日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

知る人ぞ知る?オーストラリアを代表する作家ジェラルド・マーネインを紹介する

ジェラルド・マーネイン(Gerald Murnane)という小説家を知っているだろうか?

ジェラルド・マーネインはオーストラリアの小説家で、知る人ぞ知る作家だ。世界的に有名な作家ではないが、一部でカルト的な人気を得ている。

最近では、ノーベル文学賞も受賞するのでは言われており、ブックメーカーのノーベル文学賞受賞者の予想として名前が上がることが多い。

日本では知名度はないと思うが、オーストラリアを代表するジェラルド・マーネインを紹介したいと思う。

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中国のカフカ!?現代中国文学を代表する作家・残雪について紹介する

残雪 (Can Xue)という作家を知っているだろうか?

中国を代表する現代作家で、非常に独創的な作風が特徴だ。その独創的な作風から、カフカやピンチョンと並び称される作家である。

日本では知名度は低いかも知れないが、現代中国文学を代表する残雪を紹介したいと思う。

 

 

 

残雪(Can Xue)ってどんな作家?

残雪(Can Xue)は中国を代表する現代作家だ。

名前の読み方だか、残雪(ツァンシュエ)と読むらしい。ペンネームの由来は、「まわりの雪が消えても最後まで融けずに残っている冷たい雪」であると本人が語っている。

残雪は独創的な作風が特徴の作家で、その作風はカフカ不条理文学の系譜に連なると言ってもいいかもしれない。その作風故か、カフカやピンチョンと並び称されることが多い。

最近ではノーベル文学賞を受賞するのではと注目を集めている。残雪が最近注目を集める理由としては、長編小説「新世紀愛情故事」のスウェーデン語版が出版されたためだ。「新世紀愛情故事」はスウェーデンで出版されると、同国の多くのメディアが取り上げ、スウェーデン最優秀翻訳文学賞の最終候補にも選ばれた。残雪がノーベル賞を取る日も近いかもしれない。

 

 

残雪の作品を紹介する

それでは、残雪の作品を紹介しよう。

日本ではいくつかの残雪作品が邦訳されている。『黄泥街』、『最後の恋人』などがある。ぜひ読んでみてほしい。

 

 

黄泥街

黄泥街は狭く長い一本の通りだ。両側には様々な格好の小さな家がひしめき、黄ばんだ灰色の空からはいつも真っ黒な灰が降っている。灰と泥に覆われた街には人々が捨てたゴミの山がそこらじゅうにあり、店の果物は腐り、動物はやたらに気が狂う。この汚物に塗れ、時間の止まったような混沌の街で、ある男が夢の中で発した「王子光」という言葉が、すべての始まりだった。その正体をめぐって議論百出、様々な噂が流れるなか、ついに「王子光」がやって来ると、街は大雨と洪水に襲われ、奇怪な出来事が頻発する。あらゆるものが腐り、溶解し、崩れていく世界の滅びの物語を、言葉の奔流のような圧倒的な文体で語った、現代中国文学を代表する作家、残雪(ツァンシュエ)の第一長篇にして世界文学の最前線。

 

蒼老たる浮雲

異様なイメージと夢の中のように支離滅裂な出来事の連鎖が衝撃を呼ぶ中篇『蒼老たる浮雲』に、初期短篇「山の上の小屋」「天窓」「わたしの、あの世界でのこと」を収録。アヴァンギャルドな文体によって既存の文学の枠組を打ち破り、現代中国の社会と精神の構図を深い闇の底から浮かび上がらせた残雪(ツァンシュエ)作品集。

 

カッコウが鳴くあの一瞬

わたしは駅の古いベンチに横になっていた。わたしにはわかっている、カッコウがそっと三度鳴きさえすれば、すぐにも彼に逢えるのだ。「カッコウはもうじき鳴く」とひとりの老人がわたしに告げた……。姿を消した“彼"を探して彷徨い歩く女の心象風景を超現実的な手法で描いた表題作。毎夜、部屋に飛び込んできて乱暴狼藉をはたらく老婆の目的は、昔、女山師に巻き上げられた魔法の靴を探すことだった……「刺繡靴および袁四ばあさんの煩悩」ほか、全九篇を収録。

