日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

村上春樹がアストゥリアス皇太子賞の文学部門賞を受賞した件について

www.jiji.com 村上春樹がアストゥリアス皇太子賞の文学部門を受賞したというめでたいニュースが入ってきた。スペインの文学賞・アストゥリアス皇太子賞は、ヨーロッパで最も権威がある賞の1つで、日本人作家が文学部門で受賞したのは初めてのようだ。 この記…

第169回芥川龍之介賞の候補作を予想する

六月になったということで、もうすぐ芥川賞の候補作が発表される。恒例行事にはなってきたが、芥川賞の候補作を予想してみた。上半期で印象に残った小説や推したい小説を中心に挙げている。 芥川賞をざっくり簡単に説明すると、新人作家の純文学作品に与えら…

『街とその不確かな壁』の理解を深めるためにおすすめの村上春樹作品5選

街とその不確かな壁 作者:村上春樹 新潮社 Amazon 村上春樹の新作長編小説『街とその不確かな壁』が発売された。『一人称単数』といった短編集は出版されてきたが、新作の長編小説は久しぶりということもあり、発売当初は大きな注目を集めた。 発売から時間…

文學界6月号が豪華すぎる件について

文學界2023年6月号(創作 乗代雄介「それは誠」 九段理江「しをかくうま」 文藝春秋 Amazon いつもの恒例行事として5大文芸誌の内容を見ていたのだが、文學界の6月号のラインナップがとても豪華だったので紹介したい。 注目したいのは、乗代雄介「それは誠…

90分deシネマ / 90分で観れる雰囲気がおしゃれな映画

映画はストーリーに入り込むことで、驚きや楽しみ、ワクワク、ドキドキ、などの色んな感情を体験できる優れたエンターテイメントだ。だが、時間に追われる現代社会では2〜3時間の映画を見ている余裕がないという人も多いだろう。なので大体90分程度で観れ…

コミカルなウディ・アレン流サスペンス / 『タロットカード殺人事件』 ウディ・アレン

『マッチポイント』を観た後に鑑賞したので、こちらもシリアスなサスペンスかと思いきや、シニカルなユーモアに溢れたいつものウディ・アレン作品だった。まさにコミカルなウディ・アレン流サスペンス。主演女優は『マッチポイント』に引き続き、スカーレッ…

90分deシネマ / 90分で観れるモノクロ映画

映画はストーリーに入り込むことで、驚きや楽しみ、ワクワク、ドキドキ、などの色んな感情を体験できる優れたエンターテイメントだ。だが、時間に追われる現代社会では2〜3時間の映画を見ている余裕がないという人も多いだろう。なので大体90分程度で観れ…

村上春樹『街とその不確かな壁』の感想を徒然なるままに書く

村上春樹の最新作『街とその不確かな壁』を読み終えた。早く読みたい気持ちとじっくりと味わいたい気持ちがせめぎ合う中での読書だった。 村上春樹の最新長編を発売直後にリアルタイムで読むのは、何気に初めてかもしれない。『騎士団長殺し』の時は数週間遅…

案外知らない!?東野圭吾の隠れた名作ミステリ3選

東野圭吾は、ガリレオシリーズや加賀恭一郎シリーズでお馴染みの大人気ミステリー作家だ。知らない人は恐らくいない。 東野圭吾は、ガリレオシリーズの『容疑者Xの献身』で直木賞を受賞している。『容疑者Xの献身』は本当に傑作だ。他に有名な作品を列挙し…

夫婦の危機をどう乗り越える?セックスレスが題材になった小説まとめ

セックスレスは、夫婦やカップルにとって重大な問題だろう。体のコミュニケーションがなくなってしまったら、二人の関係も冷え込んでしまう。セックスレスの問題を抱えながら、日々を悶々と過ごしている人は多いと思う。 だが、非常にセンシティブな問題故に…

