東野圭吾は、ガリレオシリーズや加賀恭一郎シリーズでお馴染みの大人気ミステリー作家だ。知らない人は恐らくいない。
東野圭吾は、ガリレオシリーズの『容疑者Xの献身』で直木賞を受賞している。『容疑者Xの献身』は本当に傑作だ。他に有名な作品を列挙してみると『白夜行』とか『秘密』がある。映画化もよくされていて、『真夏の方程式』や『ラプラスの悪魔』が公開されている。
そんな大人気作家・東野圭吾だが、世間的にはマイナーだけど面白い小説を紹介していこうと思う。本格ミステリが好きな人に特におすすめしたい。
仮面山荘殺人事件
八人の男女が集まる山荘に、逃亡中の銀行強盗が侵入した。外部との連絡を断たれた八人は脱出を試みるが、ことごとく失敗に終わる。恐怖と緊張が高まる中、ついに一人が殺される。だが状況から考えて、犯人は強盗たちではありえなかった。七人の男女は互いに疑心暗鬼にかられ、パニックに陥っていった…。
どんでん返しの名作としてよく話題に上る『仮面山荘殺人事件』。どんでん返しにこだわった、クローズドサークルものだ。きっと貴方も騙される。この仮面山荘の面白いところはクローズドサークル(閉ざされた空間での殺人)が生まれる状況にこだわり、より必然的にクローズドサークルが生じるようにしているところだ。吹雪で閉じ込められたり、孤島に閉じ込められるというのはクローズドサークルのお約束だが、パターンが決まっているし設定に穴が多いのもある。都合よく吹雪起こりすぎじゃねとか、頑張ったら逃げれるとかツッコむところが多いものもある。まあ、クローズドサークルはミステリー好きには堪らない設定だけど。
この仮面山荘では古典的なミステリーの設定をそのまま使うのではなく、八人の男女が集まる山荘に逃亡中の銀行強盗が侵入したために外に出られなくなったという斬新な理由でクローズドサークルになる。そして衝撃のどんでん返し!ミステリー密度の濃い一冊。
ある閉ざされた雪の山荘で
早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した男女7名。これから舞台稽古が始まる。豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇だ。だが、1人また1人と現実に仲間が消えていくにつれ、彼らの間に疑惑が生まれた。はたしてこれは本当に芝居なのか?驚愕の終幕が読者を待っている!
『ある閉ざされた雪の山荘で』も『仮面山荘殺人事件』と並んで、どんでん返しの名作と言われている。仮想の雪の山荘でのクローズドサークルという異色の設定が使われたミステリー。実際に殺人が起きているのか、それとも芝居なのか分からないという、斬新なクローズドサークルになっている。最後にはほんのり感動する。余談だけど同じトリックがフランスの前衛文学にも使われていたりする。
名探偵の掟
ミステリは様式美や形式美を重んじるジャンルだ。古臭いし現実味がないけれど、密室やクローズドサークル、見立て殺人などの道具立てはロマンあふれるものだし、ミステリの醍醐味である。
そんな本格ミステリの形式に真っ向から喧嘩を売ったのが東野圭吾の『名探偵の掟』だ。東野圭吾は今は大衆向けの作家だけれど、昔は本格ミステリ物を多く書いている。『名探偵の掟』は、東野圭吾の本格ミステリへの愛情で溢れていると思う。じゃないとミステリの「お約束(ノックスの十戒など)」を破り、タブーに挑んだこの本を書くことが出来ないと思う。『名探偵の掟』では、密室や見立て殺人などのミステリの「お約束」にどんどん切り込んで、パロディ化していく。東野圭吾先生ここまでやっていいんですか?と読者の側が心配になってしまう。本格ミステリが好きな人、普通のミステリに飽きた人に薦めたい。
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