日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

小人の謎を考察する / 「踊る小人」 村上 春樹

この記事では、村上春樹の不可思議な短編「踊る小人」を考察・解説していきたい。

この「踊る小人」はファンタジー色が強く、童話テイストなのだが、どこか不気味な雰囲気が漂う小説だ。踊る小人というと「白雪姫」の7人の小人が思い浮かぶのだが、その小人と違って「踊る小人」に登場する小人には邪悪なところがある。この記事では、「小人」は『羊をめぐる冒険』の「羊」のように邪悪な存在であるとして解釈してみたい。

また、この小説では「象工場」や、「革命」といった謎めいたキーワードが散りばめられている。そのキーワードについても掘り下げて考察していく。

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ブログ再開。アクセス数に大事件が…

皆さん、お久しぶりです。なおひとです。

ブログを再開しました。

 

特に病気などになったわけでなく、シンプルに忙しかったので、なかなかブログを更新できずにいました。

 

ブログを書いてなかったのは2週間ぐらいかな?それまでは忙しい中でも毎日更新してたのだけれど、一度気が緩んでしまうともうダメだめだった。

ここ最近は、報告会に出張、顧客面談、実験、試作、特許作成など業務がてんこ盛りだった。

ブログを書く時間的余裕も心の余裕もなかった。

 

ようやく落ち着いてみたので、ぼちぼち更新していこうと思う。

村上春樹の小説の考察や芥川賞候補作品の考察、芥川賞予想もしていこうと思っている。

 

なかなかブログを更新できないでいたけど、その間にブログでちょっとした事件が起こった。

 

6/30にブログへのアクセス数を確認してみると、アクセス数が大変なことに!

f:id:plutocharon:20220708005532j:image

その数、なんと約1万2千!

なんじゃこりゃ!何が起こったのか?!

 

このブログの1日あたりのpv数は大体400〜600ぐらいなんだけど、それを遥かに上回るアクセス数。シンプルに嬉しい。

 

アクセス数が増えていたのはこの記事。

 

謎解き『ノルウェイの森』/ ノルウェイの森(Norwegin Wood)に込められた意味は何か? - 日々の栞

 

検索エンジンからの流入が増えていた。ちなみに、そもそもこのブログは、はてな内からの流入はほとんどない…新しい記事を書いたときは3%程度になるが。

アクセスの大半がGoogleかYahooと言った検索エンジンからだ。Googleが70%程度だ。はてなブログの読者を増やさないと…

 

話が逸れてしまったが、どうやらこの日の朝にノルウェイの森とビートルズの曲の関係についてテレビで放送されたのが原因のようだ。

毎日こんなイベントがあったら嬉しいのだけれど。

 

まあ、コツコツ記事を書いていきます。

今後ともよろしくお願いします!

 

超上級者向け!現代文のおすすめ参考書4選

現代文が得意あるいは現代文を強みにしたいという人に向けておすすめの現代文参考書を紹介したい。僕は現代文の参考書を数多く使ってきた。その中でもレベルが高かったものを紹介したい。

なんで現代文を極めてきたかというと、僕は理系だったけど国語が大好きな高校生だったからだ。なんなら模試の偏差値が一番高いのは毎回国語だった。某S台の記述模試の国語(理系・現代文・古文型)で全国一位になったこともある。理系に化けた文系だったので、国語(理系・現代文・古文型)で一位をとるのは案外いけたのである。これぞニッチ戦略。ちなみに一番偏差値が低かったのは、数学だった...理系とは…

そんな感じで現代文が大好きなので、学生時代はたくさんの問題集や参考書を解いてきた。現代文の参考書を使えば合法的に読書できるという発想があったからだ。なので現代文の参考書を解くのはほとんど娯楽に近かった。

国語が超得意な人向けの記事なので、現代文が苦手な方は是非ブラウザバックをお願いします。多分苦手な人には参考にならない。

 

 

『ライジング現代文ー最高レベルの学力養成』

タイトルに「最高レベルの学力養成」とあるが、タイトルに嘘偽りはない。

受験生向けの参考書の中でこの本が一番レベルが高かったと思う。テクニックに走ることなく、読解の本質を教えてくれる良書だ。残念ながら絶版になっているようだ。Amazonではあり得ないぐらい価格が高騰していて笑ってしまった。やっぱり名著として評価されているんだなとしみじみ思った。

 

 

