日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

梅雨に読みたい!雨が印象的に描かれてる小説まとめ

梅雨の時は外に出かけにくく、家の中で過ごすことが多いだろう。そんな時は、雨が降るのを眺めながら読書に耽るのが趣があって素敵だと思う。梅雨時に読みたい、雨が印象的な小説を紹介したい。

 

 

 

 

ノルウェイの森 / 村上 春樹

 村上春樹の代表作『ノルウェイの森』は、雨のシーンが印象的な小説だ。重要なシーンではよく雨が降っていて、喪失感漂う内容と相まって『ノルウェイの森』という作品自体が暗く重たい雨雲に覆われているような印象がある。

『ノルウェイの森』は、ワタナベと直子、緑の関係を描いた恋愛小説だ。喪失と再生が重要なテーマの1つとなっていて、ワタナベは生と死の間で揺れ動く。

冒頭のハンブルグ空港に着陸するシーンでは暗く重たい雨雲に覆われていて、主人公のワタナベと直子が逢瀬を重ねるシーンでも雨が印象的に描かれている。

ちなみに、『ノルウェイの森』はもともと「雨の中の庭」というタイトルで書き始められた。「雨の中の庭」というタイトルはドビュッシーの楽曲から来ているそう。だから雨のシーンが印象的なのは必然なのか。

 

 

傘を探す / 佐藤 正午 

夏の情婦

夏の情婦

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雨の日に傘をどこか忘れてしまったことがある人は多いだろう。佐藤正午の「傘を探す」という小説はは、どこかに置き忘れてしまった傘を求めて主人公が夜の街を彷徨う話だ。小説巧者として定評のある佐藤正午が書く、夜の街での会話は面白くストーリーに引き込まれていく。傘を探すと同時に、女との関係性を考え直す話でもある。

 

 

驟雨 / 吉行 淳之介

驟雨というのは、急に降り出す雨、にわか雨のことだ。この驟雨が印象的なのが、タイトル通り吉行淳之介の『驟雨』だ。『驟雨』は、娼婦に恋をしてしまった男の話である。

主人公の山村は、最初は性のはけ口としか見れなかった娼婦・道子にだんだん愛情を抱くようになってしまう。繊細な心理描写と、驟雨の描写がまいまって切ない読後感を残す。

 

 

言の葉の庭 / 新海 誠 

『言の葉の庭』は、雨の中の新宿御苑が印象的な小説だ。著者はアニメーション映画監督の新海誠。繊細な情景描写で知られる新海作品は、主人公の心情を叙情的に描くのがうまい。『言の葉の庭』は、人生のエアポケットに落ち込んでしまった女教師と靴職人になることを夢見ている高校生との淡い恋愛を雨で彩った映画・小説だ。やっぱり雨の描写は繊細さや切なさを強く描写するなと思う。

 

 

天気の子 / 新海 誠 

『天気の子』は異常気象をモチーフとした新海誠作品だ。雨が降りしきる東京で、家出少年・帆高と100%の晴れ女・陽菜の邂逅を描いた作品だ。晴れ女の能力を活かして、天気を晴れにするビジネスに取り組む帆高と陽菜だったが、待ち受けていたのは過酷な運命だった。東京に降りしきる雨は、これから日本がたどる運命を象徴しているようにも思える。

 

 

死神の精度 / 伊坂 幸太郎 

晴れ女繋がりで、次に紹介するのは雨男の話。伊坂幸太郎『死神の精度』は、雨男の死神が登場する小説だ。死期が近づいた人の前に現れる死神・千葉。クールだがどこかズレている死神・千葉が人間界に現れる日は決まって雨だった。死を目の前にした時人はどうするのだろう?降りしきる雨は死者への手向けのように思える。

 

 

雨のなまえ / 窪 美澄 

『雨のなまえ』は、妻が妊娠中に不倫する夫、パート先のアルバイト学生に焦がれる中年の主婦、不釣り合いな美しい女と結婚したサラリーマン、など満たされない現実に思い悩む人々を描いた小説だ。日常に対する不満を抱えた登場人物の心情を表すかのように、作中では雨が降りしきっている。