小説
www.jiji.com 村上春樹がチノ・デルドゥカ世界文学賞を受賞したと言うおめでたいニュースが入ってきた。 イタリアの文化人の名前を冠した「チノ・デルドゥカ世界文学賞」は「現代のヒューマニズムのメッセージ」を表現する人に授与される賞のようだ。賞金は…
村上春樹の小説によく登場する動物といえば、やっぱり羊だと思う。 タイトルに羊と入る『羊をめぐる冒険』は村上春樹の代表作だ。『羊をめぐる冒険』に登場する羊男は有名なキャラクターで、『羊男のクリスマス』や『図書館奇譚』にも登場している。その他に…
小中学校の同級生にとてもサッカーが上手い子がいた。運動神経がとても良くて、走りも早い。ドリブルをすれば誰も止めることができなかった。おまけに顔がカッコよくて、女の子にとてもモテた。まさしく神童だった。 高校からは名のしれた強豪校に推薦で入学…
最近仕事が忙しくて本屋に行けていなかったのだが、久しぶりに行ってみると大発見があった。 それは、幻のどんでん返しの名作、西澤保彦の『神のロジック 次は誰の番ですか?』が復刊されていたのだ。昔の題名は『神のロジック 人間のマジック』だった。 こ…
「夜中の汽笛について、あるいは物語の効用について」は『夜のくもざる』に収録された村上春樹の超短編小説だ。いや、長さ的にはショートショートと言った方がいいのかもしれない。 『夜のくもざる』は、村上春樹とイラストレーターの安西水丸がコラボレーシ…
「女のいない男たち」は村上春樹の短編集『女のいない男たち』に収録された短編小説である。『女のいない男たち』という短編集は、何かしらの理由で女を失ってしまった男たちを描いた、コンセプトアルバムのような作品だ。「女のいない男たち」という短編は…
村上春樹の短編集『女のいない男たち』に収録されている小説の中で、僕が一番好きなのが「木野」だ。『女のいない男たち』の中でだけでなく、村上春樹の短編作品の中でもベスト10に入るくらい傑作だと思う。「木野」ってなかなか変わったタイトルだが。 「木…
村上春樹の中で短編集に収録されておらず、全集にしか収録されていない短編小説がある。それが「青が消える (Losing Blue)」だ。「青が消える」という短編は、タイトル通り「青」色が世界から消えていく様を描いた、ちょっとSF風味のある小説だ。例えば、青…
村上春樹の短編小説の中でも最も異色な小説は何かと言われれば何を思い浮かべるだろうか? ウイットに飛んだ「ファミリー・アフェア」と答える人がいるかもしれないし、村上春樹では珍しい家族の話を描いた「蜂蜜パイ」と答える人がいるかもしれない。僕はど…
皆さん、村上春樹を読んだことがあるだろうか? 僕は高校生ぐらいから村上春樹にハマって、村上春樹の長編小説は全部読んだ。 一通り全部読んだので村上春樹のおすすめ長編ランキングを独断と偏見で作ってみようと思う。 村上春樹の長編小説をどれから読むか…
安部公房という作家をご存知だろうか?日本を代表する作家の一人で、晩年はノーベル文学賞受賞間近とも言われた作家だ。 その作風は非常に前衛的・実験的で、文学の概念を更新するような作品を数多く残した。 日本で前衛文学というと安部公房の名前が一番に…
小説の面白さは、ストーリーや文章の面白さだけではなく、新しい表現技法を開拓するところにもある。特に純文学では、前衛文学や実験文学、ポストモダン文学と呼ばれる、今までになかったような表現方法で新しい小説世界を切り開く作品が多くある。 そんな小…
芥川賞受賞作品って難しいっていうイメージがあるかもしれない。実際は『パークライフ』や『コンビニ人間』、『火花』のような読みやすくて分かりやすい小説もある。 一方で、難解な芥川賞受賞作品も確かに存在する。余程の文学好きじゃないと分からない前衛…
めちゃくちゃ文学好きな人以外は気にしないかもしれないが、小説の人称のメインは一人称と三人称だ。ざっくり言ってしまうと、一人称はある登場人物の目線で話が進行し、三人称では神の視点から小説が語られる。本当にざっくりだが。 だがしかし、小説の人称…
村上春樹が好きな人というのは多いはずだ。中には村上春樹の小説を全て読み終わってしまったという人もいるかもしれない。僕もそうだったのだけれど、村上春樹の小説を全て読み終わってしまって、次にどんな小説を読んだらいいのかと思った時期があった。 村…
