日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

『〇〇夫人』と言うタイトルの小説はほとんどが不倫の話になっている説

〇〇夫人というタイトルを聞くと幼い頃にちらっと見た『真珠夫人』のことを思い出す。このドラマは、the昼ドラと言えるような内容だった。『真珠夫人』には原作小説があって、菊池寛が同名タイトルで小説を書いている。

こんな感じで小説には〇〇夫人というタイトルのものがいくつかある。これは自説なのだが、〇〇夫人というタイトルの小説は大体が人妻の貞操に関しての小説になっている。

自説を検証するべく、〇〇夫人というタイトルの小説を紹介したい。

 

 

 不倫にトキメキを求める人妻 / 『ボヴァリー夫人』

娘時代に恋愛小説を読み耽った美しいエンマは、田舎医者シャルルとの退屈な新婚生活に倦んでいた。やがてエンマは夫の目を盗んで、色男のロドルフや公証人書記レオンとの情事にのめりこみ莫大な借金を残して服毒自殺を遂げる。

結婚したけれどなんか違う、もっと素敵な人と結婚するはずだったのと思ったことがある人なら、この『ボヴァリー夫人』はオススメだ。主人公のボヴァリー夫人は結婚後の退屈な日々にうんざりしていた。夫はいい人だけど、トキメキがない。ボヴァリー夫人は妥協した結婚の果てに不倫にトキメキを見出す。そこからボヴァリー夫人の転落が始まるのだ。シンデレラや白雪姫の様に王子様が現れるなんてフィクションだけの話で、現実はそんなに甘くはない。ボヴァリー夫人という存在は時代に関係なく普遍的なものだなと考えさせられる。

 

 

 発禁処分になった性愛文学の傑作 / 『チャレタイ夫人の恋人』

 コンスタンスは炭鉱を所有する貴族クリフォード卿と結婚した。しかし夫が戦争で下半身不随となり、夫婦間に性の関係がなくなったため、次第に恐ろしい空虚感にさいなまれるようになる。そしてついに、散歩の途中で出会った森番メラーズと偶然に結ばれてしまう。それは肉体から始まった関係だったが、それゆえ真実の愛となった――。現代の愛への強い不信と魂の真の解放を描いた問題作。

 

 

 ドラマの原作にもなった有名作品 / 『真珠夫人』

真珠のように美しく気高い、男爵の娘・瑠璃子は、子爵の息子・直也と潔い交際をしていた。が、家の借金と名誉のため、成金である勝平の妻に。体を許さぬうちに勝平も死に、未亡人となった瑠璃子。サロンに集う男たちを弄び、孔雀のように嫣然と微笑む妖婦と化した彼女の心の内とは。話題騒然のTVドラマの原作。

TVドラマの原作ともなったのが菊池寛の『真珠夫人』。『真珠夫人』は、菊池寛が大正9年から新聞に連載した小説で、その当時大人気を博した。これまでに、映画や連続ドラマなどで映像化され、一大ブームを巻き起こしてきた。

男爵令嬢、唐澤瑠璃子は敵の罠にはめられた父を救う為、泣く泣く卑しい高利貸しの荘田勝平の妻となる。同じ貴族で恋人の直也の為に処女を貫きながら生きていく女の愛憎劇だ。 

 

 

大岡昇平の隠れた名作 / 『武蔵野夫人』 

貞淑で、古風で、武蔵野の精のようなやさしい魂を持った人妻道子と、ビルマから復員してきた従弟の勉との間に芽生えた悲劇的な愛。欅や樫の樹の多い静かなたたずまいの武蔵野を舞台に、姦通・虚栄・欲望などをめぐる錯綜した心理模様を描く。スタンダールやラディゲなどに学んだフランス心理小説の手法を、日本の文学風土のなかで試みた、著者の初期代表作のひとつである。

 大岡昇平といえば『野火』といった戦争文学を思い浮かべると思うが、『武蔵野夫人』といったフランス心理小説の手法を使用した小説も書いている。

 

 

文学界の大御所が書いた問題作 / 『伯爵夫人』

ばふりばふりとまわる回転扉の向こう、帝大受験を控えた二朗の前に現れた和装の女。「金玉潰し」の凄技で男を懲らしめるという妖艶な〈伯爵夫人〉が、二朗に授けた性と闘争の手ほどきとは。ボブヘアーの従妹・蓬子(よもぎこ)や魅惑的な女たちも従え、戦時下の帝都に虚実周到に張り巡らされた物語が蠢く。東大総長も務めた文芸批評の大家が80歳で突如発表し、読書界を騒然とさせた三島由紀夫賞受賞作。

 『伯爵夫人』は文学界の大御所・蓮實重彦が80歳の時に発表した小説だ。ベテランである蓮實重彦が純文学の新人賞「三島由紀夫賞」を受賞したことでも話題になった。

 

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