日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

2022-01-01から1年間の記事一覧

ウディ・アレン監督はどのようにして生まれた? / 『映画と恋とウディ・アレン』

『アニー・ホール』や『ミッドナイト・イン・パリ』など数々の名作を残してきたウディ・アレン監督。多作な映画監督として知られるウディは、アカデミー賞に何度もノミネートされ、今でも第一線で映画を撮り続けている。名作を生み出し続けてきた彼の映画作…

本棚は自分の興味関心の「地層」 (あるいはチバニアンと孫氏の兵法)

本棚は自分の興味関心の「地層」だと思う。 本棚に本が山ほど積み上がっているから地層に見えたのかというとそうではない。 そうでもないと言ったが、3割ぐらいはその理由もあるかもしれない。 じゃあ、残り7割の理由は何かというと、本棚の中身を見ている…

「映える」本棚を求めて (あるいは岩波書店とみすず書房の徳の高さについて)

僕は本を買うとき、頭のどこかで「映える」本棚を意識しているように思う。 ここで言う「映える」本棚というのは、Instagramで沢山の「いいね」がもらえるお洒落な本棚のことではない。 逆にインスタ映えする本棚が見てみたい。蔦屋書店のような間接照明を活…

春樹のススメ!初心者におすすめしたい村上春樹の短編小説集5選

今や日本を代表する作家・村上春樹。その人気は日本にとどまらず、世界中で読まれている。洒脱な表現や比喩と、巧みなストーリーテリング、魅力的な謎解き要素などの魅力が詰まった村上春樹作品。これから村上春樹を読むという人のために、初心者におススメ…

ピース又吉の現代文学ブックガイド / 『第二図書係補佐』 又吉 直樹

第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫) 作者:又吉 直樹 幻冬舎 Amazon ピース又吉といえば、芸人で初めて芥川賞を受賞した作家だ。又吉直樹が芥川賞を受賞した時はちょうど本屋で働いていたのだけれど、『火花』の売り上げは本当に凄かった。在庫がなくて入荷…

自分の人生に対する違和感 / 「一人称単数」 村上 春樹

村上春樹の「一人称単数」という短編では、人生の可能性を絞り込んだ先に待ち受けていた一人称単数の世界が描かれている。「一人称単数」で描かれているのは自分の人生に対する違和感だ。

ウディ・アレン版「罪と罰」 / 『教授のおかしな妄想殺人』 ウディ・アレン

Irrational Man www.youtube.com 教授のおかしな妄想殺人!?正直に言うと、初めてみたとき、おかしなタイトルだなと思った。原題はIrrational Manで、日本語にすると『不合理な人』といった感じになるだろうか。ウディ・アレンの映画には原題と違った邦題が…

人生はそんなもんさ / 『僕のニューヨークライフ』 ウディ・アレン

ウディ・アレン といえばニューヨークだ。『マンハッタン』など、これまでにニューヨークを舞台にした映画を数多く撮ってきた。最新作の『レイニーディ・イン・ニューヨーク』もタイトル通り雨が薫るニューヨークを舞台にした映画だ。ウディ・アレンのニュー…

第167回芥川龍之介賞の候補作を予想する

plutocharon.hatenablog.com もうすぐ芥川賞の候補作が発表されると言うことで、芥川賞の候補作を予想してみた。上半期で印象に残った小説や推したい小説を中心に予想した。 芥川賞を簡単に説明すると、新人作家の純文学作品に与えられる文学賞だ。文学賞の…

Audible (オーディブル)で聴く読書を初めてみた

最近、聴く読書ってどうなんだろって思い始めた。きっかけは村上春樹原作の映画『ドライブ・マイ・カー』だ。『ワーニャ伯父さん』の朗読テープを車で聞くシーンがあって、耳で小説を聴いてみるのもいいのかもしれないなと思い始めたのだ。 というわけで、色…