村上春樹の世界観をオーディブルで味わう!Audibleで聴ける村上春樹作品まとめ

村上春樹作品が待望のAudible化!『1Q84』、『ねじまき鳥クロニクル』、『騎士団長殺し』、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』、『海辺のカフカ』、『螢・納屋を焼く・その他の短編』、『東京奇譚集』、『神の子どもたちはみな踊る』、『職業と…

村上春樹の幻の小説「街と、その不確かな壁」を読む方法

街とその不確かな壁 作者:村上 春樹 新潮社 Amazon その街に行かなくてはならない。なにがあろうと――〈古い夢〉が奥まった書庫でひもとかれ、呼び覚まされるように、封印された“物語”が深く静かに動きだす。魂を揺さぶる純度100パーセントの村上ワールド。 …

ミステリ界の一発屋!?一作だけの幻のミステリ作家まとめ

一時的にのみ活躍を見せた歌手や芸人を一発屋と読んだりする。一発屋というと芸人のイメージが強いかもしれない。 だが、ミステリ作家にも一発屋はいる。インパクトのあるトリックでデビューしたものの、その後の作品が続かない作家のことだ。 この記事では…

意外すぎる!?芥川賞を受賞していない有名作家まとめ

芥川賞といえば純文学の登竜門的な賞だ。 純文学で優れた新人に与えられる賞で、安部公房や大江健三郎、中村文則、平野啓一郎、川上未映子、綿矢りさ、阿部和重など数多くの有名作家が受賞してきた。 実力のある作家に賞を与えて世に送り出してきた芥川賞だ…

社会現象にも!話題になった芥川賞受賞作品まとめ

芥川賞といえば純文学の登竜門的な賞だ。 純文学で優れた新人に与えられる賞で、安部公房や大江健三郎、中村文則、平野啓一郎、川上未映子、綿矢りさ、阿部和重など数多くの有名作家が受賞してきた。 芥川賞は文学賞の中でも特に有名な賞である。それもあっ…

『街とその不確かな壁』が待ちきれない人におすすめの村上春樹作品5選

街とその不確かな壁 作者:村上春樹 新潮社 Amazon 村上春樹の新作長編小説『街とその不確かな壁』が2023年4月13日(木)に刊行される。待ちきれない人も多いのではないだろうか。『一人称単数』といった短編集は出版されてきたが、新作の長編小説は久しぶり…

村上春樹の新刊『街とその不確かな壁』を予想する試み

www.nikkei.com 村上春樹の新作長編小説『街とその不確かな壁』が2023年4月13日(木)に刊行される。英語でのタイトルは、「The city and its uncertain walls」だ。2017年2月刊行の『騎士団長殺し』以来、6年ぶりとなる書下ろし長編である。 街とその不確か…

村上春樹の新刊が発売!『街とその不確かな壁』が楽しみすぎる件について

www.nikkei.com 読書界隈をざわつかせるビックニュースが入ってきた。村上春樹の新作長編小説『街とその不確かな壁』が2023年4月13日(木)に刊行されることが決定したのだ。新潮社から発表されたこのニュースは本好きに衝撃を与えた。 街とその不確かな壁 …

翻訳家としての村上春樹!ハルキが翻訳した海外小説まとめ

村上春樹といえば『ノルウェイの森』や『ねじまき鳥クロニクル』、『1Q84』などの小説で知られている日本を代表する小説家だ。 それだけでなく海外小説の翻訳も手掛けており、海外文学の紹介や翻訳を手がけるといった一面も持っている。村上春樹が手掛けた翻…

失った恋を取り戻そうとした男 /『グレート・ギャツビー』 スコット・フィッツジェラルド

豪奢な邸宅に住み、絢爛たる栄華に生きる謎の男ギャツビー。彼の胸にはかつて一途に愛情を捧げ、失った恋人ディジーへの異常な執念が育まれていた……。第一次世界大戦後のニューヨーク郊外を舞台に、狂おしいまでにひたむきな情熱に駆られた男の悲劇的な生涯…