『教養としての大学受験国語』 

もうここから普通の参考書は登場しません。次に紹介したいのは、石原千秋の『教養としての大学受験国語』だ。

大学入試の現代文では、「読解力が大事」とか「テクニックが大事」とかよく言われるが、「背景知識」も大事だと思っている。評論でよく出てくるテーマの「背景知識」があれば、問題文の理解が早くなる。知っている内容が出題されたら、そこまで頭を使って理解する必要がないので、楽になるのは当たり前だろう。

この本では評論の読み方だけではなく、現代文で頻出するテーマの背景知識も解説してくれる。この本を何周かするとかなり背景知識がつき、文章の理解が早くなるだろう。

本書は受験参考書の形をとった教養書に近い。「身体」「大衆」「国民国家」など、取り上げるテーマはいずれも現代思想のキーワードばかりだ、。社会人や大学生にとっても思考の訓練になる。

 

 

『大学受験のための小説講義』 

国語の小説を解くコツは、「ちゃんと文章を読む」ことだ。こいつ何言っているんだと思っている人が多いと思うが、実際小説が読めない人はちゃんと文章を読んでいない人が多い。自分の経験や勘違いから小説の解釈を決めつけて独りよがりな読み方をしている人が多いのだ。そういう人はだいたい感情移入しちゃったという。だが、本文に読解の根拠を求める読み方をしていれば、感情移入してても問題はちゃんと解ける。感情移入が解けない原因ではない、そもそも文章をちゃんと読んでいないのだ。

では、ちゃんと文章を読むにはどうすればいいのか?それについて詳しく書かれた本が、石原千秋『大学受験のための小説講義』だ。

この本は、本文に根拠がある読み方を解説しており、小説を読むことの本質がどういうことか教えてくれる。著者は新たな視点からの文学作品の読み方に定評がある石原千秋さん。文芸時評でも有名だ。

テクスト論って何?と思われた受験生は多いだろう。テクスト論とは小説の読み方の1つで、作者の情報はシャットアウトし文章だけに着目して読解するという読み方だ。

タイトルに「大学受験」とあるように、大学入試の国語の問題を題材に小説の読み方をレクチャーする形で書かれている。題材になっている文章はセンター試験に出題された津島佑子「水辺」や山田詠美の「眠れる分度器」や、二次試験から横光利一「春は馬車に乗って」など。センター試験の赤本よりも詳しい解説が載っている。

また、大学入試の国語に隠されたルールも説明してくれる。確かに大学入試の問題ではこういう読み方をしないといけないよなと納得した。そのルールが何かというのは本書を読んで確かめて欲しい。

大学入試と書いてあるが、もはや大学の文学部レベルの内容だ。ここまで小説を読解することができたなら、大学入試なんて余裕だろう。試験中逆立ちして問題を解いても受かるレベルだ。いや、流石にそれはない。

 

 

『ちくま評論選』

この本は有名な評論をまとめた教科書的な本だ。高校の現代文の教科書の上位交換と思ってもらったらいいだろう。

これに載っている評論は有名な学者や作家のものがほとんどだ。評論のレベルもかなり高く、読み応えのある一冊だ。レベルが高すぎて高地トレーニングにも程がある。これを解いたあとだと、センター試験の現代文が簡単に見えて仕方なかった。この本がまるまる理解できるようになれば、現代文では敵なしだろう。

華やかなセレブの裏側は? / 『セレブリティ』 ウディ・アレン

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作家志望の芸能記者リーは、なんとかセレブリティの仲間入りをしようと、女優、モデル、人気俳優に近づくが、ことごとく振り回される。その彼と離婚した元妻ロビンは、自分の生きかたをマイペースで貫き、いつのまにかセレブリティの仲間入りを果たす。

『セレブリティ』は、有名人の人間模様を皮肉たっぷりに描いたウディ・アレンのコメディ映画だ。モノクロがお洒落感を醸し出している。映画のポスターを見た感じ、主演がレオナルド・ディカプリオだと思っていたがそうではなかった。ディカプリオが実際に出ているのは20分ぐらいだろうか。まあ、ディカプリオの知名度を押し出して売り出そうとしたのだろう。こういった売り方はあんまり良くないんじゃないかな…って思う。主人公はケネス・ブラナーが演じていて、ウディそっくりの落ち着きのない早口の演技が様になっている。

 

 

華やかな生活に憧れた男と自分の生き方を貫いた女

作家志望の芸能記者リーは、ありきたりな生活に甘んじることを良しとせずロビンとの別れを切り出す。リーは良く言う35歳問題に突き当たったのだろう。そして中年デビューというのだろうか、なんとか「セレブリティ」の仲間入りをしようと、女優、モデル、人気俳優に近づく。しかし、ことごとく振り回され仲間入りすることは叶わない。