幻想に取りつかれた大人たち / 『恋のロンドン狂騒曲』 ウディ・アレン

軽いラブコメディと思いきや... www.youtube.com ウディ・アレン監督の映画といえば、ユーモアに富んだ会話と、「人生は無意味だ」といったシニカルな作風で知られている。 『恋のロンドン狂騒曲』は、ウディ・アレン映画の中でも人生の諦念に満ちた映画だ。…

ドラマでも変わらないウディ・アレン / 『ウディ・アレンの6つの危ない話』 ウディ・アレン

Crisis in Six Scenes - Official Trailer | Prime Video - YouTube ウディ・アレンのドラマがPrime Videoに公開されているので観てみた。タイトルは『Crisis in Six Scenes』、日本語だと『ウディ・アレンの6つの危ない話』 だ。 ウディ・アレンの映画とい…

大切なものは失ったあとに気付く / 『ギター弾きの恋』 ウディ・アレン

ドキュメント?フィクション?伝説のギタリストを描いた映画 「ギター弾きの恋」はウディ・アレンの映画の中でも変わった映画だ。ギターは上手いが性格に難があるギタリスト:エメット・レイをドキュメンタリータッチで描いた伝記映画という風になっている。…

今日もビッグマックを食べた!読むとビッグマックが食べたくなる小説2選

前を向きたい時、僕はビッグマックを食べる。 買った後読めずに積んでいた単行本が文庫化した時、ビッグマックを食べた。 本を買って帰ったら同じ本が本棚にあった時、ビッグマックを食べた。 雨に降られて鞄に入れていた文庫本がふにゃふにゃになってしまっ…

もう一度18歳に戻りたい? / 「32歳のデイトリッパー」 村上 春樹

皆さんは18歳に戻りたいだろうか? 僕としては、戻りたい気もするし、戻りたくない気もする。今の記憶を持って戻ったら、未熟な18歳の僕でももっとマシな立ち回りができたんだろうなと思う。 村上春樹の短編「32歳のデイトリッパー」では、18歳に戻りたいか…

意外すぎる?村上春樹が芥川賞を受賞していないことについて

現代日本文学を代表する作家・村上春樹。その人気は日本にとどまらず、世界中で広く読まれ愛されている。 それもあってか、ノーベル賞が発表される時期になると、「ノーベル文学賞最有力候補」ともてはやされている。まあ、ノーベル文学賞の候補は公表されて…

不思議の国にGo To トラベル!架空の世界に誘われるファンタジー小説10選

皆さんは最近旅行できていますか? 時期が時期なので、なかなか旅行に行けていない人も多いはず。 そんな時はファンタジー小説を読んで、異世界旅行気分を味わってみるのはどうでしょう? 現実世界とはかけ離れた架空の世界を冒険すれば、気分転換になるはず…

気になりすぎて夜しか眠れない!最近気になっている新刊をざっくり紹介する

皆さん、夜はよく眠れているでしょうか? 僕は新刊本が気になりすぎて、夜しか眠れません。 8時間しか寝てません。辛い辛い。 そんな冗談はさておいて、最近気になっている新刊を紹介していこうと思う。 この記事を読んだら、あなたも気になりすぎて夜しか…

新海誠『すずめの戸締まり』の小説が8月に発売されることについて

www.youtube.com 今年公開を楽しみにしている映画が、新海誠の最新作『すずめの戸締まり』だ。 最近では、特報動画が公開されていた。 前作の『天気の子』や『君の名は。』のように、『すずめの戸締まり』でも「災い」が物語の鍵になるようだ。これはセカイ…

村上春樹がチノ・デルドゥカ世界文学賞を受賞した件について

www.jiji.com 村上春樹がチノ・デルドゥカ世界文学賞を受賞したと言うおめでたいニュースが入ってきた。 イタリアの文化人の名前を冠した「チノ・デルドゥカ世界文学賞」は「現代のヒューマニズムのメッセージ」を表現する人に授与される賞のようだ。賞金は…