 

 

突囲表演

突囲表演 (河出文庫)

突囲表演 (河出文庫)

  • 作者:残雪
  • 河出書房新社
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若き絶世の美女であり皺だらけの老婆、煎り豆屋であり国家諜報員――X女史が五香街(ウーシャンチェ)をとりまく熱愛と殺意の包囲を突破する!世界文学の異端にして中国を代表する作家が紡ぐ想像力の極北

 

最後の恋人

残雪が2005年に発表した注目の長篇小説。服装会社営業部長のジョーは本の虫。様々な物語が頭の中で充満している。現実と読書が次第に浸透する中、何かを探し始める――。

 

 

 

ノルウェーを代表する現代劇作家ヨン・フォッセについて紹介する

ヨン・フォッセ(Jon Fosse)という劇作家を知っているだろうか?

ノルウェーを代表する劇作家で、グローバルに大きな関心を集めている。ヨン・フォッセは、イプセンに続き最も頻繁に上演されるノルウェー人劇作家である。ミニマリズムを特徴とする演劇で国際的に高く評価されている。

イプセンの再来」や「21世紀のベケット」と呼ばれ、2023年のノーベル文学賞を受賞した。

日本では知名度はないと思うが、ヨーロッパ現代演劇を代表するヨン・フォッセを紹介したいと思う。

 

 

 

ヨン・フォッセ (Jon Fosse)ってどんな作家?

ヨン・フォッセ (Jon Fosse)はノルウェーを代表する現代劇作家だ。ヨン・フォッセは小説「赤、黒」で作家デビューし、その後小説だけでなく戯曲も手掛けている。

ヨン・フォッセの戯曲は40以上の言語に翻訳されており、50か国以上の国で上演されている。ヨン・フォッセは、イプセンに続き最も頻繁に上演されるノルウェー人劇作家である。ミニマリズムを特徴とし、「間」をうまく使った戯曲は特徴的で世界中で評価されている。また、場面や台詞を繰り返すなど表現に面白さがある。

また、ヨン・フォッセは「ニーノルシュク」と呼ばれるノルウェー西海岸の書き言葉で作品を書いている。

前衛的な作風が特徴で、「イプセンの再来」や「21世紀のベケット」とも呼ばれる。

戯曲の代表作としては、「だれか、来る」などがある。

日本でもヨンフォッセの作品は上演されており、「だれか、来る」、「死のヴァリエーション」、「スザンナ」といった戯曲が上演されている。

最近だと、2021年には7部構成の小説(セプトロジー)が完結している。この作品は、イギリスの国際ブッカー賞や全米批評家協会賞小説部門で、いずれも最終候補となっている。

 

 

2023年ノーベル文学賞を受賞

Septology

Septology

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ヨン・フォッセはその文学性を認められて、2023年のノーベル文学賞を受賞している。ノルウェー人の受賞は久しぶりのことで、1928年の女性作家シグリ・ウンセット以来95年ぶりだ。

ノーベル文学賞の授賞理由としてスウェーデンアカデミーは「言葉に表せないものに声を与える革新的な戯曲と散文」を挙げた。ノーベル文学賞の選考委員会のオルソン委員長は「彼の作品は静けさの中で、不安や孤独など世界中の誰にでも通じる強い感情を喚起させる」と話したようだ。

ヨン・フォッセはノーベル文学賞受賞について、ロイター通信に「圧倒され、びっくりしている。他のことは考慮せず、文学であることを目指した文学に与えられた賞だと思う」と答えている。

恐らく、最近完成した大作『七部作』という小説がノーベル文学賞につながったのではないかと思う。

過去にも、2013年にブックメッカーでオッズが高かったことから、ノーベル文学賞を受賞するのではと騒がれた。

ノーベル文学賞がきっかけとなって、もっと多くのヨン・フォッセ作品が邦訳されて欲しいものだ。白水社さん、よろしくお願いします。

 

