日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

文体がウィットに富んでいて面白い小説家まとめ

どんでん返し系の小説の帯に「2度読みたくなる」と書かれているのをよく見るけれど、結局のところ何回も読みたくなる小説って文体に魅力がある小説じゃないかなと思う。やっぱり、文章自体に魅力がないと何回も読みたいと思うことがない。やっぱり、ユーモアに溢れる文体の小説って読むのが止まらなくなっちゃう。

 

ということで、文章がウィットに富んでいて何回も読みたくなるような小説家をまとめてみた。

 

 

 

森見 登美彦

文体が面白い作家として真っ先に思い浮かんだのが森見登美彦。古風な言い回しで阿呆なことを書いているのがすこぶる面白い。ハマるとクセになって読むのをやめられない。文学的中毒である。また、古風な言い回しの組み合わせが面白くて、独特の言葉遣いで無益なことを書いてあるのが笑いを誘う。

腹を抱えて笑うという点で森見登美彦のオススメは『恋文の技術』『美女と竹林』だ。

特に『恋文の技術』は腹筋崩壊しすぎて電車の中で読めなかった。『恋文の技術』は手紙のやり取りで構成された書簡小説なのだが、その手紙の内容がおかしすぎて笑いが止まらなかった。今まで読んできた本の中で一番笑った気がする。

『美女と竹林』は竹を刈ることについてのエッセイなのだが、後半はもはや竹すら刈っておらず妄想で構成されているという異色の作品である。そもそも竹林の話だけで一冊の本にするまで引っ張るのがすごい。

ぜひ存分に笑える家で読んでください。もし電車で読んで笑いが止まらなくなって、周りの人から白い目で見られても私は一切責任を負いません。

 

 

町田 康

町田康も文章が面白い作家の代表格だろう。関西弁と話の脈略の無さが面白いのだ。『くっすん大黒』を読んだ時は、衝撃だった。『湖畔の愛』という小説も文学版よしもと新喜劇みたいな感じですごく面白い。

 

 

村上 春樹

村上春樹は、ウィットに富んだ言い回しや比喩が面白い。村上春樹はとにかく比喩がうまくて、的を得ていてかつなかなか思い浮かばない比喩を小説中に散りばめている。村上春樹の中でも一番ユーモアがあると思うのは、『パン屋再襲撃』に収録されている「ファミリー・アフェアー」という小説だ。結婚を機にギクシャクしてしまった兄妹の関係を描いた話だ。

 

 

伊坂 幸太郎

伊坂幸太郎といえばウィットに富んだ会話だ。ウィットに富んだセリフが伏線にもなっていて、伊坂幸太郎おそるべしとしか言いようがない。「陽気なギャング」シリーズは伊坂作品の中でもユーモアが多くてオススメだ。

 

 

佐藤 正午

佐藤正午は登場人物たちのウィットに富んだ会話が面白い。イメージとしては、酒場で繰り広げられるとりとめない話といったところか。軽口やウィットの効いた会話の応酬は読むのがクセになってしまう!佐藤正午のウィットが特に楽しめるのは『取り扱い注意』と『女について』といった短編集だ。オススメだ。

 

 

又吉 直樹

芸人でもあるピース・又吉直樹の小説も面白い。又吉直樹の小説の面白いところは、ボソッと破壊力のあるフレーズや面白エピソードが挿入されているところだ。時たま斜め上すぎて意味不明なエピソードがあるが、それがまた笑いを誘う。

特に『火花』は漫才師のことを描いていることもあって、ネタが散りばめられている。『火花』は、冒頭の太鼓の音のシーンが出囃子に見立てられるように、構成的にも漫才の形式を取り込んだ小説だ。

 

 

円城 塔

円城塔は、内容が難しいけれど、文章はユーモアがあって面白い。円城塔は、理系の身内ネタのような面白さがある。『後藤さんのこと』の理系ジョークは、理系だからかめっちゃツボにハマった。円城塔の中でもウィットが利いていると思うのは『後藤さんのこと』と『これはペンです』、『オブ・ザ・ベースボール』だ。

 

 

木下 古栗

木下古栗は、その溢れんばかりの文学的才能を下ネタに全振りしているという稀有な作家。初めて読んだのは群像に載っていた小説かな⁈まさか、文芸誌よんで大爆笑するとは思って無かった。

アメトークの読書芸人でも取り上げられたこともあり、木下古栗を信仰するフルクリストが増加中とかなんとか。Amazonの作者紹介の欄で、「饒舌な文体で澱みなく語られるその内容のほとんどに意味はない」と書かれていたのは笑った。まさにその通りなのだけれど。

最近では『サピエンス前戯』という、話題のベストセラーを下ネタ方向にもじった小説集を刊行している。また『教師BIN・BIN・竿物語』という衝撃的なタイトルの小説も書いている。

 

以上、文体がウィットに富んでいて面白い小説家まとめの紹介でした。