日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

佐藤正午の隠れた名作 / 『取り扱い注意』 佐藤 正午

佐藤正午の隠れた名作 佐藤正午自身余り知名度がないのだけど、その佐藤正午の小説の中でも取り扱い注意は知名度が低い。この小説はとにかく変則的だ。時系列はバラバラになっているし、出てくる登場人物も普通からは縁遠い人たちだ。会話がとにかく秀逸なの…

ウディ・アレンのコメディミステリー / 『マンハッタン殺人ミステリー』 ウディ・アレン

肩の力を抜いて観れるコメディタッチのミステリー www.youtube.com ふと、ウディ・アレンの映画が観たくなるときがある。疲れているから重い映画は見たくないけれど、軽いコメディは見たい。そんなときは間違いなくウディ・アレンの映画をみる。ウディ・アレ…

池田満寿夫記念館に行ってきた

画家、版画家、陶芸家、作家、映画監督として活躍した芸術家を知っているだろうか? 多才さを発揮したこの芸術家は、池田満寿夫だ。エロスの作家とも呼ばれ、官能的な作風の作品を多く残した。 エーゲ海に捧ぐ (中公文庫) 作者:池田 満寿夫 中央公論新社 Ama…

人生は何でもあり! / 『人生万歳』 ウディ・アレン

www.youtube.com 人生はなんでもありだなと思わせてくれる映画がある。それがウディ・アレンの『人生万歳!』という映画だ。比較的最近のウディアレンの映画で、知名度はあまりないかもしれない。どちらかというと秀作の部類に入るのではないか。 ウディアレ…

二本の直線のように交わる人生 / 「石のまくらに」 村上 春樹

村上春樹の小説世界では、すんなりと男女が関係を持つ。それはもう息を吸うように。「石のまくらに」という短編も村上春樹にありがちな男女が流れで関係を持つ系の話だ。この短編は最新刊の短編集『一人称単数』に収録されている。元は文學界に掲載された「…

『〇〇夫人』と言うタイトルの小説はほとんどが不倫の話になっている説

〇〇夫人というタイトルを聞くと幼い頃にちらっと見た『真珠夫人』のことを思い出す。このドラマは、the昼ドラと言えるような内容だった。『真珠夫人』には原作小説があって、菊池寛が同名タイトルで小説を書いている。 こんな感じで小説には〇〇夫人という…

おしゃれ映画の代名詞!ウディ・アレン監督のおすすめ映画10選

多くの人に愛されているウディ・アレン作品 『映画と恋とウディ・アレン』予告編 ある時は人生の不条理をコミカルに描き、ある時はラブストーリーをロマンチックに演出してきたウディ・アレン監督。アカデミー賞に何度もノミネートされ、今でも精力的に映画…

待ち人来ず!待っていてもこない不条理小説まとめ

小説の中には、待っているものや人が来ないということを題材とした小説がある。個人的に、これらの小説を待ちぼうけ小説と勝手に読んでいる。 眠れる森の美女は王子様が来るまで眠りながら待ち続けているが、来るかわからないものを待ち続けるというのは不条…

考察のお供に!夏目漱石『こころ』の解説本・評論を紹介する!

夏目漱石の『こころ』といえば、男女の三角関係を描いた名作小説だ。 高校の国語で扱うことが多いと思うが、『こころ』の解釈は想像以上に多数ある。 そんな時に役に立つのが、研究者や文芸評論家が書いた研究本や解説本だ。数多くある夏目漱石『こころ』の…

徹底考察「羅生門」 / 作中の季節・時代は何か?

芥川龍之介の名作短編小説として有名なのが「羅生門」だ。 高校の授業で扱うこともあり、読んだことがある人は多いだろう。 役人が門の上で死人の髪を盗んでいる老婆を見つけ、老婆の衣を奪って去るという衝撃的な内容だ。 この記事では、「羅生門」の時代設…

第168回芥川龍之介賞の受賞作を予想する!

2023年が始まって数日が経ったが、そろそろ気になってくるのが芥川賞の受賞予想だろう。 大半の人は気になっていないかもしれないが、芥川賞受賞作を予想していこうと思う。年末年始に候補作を読んだので感想も合わせて書きたい。 皆さんご存知かもしれない…

栄冠は誰の手に!?第168回直木賞の候補作を紹介する!

1月の中旬には芥川賞・直木賞の発表がある。 当ブログでは芥川賞メインで紹介してきたのだが、今回から直木賞も紹介するようにした。 そもそも私は直木賞をそんなに信用していない。なぜ権威が高い直木賞を信頼していないのかというと、ある作家の扱いにある…

読書好き必見!文豪が愛した温泉旅館を紹介!

文豪と温泉には深い関係がある。川端康成などの文豪は旅館に泊まりながら執筆することが多かった。今も読まれ続ける名作の誕生の裏には、日本の温泉地があったのだ。 僕も温泉に浸かり旅館で優雅に在宅勤務をしたい…そんな僕のささやかな夢は叶いそうにない…

卯年に読みたい!タイトルにウサギが入る小説まとめ

年が明けましたね。あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。 今年は平和で良い年になってほしいな。 元旦なのでお正月らしい記事を書いてみようと思う。 今年は卯年なので、タイトルにうさぎと入る小説を紹介したいと思う。 『楽隊の…

2022年のブログを振り返る

特別お題「わたしの2022年・2023年にやりたいこと」ということで、この記事では2022年の当ブログについて振り返っていこうと思う。今年は昨年に比べてブログに力を入れてきたのでその結果について紹介したい。 あとは2023年の抱負やブログの目標、やりたいこ…

小説で今年を振り返る!2022年話題になった小説まとめ

2022年もあと少しで終わる。 年初には新型コロナの流行が収まって回復の年になるかと思っていたが、蓋を開けてみればロシアのウクライナ侵攻や安倍元首相の殺害事件と混迷の一年となった。また、各国でインフレが止まらず、日本においては円安が止まらなくな…

Audible(オーディブル)で聴ける伊坂幸太郎作品を紹介!