 

ヨン・フォッセの作品を紹介する

それでは、ヨン・フォッセの戯曲を紹介しよう。

日本では「だれか、来る」、「名前」、「眠れ、よい子よ」、「ある夏の一日」「死のヴァリエーション」「スザンナ」といった戯曲が上演されている。

日本語版はないのだが、英語であればほとんどの作品を読むことができる。

 

だれか、来る (Someone Is Going to Come)

舞台は、海に面した入り江にたった一軒たたずむ古い屋敷。世間から逃れてきた男女がそこにたどり着く。二人は完全に二人だけの世界を求めてやってきたのだが、常に「だれか、来る」ことの不安に怯えている。そんな二人の元に若い男が登場し、二人の関係性が変化していく。

この戯曲では同じセリフがリフレインされるのだが、場面によって意味が大きく変わっていく。この意味の変貌が面白い点だ。

 

 

ある夏の一日 (A Summer's Day)

 

 

死のヴァリエーション (Death Variations)

死のヴァリエーション」も日本で上演された作品だ。離婚して年月のたったある時、「年をとった男」のところに前妻の「年をとった女」が訪ねてくる。「年をとった女」は、娘の死を知らせに来たのだ。二人の会話から、結婚し娘が生まれた頃から、娘の成長や二人の離婚など、今までの人生が時系列が交錯する形で描かれる。

 

 

スザンナ (Suzannah)

スザンナ」は、イプセンの妻を描いた抽象的な戯曲だ。日本でも戯曲が上演されている。

 

 

日本語訳で読めるヨン・フォッセ作品は?

舞台芸術〈05〉特集 劇場と社会

舞台芸術〈05〉特集 劇場と社会

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ノルウェーを代表する作家のヨン・フォッセだが、残念なことに日本語訳されている作品はほとんど出版されていない。戯曲は、『だれか、来る』『名前』『眠れ、よい子よ』『ある夏の一日』、『死のヴァリエーション』、『スザンナ』といった作品が上演されているのだけれど。

かろうじて日本語に翻訳されているのが、戯曲『だれか、来る』だ。ヨン・フォッセ作品だけで出版されているわけではなく、「舞台芸術〈05〉」という本の中に翻訳が収録されている。この本では、ヨン・フォッセについてのちょっとした特集が組まれている。ヨン・フォッセのエッセイも収録されているので、気になる人は読んでみてほしい。

 

作品ではないが、『北欧の舞台芸術』という本にはヨン・フォッセのインタビューが掲載されている。

残念ながら、日本語でヨン・フォッセ作品を読もうとすれば「舞台芸術」を買うしか無いようだ。しかも残念なことに、この書籍は絶版になっているようで、購入するとすれば古本を探すしか無いのである。

英語版であれば大半の作品は翻訳されているみたいで、電子書籍化もされている。

ヨン・フォッセがノーベル文学賞を受賞したので、これから日本語訳が増えると思うのだけれど、現状では英語で読むしか無いようだ。

 

是非とも白水社さんあたりに翻訳戯曲集をだしてもらいたいものだ(2回目)。

 

村上春樹の人気は?ブックメーカーを参考にして2023年ノーベル文学賞を予想してみた

もうそろそろ「村上春樹、今年こそノーベル賞受賞なるか?」というニュースを見かける季節になると思うので、一足先にブックメーカーを参照して今年のノーベル文学賞を予想したいと思う。

「村上春樹、今年こそノーベル賞受賞なるか?」というのはもはや秋の風物詩だ。

特に今年は、村上春樹が新作長編『街とその不確かな壁』を出版するなど、活動的な一年だった(まだ今年は終わっていないが)。また、ヨーロッパで最も権威がある賞の1つと言われている、スペインのアストゥリアス王女賞の文学賞を受賞するという快挙を達成している。

