日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

第35回三島由紀夫賞候補作品の紹介と受賞作予想

今年も三大純文学新人賞の1つ、三島由紀夫賞の季節がやってきました。

 

芥川龍之介賞に比べると知名度が大きく下がる三島由紀夫賞だけれども、受賞作の尖りっぷりは芥川賞を凌ぐと思っている。舞城王太郎佐藤友哉中原昌也など芥川賞では評価されにくい尖った才能を見出してきた。個人的に一番好きな純文学新人賞だ。

 

前回は乗代雄介の『旅する練習』が受賞という順当な結果だったが、今年はどうなるのか。受賞作が出揃ったので紹介してきたい。

 

今回の候補作も芥川賞と違って独自色が強いなって思う。

デビュー作で読売文学賞を受賞した『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』がまさか候補に上がるとは思っていなかった。

岡田利規の「ブロッコリー・レボリューション」は、新潮に載っているのをみて候補になりそうだなって思っていた。

今回の候補作では、芥川賞の候補に上がっていたのは「Schoolgirl」だけだ。逆に芥川賞が拾わなかった傑作「ミシンと金魚」が候補作に上がっている。

では、それぞれの作家と作品を簡単に紹介していき、最後に自分の予想を書きたいと思う。ネタバレを含むので未読の人は注意!

 

 

 

『道化むさぼる揚羽の夢の』 金子 薫

罰でないなら、この暮らしは一体何なのか――。各紙誌絶賛、新鋭が放つディストピア小説。広大な地下工場で蛹に拘束され、羽化=自由を夢見る男。異様な労働、模造の蝶、監督官による殴打、地中の街。理不尽な状況から逃れるため、命懸けで道化を演じるが――。不条理な世界で人間に本当に必要なものは何か。そこで人はどう生き延びるのか。

金子薫は、「アルタッドに捧ぐ」で第51回文藝賞を受賞しデビュー。『双子は驢馬に跨がって』で第40回野間文芸新人賞を受賞している。三島由紀夫賞にノミネートされたのは、「壺中に天あり獣あり」に引き続き二回目だ。

 

 

『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』 川本 直 

 

トルーマン・カポーティ、ゴア・ヴィダル、ノーマン・メイラーと並び称された、アメリカ文学史上に燦然と輝く小説家ジュリアン・バトラー。 その生涯は長きにわたって夥しい謎に包まれていた。 しかし、2017年、覆面作家アンソニー・アンダーソンによる回想録『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』が刊行され、遂にその実像が明らかになる――。

『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』は、川本直のデビュー作だ。そして、ベテランが取るような文学賞・読売文学賞を受賞したというド級の作品だ。

その構成は複雑で、アンソニー・アンダーソンという作家の遺作となった回想録『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』を、川本直が翻訳したという設定になっているのだ。

 

 

『Schoolgirl』 九段 理江

どうして娘っていうのは、こんなにいつでも、お母さんのことを考えてばかりいるんだろう。社会派YouTuberとしての活動に夢中な14歳の娘は、私のことを「小説に思考を侵されたかわいそうな女」だと思っている。そんな娘の最新投稿は、なぜか太宰治の「女生徒」について――?

九段理江は文學界新人賞を「悪い音楽」で受賞しデビュー。候補に上がった「School girl」は、太宰治の「女生徒」を下敷きにし、世代間ギャップのある母と娘の邂逅を描いた意欲作だ。

この前の芥川賞候補にもなっている。芥川賞の時は、選考委員の中では二番目に支持されていたが、惜しくも受賞を逃した。

内容としては、環境問題に関心を持ちYouTubeで発信を行う娘と文学少女気質のある母の関係性を描いた小説だ。文學界にはジェネレーションZ 文学と書かれていたけど、どちらかと言うと時代が変わっても変わらない母娘の普遍性がテーマかなと感じる。娘はジェネレーションZ 的な考え方で、母親は文学少女のような考え方をしていて、考え方にずいぶんジェネレーションギャップがある。だけれども、母と娘の関係性は時代を経ても大きくは変わらない。太宰治「女生徒」を取り込むことで、母娘の関係性の普遍性を表現したのは鮮やかだったなと感じた。

 

 

「ブロッコリー・レボリューション」 岡田 利規

きみはぼくから逃げ、バンコクへ向かった。嫉妬と解放感がせめぎ合う情念のサスペンス

岡田利規は「三月の五日間」で知られる劇作家・小説家だ。戯曲のノベライズを含む小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』で大江健三郎賞を受賞している。

 

 

『ミシンと金魚』 永井 みみ

暴力と愛情、幸福と絶望、諦念と悔悟……絡まりあう記憶の中から語られる、凄絶な「女の一生」。

永井ミミは、『ミシンと金魚』ですばる新人賞を受賞し、デビュー。その完成度から芥川賞候補は確実だろうと言われていたが、まさかの候補外だった。三島由紀夫賞では、ちゃんと候補にあげられていて安心した。

 

 

受賞作は『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』と予想。

さあ、結果はどうなるか。