川端康成や大江健三郎のような文学作品だと読解が難しく内容がよく分からないという人は多いのではないだろうか。また、文学作品を色んな視点から読み解きたい、もっと深く読み解きたいという人も多いのだろうではないか。または、受験のために小説が読み解けるようになりたいという人もいるだろう。
学校での国語の授業では、小説の読み方というのを詳しくは教えてもらえない。僕自身、独学で勉強して小説の読み方を学んできた。独学で勉強した時に参考になった本を紹介したい。
大学受験のための小説講義
この本は小説を読むのが好きな人だけではなくて、小説を読解するのが得意でない人にもオススメの本だ。小説を読むということがどういうことか理解することができる名著だ。著者はテクスト論で新たな視点からの文学作品の読み方に定評がある石原千秋さん。文芸時評でも有名だ。テクスト論というのは、作品から著者を切り離して解釈するという方法論のことだ。
タイトルに「大学受験」とあるように、大学入試の国語の問題を題材に小説の読み方をレクチャーする形で書かれている。題材になっている文章はセンター試験に出題された津島佑子「水辺」や山田詠美の「眠れる分度器」や、二次試験から横光利一「春は馬車に乗って」など。筆者に関する情報を考慮せずに小説の本文に着目して読解を行う「テクスト論」を丁寧に教えてくれる。大学入試と書いてあるが、もはや大学の文学部レベルの内容だ。ここまで小説を読解することができたら、大学入試なんて余裕だろう。
超入門!現代文学理論講座
文学を読む上で知っておくと読解を深めることができるのが文学理論だ。「文学にも理論ってあるの」って思った人も多いかもしれないが、ロシアフォルマリズムや物語の構造論などさまざまな読みの枠組みが研究されてきた。知っておくと一段と読みを深めることができたり、より多様な読みに繋げることができると思う。
この本では、ロシアフォルマリズムやプロップの物語分析などが初心者にも分かりやすく紹介されている。また、実際の作品に適用するとどんな読みができるのかということも描かれていて、非常に参考になる一冊だ。
名作の書き出し〜漱石から春樹まで〜
またまた、石原千秋さんの本を紹介。この本は、名作の書き出しに注目して文学作品を深く読み解いていくという内容だ。有名な文学作品に対し、テクスト論的な読み方を適用して、深い解釈を提示してくれる。テクスト論を実際にどのように文学作品に適用するのか学べる本だ。時代を代表する15編の小説の書き出しに秘められた意味を読み解いている。
取り上げられている小説は、夏目漱石『それから』や谷崎潤一郎『痴人の愛』、太宰治『人間失格』、川端康成『雪国』、三島由紀夫『金閣寺』、村上春樹『スプートニクの恋人』などなど。
なぜ『三四郎』は悲恋に終わるのかーー「誤配」で読み解く近代文学
またまたまた、石原千秋さんの著書を紹介。テクスト論的な読み方だと石原千秋さんほど参考になる人はいないのだ。
この本は近代文学の恋愛小説を「誤配」というキーワードで読み解くという野心作だ。ここでの「誤配」というのは、哲学者ジャック・デリダが提唱した言葉だ。この「誤配」という概念をもとに、『三四郎』や『雁』、『雪国』といった作品の斬新な読み方を提唱している。こんな斬新な読み方もできるんだと参考になる一冊だ。
謎とき 村上春樹
またまたまたまた、石原千秋さんの著書を紹介。 この『謎とき 村上春樹』はタイトル通り村上春樹作品をテクスト論的に読み解いた本だ。作中に謎が散りばめられていることで有名な村上春樹作品を鮮やかに読み解いている。こんな解釈もできるんだと唸らされる一冊だ。
小説の読み書き
『小説の読み書き』は、『月の満ち欠け』で直木賞を受賞した佐藤正午が、日本近代文学を作家視点で読み解いた本だ。知る人ぞ知る小説巧者の佐藤正午が、小説家の書き方を考察するという斬新な内容である。こんな細かいところにこだわるのかと思うところや、さすが小説家だと唸らされる部分などあり、小説の理解を深める上でオススメの一冊だ。
また、佐藤正午の名作『ジャンプ』のルーツが森鴎外の『雁』にあることや、佐藤正午自身が自作『取り扱い注意』を解説するなど、佐藤正午ファンにも嬉しい一冊だ。
妊娠小説
『妊娠小説』は、戦前の小説から村上春樹まで、妊娠というモチーフから小説を分析した評論だ。以外と妊娠を扱った小説は多く、どれも同じような小説構造であることを指摘している。
意外なところだと、『風の歌を聞け』のメインプロットが妊娠に関連すると指摘していて、なるほどと唸らされる。他にも有名な文学作品に妊娠を絡めた読解を解説してくれている。