鮮やかな伏線回収、魅力的なキャラクター、ウィットに富んだ文章で人気を集めている伊坂幸太郎。 巧みすぎる伏線回収には毎回驚かせられる。時系列がバラバラであったりと小説の構成が凝っていて、どんでん返しなどが仕掛けられた小説が多い。 伊坂幸太郎の…

映画でムラカミワールドを堪能!村上春樹原作の映画まとめ

日本を代表し、世界中で読まれている村上春樹作品。卓越した比喩と、謎めいたストーリー、ムラカミワールドとしか形容のできない唯一無二の世界観、村上春樹の魅力を語り出すとキリがない。 村上春樹作品が持つ雰囲気は映像化するのが難しいと思うのだが、こ…

意外と三角関係が多い?夏目漱石のおすすめ小説5選!

夏目漱石の前期三部作・後期三部作について解説した記事です。前期三部作の三四郎・それから・門、後期三部作の彼岸過迄・行人・こころの内容についても解説してます。

第168回芥川龍之介賞の候補作を紹介する!

本日早朝(朝五時)に、第168回芥川賞の候補作が発表された。 なぜこの時間帯なのかと毎回思う。話を戻そう。 第168回芥川賞候補作は、安堂ホセ『ジャクソンひとり』、井戸川射子『この世の喜びよ』、グレゴリー・ケズナジャット『開墾地』、佐藤厚志『荒地…

子どもたちから公園を奪ったのは誰か? / 「公園」 三崎 亜記

「子どもがうるさい」との住民の苦情により、子どもたちが利用する公園が廃止されることになったというニュースが話題を集めている。 廃止となったのは長野市にある青木島遊園地。市側は改善を続けたが、住民から騒音の訴えは変わらず、公園を利用する子ども…

白色って200色あるねん!表紙が白い本をまとめてみた

皆さんご存知だろうか、白には200色あるということを。 某アンミカさんによると白色には200色の違いがあるようだ。(出典:2021年8月20日『人志松本の酒のツマミになる話』) この名言は、テレビ番組でアンミカさんの「小っちゃい物の良い所をコップ一個でも…

友情と恋愛、どちらを取る?/ 『友情』 武者小路実篤

『友情』というタイトルから、友情の素晴らしさを描いた小説だと思った人は多いだろう。僕もそうだった。しかし、武者小路実篤の『友情』という小説は、爽やかな青春小説の対極にあるような、友情と恋愛の間での葛藤を描いた恋愛小説だ。夏目漱石の『こころ…

奇々怪々!世にも奇妙な物語みたいな短編小説10選

「世にも奇妙な物語」をご存知だろうか? 「恐怖系」、「コメディ系」、「感動系」 、「意味不明系」といった奇妙なテイストのオムニバスドラマだ。ストーリーテラーのタモリが印象的なフジテレビのご長寿シリーズである。 この記事では、「世にも奇妙な物語…

ビター&スイートな大人のおとぎ話 / 『カフェ・ソサエティ』 ウディ・アレン

ウディ・アレン監督の新たな21世紀ベスト作品! お洒落なBGMが流れ、真っ暗なスクリーンにタイトルが浮かび上がるオープニング。このウディ・アレン印のオープニングを観ると、今年もウディ・アレンの映画を観れると顔がにやついてくる。前作の『教授のおか…

まさに変化球!一風変わったポストモダン野球小説まとめ

野球をモチーフにした小説と言えば何を思い浮かべるだろうか? 大抵の方は、『バッテリー』といった王道の野球青春小説を思い浮かべるかもしれない。だが、個人的に野球小説といえば一癖も二癖もあるポストモダン的な野球小説が思い浮かぶ。『バッテリー』が…

現実離れしたトリックが魅力!おすすめのバカミス12選

バカミスというミステリのカテゴライズをご存知だろうか? この「バカ」だが、決して小説をバカにした意味合いではなく、「そんなバカな!」という驚きの意味を込めたものだ。思わず「そんなバカな!」と驚いてしまうほどの意外性のあるトリックや、現実性を…

文学界を揺るがした「こころ論争」とは?

『こころ』論争とは、小森陽一や石原千秋らのテクスト論派と、三好行雄といった作品論派の間に起きた夏目漱石『こころ』の解釈をめぐる論争である。

デタッチメントという観点からの考察 / 「TVピープル」 村上 春樹

「TVピープル」は、タイトル通りTVピープルという不思議な小人が登場する村上春樹の短編小説だ。世にも奇妙な物語にありそうなストーリーだなと思う。短編集『TVピープル』の表題作でもあるので、村上春樹の短編の中でも有名ではなかろうか。 『ノルウェイの…

伊坂幸太郎の最高傑作を独断で選出する

伊坂幸太郎は日本で大人気の作家の一人だと思う。 緻密に張り巡らされた伏線、個性的なキャラクターと軽妙な語り口、ウィットに富んだ文章が魅力だ。 特に巧みすぎる伏線回収には毎回驚かせられる。作中に張り巡らされた伏線が、後半にかけて回収されていく…