もうこれは、今年もマスメディアで「村上春樹、今年こそノーベル賞受賞なるか?」祭りが盛り上がってしまうのだろう。やれやれ。

少し気は早いかもしれないが、今年もブックメーカー(賭け屋)において村上春樹の人気がどうなのか確認してみた。

今年も村上春樹はオッズの人気でベスト10には入っていた。例年に比べれば少し順位を落としており、村上春樹祭りは落ち着いている。

話題になっている各種ブックメーカーのオッズや予想記事を参考にして、2023年ノーベル文学賞を予想してみた。

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まさに裏技!絶版本を探す方法

本好きあるあるだと思うけど、読みたい本が絶版になっているってよくあることだと思う。本屋でバイトしていた経験から言うと、十年前に出版された本でも結構絶版になっていた。読みたいだけなら図書館で借りればいいけれど、手元に置いておきたい本や棚に並べたい本なら買うしかない。けれど、絶版本をどうやったら手に入れることができるのか?新刊本と古本とに分けて、僕がやっている方法を説明しようと思う。

 

 

 

新刊で手に入れたい場合

絶版本を新刊の状態で手に入れるのはなかなか難しい…やっぱり地道に本屋をめぐるしかないな。

 

1.ジュンク堂をフル活用

www.junkudo.co.jp

ジュンク堂をフル活用すれば、最近絶版になった本が手に入る。さすが品ぞろえの暴力・ジュンク堂。出版社に在庫がなくても、全国のどこかのジュンク堂に在庫があったりする。最寄りのジュンク堂や出版社に在庫がなくても、どこかのジュンク堂に在庫があれば取り寄せることができる。このサービスは有り難い!そうです、ジュンク堂の回し者です!

 

 

2.個性派書店を攻める

ジュンク堂になかったら、本のセレクトにこだわった個性派書店を攻めてみる。関西で言うと、スタンダードブックストアや恵文社、三月書房などなど。普通の本屋では扱っていないようなマニアックな本も置いているので、絶版本もたまにまぎれていたりする。

 

 

3.個人経営の書店を攻める

ジュンク堂に在庫がなければ、僕は絶版本を新刊で手に入れることをあきらめる。ただ、紀伊國屋やジュンク堂、TSUTAYAといった全国チェーンの本屋ではなくて、地方ローカルの本屋や、商店街とかにある個人経営の書店には絶版本がねむっていたりする。是非、こじんまりした書店を見つけたら宝探しをしてみて。

 

 

4.復刊ドットコムでリクエスト

www.fukkan.com

どうしても見当たらないなら、復刊ドットコムで復刊をお願いしてみよう!ある程度リクエストが溜まれば復刊してもらえる。

 

 

古本で手に入れる場合

古本でもいいから手に入れたい場合なら、大抵の本は手に入れることができると思う。Amazonを活用すれば大体手に入れることができる。その他の方法について書きたい。

 

1.ブックオフに行く

侮るなかれブックオフ。ブックオフって案外レアな絶版本が低価格で売っていたりする。

 

2.古本まつりに行く

古本まつりに行けば、かなりレアな古本に出会えるのでおススメ。京都で言えば下鴨神社の納涼古本まつりがある。探せば探すほどお宝が出てくるので、軍資金は多めに持って行こう。

読まないと!伊坂幸太郎の隠れた名作小説4選

鮮やかな伏線回収、魅力的なキャラクター、ウィットに富んだ文章で人気を集めているのが伊坂幸太郎だ。

巧みすぎる伏線回収には毎回驚かせられる。時系列がバラバラであったりと小説の構成が凝っていて、どんでん返しなどが仕掛けられたミステリ小説が多い。

伊坂幸太郎の魅力のひとつが、ウィットに富んだ文体だ。登場人物たちのウィットに富んだセリフが伏線にもなっていて、伊坂幸太郎おそるべしとしか言いようがない。特に「陽気なギャング」シリーズは伊坂作品の中でも会話のユーモアが多くてオススメだ。登場人物たちの洒脱でユーモアに溢れた会話が心地よすぎて、何度も読んでしまう。

