日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

梅雨に読みたい!雨がタイトルに入るおすすめ小説5選

梅雨の時期になり、ジトジトとした雨の日が続くようになってきた。こんな日には家でゆっくり本を読むのがいいだろう。

雨が降るのを眺めながら読書に耽るのは趣があっていいかもしれない。この記事では、梅雨時に読みたい、タイトルに雨が入った小説を紹介したい。

 

 

龍神の雨 / 道尾 秀介

添木田蓮と楓は事故で母を失い、継父と三人で暮らしている。溝田辰也と圭介の兄弟は、母に続いて父を亡くし、継母とささやかな生活を送る。蓮は継父の殺害計画を立てた。あの男は、妹を酷い目に合わせたから。――そして、死は訪れた。降り続く雨が、四人の運命を浸してゆく。彼らのもとに暖かな光が射す日は到来するのか? あなたの胸に永劫に刻まれるミステリ。

『龍神の雨』は、陰鬱な雨が印象的なミステリ小説だ。作者はどんでん返しに定評がある道尾秀介。

 

 

あいにくの雨で / 麻耶 雄嵩 

雪に囲まれた廃墟の塔で密室殺人が発生。殺されたのは親友の父親で、8年前に同じ塔で起きた殺人事件の容疑者として逃亡中だった。さらに三度目の殺人が…驚愕の青春本格ミステリ!

数々の問題作を世に送り出してきたミステリ作家・麻耶雄嵩の作品で、雨がタイトルに入っているのが『あいにくの雨で』だ。この小説でも、ミステリ好きをあっと言わせるような仕掛けが施されている。

 

 

この恋は世界でいちばん美しい雨 / 宇山 佳佑

雨をきっかけに恋に落ち、鎌倉で同棲生活を送る建築家の誠とカフェ勤務の日菜は、ある雨の日にバイク事故で重傷を負ってしまう。目を覚ますと、彼らの前に”案内人”と名乗る喪服姿の男女が現れた。すると誠と日菜は、二人合わせて20年の余命を授かり、生き返ることができた。しかしそれは、二人が互いの命を奪い合うことを意味しており……。

『桜のような僕の恋人』で話題を集めた宇山佳佑の作品で、「雨」がテーマになっているのが『この恋は世界でいちばん美しい雨』だ。

この作品では「雨」をテーマに、過酷な運命を背負ったカップルの純愛が描かれている。単なるラブストーリーではなく、ファンタジー的な展開が魅力の作品だ。しっとりとした雨の日に読みたくなるような作品だ。

 

 

驟雨 / 吉行 淳之介

見知らぬ女がやすやすと体を開く奇怪な街。空襲で両親を失いこの街に流れついた女学校出の娼婦あけみと汽船会社の社員元木との交わりをとおし、肉体という確かなものと精神という不確かなものとの相関をさぐった「原色の街」。
散文としての処女作「薔薇販売人」、芥川賞受賞の「驟雨」など全5編。性を通じて、人間の生を追究した吉行文学の出発点をつぶさにつたえる初期傑作集。

驟雨というのは、急に降り出す雨、にわか雨のことだ。この驟雨が印象的なのが、タイトル通り吉行淳之介の『驟雨』だ。この『驟雨』という短編小説は、娼婦に恋をしてしまった男の話である。吉行淳之介が芥川賞を受賞した作品である。

主人公の山村は、娼婦・道子にだんだん愛情を抱くようになってしまう。嫉妬に駆られる山村など、心理描写が秀逸な作品である。繊細な心理描写と、驟雨の描写がまいまって切ない読後感を残す。

 

 

雨のなまえ / 窪 美澄 

女は小さな声で、マリモ、と言った―。家具ショップで働き、妊娠中の妻と何不自由のない生活を送る悠太郎。ある日店に訪れた女性客と二度目に会った時、彼は関係を持ち、その名を知る。妻の出産が迫るほど、現実から逃げるように、マリモとの情事に溺れていくが…。(「雨のなまえ」)答えのない「現代」を生きることの困難と希望。降りそそぐ雨のように心を穿つ五編の短編集。

雨のなまえ』は、妻が妊娠中に不倫する夫、パート先のアルバイト学生に焦がれる中年の主婦、不釣り合いな美しい女と結婚したサラリーマン、など満たされない現実に思い悩む人々を描いた小説だ。日常に対する不満を抱えた登場人物の心情を表すかのように、作中では雨が降りしきっている。現代を生きることの辛さを包み込んでいくような小説だ。

 

今週のお題「読みたい本」