日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

読まないと!伊坂幸太郎の隠れた名作小説4選

鮮やかな伏線回収、魅力的なキャラクター、ウィットに富んだ文章で人気を集めているのが伊坂幸太郎だ。

巧みすぎる伏線回収には毎回驚かせられる。時系列がバラバラであったりと小説の構成が凝っていて、どんでん返しなどが仕掛けられたミステリ小説が多い。

伊坂幸太郎の魅力のひとつが、ウィットに富んだ文体だ。登場人物たちのウィットに富んだセリフが伏線にもなっていて、伊坂幸太郎おそるべしとしか言いようがない。特に「陽気なギャング」シリーズは伊坂作品の中でも会話のユーモアが多くてオススメだ。登場人物たちの洒脱でユーモアに溢れた会話が心地よすぎて、何度も読んでしまう。

伊坂幸太郎といえば、『重力ピエロ』や『ゴールデンスランバー』、『アヒルと鴨のコインロッカー』、『死神の精度』、『逆ソクラテス』などを思い浮かべる人が多いと思う。

だが、それ以外の伊坂作品にも面白い名作がある。そんな伊坂幸太郎の隠れた名作小説を紹介したい。

 

 

 

残り全部バケーション

当たり屋、強請りはお手のもの。あくどい仕事で生計を立てる岡田と溝口。ある日、岡田が先輩の溝口に足を洗いたいと打ち明けたところ、条件として“適当な携帯番号の相手と友達になること”を提示される。デタラメな番号で繋がった相手は離婚寸前の男。かくして岡田は解散間際の一家と共にドライブをすることに―。その出会いは偶然か、必然か。裏切りと友情で結ばれる裏稼業コンビの物語。

伊坂幸太郎の隠れた名作として真っ先に思いついたのが、『残り全部バケーション』だ。この作品はシリーズものではなく、伊坂作品の中では知名度が低い方ではないかと思う。だが、伊坂幸太郎作品の中でも伏線回収が冴え渡っていて読後感も良い作品だ。

裏稼業を生業とする岡田と溝口のコンビが主人公の連作短編集である。それぞれの短編の完成度も良いのだが、連作短編がどんどんと繋がっていく快感が素晴らしいのだ。

是非とも一度読んでみてほしい。

 

 

砂漠

入学した大学で出会った5人の男女。ボウリング、合コン、麻雀、通り魔犯との遭遇、捨てられた犬の救出、超能力対決……。共に経験した出来事や事件が、互いの絆を深め、それぞれを成長させてゆく。自らの未熟さに悩み、過剰さを持て余し、それでも何かを求めて手探りで先へ進もうとする青春時代。二度とない季節の光と闇をパンクロックのビートにのせて描く、爽快感溢れる長編小説。

 『砂漠』は、個性豊かな大学生たちのキャンパスライフを描いた青春小説だ。

素晴らしい青春小説なのだけれど、伊坂幸太郎のおすすめで上がることが少ないのでこの記事に載せている。

魅力的なキャラクターが繰り広げるキャンパスライフを見てると、自らの大学生生活を思い出すだろう。また、まだ大学生ではない人はこの小説を読んでキャンパスライフに夢を膨らませるのも良いだろう。どこか足りなくて、どこか過剰で、何者かになれないかともがく青春時代。あっという間に過ぎ去ってしまう大学生時代を追体験できるような小説だ。

登場人物の魅力的な会話だけではなく、小説の構成も優れている。不毛かもしれないが、可能性に満ちた大学生活を伊坂作品で味わうのはどうだろう。

 

 

PK

人は時折、勇気を試される。落下する子供を、間一髪で抱きとめた男。その姿に鼓舞された少年は、年月を経て、今度は自分が試される場面に立つ。勇気と臆病が連鎖し、絡み合って歴史は作られ、小さな決断がドミノを倒すきっかけをつくる。三つの物語を繋ぐものは何か。読み解いた先に、ある世界が浮かび上がる。

PK』は、伊坂幸太郎では珍しく文学寄りの作品だ。伊坂幸太郎の作風は変化していっているのだけれど、特に第二期と呼ばれる時期の作品は特徴的である。この第二期では、エンターテイメント性よりも純文学的なテーマを追求する傾向が強かった。なので、分かりやすいエンタメ的な面白さがない分、賛否両論が別れる作品が多かったように思う。

そんな第二期と言われる時期の中で個人的に名作だと思うのが『PK』だ。三つの短編が収録されているのだが、そのうち二つは群像と呼ばれる純文学が載る雑誌に掲載されたものだ。

三つの短編では、人々の勇気について作品が展開されている。

 

 

ホワイトラビット 

兎田孝則は焦っていた。新妻が誘拐され、今にも殺されそうで、だから銃を持った。母子は怯えていた。眼前に銃を突き付けられ、自由を奪われ、さらに家族には秘密があった。連鎖は止まらない。ある男は夜空のオリオン座の神秘を語り、警察は特殊部隊 SIT を突入させる。軽やかに、鮮やかに。「白兎事件」は加速する。誰も知らない結末に向けて。驚きとスリルに満ちた、伊坂マジックの最先端!

伊坂マジックが冴え渡っているのが『ホワイトラビット』だ。伊坂幸太郎作品の中でもトップクラスのどんでん返しを味わえる作品である。

小説の舞台は仙台の高級住宅地。閑静な住宅街で人質事件が発生する。犯人と警察との緊迫した交渉戦や事件の鍵を握るオリオン座の秘密など、鮮やかな展開に目が離せなくなる。怒涛の展開に圧倒される小説だ。

『ラッシュライフ』で登場した人気キャラクター黒澤も登場することもあり、おすすめ度が高い作品である。

 

 

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