽妙なユーモアと深い洞察が光る作品であり、国内外で高い評価を受けている。
また、金井の作品は「目白四部作」と呼ばれる『文章教室』『タマや』『小春日和』『道化師の恋』など、日常の中に潜む普遍的なテーマを掘り下げた連作でも知られる。彼女の文章は、凝った言い回しとリズム感が特徴で、読む者を独特の世界観へと引き込む。
最近では、『軽いめまい』の英訳版がヨーロッパで話題となり、2024年にノーベル文学賞の候補として名前が挙がり世界的な注目を集めた。特に翻訳依頼が殺到するなど、海外での評価も急上昇している。金井美恵子は、現代日本文学を代表する作家の一人として、今後もその動向が注目される存在である。
川上未映子
2008年に『乳と卵』で芥川賞を受賞し、鮮烈なデビューを飾った川上未映子は、現代日本文学の新たな地平を切り拓く新世代の旗手である。以降、谷崎潤一郎賞、毎日出版文化賞、読売文学賞など国内の主要文学賞を総なめにし、その地位を不動のものとしてきた。
川上未映子は、初潮、妊娠、出産、豊胸、老化といった女性が経験する身体の変化と、それに伴う内面的な葛藤を、極めて生々しく、執拗なまでに深く掘り下げる。
代表作『夏物語』では、非配偶者間の人工授精(AID)をテーマに、「産むこと」「生まれること」の意味を根源から問い、世界中で大きな反響を呼んだ。また、いじめを扱った『ヘヴン』では、斜視という身体的特徴を理由に暴力を受ける少年を主人公に、善悪、強弱、美醜といった価値観の根源を問い、暴力の本質に迫った。
川上未映子の作品は、常に個人の身体というミクロな視点から出発し、社会全体が向き合うべきマクロな倫理的問題へと接続していく。大阪弁が持つ独特のリズムと躍動感を活かした文体も、彼女の作品に唯一無二の力を与えている。
近年、その評価は急速に国際的に広がっている。『ヘヴン』の英訳版は2022年にブッカー国際賞の最終候補に選出され 、『すべて真夜中の恋人たち』は2023年に全米批評家協会賞の最終候補となるなど 、英語圏で最も権威ある文学賞の舞台で立て続けに高い評価を獲得している。
柳美里
在日韓国人二世として生まれ、その出自と経験を初期の私小説的な作品に色濃く反映させてきた柳美里は、常に社会の周縁に立つ人々の声に耳を傾けてきた作家である。
柳美里の作風は、社会から疎外された人々への一貫した眼差しによって特徴づけられる。その集大成とも言えるのが、2020年に全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞した『JR上野駅公園口』である 。この作品は、東京・上野公園でホームレスとして暮らす福島の男性の生涯を通じて、高度経済成長と繁栄の影で忘れ去られてきた人々の貧困と孤立を、静かな怒りを込めて描き出した。
『JR上野駅公園口』の批評的な構造は、海外で高く評価された。物語の主人公は、昭和天皇と同じ日に生まれたという設定を持つ。この設定により、オリンピックに象徴される国家の華やかな歴史と、その礎となりながらも見捨てられていく名もなき個人の人生が鮮烈に対比される。国家的な祝祭の陰で「山狩り」によって排除されるホームレスたちの姿は、現代日本社会が目を背けてきた不都合な真実を鋭く突きつける。
柳美里の全米図書賞受賞は、多和田葉子に続く快挙である。全米図書賞受賞によって、ノーベル文学賞を受賞する可能性があるのではと言われるようになった。
まとめ
以上、ノーベル文学賞を受賞する可能性が高い日本人作家を紹介した。日本人で3人目のノーベル文学賞受賞者が出れば、出版会も大きく盛り上がるだろうなと思う。なので、ぜひとも受賞して欲しいものだ。
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