偶然の大地を彷徨う / 「彼女の町と、彼女の緬羊」 村上 春樹

村上春樹の小説によく登場する動物といえば、やっぱり羊だと思う。 タイトルに羊と入る『羊をめぐる冒険』は村上春樹の代表作だ。『羊をめぐる冒険』に登場する羊男は有名なキャラクターで、『羊男のクリスマス』や『図書館奇譚』にも登場している。その他に…

「どれくらい好き?」と聞かれたときの最適解を村上春樹から学ぼう

いきなりだが、男子が女子に聞かれて困る質問ってなんだろうか? いきなり来るのはステーキだけにしてくれという人がいるかもしれないが、考えてみて欲しい。ありすぎて、絞りきれないという人もいるかもしれない。 男子が女子に聞かれて困る質問の個人的第…

ゴダールの名作『気狂いピエロ』の原作が文庫化していた件について

最近本屋でびっくりしたのは、ゴダールの『気狂いピエロ』の原作小説が文庫化されていたことだ。『気狂いピエロ』に原作があったのかってところにまず驚いた。 あとは『気狂いピエロ』の原作は今までに邦訳されたことがないというのにも驚いた。 www.youtube…

過去の輝きが喪失することの哀しさ / 「駄目になった王国」 村上 春樹

小中学校の同級生にとてもサッカーが上手い子がいた。運動神経がとても良くて、走りも早い。ドリブルをすれば誰も止めることができなかった。おまけに顔がカッコよくて、女の子にとてもモテた。まさしく神童だった。 高校からは名のしれた強豪校に推薦で入学…

隠れたミステリの傑作・『神のロジック 人間のロジック』が復刊された件について

最近仕事が忙しくて本屋に行けていなかったのだが、久しぶりに行ってみると大発見があった。 それは、幻のどんでん返しの名作、西澤保彦の『神のロジック 次は誰の番ですか?』が復刊されていたのだ。昔の題名は『神のロジック 人間のマジック』だった。 こ…

物語は暗闇を照らす光 / 「夜中の汽笛について、あるいは物語の効用について」 村上 春樹

「夜中の汽笛について、あるいは物語の効用について」は『夜のくもざる』に収録された村上春樹の超短編小説だ。いや、長さ的にはショートショートと言った方がいいのかもしれない。 『夜のくもざる』は、村上春樹とイラストレーターの安西水丸がコラボレーシ…

女性を失うということ /「女のいない男たち」村上 春樹

「女のいない男たち」は村上春樹の短編集『女のいない男たち』に収録された短編小説である。『女のいない男たち』という短編集は、何かしらの理由で女を失ってしまった男たちを描いた、コンセプトアルバムのような作品だ。「女のいない男たち」という短編は…

ギリシャのアトス・トルコをめぐる冒険 / 『雨天炎天』 村上 春樹

僕はエッセイはほとんど読まないし、海外の地も踏んだことがない。この御時世、海外旅行もなかなか行きづらいので、海外旅行についてのエッセイを読んで旅行気分に浸ってみた。その他にも、村上春樹の小説をほとんど読んでしまって、読んでいないのはエッセ…

本の増えるスピードが指数関数的!4月に買った本を雑に紹介していく

最近、部屋の本が増えるスピードが指数関数的に速くなっている。 本棚からキャパシティという概念が失われて久しい。もう本棚のキャパシティを無視して本を買っている。 読書好きは、本棚ではないところに本を積み出したら一人前って誰かが言っていた気がす…

傷つくことができなかった男 / 「木野」 村上 春樹

村上春樹の短編集『女のいない男たち』に収録されている小説の中で、僕が一番好きなのが「木野」だ。『女のいない男たち』の中でだけでなく、村上春樹の短編作品の中でもベスト10に入るくらい傑作だと思う。「木野」ってなかなか変わったタイトルだが。 「木…