日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

第167回芥川龍之介賞の候補作を予想する

plutocharon.hatenablog.com

 

もうすぐ芥川賞の候補作が発表されると言うことで、芥川賞の候補作を予想してみた。上半期で印象に残った小説や推したい小説を中心に予想した。

芥川賞を簡単に説明すると、新人作家の純文学作品に与えられる文学賞だ。文学賞の中で一番知名度がある賞だろう。純文学というと定義が難しいのだけれど、芥川賞に限っていえば、「文學界」・「新潮」・「群像」・「すばる」・「文藝」の五大文芸誌に掲載された作品が候補の対象となる。候補の作品となる小説の長さは中編程度が多い。

結論から言うと、年森瑛「N/A」、高瀬隼子「おいしいごはんが食べられますように」、島口大樹「遠い指先が触れて」、岡田利規「ブロッコリー・レボリューション」、山下紘加「あくてえ」あたりが候補になると予想した。以下作品の詳細について書いていく。

 

 

 

 

年森瑛「N/A」(文學界 5月号)

N/A

N/A

Amazon

今回の予想の大本命が年森瑛の「N/A」だ。今年度の文學界新人賞を受賞した小説だ。しかも選考委員が満場一致で受賞を決定したという話題作だ。しかも、文學界新人賞受賞作がいきなり単行本になるのはかなり珍しいのだが、芥川賞候補作が発表される前に単行本化が決定している。芥川賞候補作を選ぶ過程に、文學界を出版している文藝春秋が関与しているので、その点においてもかなり有力なのではないかと思う。

 

 

高瀬隼子「おいしいごはんが食べられますように」(群像 1月号)

群像からは高瀬隼子の「おいしいごはんが食べれますように」が候補に入ると予想。もし芥川賞候補になれば、高瀬隼子は2回目のノミネートになる。

 

 

島口大樹「遠い指先が触れて」(群像6月号)

最近の芥川賞では群像に掲載された小説がよく候補に上がっている印象がある。群像に掲載された、島口大樹「遠い指先が触れて」も候補になるんじゃないかなと思っている。

島口大樹は第64回群像新人文学賞を受賞しデビュー。デビュー作の「鳥がぼくらは祈り、」は一人称内多元視点で描かれた意欲作で、第43回野間文芸新人賞候補となった。

二作目の「オン・ザ・プラネット」は、主人公たちが映画を撮るために鳥取砂丘を目指すロード&ムービー・ノベルで、第166回芥川賞候補になった。「オン・ザ・プラネット」も野心的な作品で、小説の中に映画を組み込んだ作中作の構造、そして作中でも言及されていた隠れた視点人物の存在など実験的な試みに満ちていた。だが、登場人物の会話が思弁的すぎて、退屈に感じるところもあった。

「遠い指先が触れて」も前作と同様に野心的な試みがなされている。「僕」と「私」が入り混じる文体で、不確かな記憶が揺れ動く。前作よりもストーリー性があり、ページをめくる手が止まらない。この作品もなかなか期待できるのではないかなと思う。

 

 

岡田 利規 「ブロッコリー・レボリューション」(新潮2月号)

上半期の「新潮」の中でいちばん推したいのは、岡田利規の「ブロッコリー・レボリューション」だ。この小説はは三島由紀夫賞を受賞している。岡田利規は「三月の五日間」で知られる劇作家・小説家だ。戯曲のノベライズを含む小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』で大江健三郎賞を受賞している。

小説では、恋人の「きみ」の行動を「ぼく」の目線で描写するのだが、「きみ」がどう過ごしたかは「ぼく」には知り得ない情報だ。「ぼく」の妄想で彼女の行動を辿っていくような後世になっている。

岡田利規は新人ではなく中堅に当たるかなと思うので、ダークホースとして予想に上げた。

 

 

山下 紘加「あくてえ」(文藝 夏号)

文藝 2022年夏季号

文藝 2022年夏季号

  • 河出書房新社
Amazon

「文藝」で気になったのが、山下紘加の「あくてえ」だ。もし、芥川賞候補になれば山下紘加は初ノミネートになる。

 

 

この他で言うと、かつて『短編五芒星』が候補になり選考会で物議を醸した舞城王太郎が、『短編七芒星』で再び芥川賞候補になるというアツイ展開も考えたが、流石に厳しいか。

 

第167回はどの作品が芥川賞の候補になるのか。気になるところ。第167回 芥川賞 の候補作は、6月17日(金)午前5時にTwitterで発表予定だ。毎回思うけど、発表時間が謎すぎるほど早朝なのは何故なのか。

 

plutocharon.hatenablog.com