この近づいた人気俳優を演じているのがディカプリオだ。このワガママなアイドルスターは周りを振り回し、若さゆえの乱暴さを見せる。下半身も奔放で、複数人でしようとしたりする。こういったようにこの「セレブリティ」は有名人の裏側を皮肉たっぷりに描いている。

リーは小説家となり名を上げようとするが、頑張って作り上げた原稿は元カノのボニーによって処分されるという散々な目にあう。ただリーは自己中心的だったので自業自得といったところか。

リーに対し、その彼と離婚した元妻ロビンは、最初落ち込んだ生活を送っていた。ひょんなことからトニーと出会いテレビの制作に関わるようになる。そして、自分の生きかたをマイペースに貫いた結果、いつのまにかセレブリティの仲間入りを果たす。

 

セレブリティに憧れたリーが何者にもなれず、自分のなりの生き方を模索したロビンが「セレブリティ」になり成功を手にするというのはなんとも皮肉な結末だ。ウディ・アレンらしい皮肉の効いた結末といったところか。ちなみにこの映画には若かりし頃のドナルド・トランプが登場している。気になるひとはチェックしてみて。

 

セレブリティ(字幕版)

セレブリティ(字幕版)

  • ケネス・ブラナー
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Audible(オーディブル)で聴ける芥川賞受賞作品をまとめてみた

最近、聴く読書ことAudible(オーディブル)が話題になっている。聴くことができる本がどんどん増えており、ジャンルの幅広い。

Audible(オーディブル)で聴くことができる本の中から、芥川賞を受賞した作品をまとめてみた。オーディブルライフの参考になれば幸いだ。

 

 

Audible(オーディブル)って何?

Audible (オーディブル)とは、「本を聴く」という新しい読書体験だ。スマホのアプリを使えば、いつでもどこでも耳で読書ができる。本は、プロのナレーターや俳優、女優によって読み上げられていて、通勤時間や家事の合間、お休み前など、日常のあらゆる時間に読書を取り入れることができる。

Audible (オーディブル)はAmazonから提供されているサービスだ。Amazonが提供しているサービスとあってか、ラインナップは約40万タイトル程度あるようだ。ジャンルは、小説にビジネス書、自己啓発書、ライトノベル、英会話、洋書と幅広い。

最近では、村上春樹作品もAudible (オーディブル)に収録されることになり、話題になった。

 

 

芥川賞って何?

まず、芥川賞について簡単に説明する。芥川龍之介の名前を冠した芥川賞は、新人作家の純文学作品に与えられる文学賞だ。文学賞の中で一番知名度がある賞じゃないだろうか。

純文学というと定義が難しいのだけれど、芥川賞に限っていえば、「文學界」・「新潮」・「群像」・「すばる」・「文藝」の五大文芸誌に掲載された作品が候補の対象となる。候補の作品となる小説の長さは中編程度が多い。純文学の新人にとって登竜門的な賞だ。

 

それでは、Audibleで聞くことができる芥川賞受賞作品を紹介したい。

 

 

『ブラックボックス』 / 砂川 文次 (第166回芥川賞)

ずっと遠くに行きたかった。今も行きたいと思っている。自分の中の怒りの暴発を、なぜ止められないのだろう。自衛隊を辞め、いまは自転車メッセンジャーの仕事に就いているサクマは、都内を今日もひた走る。

ナレーター: 向山 太規、再生時間: 5 時間 27 分

砂川文次は元自衛官という異色の経歴を持つ作家だ。ということもあってか、軍事用語が飛び交うリアリティあふれるミリタリー小説が十八番芸だ。だが、『ブラックボックス』はちょっと違って、現代の格差社会を描いた、自転車便メッセンジャーが主人公の小説だ。小説の前半と後半で大きく雰囲気が変わるのが特徴になっている。

前半部分では、主人公・サクマが自転車で街を駆ける様子が緻密な文章で躍動感を持って描かれている。非正規雇用という立場の不安定さを悩み焦燥感を抱くサクマだが、日々の業務をこなす中では今後の未来を思い描く余裕がない。だから、非正規雇用から抜け出せずにいる。

そこからの展開が凄いので是非聴いてみて欲しい。タイトルの『ブラックボックス』の意味も分かるはずだ。

 

 

『彼岸花が咲く島』 / 李 琴峰 (第165回芥川賞)