小説家の視点で名作古典作品を読みなおす / 『小説の読み書き』 佐藤 正午

佐藤正午が名作古典を読みなおす 小説を読むことは、小説を書くことに繋がる。小説を読む中で、読者はそれぞれの解釈を行い、そのつど新たな解釈が生まれてくる。文字通り、読者の数だけ解釈がある。 この『小説の読み書き』では、佐藤正午の目線から名作古…

バルセロナでの情熱的な恋愛模様 / 『それでも恋するバルセロナ』 ウディ・アレン

『マッチポイント』・『タロットカード殺人事件』につづいてスカーレット・ヨハンソンを主役に据えたウディ・アレン監督の恋愛映画。一筋縄では行かない大人の恋愛模様を描いた恋愛映画。人生のほろ苦さや現実を突きつけてくる、ウディ・アレン監督らしい映…

人生は同じところを回り続ける観覧車 / 『女と男の観覧車』 ウディ・アレン

同じところを回り続ける観覧車 映画『女と男の観覧車』本国オリジナル予告編(日本語字幕) ウディ・アレンの映画を観ていると、何故か観覧車を思い浮かべることがある。 ストーリーの中で、主人公の人生に劇的な出来事が起こるけれど、最終的には収まるとこ…

ともにW受賞!第168回芥川賞・直木賞の受賞作が決定!

第168回芥川賞・直木賞の受賞作が1/19に決定した。 芥川賞は井戸川射子の「この世の喜びよ」(群像7月号)と佐藤厚志の「荒地の家族」(新潮12月号)のW受賞に決まった。 直木賞は小川哲の「地図と拳」と千早茜の「しろがねの葉」に決まった。こちらもW受…

売れない劇作家の不器用な恋 / 『劇場』 又吉 直樹

売れない劇作家の青春と焦燥と挫折 高校卒業後、大阪から上京し劇団を旗揚げした永田と、大学生の沙希。それぞれ夢を抱いてやってきた東京で出会った。公演は酷評の嵐で劇団員にも見放され、ままならない日々を送る永田にとって、自分の才能を一心に信じてく…

感傷家であると同時に小説家 / 『女について』 佐藤正午

彼女はぼくと同じ18歳だった。初めての女性だった。好きかと尋ねられて頷いた―家族以外の女性についた初めての嘘。嘘を重ねるために他の女性を拾い、途切れ途切れに続いた彼女との関係も、ぼくが街を出ることで終止符が打たれた―。そして長い時を経て、ぼく…

私小説とフィクションの間 / 『夏の情婦』 佐藤 正午

佐藤正午初期の短編集 佐藤正午が好きな作家の一人だ。 ふとしたことで佐藤正午のジャンプを読み始めて、すっかりはまってしまった。もともと村上春樹や大崎善生のような感傷的な小説が好きだったので、佐藤正午はピンポイントではまってしまった。 好きなと…

佐藤正午のデビュー作 / 『永遠の1/2』 佐藤 正午

佐藤正午のデビュー作 どんな小説家にも、一つだけ、アマチュアとして書いた小説があると佐藤正午はいう。その小説が人目に触れ、本になるとデビュー作と呼ばれ、書いた人は小説家と呼ばれるようになる。佐藤正午がアマチュアとして書いたのがデビュー作『永…

スペインの雨はどこに降る?/ 『スペインの雨』 佐藤 正午

『月の満ち欠け』で直木賞を受賞し注目を集める佐藤正午の短編集 知る人ぞ知る作家・佐藤正午が直木賞受賞で注目を集めている。直木賞の授賞式は欠席したらしいが。『スペインの雨』はそんな佐藤正午の短編集だ。佐藤正午本人を思わせるような小説家を主人公…

佐藤正午の隠れた名作 / 『取り扱い注意』 佐藤 正午

佐藤正午の隠れた名作 佐藤正午自身余り知名度がないのだけど、その佐藤正午の小説の中でも取り扱い注意は知名度が低い。この小説はとにかく変則的だ。時系列はバラバラになっているし、出てくる登場人物も普通からは縁遠い人たちだ。会話がとにかく秀逸なの…