日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

謎解き『すずめの戸締まり』 / 日本神話・天岩戸隠れから考察する


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今年の11月11日に新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』が公開された。

水溜りの上にある扉の印象的なビジュアル観るものを圧倒する華麗な情景描写。予告を観ただけでも期待が高まる。

11月の公開まで待ちきれなかったので、8月に発売された『すずめの戸締まり』のノベライズを一足先に読んでしまった。

 

新海誠監督は自作品をノベライズを行うことが多く、『秒速5センチメートル』や『言の葉の庭』、『君の名は。』、『天気の子』は新海誠監督自らがノベライズを行なっている。感傷的なモノローグが得意な新海誠監督だけあってか、小説の文章もすごく味がある。

新海誠は村上春樹チルドレンだと言われることが多いのだが、『秒速5センチメートル』の文章からは確かに村上春樹ぽさが感じられた。

 

話を『すずめの戸締まり』に戻そう。ネタバレしない程度に簡単に書くと、『すずめの戸締まり』は天災に真っ向から向き合ったロードムービーだ。これまで新海誠監督は『君の名は。』や『天気の子』で人間に襲いかかる天災を描いていたと思うが、『すずめの戸締まり』ではある天災について真っ向から描いている。映画をまだ観ていないのにロードムービーと書くのもおかしな話だが。

『すずめの戸締まり』のテイストとしては、新海誠作品の『星を追う子ども』に近いかなと思う。ファンタジーにかなり寄せた雰囲気だ。監督によると、『すずめの戸締まり』は、物語もキャラクターも全く違うものの、宮崎駿監督の『魔女の宅急便』の影響を強く受けているらしい。

 

ここから下では『すずめの戸締まり』と日本神話・天岩戸隠れとを絡めて考察を行っていく。内容にがっつり触れるので、『すずめの戸締まり』のネタバレを知りたくない方は注意してほしい。

 

 

 

 

『すずめの戸締まり』の登場人物のモチーフは日本神話


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『すずめの戸締まり』では、キャラクターの名前やストーリーに日本神話のモチーフが数多く登場している。新海誠は『君の名は。』から日本の伝承や風習を作品に絡めてきた。『君の名は。』では神社の巫女 が登場し、『天気の子』も晴れを祈祷する巫女というモチーフが登場している。本作でもその傾向はあるんじゃなかろうか。

まず、『すずめの戸締まり』では主人公たちの名前に日本神話との関連が見て取れる。

主人公の岩戸鈴芽の名前は、天岩戸隠れアメノウズメからとっているように思う。

宗像草太の苗字は、宗像三女神からきているのだろうと思う。また、草太が変化してしまった三本脚の椅子は、三本足の八咫烏を彷彿とさせる。猫のダイジンの名前も大神の読みからとってそうだ。

 

 

ストーリーも「天岩戸隠れ」に関係あり

また、「後ろ戸」を閉めるという『すずめの戸締まり』のストーリーを読み解く鍵も「天岩戸隠れ」にあるように思う。

天岩戸隠れというのは日本神話のエピソードの1つだ。簡単に説明してみよう。

 

ある時、アマテラススサノオの非道ぶりに恐れをなして、天の岩屋戸の中に閉じこまってしまう。アマテラスが隠れてしまったせいで、天上界と地上界はともに闇に包まれてしまった。暗黒の世界につけ込むように悪神や悪霊が跋扈し、あらゆる災いが至る所で発生したのである。これを鎮めるためにアメノウズメは奇妙な踊りを披露し、神々の笑いを引き起こした。

それを聞いていたアマテラスは怪しんで天岩戸の扉を少し開け、「自分が岩戸に篭って闇になっているのに、なぜ、楽しそうに舞い、八百万の神は笑っているのか」と問うた。アメノウズメが「貴方様より貴い神が表れたので、喜んでいるのです」といい、天児屋命と布刀玉命がアマテラスに鏡を差し出した。鏡に写る自分の姿をその貴い神だと思ったアマテラスが、その姿をもっとよくみようと岩戸をさらに開けると、隠れていた天手力男神がその手を取って岩戸の外へ引きずり出した。こうして世界には光が取り戻されたのである。

 

こう見てみると色々と共通点が浮かび上がってこないだろうか。「天岩戸隠れ」を簡単に要約するとアメノウズメが扉を開ける話である。それに対して『すずめの戸締まり』は、岩戸すずめ(アメノウズメに似ている)が扉を閉める話だ。個人的にはこの反転がすごく面白いと思っている。「天岩戸隠れ」の扉が閉まったら災いがもたらされるというのは、『すずめの戸締まり』における「後ろ戸」が開いたら災いが発生することに通じるものがあるのではないだろうか。『すずめの戸締まり』では、「天岩戸隠れ」の神話が一部反転して描かれているように思う。

 

 

要石が配置されている場所についての考察

また、要石が配置されている場所だが、こちらも神話が関連しているように思う。まず、ニニギノミコトが初めて降臨した場所は宮崎県の高千穂だと言われている。なので、最初の要石が置かれていた場所は宮崎県ではないかと考えている。舞台は九州だと言われているし。2個目の要石だが、こちらは皇居に置かれていた。要石が置かれていた場所は神や天皇に通じる場所だったのではないかなと考えている。

 

 

 

 

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