記憶を失くした少女が流れ着いたのは、ノロが統治し、男女が違う言葉を学ぶ島だった――。不思議な世界、読む愉楽に満ちた中編小説。

ナレーター: 岩崎 愛、再生時間: 6 時間 21 分

李琴峰の『彼岸花が咲く島』は、 「ニホン語」と「女語(じょご)」という2つの言語が話される島が舞台の小説だ。2つの言語、彼岸花が咲き乱れる島の歴史、ノロという存在、ニライカナイという想像上のユートピアなど、『彼岸花が咲く島』はミステリアスで魅力的な島を作り上げている。そして、島には大きな秘密が隠されているのであった。

一見すると、空想の世界の話と思うだろうが実はそうではない。小説の後半では、現実世界に鋭い批評を投げかけている。

 

 

『貝に続く場所にて』 / 石沢 麻依 (第165回芥川賞)

コロナ禍が影を落とす異国の街に、9年前の光景が重なり合う。ドイツの学術都市に暮らす私の元に、震災で行方不明になったはずの友人が現れる。人と場所の記憶に向かい合い、静謐な祈りを込めて描く鎮魂の物語。

ナレーター: ささき のぞみ、再生時間: 3 時間 34 分 

貝に続く場所にて』は石沢麻依のデビュー作でもあり、芥川賞受賞作でもある。この作品は新人のデビュー作とは思えないぐらい完成度が高い。何年に一回出会えるか分からないレベルで、完成度がずば抜けた小説だ。

小説の舞台は、コロナ禍が影を落とすドイツの街・ゲッティンゲンだ。このドイツの街に、9年前の東北の光景が重なり合う。ゲッティンゲンにくらす「私」の元に、東日本大震災で行方不明になったはずの友人の幽霊が現れる。あの日から流れた月日を確かめるように言葉を紡いでいく。やがて小説内の時は進行をやめ、読者を時間の停滞の中に引きずり込む。

作品内でも言及があるが、夏目漱石の『夢十夜』をモチーフとしていて、さながら『夢十夜』の続きの第十一夜といった幻想的な趣がある。描写を重ねることによって、時間の進行を遅延させる効果を引き起こし、小説内の時間の流れにリンクする。じっくりと味わいたい作品だ。

 

 

『推し、燃ゆ』 / 宇佐美 りん (第164回芥川賞)

逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を“解釈“することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し…。

ナレーター: 玉城 ティナ、再生時間: 3 時間 34 分 

宇佐美りんの『推し、燃ゆ』は、アイドルを推すことがテーマになった作品だ。主人公の一人称語りでアイドルを推すことをリアルに描いている。推しを推すことに全力を尽くす主人公を、キレキレの文体で描いている。すごく現代的なテーマを扱っているのだけれど、ストーリー部分が主人公の成長譚として定石で、しっかりと構成された小説だなと感じる。アイドルを押した経験がある人なら心に響くはず。

ナレーターは女優の玉城ティナだ。

 

 

『破局』 / 遠野 遥 (第163回芥川賞)

破局

破局

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私を阻むものは、私自身にほかならない――ラグビー、筋トレ、恋とセックス。ふたりの女を行き来する、いびつなキャンパスライフ。

ナレーター: 加藤 将之、再生時間: 4 時間 21 分 

遠野遥の『破局』は、平成生まれによる初めての芥川賞受賞作品だ。無機質すぎる主人公を描いた作品だ。

 

 

『むらさきのスカートの女』 / 今村 夏子 (第161回芥川賞)

近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性が気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導する。

ナレーター: 八木田 幸恵、再生時間: 3 時間 57 分 

純文学新人賞の三冠を達成した今村夏子の芥川賞受賞作が『むらさきスカートの女』だ。

著者の今村夏子は『花束みたいな恋をした』でも話題になった作家だ。「今村夏子さんのピクニックを読んでも何も感じないような人だよ」というセリフが印象に残っている人も多いだろう。今村夏子は、「普通」からズレた人を描くのが上手い。『むらさきスカート』の女は、ちょっとサイコホラー味がある作品だ。2021年にTikiTok経由で再ブームにもなった。

 

 

『コンビニ人間』 / 村田 沙耶香 (第164回芥川賞)

36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。仕事も家庭もある同窓生たちからどんなに不思議がられても、完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、私を世界の正常な「部品」にしてくれる――。
現代の実存を問い、正常と異常の境目がゆらぐ衝撃のリアリズム小説。

ナレーター: 大久保 佳代子、再生時間: 3 時間 42 分 

村田沙耶香『コンビニ人間』は、マニュアルが存在するコンビニを舞台にした異色作だ。村田沙耶香は『殺人出産』や『消滅世界』など、ぶっ飛んだ話題作を書いてきた。『コンビニ人間』はこれらの作品と比べるとインパクトは少ないかもしれないが、十分に問題作だ。「普通」に生きることの大変さを描いている。

