日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

理解できる??難解すぎる芥川賞受賞作品を紹介

芥川賞受賞作品って難しいっていうイメージがあるかもしれない。実際は『パークライフ』や『コンビニ人間』、『火花』のような読みやすくて分かりやすい小説もある。

一方で、難解な芥川賞受賞作品も確かに存在する。余程の文学好きじゃないと分からない前衛的・実験的な作品もある。

需要があるのかどうか分からないが、芥川賞受賞作品の中でも特に難解とされる受賞作品を紹介したい。

この記事は需要があるのだろうかと思わないでもないが、ニーズではなく、シーズということでこの記事を書きたい。

 

 

 

安部公房 『壁』  

日本を代表する作家の一人、安部公房。前衛的・実験的すぎる作風で知られ、未来の残酷さを見抜いたSFなど数多くの作品を残した。極限状況における人間を描き、日本文学最高傑作とも称される『砂の女』、未来が本質的に残酷である事を描いた『第四間氷期』、段ボールを頭からかぶった人間が登場する実験的な問題作『箱男』など、名作が多い。そんな安部公房が芥川賞を受賞したのが『壁』という作品だ。

『壁』の難解なところは、前衛的すぎる内容にある。人が何かしらの生き物に変化する変身譚は、フランツ・カフカの『変身』、中島敦の『山月記』などいくつかあるのだが、「壁」という無機物に変貌するのはなかなかないのではないか。

 

 

室井光広 『おどるでく』

『おどるでく』の難解なところは、暗号めいた内容にある。暗号めいた内容を読み解くのが大変で、内容が全く理解できないのだ。

 

 

笙野頼子『タイムスリップ・コンビナート』

『タイムスリップ・コンビナート』の難解なところは、あまりにも前衛すぎる内容にある。

 

 

平野啓一郎『日蝕』

『日蝕』の難解なところは、古めかしい擬古文体で描かれている点にある。擬古文体とは何かというと、わざと昔の日本語によせた文体のことだ。森鴎外の『舞姫』を想像してもらえれば分かりやすいだろうか。実際に『日蝕』の文章を見てみよう。

これより私は、或る個人的な回想を録そうと思っている。これは或いは告白と云っても好い。そして、告白であるが上は、私は基督者として断じて偽らず、唯真実のみを語ると云うことを始めに神の御名に於て誓って置きたい。

ちょっと厳しい文章ではなかろうか。

 

 

諏訪哲史 『アサッテの人』

『アサッテの人』の難解なところは、前衛的すぎる作風にある。

 

 

円城塔  『道化師の蝶』

SFや前衛文学などの意匠が混在する作風である。独特の論理展開、奇妙な理論を真面目に突き詰める文章が特徴のひとつである。「つぎの作者につづく」、「烏有此譚」、「後藤さんのこと」などの作品には注釈やカラーリングなどの奇妙な仕掛けを用いており、呆気に取られるだろう。

『道化師の蝶』の難解なところは、全くもって意味がわからないという点だ。説明になっていないが、本当に意味が分からないのだ。文章自体はとてもユーモラスで読みやすいのだが、内容が全くもってチンプンカンプンである。まあ、一種のフィクション論として読めばいいのだろうか。ちなみに芥川賞選考員も根を上げていた。

 

 

黒田夏子 『abさんご』


abさんご

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『abさんご』の難解なところは、全文横書きで「固有名詞」や「かぎかっこ」、「カタカナ」を一切使わない実験的な試みにある。ある意味、日本語の限界に挑んだ超実験小説だ。

 

 

藤野可織 『爪と目』

『爪と目』の難解なところは、「二人称」という実験的な人称を用いている点にある。小説の人称というと、一人称と三人称だけではない。かなり実験的な試みではあるが、二人称を用いいている小説は世界中にいくつかある。とにかく、読んでもらった方が難解さを感じてもらえるので、冒頭の文章を下に引用してみる。

はじめてあなたと関係を持った日、帰り際になって父は「きみとは結婚できない」と言った。あなたは驚いて「はあ」と返した。

どうだろうか。「あなた?きみ?どういうこと」と頭にハテナが10個ほど浮かんでいるのではないだろうか。このような感じで、不穏さを感じさせる文章が続くのである。登場人物と「あなた」の関係性がどうなっているのか、語り手は誰なのかというモヤモヤを抱えながら読むことになるのだ。しばらく読み進めると、語りの仕掛けが明かされるのだが、それまでは宙吊り感を味わうことになる。

ちなみにこの小説を友人に勧めたら、この冒頭を読んですぐに読むことを諦めていた。

 

 

上田岳弘 『ニムロッド』

『ニムロッド』の難解なところは、ビットコインやダメな飛行機、作中作の小説など重層的な構成にある。ビットコインに、ダメな飛行機コレクション、天へと続く塔の話、ニムロッドの小説と色んな挿話で重層的に構成された小説だ。

 

 

石沢麻依『貝に続く場所にて』

『貝に続く場所にて』の難解なところは、読む時間を遅延させる装飾的な文体にある。

コロナ禍が影を落とすドイツの街・ゲッティンゲンに、9年前の東北の光景が重なり合う。ゲッティンゲンにくらす「私」の元に、東日本大震災で行方不明になったはずの友人の幽霊が現れる。あの日から流れた月日を確かめるように言葉を紡いでいく。やがて小説内の時は進行をやめ、読者を時間の停滞の中に引きずり込む。
作品内でも言及があるが、夏目漱石の『夢十夜』をモチーフとしていて、さながら『夢十夜』の続きの第十一夜といった幻想的な趣がある。描写を重ねることによって、時間の進行を遅延させる効果を引き起こし、小説内の時間の流れにリンクする。

 

他にも難解すぎる芥川賞作品があったらコメントで教えてください。