日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

傷つくことができなかった男 / 「木野」 村上 春樹

村上春樹の短編集『女のいない男たち』に収録されている小説の中で、僕が一番好きなのが「木野」だ。『女のいない男たち』の中でだけでなく、村上春樹の短編作品の中でもベスト10に入るくらい傑作だと思う。「木野」ってなかなか変わったタイトルだが。 「木…

第35回三島由紀夫賞候補作品の紹介と受賞作予想

今年も三大純文学新人賞の1つ、三島由紀夫賞の季節がやってきました。 芥川龍之介賞に比べると知名度が大きく下がる三島由紀夫賞だけれども、受賞作の尖りっぷりは芥川賞を凌ぐと思っている。舞城王太郎や佐藤友哉、中原昌也など芥川賞では評価されにくい尖…

新海誠へのオマージュに満ちた青春アンソロジー /『詩季折々』

失いたくない思い出を抱えた若者たちの青春アンソロジー 『詩季織々』 予告篇 スタジオジブリを率いる宮崎駿監督は世界に大きな影響を与えてきた。今では宮崎駿監督に続いて、新しい才能がどんどん頭角を現している。その一人が新海誠だ。 美しい情景描写や…

新海誠の最新作『すずめの戸締まり』の特報が公開されていた件について

www.youtube.com 気付かないうちに新海誠の最新作『すずめの戸締まり』の特報動画が公開されていた。 友達に言われなかったらしばらく気付いてなかっただろう。持つべきものは信頼できる友人である。感謝感謝。 さて、『君の名は。』と『天気の子』では自然…

「青」が意味するのは何か? / 「青が消える (Losing Blue)」 村上 春樹

村上春樹の中で短編集に収録されておらず、全集にしか収録されていない短編小説がある。それが「青が消える (Losing Blue)」だ。「青が消える」という短編は、タイトル通り「青」色が世界から消えていく様を描いた、ちょっとSF風味のある小説だ。例えば、青…

村上春樹のチャンドラーへのオマージュ / 「サウスベイ・ストラット―ドゥービー・ブラザーズ「サウスベイ・ストラット」のためのBGM」 村上 春樹

村上春樹の短編小説の中でも最も異色な小説は何かと言われれば何を思い浮かべるだろうか? ウイットに飛んだ「ファミリー・アフェア」と答える人がいるかもしれないし、村上春樹では珍しい家族の話を描いた「蜂蜜パイ」と答える人がいるかもしれない。僕はど…

独断と偏見しかない!村上春樹のおすすめ長編小説ランキング

皆さん、村上春樹を読んだことがあるだろうか? 僕は高校生ぐらいから村上春樹にハマって、村上春樹の長編小説は全部読んだ。 一通り全部読んだので村上春樹のおすすめ長編ランキングを独断と偏見で作ってみようと思う。 村上春樹の長編小説をどれから読むか…

元書店員が紹介する!本屋でアルバイトって実際どうなのか?

書店ガール (PHP文芸文庫) 作者:碧野 圭 PHP研究所 Amazon 本好きな人なら書店で働くということに憧れる人が多いだろう。 僕自身、某大型書店で3年ほどアルバイトをしていた元書店員だ。 本が好きで、大学生の時に書店でバイトをしていた。 実際に書店員をや…

先見性がありすぎる!元自衛隊の異色作家・砂川文次の小説を紹介!

砂川文次という作家をご存知だろうか? 「市街戦」でデビューした、元自衛官という異色の経歴を持つ作家だ。元自衛官とあってか、戦争や自衛隊、軍隊をモチーフにしたミリタリー小説が多く、リアリティある描写が魅力だ。文章の緻密さがすごく、戦争の場面で…