日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

第169回芥川龍之介賞の候補作を予想する

六月になったということで、もうすぐ芥川賞の候補作が発表される。恒例行事にはなってきたが、芥川賞の候補作を予想してみた。上半期で印象に残った小説や推したい小説を中心に挙げている。

芥川賞をざっくり簡単に説明すると、新人作家の純文学作品に与えられる文学賞だ。文学賞の中で一番有名な賞だろう。純文学というと定義が難しいのだけれど、芥川賞に限っていえば、「文學界」・「新潮」・「群像」・「すばる」・「文藝」の五大文芸誌に掲載された作品が候補の対象となる。候補の作品となる小説の長さは中編程度が多い。

結論から言うと、千葉雅也「エレクトリック」、朝比奈秋「あなたの燃える手で」、永井みみ「ジョニ黒」、乗代雄介「それは誠」、九段理江「しをかくうま」あたりが候補になると予想した。

以下作品の詳細について書いていく。

 

 

 

そもそも芥川賞とは?

まず、芥川賞について簡単に説明しておく。芥川賞とは、新人作家の純文学作品に与えられる文学賞だ。純文学における登竜門的な賞で、文学賞の中で一番知名度がある賞かもしれない。純文学界のM−1グランプリみたいなものだ。純文学というと定義が難しいのだけれど、芥川賞に限っていえば、「文學界」・「新潮」・「群像」・「すばる」・「文藝」の五大文芸誌に掲載された作品が候補の対象となる。他の文芸誌に載った作品も候補になることがあるが非常にまれだ。

 

第169回芥川龍之介賞の候補作の予想

それでは、今回候補になるのではないかと予想している五作品について紹介したい。

 

千葉雅也「エレクトリック」(新潮 2月号)

 千葉雅也は気鋭の哲学者だ。小説も公表していて「デットライン」で芥川賞候補になり、芥川賞の受賞は逃したものの、第41回野間文芸新人賞を受賞している。

「エレクトリック」では、アンプの製作がきっかけで黎明期のインターネットに初めて接続した達也が、ゲイのコミュニティを知り、おずおずと接触を試みるという内容だ。

 

 

朝比奈秋「あなたの燃える手で」(文藝 夏季号)

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朝比奈秋「あなたの燃える左手で」は、ハンガリーで白人男性の左手を移植された日本人が共存する道を探っていくという話だ。その中で、ウクライナでの侵略の歴史が語られるというのが意欲的な仕掛けだ。

 

 

永井みみ「ジョニ黒」(すばる6月号)

 

「ジョニ黒」は、『ミシンと金魚』で話題となった永井みみのすばる文学賞受賞後第一作だ。
1975年の横浜を舞台に少年のひと夏を描いた作品となっている。

 

 

乗代雄介「それは誠」(文學界6月号)

今回の予想の大本命が乗代雄介の「それは誠」だ。個人的には乗代雄介の最高傑作といっても過言ではないし、なんなら今年の芥川賞を取るのはこの作品だと思っている。

乗代雄介は「十七八より」で第58回群像新人文学賞を受賞しデビュー。『本物の読書家』で第40回野間文芸新人賞を受賞し、「旅する練習」で三島由紀夫賞を受賞している。以前には「最高の任務」、「旅する練習」、「皆のあらばしり」で3回芥川賞候補に挙がっている。もし今回候補になれば、4回目の芥川賞候補だ。乗代雄介の作風としては、テクストの引用が多用されるのが特徴だ。

「それは誠」は、修学旅行で東京に訪れた高校生たちがコースを外れてちょっとした冒険をするという話だ。

 

 

九段理江「しをかくうま」(文學界6月号)

九段理江の「しをかくうま」は、いろんな視点からアプローチした競馬小説だ。

九段理江は文學界新人賞を「悪い音楽」で受賞しデビュー。候補に上がった「School girl」は、太宰治の「女生徒」を下敷きにし、世代間ギャップのある母と娘の邂逅を描いた意欲作だ。

 

 

 

第169回 芥川賞の候補作は6月16日(金)に発表

www.bunshun.co.jp

第169回 芥川賞の候補作は、6月16日(金)午前5時に日本文学振興会から発表される。

選考会は7月19日(水)16時に行われる予定だ。選考委員は、小川洋子、奥泉光、川上弘美、島田雅彦、平野啓一郎、堀江敏幸、松浦寿輝、山田詠美、吉田修一という豪華な顔ぶれだ。

毎回思うことだが、発表時間がめちゃくちゃ早朝なのは何故なのか。やれやれ。

 

 

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