ナレーターはタレントの大久保佳代子さん。

 

 

『スクラップ・アンド・ビルド』 / 羽田 圭介 (第153回芥川賞)

「早う死にたか」毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。

ナレーター: 浦井 健治、再生時間: 3 時間 14 分 

羽田圭介の『スクラップ・アンド・ビルド』は、介護がモチーフになった作品だ。著者の羽田圭介はよくテレビで見かけるので、ご存知の人も多いのではないだろうか。

 

 

『火花』 / 又吉 直樹 (第153回芥川賞)

火花

火花

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売れない芸人徳永は、師として仰ぐべき先輩神谷に出会った。笑いの真髄について議論しながら、それぞれの道を歩んでいる。笑いとは何か、人間が生きるとは何なのか。

ナレーター: 堤 真一、再生時間: 4 時間 25 分 

ピース・又吉直樹の『火花』は、芸人の師弟関係を描いた作品だ。お笑い芸人の又吉が受賞したこともあって大変話題になった作品だ。

お笑いがテーマになっていることもあり、お笑いに関するギミックが小説中に仕込まれている。例えば、出囃子だ。

ナレーターは俳優の堤真一。

 

 

『道化師の蝶』 / 円城 塔 (第146回芥川賞)

無活用ラテン語で書かれた小説『猫の下で読むに限る』で道化師と名指された実業家のエイブラムス氏。その作者である友幸友幸は、エイブラムス氏の潤沢な資金と人員を投入した追跡をよそに転居を繰り返し、現地の言葉で書かれた原稿を残してゆく。

ナレーター: 小松 史法、再生時間: 5 時間 10 分 

日本SF大賞を受賞しSF作家としても活躍する円城塔の芥川賞受賞作。

円城塔は、SFや前衛文学などの意匠が混在する作風である。独特の論理展開、奇妙な理論を真面目に突き詰める文章が特徴のひとつである。「つぎの作者につづく」、「烏有此譚」、「後藤さんのこと」などの作品には注釈やカラーリングなどの奇妙な仕掛けを用いており、呆気に取られるだろう。

『道化師の蝶』の難解なところは、全くもって意味がわからないという点だ。説明になっていないが、本当に意味が分からないのだ。文章自体はとてもユーモラスで読みやすいのだが、内容が全くもってチンプンカンプンである。まあ、一種のフィクション論として読めばいいのだろうか。ちなみに芥川賞選考員も根を上げていた。こんなに難しい本をAudibleで聞いても理解できるのだろうかというのが本音である。

 

 

『乳と卵』 / 川上 未映子 (第138回芥川賞)

初潮を迎える直前で無言を通す娘と、豊胸手術を受けようと上京してきた母親、そしてその妹である「わたし」が三ノ輪のアパートで過ごす三日間の物語。三人の登場人物の身体観と哲学的テーマが鮮やかに交錯し、魅惑を放つ!

ナレーター: 野々村 のん、再生時間: 4 時間 10 分 

川上未映子の『乳と卵』は、身体の変化に戸惑う娘と豊胸手術を受けようとする母の対立と邂逅を描いた作品だ。樋口一葉の影響を色濃く残す、改行なしで延々と続く文体が特徴的である。大阪弁が特徴的なので、耳で聴いても楽しめる小説ではないかなと思う。

 

 

『蹴りたい背中』 / 綿矢 りさ (第130回芥川賞)

ハツとにな川はクラスの余り者同士。ある日ハツは、オリチャンというモデルのファンである彼の部屋に招待されるが…。

ナレーター: 金丸 由奈、再生時間: 4 時間 8 分 

19歳という史上最年少での芥川賞受賞でも話題に。100万部突破の大ベストセラー。

 

 

『パーク・ライフ』 / 吉田 修一 (第127回芥川賞)

昼間の公園のベンチにひとりで座っていると、あなたは何が見えますか? スターバックスのコーヒーを片手に、春風に乱れる髪を押さえていたのは、地下鉄でぼくが話しかけてしまった女だった。なんとなく見えていた景色がせつないほどリアルに動きはじめる。

ナレーター: 早川 剛史、再生時間: 4 時間 6 分 

吉田修一の『パークライフ』は、日比谷公園を舞台とした何気ない日常を描いた作品だ。特に事件という事件が起こらずに、淡々と日常が描かれている。スタバのカフェモカが印象的なアイテムとして登場する。

