日々の栞

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栄冠は誰の手に!?第168回直木賞の候補作を紹介する!

1月の中旬には芥川賞・直木賞の発表がある。

当ブログでは芥川賞メインで紹介してきたのだが、今回から直木賞も紹介するようにした。

 

そもそも私は直木賞をそんなに信用していない。なぜ権威が高い直木賞を信頼していないのかというと、ある作家の扱いにある。まずそれを先に書いておこう。

直木賞を受賞していない超有名作家は数多くいる。伊坂幸太郎森見登美彦万城目学がそうだ。いずれも直木賞を受賞してそうな面々だ。まあ、文学賞を受賞しているかどうかは作品の良さに関係するわけではないと思っている。

その中でも、僕が個人的に憤慨しているのは佐藤正午という作家の扱いだ。佐藤正午はもうすでに『月の満ち欠け』で直木賞を受賞している。じゃあどこに問題があるかというと、佐藤正午のノミネートにある。

佐藤正午は『月の満ち欠け』の一度しかノミネートされたことがないのだ。受賞するしないは選考委員との相性もあるので、運の要素も大きい。しかし、候補作をノミネートする段階では実力のある作家は選ばれて然るべきだったのではと思う。佐藤正午は数多くの名作を残してきた。特に『鳩の撃退法』は大傑作だった。それなのに『鳩の撃退法』を候補にすら上げないというのはどうなんだろうか。候補作を選ぶ側に問題があるとしかないと思っている。

そんなことを思っていたのだが、年末に『月の満ち欠け』の文庫本が色んな書店でベストセラーになっているのをみて心を入れ替えた。やはり、直木賞受賞がなければ『月の満ち欠け』の映像化と映像化による文庫本の売り上げ上昇はなかったのかもしれないなと思い直したのだ。

 

では、話を本題の第168回直木賞候補作の話に戻そう。

第168回直木賞候補5作品は、一穂ミチの『光のとこにいてね』、小川哲の『地図と拳』、雫井脩介の『クロコダイル・ティアーズ』、千早茜の『しろがねの葉』、凪良ゆうの『汝、星のごとく』の5作品だ。一穂ミチと小川哲は2度目の直木賞候補、千早茜は3度目の直木賞候補入りである。

 

そもそも直木賞とは何か知らない人がいるかもしれないので簡単に説明しておく。

直木賞とは、新聞・雑誌・単行本として発表された大衆文芸作品の中から優れた作品に与えられる文学賞だ。大衆文学における登竜門的な賞で、文学賞の中で一番知名度がある賞かもしれない。大衆文学界のM−1グランプリみたいなものかもしれない。

この記事では、各候補作品と候補者の詳細について紹介したい。

 

 

『光のとこにいてね』 / 一穂 ミチ 

古びた団地の片隅で、彼女と出会った。彼女と私は、なにもかもが違った。着るものも食べるものも住む世界も。でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。彼女が泣くと、私も悲しくなった。彼女に惹かれたその日から、残酷な現実も平気だと思えた。ずっと一緒にはいられないと分かっていながら、一瞬の幸せが、永遠となることを祈った。どうして彼女しかダメなんだろう。どうして彼女とじゃないと、私は幸せじゃないんだろう……

一穂ミチの『光のとこにいてね』は、運命に翻弄される二人の女性の四半世紀の物語だ。一穂ミチは、「雪よ林檎の香のごとく」で作家デビューした。『スモールワールズ』で直木賞候補になっている。

 

 

『地図と拳』 / 小川 哲

ひとつの都市が現われ、そして消えた。日露戦争前夜から第2次大戦までの半世紀、満洲の名もない都市で繰り広げられる知略と殺戮。日本SF界の新星が放つ、歴史×空想小説。

満洲を舞台に架空の都市を描いたのが小川哲の『地図と拳』だ。小川哲は、「ユートロニカのこちら側」でハヤカワSFコンテストで大賞を受賞してデビュー。以前には、『嘘と正典』で直木賞候補になっている。

地図と拳』では、日本からの密偵に帯同し、通訳として満洲に渡った細川、ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ、叔父にだまされ不毛の土地へと移住した孫悟空など様々な人生が交錯する。歴史✖️空想というのが新しい切り口の小説だ。

 

 

『クロコダイル・ティアーズ』 / 雫井 脩介 

この美しき妻は、夫の殺害を企んだのか。息子を殺害した犯人は、嫁である想代子のかつての恋人。被告となった男は、裁判で「想代子から『夫殺し』を依頼された」と主張する。犯人の一言で、残された家族の間に、疑念が広がってしまう。未亡人となった想代子を疑う母親と、信じたい父親。家族にまつわる「疑心暗鬼の闇」を描く、静謐で濃密なサスペンスが誕生!

雫井脩介の『クロコダイル・ティアーズ』は、疑心暗鬼に陥る家族を描いた静謐なサスペンス小説だ。雫井脩介の作品は『犯人に告ぐ』や、『火の粉』『クローズド・ノート』『ビター・ブラッド』『検察側の罪人』『望み』など、映画化・ドラマ化されたものが多い。特に『クローズド・ノート』あたりは知っている人が特に多いんじゃないかなと思う。

 

 

『しろがねの葉』 / 千早 茜 

戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。しかし徳川の支配強化により喜兵衛は生気を失い、ウメは欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出されて……。

千早茜の『しろがねの葉』は、シルバーラッシュに沸く石見銀山を舞台に少女ウメの過酷な人生を描いた作品だ。千早茜は「魚」で小説すばる新人賞を受賞して、作家デビューしている。これまでに数多くの文学賞を受賞している。

 

 

『汝、星のごとく』 / 凪良 ゆう 

風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。

凪良ゆうの『汝、星のごとく』は、第168回直木賞など数多くの文学賞やランキングで上位にノミネートされた話題作だ。凪良ゆうは、ボーイズラブ作品でデビューし、『花嫁はマリッジブルー』(白泉社/白泉社花丸文庫)を刊行し本格的に作家デビュー。『美しい彼』シリーズなどで知られるほか、最近では、『流浪の月』が映画化されたのが記憶に新しいだろう。

汝、星のごとく』では、瀬戸内の島に育った高校生の暁海と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂の約15年間を描く。

 

 

直木賞の選考会は2023年1月19日に行われ、受賞作が決定する。

選考委員は、浅田次郎、伊集院静、角田光代、北方謙三、桐野夏生、高村薫、林真理子、三浦しをん、宮部みゆきという豪華な顔ぶれだ。栄光はどの作品に!

 

個人的には『汝、星のごとく』か『しろがねの葉』あたりが受賞するかなと思っている。

 

 

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