日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

失った恋を取り戻そうとした男 /『グレート・ギャツビー』 スコット・フィッツジェラルド

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豪奢な邸宅に住み、絢爛たる栄華に生きる謎の男ギャツビー。彼の胸にはかつて一途に愛情を捧げ、失った恋人ディジーへの異常な執念が育まれていた……。第一次世界大戦後のニューヨーク郊外を舞台に、狂おしいまでにひたむきな情熱に駆られた男の悲劇的な生涯を描き、何度も映画化された20世紀文学最大の問題作。滅びゆくものの美しさと、青春の憂愁を華やかに謳いあげる世界文学の最高峰。

女を二文字重ねて女々しいと書くけれど、本当に女々しいのは男の方ではないかと思う。

恋の思い出を、男は名前を付けて保存、女は上書き保存とよく言うが、かなり的を得ている。back numberの曲の歌詞のように、古今東西女々しい男はとことん女々しいのである。男は叶わなかった恋や失われた恋をいつまでもいつまでも引きずる生き物だ。そんな女々しい男子諸君にぜひとも読んでほしいのがフィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』だ。『グレート・ギャツビー』はフィッツジェラルドの代表作で、アメリカ文学あるいは20世紀文学を代表する一冊と言われている。最近では、ディカプリオ主演で映画化されているし、村上春樹訳も出ている。色んな出版社から出ていて、海外文学の中では知名度がある方なのではないかと思う。僕自身も失恋した時とか感傷的な気分の時に読んで、一つ一つの言葉が凄く心にしみた。この『グレート・ギャツビー』は簡単に要約すると、失われた恋を取り戻そうとした男の話である。

 

 

失われた恋を取り戻そうとした男 ・ギャツビー

まずこの小説は最初の文章と最後の文章が本当に美しい。この小説の語り手はギャッビーではなくニック・キャラウェイ。ニック・キャラウェイの目を通じてジェイ・ギャッツビーという人物が描かれている。ジェイ・ギャッビーは若くして富を得た謎の男だ。自宅で夜な夜なパーティを開いて、豪華絢爛な生活を送っている。しかし、すべてを手に入れたギャツビーには、たった一つ手にすることが出来なかったものがあった。それは、たった一人の愛だった。その失った愛を、ギャツビーは取り戻そうとする。それが悲劇を生むことになる…ギャツビーの無垢さや純粋な思いが痛いほど伝わってくる。

 

過去へと押し戻されながらも

 だからこそ我々は、前へ前へと進み続けるのだ。流れに立ち向かうボートのように、絶え間なく過去へと押し戻されながらも。

『グレート・ギャツビー』の最後の文章。本当に美しい一文だ。今まで読んできた小説の中で最も美しい文章の一つだ。過去へのノスタルジーに惹かれながらも、私たちは強を、そして明日を生きていく。女々しい男子だと、別れた彼女に偶然会うと、心がざわついてしまうだろう。楽しかった頃の思い出が押し寄せてきて、感傷的になってしまう。そんな経験をした男子にはこの言葉が響くだろう。 

 

栞の一行

だからこそ我々は、前へ前へと進み続けるのだ。流れに立ち向かうボートのように、絶え間なく過去へと押し戻されながらも。