 

 

『豚の報い』 / 又吉 栄喜 (第114回芥川賞)

ある夜、スナックに闖入した豚に驚き、気を失った女の魂(マブイ)込めのために真謝島へ向かう男一人女三人。沖縄のフォークロアを駆使し、クレオール風の飄々とした日本語の味わいで作り上げた哄笑文学。

ナレーター: 吉田 健太郎、再生時間: 6 時間 34 分 

又吉栄喜の『豚の報い』は、沖縄が舞台の小説だ。

 

 

『タイムスリップ・コンビナート』 / 笙野 頼子 (第111回芥川賞)

海芝浦に向かう「私」を待ち受けるのは浦島太郎、レプリカント、マグロの目玉…。たどり着いた先はオキナワか? 時間と空間はとめどなく歪み崩れていく。言葉が言葉を生み、現実と妄想が交錯する。
ナレーター: 村上 麻衣、再生時間: 5 時間 23 分 

笙野頼子の『タイムスリップ・コンビナート』はとにかく前衛的な作品だ。「海芝浦に向かう「私」を待ち受けるのは浦島太郎、レプリカント、マグロの目玉」というあらすじだけでも頭に?が浮かぶだろう。この小説は、芥川賞受賞作品の中でも難解な部類に入ると思う。

 

 

『妊娠カレンダー』 / 小川 洋子 (第104回芥川賞)

姉が出産する病院は、神秘的な器具に満ちた不思議の国……妊娠をきっかけにゆらぐ現実を描く。

ナレーター: 荒巻 まりの、再生時間: 4 時間 29 分 

小川洋子の『妊娠小説』は、日記形式の分で綴られた小説だ。妊娠がきっかけで揺らいでしまう世界を描いている。小川洋子といえば、『博士の愛した数式』などが有名だ。

 

 

『村の名前』 / 辻原 登 (第103回芥川賞)

村の名前

中国のはるか奥地を仕事で旅する日本人商社マンが、桃源郷の名をもつ小さな村にふと迷い込んだ。優美な村の名前からは想像もつかない奇怪な出来事が、彼の周りで次々と起こる。

ナレーター: 平川 正三、再生時間: 6 時間 36 分 

辻原登の『村の名前』は、中国の奥地を舞台にした幻想小説だ。

 

 

『光抱く友よ』 / 高樹のぶ子 (第90回芥川賞)

大学教授を父親に持つ、引っ込み思案の優等生・相馬涼子。アル中の母親をかかえ、早熟で、すでに女の倦怠感すら漂わせる不良少女・松尾勝美。17歳の二人の女子高生の出会いと別れを通して、初めて人生の「闇」に触れた少女の揺れ動く心を清冽に描く。

ナレーター: 小室 まゆ美、再生時間: 5 時間 31 分 

第90回1983年下半期、芥川賞受賞作品。二人の高校生の受賞作の表題作を含む3編を収録。

 

 

『螢川』 / 宮本輝 (第78回芥川賞)

螢川

螢川

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立山連峰を望む北陸・富山市。少年の出会いと別れをいたち川のはるか上流に降るという蛍の大群の絢爛たる乱舞がつつむ・・・思春期のこころを妖かに、抒情的に、哀切に、描く。

ナレーター: 松谷 染佳、再生時間: 2 時間 38 分 

第78回1977年下半期、芥川賞受賞作品。富山県を舞台にした映画で、1987年には映画化されています。

 

 

『月山』 / 森敦 (第70回芥川賞)

出羽の霊山・月山の山ふところにある破れ寺に、ひとりの男がたどりつく。雪に閉ざされた山間のむらで、不思議な村人たちと暮しをともにするこの男が知った此の世ならぬ幽明の世界。

ナレーター: 三好 翼、再生時間: 9 時間 1 分 

第70回1973年下半期、芥川賞受賞作品。当時、62歳という史上最高例で芥川賞を受賞。山形県の月山を舞台とした表題作のほか、3編を収録。1979年には映画化も。

 

 

『れくいえむ』 / 郷静子 (第68回芥川賞)

ナレーター: 河野 茉莉、再生時間: 6 時間 17 分 
死への道はあまりにも近く、生への道はあまりにも遠い……あの太平洋戦争のさなか、ひたすら“立派な軍国少女”になろうと努めた女学生の青春がここにある。
第68回1972年下半期、芥川賞受賞作品。太平洋戦争を女学生の立場から描いた作品。作者の強い気持ちがこもった作品として論評されています。

 

 

