2022年のノーベル文学賞の発表があり、受賞者はフランスの作家アニー・エルノー(Annie Ernaux)だと発表された。
ブックメーカーのノーベル文学賞予想のオッズではかなり上位にいた作家だ。
案外、ブックメーカーは当たるのかもしれない。
最近、アニーエルノー原作の映画が話題を集めていたことも要因の一つにあるのだろうか。
受賞理由を見てみると以下の理由のようだ。
BREAKING NEWS:
— The Nobel Prize (@NobelPrize) 2022年10月6日
The 2022 #NobelPrize in Literature is awarded to the French author Annie Ernaux “for the courage and clinical acuity with which she uncovers the roots, estrangements and collective restraints of personal memory.” pic.twitter.com/D9yAvki1LL
僕ふくめアニー・エルノーのことを知らない人が大半だと思うので、簡単に紹介したいと思う。
フランスの作家 アニー・エルノーってどんな作家?
アニー・エルノー(Annie Ernaux)は、オートフィクションの作風で知られるフランスの作家だ。
1974年に自伝小説『空っぽの箪笥 』でデビューを果たす。主な賞歴としては、1984年には『場所』でルノードー賞を受賞している。2008年にはそれまでの全作品でフランス語賞を受賞した。特にマルグリット・デュラス賞を受賞した『歳月』は特に評判が良いらしい。両親の生い立ちから死までのアニー・エルノーの個人史が詳細に描かれた作品だ。
作風は自伝的な作品がほとんどで、オートフィクションの作家の一人とされる。オートフィクションとは、自伝のように作者と語り手・登場人物が同一であることに依拠しながら小説を紡いでいくジャンルだ。限りなく自伝に近い小説とでも言えば良いのだろうか。
アニー・エルノーの作品は日本語に翻訳されているのか?
ノーベル文学賞を受賞した作家はマイナーであることも多く、邦訳された作品がないこともある。アニー・エルノーはどうだろうか?
現在入手できるものには『シンプルな情熱』がある。さらにベストタイミングなことに、今年の秋には『嫉妬/事件』が出版される。各作品について簡単に紹介する。また、このタイミングで他の本も復刊されたようだ(2022年11月23日加筆修正)。
シンプルな情熱
離婚後独身でパリに暮らす女性教師が、妻子ある若い東欧の外交官と不倫の関係になるというスキャンダルな内容の小説だ。
自分自身の体験を赤裸々に語り、大反響を呼んだ自伝小説である。非常に売れたらしく、1年間で売上が20万部に達して、ヨーロッパ全体、米国、日本で翻訳が刊行されているようだ。
嫉妬/事件
「嫉妬」は、長年連れ添った恋人と別れた後、相手から別の女性と共に暮らすと言われ、激しい嫉妬にかられるという話だ。
「事件」は、中絶手術が違法だった1960年代に妊娠することの葛藤や壮絶な中絶について語られた小説だ。今年の12月2日からは「事件」を原作とした映画「あのこと」が公開される。「あのこと」という映画だが、ヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞を受賞している。これはなかなか気になる。観ないと。
ある女
場所
凍りついた女
戸外の日記
ノーベル文学賞は世界の素晴らしい作家を知るきっかけになる。ぜひこれを機にアニーエルノーの作品を読んでみては。