年が明けて1月になり、芥川賞の季節になりました。候補作が発表されたので、簡単にまとめてみようと思う。 石田さんと九段さん、島口さんは2021年に新人賞を受賞し、今回初めて芥川賞候補に選ばれた。新人賞を受賞してから1年以内でありフレッシュな顔ぶれだ…
村上春樹の小説には、複数の小説に登場するキャラクターがいる。有名なものをあげれば羊男がいるだろう。それ以外にも、名前がよく出てくるキャラクターがいる。 それが渡辺昇(ワタナベ・ノボル)だ。 パン屋再襲撃に収録される短編に登場する「渡辺昇」た…
川端康成や大江健三郎のような文学作品だと読解が難しく内容がよく分からないという人は多いのではないだろうか。また、文学作品を色んな視点から読み解きたい、もっと深く読み解きたいという人も多いのだろうではないか。または、受験のために小説が読み解…
梅雨の時は外に出かけにくく、家の中で過ごすことが多いだろう。そんな時は、雨が降るのを眺めながら読書に耽るのが趣があって素敵だと思う。梅雨時に読みたい、雨が印象的な小説を紹介したい。 ノルウェイの森 / 村上 春樹 傘を探す / 佐藤 正午 驟雨 / 吉…
『マリ&フィフィの虐殺ソングブック』や『あらゆる場所に花束が…』に衝撃を受けてから、中原昌也をよく読むようになった。『マリ&フィフィの虐殺ソングブック』の支離滅裂ながらもイメージを繋いでいく手法はバロウズの『裸のランチ』ようだったし、『あら…
乾くるみは、どんでん返しを仕掛けたミステリが魅力的な作家だ。 本格ミステリのギミックを恋愛小説やSF小説に組み合わせた作風はなかなか珍しい。どんでん返しと恋愛小説を組み合わせた『イニシエーション・ラブ』は、芸能人がオススメしたこともありベスト…
ヘミングウェイはエッセイ『移動祝祭日』で、パリで過ごした青春の日々をこう語っている。 もし幸運にも、若者の頃、パリで暮らすことができたなら、その後の人生をどこですごそうとも、パリはついてくる。パリは移動祝祭日だからだ 誰にとっても青春時代は…
ミステリあるいは探偵小説では、謎が提示され探偵がそれを解決するという枠組みを持つ。大体の推理小説はこのような枠組みを持つことは納得してもらえると思う。謎がそのまま放置されたら気持ち悪いだろう。 だが、小説の中にはこの探偵小説の枠組みを崩し、…
地方都市の閉塞感や空気感を描かせたら山内マリコの右に出るものはいないだろう。 昔は尖っていたけど歳を重ねて丸くなったマイルドヤンキーや、画一化された国道沿いの風景など山内マリコが描く地方都市の風景は、地方都市に住んだことがある人なら「分かる…
中原昌也は、日本現代文学の作家の中でも異端の作家だと思っている。 紋切り型の文章・表現の多用、ストーリーではなく規則性に従って小説を進行させる技法など同じような作風を持つ作家は日本にいないのではないかなと思う。近い作風だとヌーヴォー・ロマン…
佐藤正午は現代作家の中でも屈指の小説巧者だ。 文章と構成の両方が素晴らしく、小説巧者としか言いようがない。登場人物たちのウィットに富んだ会話はクセになり、緻密でたくらみに満ちた構成に驚かされる。時系列をシャッフルした構成など、技巧的な構成が…
「ファミリー・アフェア」は村上春樹の短編小説の中でも個人的に大好きな小説だ。僕が「ファミリー・アフェア」が好きな理由は、文章のウィットにある。この小説では、主人公が冗談好きというのもあって、とにかく気の利いた表現が多くて面白い。また主人公…
中原昌也は、現代文学の奇才と言ってもいいくらい、尖った小説を書いている小説家だ。 アンチ・クライマックス、無意味な暴力、規則的な反復、紋切り型の表現と普通の小説とは一味違った現代文学を書いていている。今までに、三島由紀夫賞や野間新人文学賞な…
鮮やかな伏線回収、魅力的なキャラクター、ウィットに富んだ文章で人気を集めている伊坂幸太郎。 巧みすぎる伏線回収には毎回驚かせられる。時系列がバラバラであったりと小説の構成が凝っていて、どんでん返しなどが仕掛けられた小説が多い。 伊坂幸太郎の…
メフィスト賞からデビューし、ミステリ・純文学の枠に収まらない小説を執筆してきた佐藤友哉。 サブカルチャーを小説内に取り込み、様々な意匠をパロディ的に用いるのが作風だ。先行作品を下敷きにし、オマージュ的な作品を多く執筆している。 代表例を挙げ…