日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

村上春樹がアストゥリアス皇太子賞の文学部門賞を受賞した件について

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村上春樹がアストゥリアス皇太子賞の文学部門を受賞したというめでたいニュースが入ってきた。スペインの文学賞・アストゥリアス皇太子賞は、ヨーロッパで最も権威がある賞の1つで、日本人作家が文学部門で受賞したのは初めてのようだ。

この記事では、村上春樹が受賞したアストゥリアス皇太子賞について書きたい。

 

 

 

アストゥリアス皇太子賞って何?

アストゥリアス皇太子賞とは、アストゥリアス(スペイン王太子)が主宰するスペインの賞だ。この賞は、「スペインのノーベル賞」とも呼ばれていて、ヨーロッパで最も権威がある賞として知られている。

表彰しているのは、コミュニケーションおよびヒューマニズム部門社会科学部門芸術部門文学部門学術・技術研究部門国際協力部門平和部門スポーツ部門の8部門だ。日本人の受賞を見てみると、宇宙飛行士の向井千秋さんが日本人として初めて国際協力部門で受賞している。その他だと、建築家の坂茂さんが受賞している。

文学賞部門を見てみよう。他にこの賞を受賞している有名な小説家だと、ポール・オースターやマーガレット・アトウッド、イスマイル・カダレ、フィリップ・ロスなどがいる。錚々たる作家たちだ。日本人作家ではこれまでに受賞者がおらず、村上春樹が初受賞となっている。

 

 

なぜ村上春樹がアストゥリアス皇太子賞の文学部門賞を受賞したのか  

なぜ村上春樹が賞を受賞したかを見てみよう。記事を見ていると、村上春樹について「幅広い世代に大きな影響を与えた。現代文学における主要な長距離ランナーの一人だ」と称えている部分があった。記事によると、審査員たちは「文学のユニークさや普遍的な射程、野心的で革新的な語りにより日本の伝統と西洋文化の遺産を融和させる手腕」を高く評価したようだ。

その他だと、「孤独や存在の不確かさ、テロ、大都市での人間性喪失」といった重要なテーマに挑んだ点が指摘された。

 

 

世界中の文学賞を席巻している村上春樹

アストゥリアス皇太子賞を受賞した村上春樹だが、以前にも国際的な文学賞を数多く受賞している。

2006年にはアイルランドの「フランク・オコナー国際短編賞」とチェコの「フランツ・カフカ賞」を受賞している。フランツ・カフカの名を冠したこの文学賞を受賞した作家はノーベル文学賞も受賞していることが多い。2004年のカフカ賞受賞者エルフリーデ・イェリネクと2005年のカフカ賞受賞者ハロルド・ピンターは、両名ともいずれも同年にノーベル文学賞を受賞したのである。このこともあってか、フランツカフカ賞を受賞した村上春樹に「ノーベル賞受賞するか」と注目が集まったのである。

村上春樹はその後もイスラエルの「エルサレム賞」やデンマークの「アンデルセン文学賞」、「カタルーニャ国際賞」など、海外の賞を複数受賞している。特に、受賞することに政治的な批判があった「エルサレム賞」での受賞スピーチのエピソードは有名である。村上春樹は「壁と卵」という素晴らしいスピーチをエルサレム賞受賞式で披露しているので、ぜひ見てみてほしい。このスピーチは『村上春樹 雑文集』に収録されている。

 

村上春樹ノーベル文学賞候補か?祭りの燃料にされそうな予感

またまたまた村上春樹が世界的に有名な文学賞を受賞したとあって、今年もまたノーベル賞シーズンになれば騒がれるんだろうなと思う。

今年は特に村上春樹が新作『街とその不確かな壁』を発表したとあって、さらに注目が集まるのではないかなと思う。まあ、文学賞をとろうがとらまいが作品自体の素晴らしさは変わらないと思っているので、ノーベル賞候補みたいな騒ぎは辞めてほしいなと思うのが本音である。