芥川龍之介の名作短編小説として有名なのが「羅生門」だ。
高校の授業で扱うこともあり、読んだことがある人は多いだろう。
役人が門の上で死人の髪を盗んでいる老婆を見つけ、老婆の衣を奪って去るという衝撃的な内容だ。
この記事では、「羅生門」の時代設定や季節、時刻について説明したい。
結論を先に書くと、作中の季節は冬に近い秋頃で、時代は平安時代末期、 時刻は午後5時から6時~7時から8時ごろの夕刻だと推定される。
「羅生門」とは?
芥川龍之介の名作短編「羅生門」は、下人が門の上で死人の髪を盗んでいる老婆を見つけ、悩みながらも自分の命を優先して老婆から衣を奪うという内容の作品だ。人間のエゴイズムを描いた作品である。
下人は死人から毛をむしり取っている老婆を見つけ、詰問する。老婆は生きるために仕方がないことだと自らを肯定するものの、結局は利己主義に走った下人に衣を剥ぎ取られてしまう。「羅生門」では生きるために悪を働くという人間の利己主義や醜さを描いている。
また、黒澤明監督によって『羅生門』という映画が撮られているが、これは芥川龍之介の「羅生門」ではなく「藪の中」を映画化した作品だ。内容は異なるが、「羅生門」から舞台背景や着物をはぎ取るエピソードを取り入れている。
実は、「羅生門」には元になった作品がある。その作品とは、平安時代の末期に作られた「今昔物語集」という説話集の中の物語だ。で、今昔物語集の「羅城門登上層見死人盗人語」と「太刀帯陣売魚姫語」の内容をミックスする形で書かれたのだ。
作中の舞台設定について(時代・季節・時間帯)
作中の舞台設定だが、季節は冬に近い秋頃で、作中の時代は平安時代末期と考えられる。
時刻は冒頭に「ある日の暮れ方のことである」と書かれてあるように、夕刻だろう。時間帯で言えば、午後5時から6時~7時から8時頃あたりだろうか。
作中の時代が平安時代末期である理由
時代を特定するヒントはタイトルの羅生門にある。
「羅生門」の舞台は、タイトルにもあるように羅生門だ。この羅生門というのは、朱雀大路にある平安京の正門のことである。この羅生門が登場することからも平安時代以降だと考えられる。
作中の季節が秋である理由
「羅生門」の季節を特定する根拠は作中に存在する。
本文中の根拠としては、「キリギリス(コオロギ)が一匹とまっている」や 「夕冷えのする京都はもう火桶が欲しいほどの寒さである」 という文章がある。
キリギリスが登場することから季節は秋と推定することでき、火桶が欲しいほどの寒さという表現から秋の中でも晩秋、冬に近い秋頃だと特定することができる。
ちなみに俳句でもキリギリスは秋の季語である。