伊坂幸太郎といえば、『重力ピエロ』や『ゴールデンスランバー』、『アヒルと鴨のコインロッカー』、『死神の精度』、『逆ソクラテス』などを思い浮かべる人が多いと思う。

だが、それ以外の伊坂作品にも面白い名作がある。そんな伊坂幸太郎の隠れた名作小説を紹介したい。

 

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映像化不可能と言われていたが映画化されたミステリ小説まとめ

ミステリ小説の中にはトリックの性質がゆえに映像化できないと言われてるものがいくつかある。映像化してしまうとトリックがばれてしまうからだ。
だが、趣向をこらすことによって映像化不可能と言われていたけれど、映画化に成功した作品もある。
この記事では、映像化不可能と言われていたけど、映画化されたミステリ小説を紹介したい。

 

 

 

 

ハサミ男 / 殊能 将之

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。

どんでん返しの名作として名前が上がる小説といえば、殊能将之の『ハサミ男』だろう。この小説に使われるトリックの性質から、映像化は無理だろうと言われていた。しかし、が主演で映画化されている。

 

 


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イニシエーション・ラブ / 乾 くるみ

「必ず二回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。僕がマユに出会ったのは、人数が足りないからと呼びだされた合コンの席。理系学生の僕と、歯科衛生士の彼女。夏の海へのドライブ。ややオクテで真面目な僕らは、やがて恋に落ちて……。甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説──と思いきや、最後から二つめのセリフ(絶対に先に読まないで!)で、本書はまったく違った物語に変貌してしまう。

どんでん返しの傑作を上げると必ず名前が挙がるのが乾くるみの『イニシエーション・ラブ』だ。最後から二行目までは普通の恋愛小説だけど、最後から二行目で全く違う話になる恋愛ミステリだ。読み終わると、もう一回読み直して作中に散りばめられた伏線を確かめたくなる。最後の展開については男子と女子で感想が分かれそう...。そして、著者の乾くるみが、女ではなく男というのが一番の叙述トリック

 


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 アヒルと鴨のコインロッカー / 伊坂 幸太郎

大学入学のため引っ越してきたアパートで、最初に出会ったのは黒猫、次が悪魔めいた長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。標的は――たった一冊の広辞苑。僕は訪問販売の口車に乗せられ、危うく数十万円の教材を買いそうになった実績を持っているが、書店強盗は訪問販売とは訳が違う。しかし決行の夜、あろうことか僕はモデルガンを持って、書店の裏口に立ってしまったのだ!

どんでん返しの名作として名前が挙がることが多いのが『アヒルと鴨のコインロッカー』だ。引っ越してきたアパートで出会った青年に持ちかけられたのは本屋の襲撃だった。1冊の広辞苑を狙った書店襲撃とそれに協力する主人公。事件の全貌が明らかになった時、全てがひっくり返る衝撃に襲われる。衝撃の展開、明かされる真実。現在と過去が繋がるとき、切なさが胸に込み上げてくる。切ない余韻を残す、名作ミステリだ。

 


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ある閉ざされた雪の山荘で / 東野 圭吾

早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した男女7名。これから舞台稽古が始まる。豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇だ。だが、1人また1人と現実に仲間が消えていくにつれ、彼らの間に疑惑が生まれた。はたしてこれは本当に芝居なのか?驚愕の終幕が読者を待っている!

ある閉ざされた雪の山荘で』も『仮面山荘殺人事件』と並んで、どんでん返しの名作と言われている。仮想の雪の山荘でのクローズドサークルという異色の設定が使われたミステリー。実際に殺人が起きているのか、それとも芝居なのか分からないという、斬新なクローズドサークルになっている。

『ある閉ざされた雪の山荘で』には映像化不可能なトリックがしけかられているのだ。頑張れば映像化できそうな気はするのだが、小説で味わうほどの衝撃を映像で表現するのは厳しいと思う。どうやって映像化するのか楽しみである。

余談だが、この作品で使用されている「映像化できないトリック」はとあるフランスの前衛文学に使われている。このフランスの小説に使用されたのが初めてなので、ミステリに応用したのは東野圭吾が初めてなのかなと思う。

 


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