日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

不思議の国にGo To トラベル!架空の世界に誘われるファンタジー小説10選

皆さんは最近旅行できていますか?

時期が時期なので、なかなか旅行に行けていない人も多いはず。

そんな時はファンタジー小説を読んで、異世界旅行気分を味わってみるのはどうでしょう?

現実世界とはかけ離れた架空の世界を冒険すれば、気分転換になるはず。

そんな、不思議の国にGo To トラベルできるようなファンタジー小説を10冊集めてみた。

 

 

『不思議の国のアリス』 / ルイス・キャロル

ある昼下がりのこと、チョッキを着た白ウサギを追いかけて大きな穴にとびこむとそこには…。

不思議の国といえばルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』だろう。どちらかというと、ディズニーのイメージが強いかもしれない。けれども、原作小説では想像以上にぶっ飛んでいて、脈絡のない世界に連れていかれる。辻褄が合わなくて、まるで夢を見ているかのよう。子どもよりも大人の方が楽しめるんじゃないかなと思う。

 

 

『はてしない物語』 / ミヒャエル・エンデ

バスチアンはあかがね色の本を読んでいた――ファンタージエン国は正体不明の〈虚無〉におかされ滅亡寸前。その国を救うには、人間界から子どもを連れてくるほかない。その子はあかがね色の本を読んでいる10歳の少年――ぼくのことだ! 叫んだとたんバスチアンは本の中にすいこまれ、この国の滅亡と再生を体験する。

ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』も有名なファンタジー小説だろう。主人公・バスチアンは、手にした本「はてしない物語」に描かれているファンタージエン国を救うために、本の世界に飛び込む。本の世界に入り込むっていう設定がいいよね。

物語の本筋から離れた時には、「これは別の物語、いつかまた、別のときにはなすことにしよう」と本筋に戻ることが特徴だ。

 

 

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』 / 村上 春樹

高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。

村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は、大人向けの上質なファンタジー小説だ。ちょっと長いので全く本を読まない人にはハードルが高いかもしれないけれど、とにかく面白いので読んでみてほしい。

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は村上春樹の代表作の1つとして言われている。『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』というタイトルからしてワクワクしないだろうか?

この本を一言で表現すると、大人のための静謐なファンタジーだ。内容としては、「世界の終り」と「ハードボイルドワンダーランド」の二つの世界が交互に展開していき、最後には二つの世界がつながっていくという風になっている。「計算士」や「組織(システム)」、「記号士」、「工場(ファクトリー)」など謎めいた組織が暗躍していて、謎めいた組織は何なのが気になってページをめくる手が止まらなくなる。この作品は、読者を日常から離れた不可思議な世界に連れていってくれる。

 

 

『図書館奇譚』 / 村上 春樹

図書館の地下のその奥深く、羊男と恐怖と美少女のはざまで、ぼくは新月の闇を待っていた。

図書館奇譚』も村上春樹の作品だ。短めの小説なので、読みやすいかも。『図書館奇譚』はメジャーな作品じゃないと思うけれど、村上作品ではお馴染みの「羊男」というキャラクターが出てきたり、超現実的な展開が待ち受けていたりと、短いながらも村上春樹のエッセンスが詰め込まれている。村上春樹版の「不思議な国のアリス」のような小説だ。

 

 

『七夜物語』 / 川上 弘美

小学校四年生のさよが図書館でみつけた『七夜物語』は、読んだはしから内容をすっかり忘れてしまうふしぎな本。さよは、物語にみちびかれるように、同級生の仄田くんと「夜の世界」へ迷いこみ、グリクレルという料理上手の大ねずみから皿洗いを命じられることになる。

川上弘美の『七夜物語』は、『はてしない物語』と同様に、本によって異世界に誘われる小説だ。児童文学の枠に収まらない魅力があり、大人でも楽しめると思う。

 

 

『旅のラゴス』 / 筒井 康隆

北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か? 異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。

筒井康隆の『旅のラゴス』は、高度な文明が失われ人々が超能力を得た世界で旅を続ける男の話だ。主人公のラゴスは不思議な体験を繰り返し、旅を続ける。文明が滅んだらこんな感じになるのかなという想像が膨らむ。また、読んでいると、人生は旅そのものなのかもしれないという気分になってくる。

 

 

 『ブランケット・ブルームの星型乗車券』 / 吉田 篤弘

ようこそ、毛布をかぶった寒がりの街「ブランケット・シティ」へ。待ち合わせは、ロビーしかない老舗ホテル「バビロン」で。日中は、「閑をもてあました消防隊」によるコンサートや影の絵画を展示する「冬の美術館」にお出掛け。夜は、本好きのための酒屋「グラスと本」で読書をしながらちょっと一杯。読むだけで旅した気分になる、架空の街の物語。

読むだけで架空の街を旅した気分になれるのが、吉田篤弘の『ブランケット・ブルームの星型乗車券』だ。影を展示する冬の美術館など、ロマンチックなモチーフが登場する。挿絵もおしゃれで可愛い。この本こそが、不思議な世界への乗車券だ。

 

 

『ダブ(エ)ストン街道』 / 浅暮 三文

あの、すみません。道をお尋ねしたいんですがダブ(エ)ストンって、どっちですか?実は恋人が迷い込んじゃって……。世界中の図書館で調べても、よく分からないんです。どうも謎の土地らしくて。彼女、ひどい夢遊病だから、早くなんとかしないと。え?この本に書いてある?!あ、申し遅れました、私、ケンといいます。後の詳しい事情は本を読んどいてください。それじゃ、サンキュ、グラッチェ、謝々。「今、行くよ、タニヤ!」

浅暮三文の『ダブ(エ)ストン街道』は、この記事で紹介した本の中で一番不可思議な小説かもしれない。あらすじとしては、主人公がダブ(エ)ストンという奇妙な場所にたどり着いて、行方不明の彼女を探すという話だ。この本を読んで、あなたもダブ(エ)ストンに迷い込むのはどうでしょう?

 

 

『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』 / 前田 司郎

長い同棲を経て結婚した大木信義と咲は、占い師にのせられ久しぶりの旅に出る。小さな池を抜け、向かった先は一泊二日の地獄旅行。猫畑、巨大旅館、ビーフシチュー温泉、そして赤と青の地獄人。不思議な出来事ばかりの奇妙な旅路は、馴れ合いになった二人の意識を少しずつ変える―。異世界だから気づく大切なこと。笑えてなぜかせつない物語。

『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』は文字通り、新婚旅行で地獄に行くという話だ。果たして地獄に行くのは楽しいのだろうか?地獄に旅行する小説ってなかなかないんじゃないかなと思う。しかも出発地点は、五反田のビルの屋上。なかなかシュールだ。地獄に行ってみたい人は是非読んでほしい。

 

 

『30センチの冒険』 / 三崎 亜記

突然、男は「大地の秩序」が狂った世界に迷い込み……。奇妙な現象に苦しむ人々を救うため、30センチのものさしを手に立ち上がる!

三崎亜記は日常から少しずれた非日常を描くのが上手い作家だ。『30センチの冒険』では、主人公が遠近の概念が狂った世界に迷い込む。この世界では、目の前に見えるものが近くにあるとは限らず、屋外に出れば迷子になってしまう。三崎亜記ワールドが全開の一冊だ。