『砧をうつ女』 / 李恢成 (第66回芥川賞)

和服にパラソルをさして、日本から母は帰って来た。貧しいなかをおおらかに生きた母の生涯を清冽な文体で描く鎮魂の譜。

ナレーター: 大森 ゆき、再生時間: 8 時間 17 分 

外国籍の作家による初めての芥川賞受賞作品。

 

 

 

『カクテル・パーティー』 / 大城立裕 (第57回芥川賞)

ナレーター: 髙山 正樹、再生時間: 2 時間 41 分 
本土復帰前の沖縄。主人公の「私」は、米軍基地内のカクテル・パーティーに招かれる。沖縄人の「私」は、パーティーの主催者であるアメリカ人の「ミラー」と、中国語会話のグループを作っていた。
第57回1967年上半期、芥川賞受賞作品。沖縄初の芥川賞受賞作品。審査員に三島由紀夫や川端康成、井上靖が名を連ねている時代の受賞。

 

 

『されどわれらが日々』 / 柴田 翔 (第51回芥川賞)

私はその頃、アルバイトの帰りなど、よく古本屋に寄った。そして、漠然と目についた本を手にとって時間を過ごした。ある時は背表紙だけを眺めながら、三十分、一時間と立ち尽した。そういう時、私は題名を読むよりは、むしろ、変色した紙や色あせた文字、手ずれやしみ、あるいはその本の持つ陰影といったもの、を見ていたのだった。

ナレーター: 林 健二、再生時間: 8 時間 14 分 

柴田翔の『されどわれらが日々 』は1950年代末が舞台の小説だ。語り手の「私」こと文夫は東京大学大学院程に在籍中で、まさに「知識人予備軍」。文夫には節子という婚約者がいる。エリートの文夫と対照的な生き方をしている登場人物として佐野という男性が描かれている。彼は共産党員で、大学時代は「山村工作隊」として地下に潜っていた。しかし彼は後に自殺したのである。佐野を自殺に追い込んだのは、「六全協」だ。

六全協とは、1955年7月の日本共産党第六回全国協議会のことだ。この会議を機に日本共産党は、「武装闘争」を放棄して、議会を重視した方針に変更した。「武力闘争」という生活の中心を失い、虚無感に襲われた佐野は自殺を選んだのだ。文夫と節子は佐野の死に衝撃を受け、自分の人生に後ろめたさを感じるのである。

『されどわれらが日々』は、「革命に命をかける人もいる中で、自分は知識人として生きるだけでいいのか」というという問いを突きつけているのである。



 

『忍ぶ川』 / 三浦哲郎 (第44回芥川賞)

忍ぶ川

ナレーター: 小川 道子
再生時間: 1 時間 32 分 
大学生の私は、料亭「忍ぶ川」で志乃としりあった。それぞれの家族とのかかわりやいたましい生い立ちを乗り越え労わりながら逞しく生き抜こうとする。
第44回1960年下半期、芥川賞受賞作品。1972年に映画化された作品。審査員に井伏鱒二、井上靖、川端康成が名を連ねている時代の受賞作品。

 

 

『驟雨』 / 吉行 淳之介 (第31回芥川賞)

山村英夫は会社員で3年目。ある日、好ましい印象の道子の部屋に上り一夜を過ごした。数週間後、待ち合わせの喫茶室に向う自分に「ときめき」の感情があることに驚いた。「今度お会いするまで、わたし、操を守っておく」という道子の言葉が心に刻み込まれ、それから何回も通うことになった。やがて、道子を占有できないことへの嫉妬が鮮明になっていく・・・。

ナレーター: wis、再生時間: 1 時間 12 分 

第31回1954年上半期、芥川賞受賞作品。新宿二丁目の赤線(1958年まで半ば公認で売春がおこなわれた地域)が舞台。著者は安岡章太郎や遠藤周作とともに第三の新人と称された。

 

 

『糞尿譚』 / 火野葦平 (第6回芥川賞)

糞尿譚

ナレーター: 髙坂 篤志、再生時間: 3 時間 23 分 
彦太郎は、とりたてて取り柄のない男で、唯一の特技が、 「じゅげむじゅげむごこうのすりきれず……」の、「長久名の長助」の名前を、 一字一句間違えずに言えることだ。 そんな彼が、汲み取りの商売をはじめるが、予想が外れて、なかなか採算がとれない。 金を借りるため、土地の有力者にかけあうことになった。

第6回1937年上半期、芥川賞受賞作品。糞尿汲取業の主人公をめぐる政治話。受賞時に著者は日中戦争に出征中だったというエピソードも。

 

