日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

村上春樹の新作短編小説集「一人称単数」が7月に発売!

 

村上春樹の短編集が6年ぶりに発売されることになった。タイトルは「一人称単数」。『風の歌を聞け』でデビューしてから、「僕」という一人称の可能性を追求してきた村上春樹らしいタイトルだと思う。初期作品では「僕」を多用していたけれど、『海辺のカフカ』や『1Q84』では三人称を使用するようになっていた。しかし、『騎士団長殺し』では「私」という「僕」とは異なる一人称を使うようになっていた。村上春樹は原点回帰したのだろうか。

「一人称単数」については、近年の村上春樹作品と同様に、発売まで内容が明かさない形式が採られている。だが、収録される短編は、文學界に掲載されていた連作短編「一人称単数」になるだろう。追加で短編が増えていたらサプライズだ。

収録作品は「石のまくらに」「クリーム」「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」「『ヤクルト・スワローズ詩集』」「謝肉祭(Carnaval)」「品川猿の告白」「一人称単数」だ。

 

 

既に発表されている作品のタイトル

「一人称単数」に収録される短編は文學界に掲載されたものになるだろう。今までに発表されているタイトルをまとめてみようと思う。

 

「一人称単数」その1「石のまくらに」 

文學界2018年7月号

文學界2018年7月号

  • 発売日: 2018/06/07
  • メディア: 雑誌
 

  2018年の7月号に載った「三つの短い話」から「一人称単数」は始まった。「三つの短い話」の発表時には「一人称単数」というタイトルは付けられていなかったが、いずれも「僕」や「ぼく」といった「一人称単数」で書かれた作品だ。

 

plutocharon.hatenablog.com

 

 

「一人称単数」その2「クリーム」 

文學界2018年7月号

文學界2018年7月号

  • 発売日: 2018/06/07
  • メディア: 雑誌
 

 

 

「一人称単数」その3「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」

文學界2018年7月号

文學界2018年7月号

  • 発売日: 2018/06/07
  • メディア: 雑誌
 

 

 

「一人称単数」その4「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」

文學界2019年8月号

文學界2019年8月号

  • 発売日: 2019/07/05
  • メディア: 雑誌
 

この短編が発表された時から、「一人称単数」というタイトルが付けられるようになった。この短編の面白いところは、最後に[設問・二度にわたる二人の出会いと会話は、彼らの人生のどのような要素を象徴的に示唆していたのでしょう?]という「設問」が記されているところだ。こんな表現技法は初めて見たかもしれない。

 

 

「一人称単数」その5「『ヤクルト・スワローズ詩集』」

文學界2019年8月号

文學界2019年8月号

  • 発売日: 2019/07/05
  • メディア: 雑誌
 

 

 

 

「一人称単数」その6「謝肉祭(Carnaval)」

文學界 (2019年12月号)

文學界 (2019年12月号)

  • 発売日: 2019/11/07
  • メディア: 雑誌
 

タイトルの「謝肉祭(Carnaval)」は、作曲家シューマンのピアノ曲集名から取られている。 

 

 

「一人称単数」その7「品川猿の告白」

文學界 (2020年2月号)

文學界 (2020年2月号)

  • 発売日: 2020/01/07
  • メディア: 雑誌
 

 タイトルが示すように、短編集『東京奇譚集』に収録されている「品川猿」の後日談になっている。

 

 

発売日が待ち遠しい。