そうだ、村上春樹を読もう!
現代日本文学を代表する作家・村上春樹。その人気は日本にとどまらず、世界中で愛されている。
洒脱な表現や比喩と、巧みなストーリーテリング、魅力的な謎解き要素など魅力が詰まった村上春樹作品。僕も高校生の頃から村上春樹作品の魅力に取りつかれ、大体の作品は読んできた。
最近ではノーベル文学賞の候補だとかなんだかで騒がれたりと話題が絶えない村上春樹だが、読んだことがない人も多いんじゃないだろうか。これから村上春樹を読むという人のために、初心者におすすめの短編小説を紹介したい。
いきなり長編小説だとハードルが高いという人には短編小説がおすすめだ。
ぜひ村上春樹の小説を楽しんでみて!
『カンガルー日和』
村上春樹初心者の人、あるいはサクッと村上春樹を楽しみたいという人におすすめなのが『カンガルー日和』という短編集だ。
『カンガルー日和』に収録されているのは、短編とショートショートの間ぐらいの長さの小説なので、凄く読みやすい。表題作の「カンガルー日和」は高校の教科書にも採用されたことがあるので、読んだことがある人も多いはずだ。
この短編集に収録されている「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」という短編がおすすめだ。村上春樹の短編の中でも、特に名作だと言われている小説だ。とてもタイトルが秀逸で、理想の女性に出会うことがテーマになっている。
ちなみに、この短編は村上春樹好きで知られる新海誠監督の大ヒット映画『君の名は。』のモチーフになっていると言われている。また、「4月のある晴れた朝」は『1Q84』の原型と言われているので、この短編集から『1Q84』に進むのもおすすめだ。
『パン屋再襲撃』
村上春樹の独特なシュールな世界観を楽しみたい人には『パン屋再襲撃』がおすすめだ。村上春樹作品の特徴であるシュールな展開やユーモアあふれる文章、喪失というモチーフがコンパクトに楽しめる。
表題作「パン屋再襲撃」はとある夫婦がパン屋を襲おうとする話だ。村上春樹作品に特有のシュールなストーリーを楽しめる。村上春樹の面白いところの一つに比喩の巧みさがあるが、「パン屋再襲撃」での空腹の比喩は本当に秀逸で唸らされる。「パン屋再襲撃」はイラストレーターとコラボして、『パン屋を襲う』という大人向けの絵本となっているのでそちらも是非!別の収録作の「象の消滅」は村上春樹の短編小説の中でも名作と言われている。また、『ねじまき鳥と火曜日の女たち』という、長編『ねじまき鳥クロニクル』の原型も収録されているので、この短編集から長編小説を読むのもあり。
『レキシントンの幽霊』
この短編集に収録されていてオススメなのが「レキシントンの幽霊」と「トニー滝谷」、「七番目の男」だ。
様々な角度や視点から「喪失」を描いてきた村上春樹だが、「トニー滝谷」という短編は残された「遺品」が存在の不在を訴えかける話だ。残された「モノ」が、失った人の影となって苦しめるのだ。
「七番目の男」は、来客たちが自分の体験した怖い話を語り合うという話だ。その怪談を語り合う場で、主人公が七番目に話すから「七番目の男」。「七番目の男」が語りだすのはある台風の日に起こった奇妙な出来事と、その出来事が「七番目の男」の人生に引き起こした波紋だ。トラウマに向き合うことの辛さと救済をこの短編は見事に描いていると思う。
『螢・納を焼く・その他の短編』
タイトルにあるようにこの短編集には、『ノルウェイの森』の原型となった「螢」、人間の怖さを垣間見れる「納屋を焼く」など有名な短編が収録されている。「踊る小人」といい、奇妙で不気味な短編が収録された短編集だ。
「納屋を焼く」は、タイトル通り納屋を焼くのが趣味という奇妙な人物が登場する小説だ。どこか不気味な雰囲気が漂う短編で、「納屋を焼く」ことの意味ははっきりと明示されない。果たして納屋を焼くことの意味はなんだろうか考えてみてほしい。この短編は韓国で映画化もされている。