 

 

Audibleの利用開始方法

Audibleの利用開始は簡単で、最低限次のことをすれば大丈夫だ。

 

①AmazonのIDを用意する

②WebブラウザでAudible会員に登録

③専用のアプリをダウンロード

 

Amazonのアカウントを持っていない人は、まずはアカウントを作ろう。また、スマホのAmazonのアプリからは登録できないので、手続きはブラウザから始めよう。

料金プランだが、Audibleで色んな作品を聞こうと思うのなら、「有料会員」になった方がお得だ。まあこれはお財布に相談案件である。

「会員登録」は30日間無料なので、とりあえず登録してAudibleを試してみるのもいいかもしれない。やれやれ。

audibleは最初の月は無料で始められるので、まだ体験していない人は、気になる一冊があればこの機会に始めてみるのはどうだろうか?僕の体験談は下の記事から読めます。

 

plutocharon.hatenablog.com

パリは移動祝祭日 / 『ミッドナイト・イン・パリ』 ウディ・アレン


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ミッドナイト・イン・パリ』は、ヘミングウェイのエッセイ『移動祝祭日』で描かれている1920年代のパリを舞台にしたロマンチックファンタジーだ。ウディ・アレン監督の作品の中でもベスト3に入るんじゃないかなと思う。

あらすじは、主人公が黄金時代のパリにタイムスリップしてしまうという話だ。作家志望の主人公・ギルは1920年代のパリにタイムスリップしてしまい、色んな芸術家と交流するようになる。ヘミングウェイはもちろん、フィッツジェラルドやピカソ、マン・レイ、ダリなどが登場する。

1920年代のパリにタイムスリップしたギルはそこでアドリアナに恋をするのだが...

この映画がテーマにしているのは「過去へのノスタルジー」だ。過去はいつだって美しい。現在から振り返る過去は多かれ少なかれ美化されているもの。いつでも未来は不安なもので、今は苦しく、過去は甘美な郷愁に満ちている。けれど私たちが生きるのは辛いかもしれないが、現在だ。そんなことをこの映画は教えてくれる。この映画を観て1920年代のパリにタイムスリップしてみては?

 

ミッドナイト・イン・パリ(字幕版)

ミッドナイト・イン・パリ(字幕版)

  • オーウェン・ウィルソン
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前進しないサメは死んでしまう / 『アニー・ホール』 ウディ・アレン

Annie Hall Official Trailer #1 - Woody Allen Movie (1977) HD - YouTube

 

ウディ・アレン監督作品の代表作といえば、『アニー・ホール』だ。ちなみに、この『アニー・ホール』は1977年アカデミー賞の主要4部門を受賞している。

数々のおしゃれな恋愛映画を作ってきたウディ・アレンだが、その原点は『アニー・ホール』にあると思う。

 

 

『アニー・ホール』は、ニューヨークを舞台に、都会に生きる男女の恋と別れをユーモラスに綴ったラブ・ストーリーだ。ウディ演じるコメディアン・アルビーは、知り合った美女アニーと意気投合して同棲生活を始める。最初はうまくいくのだけれど、だんだんと歯車が狂ってくる。最終的には、二人の間には見えない溝ができ上がってしまうのだ。

この映画は最初から最後まで実験的だ。観客に突然話しかけてきたりするし、アニメーションが入ったり、時系列シャッフルであったりと、様々な演出がつかわれている。

個性的な演出で描かれているのは男女の出会い、恋愛模様、そして別れだ。この映画は単に甘い恋愛映画ではない。ユーモアでシニカルな会話の中にも、恋愛の本質を突いた台詞が散りばめられている。

中でも印象的なセリフがこれだ。

 

「恋愛はサメと同じだ。前進し続けないと死んでしまう」

 

『アニー・ホール』はほろ苦い恋愛を描いた大人の恋愛小説だ。

 

コメディアンとして活躍していたウディ・アレンの転換点となったのが『アニー・ホール』 だ。この『アニー・ホール』はこれまでのコメディ路線と違って、ほろ苦い大人の恋愛映画になっている。上手くいかない恋愛や男女の機敏、生死観が描かれていて、深みのある映画に仕上がっている。

『アニー・ホール』をきっかけに、ウディは深みのあるシリアスな映画も撮るようになる。それが『インテリア』なのだけれど、これはあまり評判が良くなかったみたい。しかし、次作の『マンハッタン』で大きな飛躍を遂げる。モノクロで描かれるマンハッタンはとても美しいし、ラストシーンはとても印象的だ。